「若手が採れない…」人手不足に悩む中小企業が今、取るべき採用戦略とは?

【企業様向け】シニア採用

1.なぜ若手が採れなくなっているのか?

中小企業を取り巻く採用環境の変化

近年、若手人材の採用は多くの中小企業にとって困難な課題となっています。その背景には、労働人口の減少と大企業志向の強まりがあります。総務省の「労働力調査(2023年平均)」によれば、15歳〜24歳の若年労働力人口は過去20年間で約300万人以上も減少しています。限られた若年層の中で、知名度や待遇面で優位な大企業が優秀な人材を先に囲い込む構図が鮮明になっています。

さらに、求人媒体のデジタル化が進む一方で、中小企業が十分に対応できていないケースも多く、求職者の目に触れる機会が少ないことも採用難の一因です。「求人を出しても応募がない」という声が現場から多く上がるのは、こうした構造的な要因が重なっているためです。


若手人材の志向の変化と企業ミスマッチ

また、若手の仕事に対する価値観も大きく変化しています。安定よりも自己実現やライフワークバランスを重視する傾向が強く、柔軟な働き方や成長機会を求める若者が増えています。そのため、従来の「年功序列」や「フルタイム前提」の働き方を維持する中小企業では、若手のニーズと合致せず、採用後の定着にも苦労するケースが目立ちます。

つまり、採用活動で成功するには、単に募集を出すだけでなく、ターゲット層の価値観に沿った雇用条件や社内体制の見直しが求められているのです。


2.高齢者採用が注目される背景

増加するシニア就業希望者の実態

高齢者の就業意欲は年々高まっています。内閣府「高齢社会白書(令和5年版)」によると、65歳以上の就業者数は912万人と過去最多を記録し、65歳以上人口の約25%が働いている状況です。特に70歳を超えても「働けるうちは働きたい」と考える高齢者が増えており、健康寿命の延伸とともに就業可能な年齢の上限が引き上がってきています。

また、年金の受給開始年齢の引き上げや生活資金への不安も背景にあり、「年金だけでは不安」「社会と関わり続けたい」という理由で仕事を探す高齢者は少なくありません。こうしたシニア人材は、時間に融通が利きやすく、週2〜3日や短時間勤務といった柔軟な働き方を希望する傾向があるため、中小企業の即戦力や補助的な戦力として非常にマッチしやすいのです。


政府の後押しと支援制度の拡充

国もこうした動きを後押ししています。2021年4月には「改正高年齢者雇用安定法」が施行され、70歳までの就業機会確保が企業の“努力義務”とされました。また、シニア採用を行う企業向けに各種助成金も整備されており、「65歳超雇用推進助成金」や「特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)」などが活用できます。

これにより、高齢者の採用は単なる社会貢献ではなく、企業にとっても実利のある戦略的な選択肢になりつつあります。今後、少子高齢化がさらに進む中で、シニア人材の活用は避けて通れないテーマとなっていくでしょう。


3.高齢者採用で得られる3つのメリット

業務分解や効率化を促す契機になる

高齢者を新たに採用しようとする際、多くの企業が直面するのが「どんな業務を任せるか?」という課題です。しかし、これは逆に言えば、業務の棚卸しや再設計を行う絶好の機会でもあります。
たとえば「毎日フルタイムでこなす必要はないが、誰かが担ってほしい作業」や「ベテランでなくても対応できるルーティン業務」などを切り出すことで、業務の効率化や属人化の解消にもつながります。

中小企業では、「何となく」や「慣例的に」社員が抱えている業務が多く存在します。そこにシニア人材を受け入れることで、「本当に社員がやるべきことは何か?」を見直す動きが生まれ、結果として全体の生産性が高まるケースも少なくありません。

高齢者の採用は単なる人手の補完ではなく、業務の最適化・組織改革のきっかけにもなり得るのです。


職場に多様性が生まれ、組織が活性化する

高齢者の採用は、職場に年齢や価値観の多様性をもたらします。多様な背景を持つ人材が共に働くことで、互いに刺激を与え合い、柔軟な発想や創造的なアイデアが生まれやすくなります。

特に最近の若手社員は、自分とは異なる世代の人と交流することにポジティブな価値を見出す傾向があります。「親世代に近い先輩が話を聞いてくれて安心した」といった声もよく聞かれ、メンタリング的な役割を果たす高齢者も珍しくありません。

世代を超えて協力し合える組織は、顧客対応や商品開発などの場面でも多様な視点を活かせるため、結果として企業全体の対応力・競争力の向上にもつながります。


定着率の高さと職場の安定

高齢者人材のもう一つの大きな強みが「定着率の高さ」です。多くの高齢者は「最後の職場」として仕事を探しているため、転職を繰り返す若手層と比較して、長く働き続ける傾向があります。

厚生労働省の「高年齢者雇用実態調査(令和4年)」では、65歳以上の就業者のうち、約7割が「現在の仕事を定年まで、もしくは健康な限り続けたい」と回答しています。このことからも、長期的に安定した労働力を確保できる可能性が高いといえます。

また、責任感が強く、まじめに仕事に取り組む傾向もあるため、企業としても安心して任せやすい存在となります。人手不足の今こそ、「定着する人材」を戦略的に確保することが求められているのです。


4.高齢者を採用する際の注意点と制度活用

就業環境整備と業務設計の工夫

高齢者を受け入れる際には、若手や中堅社員と同じ働き方をそのまま当てはめるのではなく、シニアに配慮した就業環境の整備が必要です。たとえば、長時間勤務を避けたシフト設計、階段の昇降が少ない動線設計、負担の少ない作業の割り当てなどが求められます。

また、体力的な配慮だけでなく、「見て覚える」ではなく明文化されたマニュアルの整備や、OJTよりも動画やチェックリストを活用した学習スタイルの導入も効果的です。
業務設計を柔軟に見直すことで、シニア層のパフォーマンスを引き出しやすくなり、若手社員への負担軽減にもつながります。


活用できる助成金・支援制度の紹介

高齢者雇用を後押しするために、国や自治体ではさまざまな助成金制度を整備しています。代表的なものとして、以下のような制度があります:

65歳超雇用推進助成金(厚生労働省)
 → 65歳以上への定年延長や定年制の廃止、希望者全員の70歳までの継続雇用制度を導入した企業に対して、最大160万円の支給(内容により異なる)。

特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)
 → 高年齢者(60歳以上)をハローワーク等の紹介で雇用した場合、中小企業で最大60万円(短時間労働者は最大40万円)が支給。

自治体の独自支援制度
 → 東京都や大阪府など、地域ごとに支援金や雇用奨励金を設けているケースもあります。

これらの制度をうまく活用すれば、採用にかかる費用負担を軽減しながら戦力を確保できます。採用前にはハローワークや都道府県の労働局に相談するのがおすすめです。


法的留意点(年齢差別禁止など)

シニア採用に取り組むうえで注意したいのが、年齢を理由とした差別の禁止です。労働施策総合推進法により、原則として年齢を理由に応募を制限することはできません。求人票にも「○歳以上不可」といった表現は避ける必要があります。

また、健康状態の確認や面談時の質問においても、年齢に基づく偏見や過度な詮索はトラブルのもとになります。業務遂行に直接関係のある範囲で、客観的に判断できる基準を設けることが望ましいです。

企業としては、「高齢者だから○○ができない」という先入観を排し、個々の適性に応じた評価・配置を行うことが、円滑な受け入れと長期的な活躍につながります。


まとめ:多様な人材戦略が中小企業の未来を変える

シニア採用を成功させるために今すぐできること

人手不足が深刻化する中、採用戦略の見直しはすべての中小企業にとって喫緊の課題です。特に「若手が採れない」ことを前提としたうえで、新たな戦力として高齢者の活用を検討することは、組織の持続可能性を高めるうえで極めて有効なアプローチといえるでしょう。

本記事でご紹介したように、高齢者を採用することには、

・業務の棚卸しや分解を促し、組織の効率化に寄与する
・職場に多様な価値観と安定感をもたらす
・定着率が高く、長期的に信頼できる人材として活躍する

といった多くのメリットがあります。

まずは、自社の業務を見直し、「フルタイムでなくても担える仕事」「若手ではなくてもできる仕事」を洗い出すことから始めてみましょう。そして、必要に応じて助成金制度を活用しながら、段階的に高齢者の採用を進めることが、無理のない戦略的な第一歩になります。

少子高齢化が進む日本において、多様な人材を柔軟に受け入れる組織こそが、これからの時代を勝ち抜く力を持つといえるでしょう。

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