1. はじめに:老後資金の重要性
老後の生活を安定して送るためには、十分な資金を確保することが欠かせません。日本の年金制度は、多くのシニアにとって主要な収入源となっていますが、年金だけで生活費をまかなうのは決して容易ではありません。
たとえば、70歳のシニアが1か月に必要とする生活費を約20万円と仮定すると、年金だけでその全てをカバーするのは難しいのが現実です。厚生年金を受給している場合でも、平均的な月額はおよそ15万円前後(※1)。一方で、国民年金のみを受給する場合は月額約6.5万円(※2)にとどまります。こうした数字からも、年金だけに頼る生活設計では“ゆとり”を感じにくいことがわかります。
さらに、今後は物価上昇や医療・介護費の負担増など、生活コストが上がるリスクもあります。思い描く老後の暮らしを実現するには、「年金+α」の収入をどう確保するかが重要な課題です。
そのためには、働き続けることによる収入の維持や、資産運用・支出の見直しなど、複数の手段を組み合わせることがポイントになります。特に近年は、シニアでも無理なく続けられる仕事や、少額から始められる投資・副業など、選択肢が広がっています。
本記事では、老後資金を上手に確保し、安心して第二の人生を楽しむための考え方や実践策をわかりやすく紹介します。将来の不安を減らし、「お金に縛られない豊かな暮らし」を目指すための第一歩として、ぜひ参考にしてください。
2. 退職後の生活費を見積もる方法
老後資金の準備を始めるうえで、まず取り組むべきは「毎月どのくらいの生活費が必要になるか」を把握することです。
何となく「年金で足りるだろう」と思っていても、実際に数字にしてみると不足額が明確になります。
退職後の暮らしを安心して続けるためには、現実的な見積もりを立てることが欠かせません。
① まずは「現在の支出」を整理する
老後の生活費を考えるとき、最初にすべきなのは“今”のお金の使い方を可視化することです。
現役時代の支出のうち、退職後も続くもの(食費・光熱費・通信費など)と、減るもの(通勤費・教育費など)を区分します。
このとき、家計簿アプリや銀行の利用明細を活用すると、過去1〜2年の平均支出を簡単に把握できます。
② 老後の生活スタイルを想定して費用を算出する
次に、自分がどのような暮らしを送りたいのかを想定します。
・「最低限の生活を維持する」 → 月額約22万円(総務省「家計調査」高齢夫婦無職世帯の平均)
・「ゆとりある生活を送りたい」 → 月額約28〜30万円(生命保険文化センター調べ)
こうした平均値を参考にしながら、住居費・食費・医療費・趣味・交際費など、自分のライフスタイルに近い項目ごとに金額を見積もります。
③ 予備費と“ゆとり費”を忘れずに
見積もりを行う際は、通常の生活費に加えて「突発的な出費」や「楽しみのための支出」も考慮しましょう。
たとえば、家電の買い替え、住宅リフォーム、孫への贈り物、旅行など――こうした支出は毎月ではなくても、年間を通して発生することが多いものです。
目安として、年間の生活費の10〜15%を“ゆとり費”として上乗せしておくと安心です。
④ 不足額を算出して“対策プラン”へつなげる
老後の1か月の支出見込みと、年金などの収入見込みを比較すると、不足額が見えてきます。
たとえば、
・想定生活費:月25万円
・年金収入:月15万円
→ 差額10万円/月 × 12か月 × 20年 = 約2,400万円
このように試算してみると、退職時にどれだけの貯蓄・運用・収入確保が必要かが明確になります。
⑤ 将来の変化も見込んで「定期的な見直し」を
生活費は年齢や健康状態、物価の変動によって変わります。
退職直後は活動的で支出が多くても、80歳を過ぎる頃には外出機会が減り、生活費が下がるケースもあります。
逆に医療費や介護費用が増える場合もあるため、5年ごとに見直しを行うと安心です。
老後資金の見積もりは、難しい計算ではなく「自分の暮らしを見つめ直す作業」です。
現実的な数字を出すことで、どのくらい備えが必要なのか、どの収入源を増やせばよいのかが自然と見えてきます。
ここで明確になった不足額を、次章の「シニア向けの収入源を増やす方法」でどう補っていくか――それが老後資金計画の第一歩です。
3. シニア向けの収入源を増やす方法
老後の生活を支えるためには、年金以外の「プラスの収入源」を確保することが欠かせません。近年では、「働きながら収入を得る」「資産を活用して増やす」「趣味や特技をお金につなげる」など、多様な方法が注目されています。ここでは、代表的な3つの手段を見てみましょう。
① 働いて収入を得る
最も安定的なのは、やはり仕事による収入です。近年は「週2~3日勤務」「1日4時間以内」など、無理なく続けられる短時間・柔軟勤務の求人が増加しています。
たとえば、スーパーや介護施設でのサポート業務、地域清掃、事務補助、保育補助など、体力や経験に合わせて選べる職種が多いのが特徴です。働くことで収入を得るだけでなく、社会とのつながりや生活リズムも保てるというメリットがあります。
② 資産を活かして増やす
貯蓄を「守る」だけでなく、「働かせる」ことも老後資金を安定させるポイントです。定期預金に加えて、つみたてNISAやiDeCoなど、少額から始められる資産運用制度を活用すれば、長期的にリスクを抑えつつ資産を育てることができます。
また、不動産や駐車場、太陽光などの「資産活用型の副収入」も、生活基盤を強化する手段のひとつです。大きなリターンを狙うよりも、リスクを理解しながら安定収入を目指す姿勢が大切です。
③ 趣味やスキルを活かす
近年は、「好きなことを仕事にする」シニアも増えています。ハンドメイド販売、写真撮影、家庭菜園の販売、地域講座の講師など、自分の得意分野を活かして小さく稼ぐ“ちょこっと副業”が人気です。
インターネットを活用すれば、オンライン講座やフリマアプリを通じて自分の作品や知識を全国に届けることも可能です。これらは収入だけでなく、生きがいや自己実現の手段にもなります。
無理なく続けるための工夫
大切なのは、「自分の体力・時間・目的」に合った方法を選ぶことです。短期的な収入よりも、長く続けられる仕組みづくりを意識しましょう。働く場合は、健康維持のために休息日を設けたり、興味のある分野に挑戦したりするのもおすすめです。
老後資金を増やす方法は、一つに絞る必要はありません。働く・運用する・趣味を活かす――この3つを上手に組み合わせることで、経済的にも精神的にも豊かなシニアライフが実現します。
4. 安定した生活を送るための支出管理
老後の家計を安定させるうえで欠かせないのが「支出のコントロール」です。年金や貯蓄などの限られた収入の中で、無理なく・安心して暮らすためには、“いくら使うか”をきちんと把握することが第一歩となります。
固定費と変動費を分けて考える
家計を見直す際は、まず「固定費」と「変動費」を分けて整理しましょう。
固定費とは、家賃・通信費・保険料・サブスクリプションなど、毎月ほぼ一定額かかる支出のこと。一方で、食費・光熱費・交際費・医療費などは変動費にあたります。
この区分を意識するだけで、どこを削減できるかが見えやすくなります。特に通信費や保険料は、プランの見直しや不要な契約を解約することで年間数万円単位の節約につながることもあります。
無駄を減らす工夫を取り入れる
支出を抑えるためには、「我慢」よりも「工夫」を意識するのがポイントです。
たとえば、電気やガスなどのエネルギーを節約できる家電への買い替え、ポイント還元を活用したキャッシュレス決済、地域スーパーの特売日を上手に利用するなど、生活の質を落とさずに節約する仕組みづくりが効果的です。
また、家計簿アプリやオンラインバンキングを使えば、毎月の支出を自動で把握でき、無駄遣いの傾向を視覚的に確認できます。
「節約=我慢」ではない
支出管理の目的は、単にお金を減らさないことではなく、安心して生活を続けるためのバランスを整えることです。
食費を減らしすぎて栄養が偏ったり、交際費を削りすぎて人付き合いが減ったりすると、結果的に健康や心の豊かさを損なうおそれがあります。必要な支出にはしっかり使い、「自分の価値観に合ったお金の使い方」を意識することが大切です。
定期的な見直しを習慣に
収入や生活環境は年齢とともに変化します。年に一度は家計を見直し、「どの支出が増えているか」「削減できる項目はないか」を点検してみましょう。
とくに医療費や介護費は突然増える可能性があるため、「予備費」や「緊急時の貯蓄枠」を確保しておくと安心です。
支出管理は、節約ではなく「生活を守るための戦略」です。
しっかり把握・見直し・改善を繰り返すことで、限られた収入の中でもゆとりのある老後を実現できます。
5. シニア向けの投資と資産運用の基本
老後資金を守りながら増やすためには、貯蓄だけでなく「資産運用」を上手に取り入れることが大切です。とはいえ、「投資は怖い」「損をしたらどうしよう」と不安を感じる方も多いでしょう。実際のところ、資産運用は“ギャンブル”ではなく、リスクを理解しながら長期的にお金を働かせる仕組みです。少額からでも始められる手段を知り、自分に合った方法を選ぶことが安心への第一歩になります。
目的を明確にする
シニア世代の投資で大切なのは、「何のために」「どの期間」で運用するのかを明確にすることです。
たとえば、
・将来の医療費や介護費に備える
・旅行や趣味など“楽しみのための資金”をつくる
・退職金を減らさずに管理する
など、目的によって取るべきリスクの大きさも変わります。「増やす」よりも「減らさない」という意識を持つと、安心して取り組めます。
主な資産運用の手段
1.つみたてNISA(少額投資非課税制度)
少額からコツコツ投資でき、運用益が非課税になる制度。長期・分散・積立が基本で、リスクを抑えながら資産を育てられます。
2.iDeCo(個人型確定拠出年金)
老後資金づくりに特化した制度で、掛金が全額所得控除になるのが魅力。ただし60歳まで引き出せないため、資金の一部を長期目的で運用する際に向いています。
3.債券・定期預金・外貨預金
比較的リスクが低く、安定志向の方におすすめです。複数の金融商品を組み合わせることで、リスク分散が可能になります。
4.不動産・REIT(不動産投資信託)
実物資産を持つ安心感がある一方、初期費用や維持管理コストも発生します。無理のない範囲で検討するのがポイントです。
注意すべきポイント
シニアの投資では、「情報をうのみにしない」「焦って大きな利益を狙わない」ことが何より重要です。
SNSやネット広告などで高利回りをうたう商品も見られますが、仕組みを理解できない投資は避けましょう。
また、金融機関に相談する場合も、複数社を比較して“納得できる説明”があるかどうかを確認することが大切です。
無理なく続けるための工夫
毎月の生活費に影響が出ない範囲で、少額から始めるのがおすすめです。たとえば「月1万円をつみたてNISAに回す」だけでも、10年後には大きな安心につながります。
大切なのは、短期的な値動きに一喜一憂せず、長期的に安定した運用を続ける姿勢です。
資産運用は「お金を増やす」ことだけでなく、「将来の安心をつくる」ための手段です。
投資経験の有無にかかわらず、まずは制度や仕組みを理解し、自分の目的とリスク許容度に合わせて行動することが、賢い老後資金づくりへの第一歩となります。
6. 社会的なつながりを維持するための活動
安定した老後の暮らしを送るうえで、欠かせないのが「人とのつながり」です。
経済的な安心があっても、孤立してしまうと生活の充実感は失われがちです。実際に、地域活動や趣味の仲間との交流がある人ほど、幸福度や健康状態が高いという調査結果もあります。
つながりがもたらす3つのメリット
1.心の健康を保てる
人との会話や協力の中で、自然と笑顔や感謝の気持ちが生まれます。これがストレス軽減やうつ予防につながり、脳の活性化にも効果的です。
2.身体の健康を維持できる
外出や活動の機会が増えることで、体を動かす時間が自然と増えます。ウォーキング、グラウンドゴルフ、ボランティア活動など、軽い運動が健康寿命の延伸にも役立ちます。
3.生きがいを感じやすくなる
「誰かの役に立つ」「感謝される」経験は、自信や目的意識を取り戻すきっかけになります。特に定年後は、仕事以外での社会的役割を持つことが心の張り合いにつながります。
具体的なつながりの場を持つ
つながりを維持するには、「無理なく続けられる活動」を選ぶことがポイントです。
たとえば――
・地域サークルや公民館講座:趣味を通じて仲間ができる
・ボランティア活動:地域清掃、子ども食堂、高齢者サポートなど、社会貢献と交流が両立できる
・オンラインコミュニティ:旅行/写真/園芸など、共通の話題で全国の人とつながれる
・スポーツ/文化活動:ウォーキングクラブ、合唱団、フロアカーリングなど、体と心の健康を保つ
これらの活動は、経済的な負担が少なく、どの地域でも参加しやすいのが魅力です。特に自治体やNPOが主催する講座やサークルは、参加費が無料または低額のものが多く、初めての人でも気軽に参加できます。
続けるためのコツ
つながりを長く維持するためには、「気の合う仲間を見つける」「無理をしない」「自分のペースで関わる」ことが大切です。
毎週参加しなくても、月に1~2回の活動でも十分。重要なのは、「行く場所」「話す相手」がある状態を保つことです。
経済的安定だけでなく、心の豊かさを
老後の安心は、貯金の多さだけで決まるものではありません。
誰かと関わり、笑い合い、支え合う――そうした“人とのつながり”こそが、毎日の生活に張りを与え、健康寿命を延ばす原動力になります。経済的準備と同じくらい、「社会的なつながりをどう築くか」も老後設計の大切な要素といえるでしょう。
7. 成功事例:シニアが老後資金を確保した方法
実際に老後資金の不安を乗り越え、自分らしい方法で生活の安定を実現しているシニアは少なくありません。ここでは、3つのタイプ別に成功事例を紹介します。どの事例も特別な才能が必要なわけではなく、「身近な工夫」から始めたことが共通点です。
【事例1】再雇用から「週3日勤務」で安定収入を確保
元メーカー勤務のAさん(68歳)は、定年後も健康に自信があり、「まだ社会に貢献したい」と再雇用制度を活用しました。フルタイムではなく週3日・1日6時間勤務に切り替えたことで、心身に負担をかけずに年収約150万円を維持。
同時に、年金との併用で生活に十分な余裕が生まれました。
Aさんは「働くリズムがあると、生活にハリが出る。職場の若手との交流も刺激になる」と話しています。
このように、“無理なく続けられる働き方”を選ぶことが長期的な安定につながる好例といえます。
【事例2】趣味の園芸を副収入に変えたBさん
Bさん(72歳)は長年の趣味だった園芸を生かして、自宅の一角で花苗を育て、地元の直売所に出荷しています。最初は「お小遣い程度になれば」と始めたものの、SNSで投稿を続けるうちに常連客が増え、今では月3〜5万円の収入に。
「“好き”を続けながら、人に喜ばれるのがうれしい」と話すBさん。
ポイントは、利益よりも楽しみを優先し、生活ペースに合わせて無理なく取り組むことでした。こうした“ちょこっと副業”は、収入だけでなく社会とのつながりを保つうえでも有効です。
【事例3】退職金の一部を「つみたてNISA」で運用したCさん
Cさん(66歳)は退職時に受け取った1,000万円のうち、生活費として必要な分を除いた300万円をつみたてNISAに回しました。
金融機関のアドバイザーに相談し、手数料の低いインデックス型投資信託を選択。毎月3万円ずつ積み立てを続けた結果、5年後には評価額が約360万円に。
Cさんは「貯金よりも増えたし、少し勉強することで投資が怖くなくなった」と語ります。
リスクを理解したうえで長期運用に取り組むことで、“お金を育てる”安心感と知的刺激の両方を得られた好例です。
これらの事例に共通しているのは、「できる範囲で始める」「続けられる方法を選ぶ」そして「楽しみながら取り組む」という姿勢です。
老後資金の確保は、一度に大きな成果を出すことではなく、“小さな成功を積み重ねる”ことが安心と豊かさを生むのです。
8. まとめ:第二の人生を豊かにするために
老後に向けた資金をただ「確保する」だけでは、豊かな第二の人生とは言えません。まずは、自分に必要な生活費を具体的に見積もり、年金だけでは届かない分を「収入源を増やす」「支出を管理する」「資産を運用する」という三つの視点で補うことが大切です。
加えて、お金という物理的な安心に加えて、社会的なつながりや生きがいを持ち続けることで、心身ともに充実した日々を送る礎が築けます。たとえば、パートタイムの仕事や趣味を活かした収入活動、仲間との趣味サークル、地域ボランティアといった活動は、単なる“時間の埋め合わせ”ではなく、「自分が必要とされる」「自分の価値を実感できる」場所をつくることにもつながります。
これらを踏まえて、年齢や環境に左右されず「自分らしく」「安心して」「豊かに」暮らしていくためには、先を見据えた準備と、今この瞬間から着手できる行動の両方が鍵となります。今日から少しずつでも、資金計画を立て、人との関わりを深め、自分の時間を価値のあるものにしていく。そうした一歩一歩が、人生の後半をより意味あるものに変えていくのです。
【注釈】
(※1)厚生労働省「令和4年度国民年金・厚生年金の受給状況」
(※2)総務省「平成4年度国民生活基礎調査」
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