清掃業界で高齢者を採用するメリット5選【人手不足解消や助成金】

シニア採用

【はじめに】清掃業界の人手不足と高齢者採用の注目度

近年、清掃業界では深刻な人手不足が続いています。特に若年層の応募が少なく、現場では常に「人が足りない」状態が常態化しており、採用活動に悩む企業も多いのが現実です。厚生労働省のデータによれば、2023年時点でビル清掃職の有効求人倍率は2.5倍を超えており、他業種と比べても高水準を記録しています(※厚生労働省「一般職業紹介状況」より)。

そんな中、注目されているのが「高齢者の採用」です。近年では60代・70代の就業希望者が増加傾向にあり、「まだまだ働きたい」「健康のために働き続けたい」といった意欲的な高齢者が多数存在します。清掃の仕事は比較的シンプルでありながら、地域社会との接点も多く、やりがいを感じやすいという特徴があります。そのため、体力面が大きく問われる作業を分担すれば、高齢者でも十分に活躍できる職場です。

また、高齢者を雇用する企業に対しては、国や自治体による助成金制度も整備されており、採用のハードルが下がってきている点も見逃せません。こうした流れを受けて、清掃業界における高齢者採用は今後さらに拡大していくと予想されます。

この記事では、清掃業界で高齢者を採用することによって得られる5つの具体的なメリットを紹介し、採用活動における実務的な注意点や支援制度についても詳しく解説していきます。


メリット1:高齢者の勤務意欲と責任感の強さ

高齢者を採用する最大のメリットのひとつが、強い勤務意欲と責任感です。定年を過ぎても「社会とのつながりを持ちたい」「健康のために働きたい」と考える高齢者は多く、単なる収入目的だけではない“やる気”が現場にも良い影響を与えます。

特に清掃業務では、毎日のルーティンを丁寧にこなす姿勢な求められます。その点で、高齢者は真面目で几帳面な性格の方が多く、仕事に対して誠実に取り組む傾向があります。実際に、ある清掃会社では高齢者の定着率が非常に高く、「無断欠勤ゼロ」「現場の清潔感が常に保たれている」など、企業側からも高く評価されています。

また、企業にとっては人材の回転率が低いことも大きな利点です。若年層に比べて転職志向が高くなく、一度採用すれば長く働いてくれるケースが多いため、採用コストの削減にもつながります。
加えて、高齢者の多くは「責任を持って働く」という意識が高く、時間厳守や挨拶など、基本的な社会常識をしっかりと持っている点も見逃せません。

こうした誠実さや勤勉さは、職場の雰囲気にも良い影響を与え、結果として清掃品質の向上や、顧客満足度のアップにもつながります。


メリット2:勤務時間や働き方の柔軟性が高い

高齢者を採用するもう一つの大きな利点は、勤務時間や働き方に柔軟に対応できるという点です。多くの高齢者は、フルタイムではなく「午前中だけ」「週3回」などの短時間勤務を希望する傾向があります。これは清掃業界の「早朝勤務」「短時間シフト」などのニーズと非常に相性が良く、企業側も無理なく人材配置が可能になります。

たとえば、ビルやオフィスの清掃では朝7時〜10時などの時間帯に集中することが多く、このような限られた時間帯で働ける人材を探すのは難しいケースがあります。ここで、高齢者の「短時間での勤務希望」がマッチすれば、双方にとって非常に合理的な雇用関係が成立します。

また、シフトに関しても主婦層や学生よりもスケジュールの自由度が高いため、急な欠勤が出た場合の穴埋め要員としても重宝されることがあります。年金受給との両立を前提とした週20時間未満の雇用や、扶養範囲内での働き方など、本人の生活スタイルに合わせて柔軟な労働設計ができるのも特徴です。

高齢者のこのような働き方の柔軟性は、固定された働き方が前提だった従来の清掃現場に、新たな人材配置の可能性をもたらします。結果として、企業は必要な時間帯に必要な人材を確保しやすくなり、業務の効率化やコスト削減にもつながります。


メリット3:多様性が生まれ、職場の雰囲気が安定する

高齢者を採用することで、職場に年齢・経験の多様性が加わり、結果としてチーム全体のバランスが良くなるというメリットがあります。特に清掃業界のように、チームで協力して現場を回す業務においては、「若手だけ」「高齢者だけ」といった偏った構成よりも、年齢層がミックスされた環境の方が安定しやすい傾向があります。

高齢者の落ち着いた対応や、穏やかな人間関係を築く姿勢は、現場の雰囲気を和らげ、若手スタッフが安心して働ける空気を生み出します。若手にとっては、人生経験豊富な高齢者と接することで、マナーや仕事への向き合い方を自然に学べる機会にもなります。一方で、高齢者にとっても若手と接することで、活気をもらったり、新しい考え方を取り入れたりするなど、双方にとってプラスの作用があります。

さらに、多様性がある職場は離職率の低下にもつながります。心理的安全性が確保されることで、従業員満足度が高まり、結果として長期的に安定したチーム運営が可能になります。こうした効果は、清掃の品質や顧客との信頼関係にも波及し、企業全体のパフォーマンス向上にも寄与します。

ダイバーシティ(多様性)推進の観点からも、高齢者採用はSDGsや社会的責任に取り組む企業姿勢として評価される要素のひとつです。単なる労働力の補充にとどまらず、組織文化の成熟にも貢献するのが高齢者採用の魅力といえるでしょう。


メリット4:助成金制度を活用できる採用枠

高齢者を雇用する際には、各種助成金制度を活用できるという経済的メリットも見逃せません。特に中小企業にとって、採用・教育コストを抑えつつ即戦力を確保する手段として、高齢者の雇用は非常に有効です。

たとえば、厚生労働省が実施している「65歳超雇用推進助成金」では、以下のような取り組みに対して助成が受けられます。

・定年を65歳以上に引き上げた場合
・定年制の廃止を行った場合
・継続雇用制度の導入、拡充をした場合

また、シニア層を新たに雇い入れた企業に対しては、都道府県単位で支給される独自の助成制度も存在します。たとえば東京都中央区では「高齢者雇用企業奨励金」として、企業が高齢者を継続雇用した際に、一人当たり数万円の奨励金を支給する制度を実施しています(※制度内容は年度により変動)。

このような制度を活用することで、実質的な人件費負担を軽減でき、企業側の採用リスクも大幅に下がります。さらに、助成金の対象となる高齢者向けの職業訓練プログラムを併用することで、採用後の教育・定着支援にも役立ちます。

ただし、助成金の申請には事前準備や期限、対象要件など細かな条件があるため、事前に厚生労働省の公式サイトや、地域のハローワーク、商工会議所に相談するのが安心です。

高齢者を採用することは、社会貢献であると同時に、公的支援を活用した戦略的な人材確保としても非常に魅力的な選択肢といえるでしょう。


メリット5:地域密着型の安定雇用につながる

高齢者を採用することは、地域とのつながりを強め、地域密着型の安定雇用を実現する大きな要因となります。特に清掃業務は、ビル・マンション・公共施設など地域に根差した現場が多く、地元に住む高齢者を採用することで、交通費の削減や通勤トラブルの回避にもつながります。

また、高齢者は地域の情報に詳しく、近隣住民とのコミュニケーションも円滑です。たとえばマンションや商業施設の共用部を担当する清掃スタッフとして、高齢者が配置されることで、住民との日常的な挨拶や簡単な会話を通じて安心感や信頼感を生み出すことができます。これは清掃品質そのものには表れにくいものの、施設や物件の「印象」を良くする大切な要素です。

さらに、高齢者の多くは転居や転職のリスクが低いため、一度採用すれば長期間安定して働いてもらえるケースが多いのも特徴です。これにより、頻繁な人員交代が不要になり、教育コストの削減や、現場のノウハウ蓄積にもつながります。

地域社会とのつながりを意識した採用活動は、企業の社会的責任(CSR)や持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)の活動にもつながります。「地域の高齢者を積極的に雇用している企業」という評価は、自治体や取引先、地域住民からの信頼につながり、企業イメージの向上にも寄与します。

清掃業界が抱える人手不足という課題に対して、単に「人を補う」だけでなく、「地域とつながり、信頼を得る」ことができる高齢者採用は、長期的な視点から見ても非常に意義のある選択肢だといえるでしょう。


高齢者を採用する際の法的留意点と実務ポイント

高齢者の採用には多くのメリットがありますが、スムーズに雇用を進めるためには、法的なルールや実務上のポイントを理解しておくことが重要です。以下に、特に注意すべき観点を整理して解説します。

1. 年齢を理由にした不採用はNG

日本では「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年法)」により、原則として年齢を理由に応募を制限することが禁じられています。たとえば、「60歳以上不可」などの表現は差別的とされ、求人広告に記載することはできません。

一方で、高齢者の採用を歓迎したい場合は、「年齢不問」「シニア歓迎」などのポジティブな表現を用いることで、年齢層を問わず幅広く応募を募ることが可能です。


2. 健康状態の確認は慎重に

高齢者を採用する際は、健康状態の把握が重要です。特に清掃業務は一定の体力を要するため、業務遂行に支障がないかの確認が求められます。ただし、面接時に過度な健康情報を求めることはプライバシーの観点から問題となるため、慎重に行う必要があります。

事前に作業内容を明確に伝えた上で、本人の意思で健康診断を受けてもらう、あるいは職場見学や短期体験を通じて適性を確認する方法が推奨されます。


3. 労働条件の明示と契約設計

高齢者の多くは短時間勤務や週数回の就業を希望する傾向にあります。そのため、契約時には労働条件を明確に示すことが重要です。業務内容・勤務時間・休憩・賃金・有給休暇などについて書面で通知し、双方の認識にズレがないようにしましょう。

また、「重い荷物の運搬なし」「階段清掃なし」など業務範囲を限定することで、安全性と定着率の向上につながります。


4. 社会保険・雇用保険の取扱い

高齢者でも、雇用形態や勤務時間によっては雇用保険や社会保険への加入が必要です。週20時間以上働き、31日以上の雇用見込みがある場合、雇用保険の加入対象となります。

ただし、65歳以上の場合、雇用保険の失業給付は一部制限があるため、事前にハローワークや社会保険労務士と相談の上で対応することをおすすめします。

また、70歳以上は厚生年金の加入義務がなくなるものの、企業年金制度や任意の健康保険の対象となることがあるため、雇用条件に応じた正しい手続きを行う必要があります。


5. ハラスメント防止と職場づくり

高齢者と若年層が混在する職場では、年齢に関するハラスメントの防止も重要な課題です。年齢を理由とした不誠実なコミュニケーションや過度な業務負担などは、シニア側のモチベーションを著しく損なう可能性があります。

そのためには、管理者や若手スタッフへの教育・啓発を行い、相互理解を促進することが大切です。年齢を問わず活躍できる環境づくりは、職場の安定と多様性を生み出す基盤となります。


高齢者の採用は、清掃業界の人手不足を解消するだけでなく、企業の社会的責任や職場の多様性にも貢献します。ただし、その成功には法令遵守ときめ細やかな実務対応が欠かせません。採用前から就業後までのフォロー体制を整え、双方にとって安心で働きやすい環境を築いていくことが、長期的な雇用成功への第一歩となるでしょう。


【まとめ】高齢者採用が清掃業界にもたらす未来

清掃業界における人手不足は、今後も深刻化することが予想されます。その中で、高齢者の雇用は単なる労働力の補完にとどまらず、職場の安定性・多様性・地域密着性といった多面的な価値をもたらします。

高齢者は、勤勉さや責任感、柔軟な働き方など、現場にとってありがたい特性を備えています。シフトの調整がしやすく、定着率も高いため、コストパフォーマンスにも優れており、若手スタッフとの世代間の調和や、チーム全体の雰囲気向上にも寄与します。また、助成金制度を活用すれば、企業側の負担も軽減され、より導入しやすい環境が整っています。

これからの採用戦略では、年齢にとらわれない「人を活かす視点」がますます重要になっていくでしょう。高齢者採用は、企業にとっても地域社会にとっても“Win-Win”の選択であり、持続可能な人材活用の一手として大いに期待されています。

清掃業界が今後も安定して成長していくためには、高齢者という貴重な人材資源をうまく活かし、誰もが安心して働ける職場環境を整えることがカギとなります。

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