「経験は宝」と言われるように、シニア社員の持つ知識や人脈は、企業にとって大きな財産です。とはいえ、実際にどう活用すればよいのか悩んでいる企業が多いのではないでしょうか。
本記事では、ソニーや大和証券など5社の成功事例を紹介しつつ、雇用のメリット・デメリット、そして雇用を成功させる9つのポイントを解説します。人材不足の解消や若手社員の育成にもつながる「シニア社員の力」、その活かし方を一緒に考えていきましょう。そして、シニア人材の雇用支援を検討されている方々に実績豊富な求人サイトもご紹介いたします。
シニア社員の雇用の現状とは?
若手の人材が思うように集まらない中、ふと目を向けると、まだまだ元気で働きたいというシニア世代が増えてきています。彼らの存在を、企業としてどう受け止めるべきか?その答えを探る動きが、いま広がっています。
その背景には、法律の改正や社会の価値観の変化があり、「もう引退」という考え方が変わりつつあるのです。この章では、シニア社員を取り巻く現状を紐解きながら、雇用の可能性について一緒に考えていきましょう。
シニア社員の増加と若手社員の減少
少子高齢化の影響で、企業の年齢構成にも大きな変化が出ています。新卒や若手の採用が年々難しくなる一方で、定年を過ぎても働き続けたいというシニア層が増えてきました。
実際、多くの企業で60代の社員数が増えており、現場を支える貴重な戦力になりつつあります。こうした背景から、これまで若手中心だった職場に、シニア世代をどう組み込んでいくかが大きなテーマになっているのです。採用の形を見直すタイミングが来ているのかもしれませんね。
働く意欲があるシニアの増加
一昔前は「定年=引退」というイメージが強かったものの、最近は事情が変わってきました。健康寿命の延びや価値観の多様化もあり、「まだまだ働きたい」「社会と関わっていたい」と考えるシニアが増えています。
実際、60代以降も再就職や継続雇用を希望する人が多く、その意欲は決して低くありません。企業にとっては、経験豊富で意識の高い人材を活かすチャンス。今こそ、シニアの可能性に目を向ける時期に差しかかっているのかもしれません。
高年齢者雇用安定法の改正
2021年に改正された「高年齢者雇用安定法」により、企業には70歳までの就業機会を確保するための努力義務が課されるようになりました。これまでは60歳定年・65歳まで再雇用が一般的でしたが、今は“その先”まで視野に入れる必要が出てきています。
背景には、働く意欲のあるシニアの増加や、社会全体の高齢化があります。法改正をきっかけに、企業がシニア人材の活用を本格的に考える流れが加速しているのです。
シニア社員を雇用する4つのメリット
「シニアの雇用は、本当にプラスになるの?」そんな疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。しかし、実際に雇用している企業では、思わぬ相乗効果が生まれていることも少なくありません。
職場全体に安心感が広がるといった、経験や人脈によって培われた”目に見えない財産”が企業にとっては大きな武器となります。ここではシニア社員を迎え入れることで得られる4つのメリットを、実例も交えてご紹介します。
①若手社員の成長につながる
若手社員が大きく成長するきっかけのひとつに、年上の先輩社員との日常的な関わりがあります。経験豊富な先輩が身近にいることで、自然と仕事の進め方や考え方を学ぶ場面が増え、自分の視野も広がっていくからです。
シニア社員は、長年の経験を通じて得た“ちょっとしたコツ”や“気づき”を、自然と若手に伝えてくれることが多く、それが結果的に成長につながるケースがあります。マニュアルにはない学びが、日々のやりとりの中にあるわけです。育成に手が回らない職場ほど、こうした関わりこそが重要なのでしょう。
②現役社員が安心感を抱いて業務を行える
現場に落ち着いた空気があると、不思議と仕事もしやすくなるものです。長く働いてきた人がそばにいるだけで、「まあ、なんとかなるかな」と思える場面があります。
シニアの方が持つ雰囲気や立ち振る舞いには安心感があり、経験の浅い社員にとっては何かあったときに頼れる存在。気持ちが楽になることもあり、直接何かを教えなくてもそこにいるだけで場が整うという効果があるのです。
③人手不足の解消につながる
人手が足りない、採用してもなかなか定着しない。そんな悩みを抱える企業は少なくありません。そこで注目されているのが、シニア人材の活用です。働く意欲が高く、まだまだ現役でいたいという人は意外と多く、うまくマッチすれば貴重な戦力になります。
すぐに即戦力を求めるよりも、「今いる人をどう活かすか」を見直すことで、職場の安定にもつながるはず。年齢だけで線を引かないことが、これからの人材確保のカギになるかもしれません。
④豊富な経験や広い人脈を活用できる
長く働いてきた人の知見や人脈は、一朝一夕では手に入りません。シニア社員には、業界の流れを肌で感じてきた経験や過去に築いた信頼関係など、目に見えない資産があります。
何かトラブルが起きたときに「あの人ならどう動くか」という視点が周囲の判断の軸になることがあります。営業先や取引先とのちょっとしたつながりが、思わぬビジネスチャンスにつながることも。ただ在籍しているだけで終わらせず、その背景やつながりに目を向けることが大切です。
シニア社員を雇用するデメリットと課題
シニア社員の活躍が注目される一方で、実際に受け入れるとなると「思っていたのと違うな」と感じる場面もあるかもしれません。体力の問題だったり、新しいツールへの慣れだったり、ちょっとした調整が必要になることがあります。
もちろん、それが悪いというわけではなくて、少し工夫すればうまく回る可能性があるのです。そこでこの章では、よくあるつまずきや悩みを取り上げながら、現場でどう向き合えばいいのかを考えていきましょう。
体力面に不安がある
年齢を重ねると、どうしても体力的な差が出てくるのは避けられません。若い頃と同じ感覚で動くのは難しくなってくる場面があるでしょう。たとえば長時間の立ち仕事や力仕事など、ちょっとした負担が大きく感じられることも少なくありません。
これは本人だけの問題ではなく、周囲と助け合いながら調整していくことが大切です。無理をさせるのではなく、得意なことに集中できる環境を作る。そんな小さな配慮が結果として全体の働きやすさにもつながっていくのかもしれません。
給与や配属の調整が必要
シニア社員を受け入れる際には、「給与はどう設定すべきか」「どの部署に配属するのが適切か」とさまざまな課題が出てくるでしょう。これまでの経験が豊富なだけに、現場での働き方に合わせて条件面も見直す必要があるかもしれません。
若手とのバランスを考えると画一的な対応は難しいものですが、その人の得意分野や希望も含めて丁寧に対話を重ね、双方が納得できる形に整えていくことが重要です。
シニア層のデジタル適応力が必要
今やどの職場でも、パソコンやタブレットを使った業務が当たり前になってきました。そうなると、どうしても「デジタル慣れ」が求められる場面が増えてきます。シニア世代の中には、こうしたツールに不慣れな方がいて、最初は戸惑うことがあるかもしれません。
ただ、少しずつでも使えるようになれば、できる仕事の幅が広がりますし、自信にもつながっていきます。大切なのは「苦手=できない」と決めつけず、サポートする気持ちで向き合うことかもしれません。
シニア社員の雇用を成功させるポイント
シニア社員の雇用が注目される一方で、実際に働いてもらうとなると、どう向き合えばいいのか迷うこともあるでしょう。しかし、ちょっとした配慮や工夫で想像以上にうまくいくケースも少なくありません。
たとえば能力の見極め方、健康面への気遣い、周囲との関係づくりなど、ポイントを押さえておけばお互いにとってプラスになることも。ここでは、シニア雇用を成功させるために大切な9つの視点をご紹介します。
①シニア社員の能力を把握する
シニア世代の方と一緒に働くときは、相手の強みに関心を持ってみることがポイントになってきます。年齢やこれまでの肩書きだけでは、その人の本当の力はなかなか見えてきません。
たとえば、現場でのちょっとした変化にすぐ気づけるような感覚を持っている方がいれば、周囲の人を自然とまとめる力に長けている方もいます。一人ひとりに違った良さがあり、それを活かせる場面は必ずあるものです。
そのためまずはしっかり話を聞いてみること。そこからその人らしさをちゃんと見つけてあげることで、無理なく力を発揮してもらえる場面が増えてくる可能性があります。
②シニア社員の健康状態に配慮する
シニア社員が無理なく働けるようにするには、やはり健康面の配慮が欠かせませんね。年齢を重ねると、若い頃とは違って体調の波も出てきたりします。
しかし、一律に制限するのではなくて、「その人にとってちょうどいい働き方」を一緒に探すような姿勢が大切なのかもしれません。定期的な体調の確認や、勤務時間・業務内容の柔軟な調整など、ちょっとした配慮が長く安心して働ける職場づくりにつながります。
③安易に単純作業に従事させない
シニア社員を受け入れるとき、つい「体に負担の少ない仕事を」と考えて、単純作業をお願いしたくなることがあるかもしれません。しかし、それだけだと本人のやりがいや意欲が続かないこともあります。
これまで積み上げてきた経験や知識を考えると、もっと違った活かし方があるはずです。難しいことを任せるというよりは、「この人だから頼める仕事」を見つけていく感覚が大事かもしれません。仕事の内容にも、ちょっとした“納得感”が必要なのです。
④リカレント教育やスキルアップ研修を導入する
シニア社員といえど、学ぶ意欲がある方はたくさんいます。むしろ、環境さえ整えば「もう一度スキルを磨きたい」と思っている人は少なくありません。ただ、やり方や内容が合っていないと、せっかくの機会が活かしづらくなってしまいます。
リカレント教育や研修と聞くと堅苦しい印象がありますが、現場で使える実践的な内容であれば、前向きに取り組んでもらえることも多いです。年齢に関係なく、成長できる場があること自体が、働くモチベーションにつながるのかもしれません。
⑤評価や報酬の適正化を行う
シニア社員の評価や報酬の設定は、実は意外と難しいものです。これまでの実績を踏まえつつ、今の業務内容や成果とどうバランスを取るか?感覚的な部分も多く、正解は一つではありません。
大切なことは、本人が納得できる形であることと、周囲とのバランスもちゃんと取れていること。その人の働き方や役割に合わせて見直していく姿勢が、結果的にモチベーションにつながっていくのです。
⑥シニア社員が望む場合に兼業を可能にする
シニア社員の中には、「ほかの仕事にも挑戦してみたい」と考える方がいます。昔は“兼業=NG”という風潮が一般的でしたが、最近ではその考え方が徐々に変わりつつあります。副業として社会と関わり続けたいとか、趣味を仕事にしたいという声も。
会社として柔軟に対応できれば、結果的に本人の満足度も高まりやすくなります。もちろん条件やルールの整理は必要ですが、対話を重ねながら進めていけると、双方にとって納得のいく形を見つけられるケースが多くあります。
⑦孤立しない職場環境を作る
新しい環境に入ると、年齢に関係なく誰でも不安になるものですが、シニア社員の場合はその傾向が強くなることがあります。気づけばひとりで仕事をこなしていて、周囲との距離が広がってしまうのは避けたいものです。
そんな状況を防ぐには、ちょっとした声かけや、雑談のきっかけづくりが大切です。無理に輪に入ってもらうのではなく、自然に関われる空気をつくること。そうした積み重ねが、「ここにいていいんだ」と感じてもらえる職場につながっていくのです。
⑧社員の意識改革をする
シニア社員を受け入れるうえで、制度や環境を整えるだけではうまくいかないこともあります。実は、まわりの社員の意識も大事なこと。「年上の人にどう接すればいいか分からない」「教えるのが逆に気を使う」そんな戸惑いがあると、ギクシャクしてしまう場面が出てきます。
だからこそ、お互いに歩み寄れるような意識づくりが必要なのかもしれません。シニアだから若手だからというのではなく、「同じ仲間」として自然に関われる空気を作ることが必要です。
⑨若手社員のモチベーションにも配慮する
シニア社員を受け入れる体制が整ってきたとしても、若手の気持ちに目を向けることは忘れたくないところです。たとえば「いつか自分も上に行けるのかな」と思っていたポジションに、ベテランが長く残っていたら、ちょっと気持ちが揺れることがあるかもしれません。
大切なのは、それぞれの世代がちゃんと役割を持ち、自分の成長が実感できるような環境を作ること。年齢に関係なく、誰にとっても“ここで働く意味”が感じられる職場が理想なのかもしれません。
シニア社員の活用事例5選
「シニア社員を活かしたいけど、他社はどうしてるんだろう?」そのような声をよく耳にします。制度だけ整えてもうまくいくとは限らず、ヒントになるのはやっぱり“リアルな事例”。
ここではソニーやダイキン、大和証券など、実際にシニア人材を戦力として活用している企業の取り組みをご紹介します。ちょっとした工夫や視点の違いが、大きな成果につながっていることも。まずはその“現場のリアル”をご紹介いたします。
ソニー
ソニーでは、シニア社員の活躍を支える「Career Canvas Program」を展開中。特徴は、異動せずに他業務を兼務できる柔軟な仕組みです。
経験豊かな人材が若手の育成や新しい分野にも関わることで、自分のキャリアに再び火を灯せるのです。そんな姿も珍しくありません。人生百年時代、自分の道は自分で描く。ソニーの事例から、シニア活用のリアルが見えてきます。
タニタ総合研究所
タニタ総合研究所では、「健康」をテーマに長年蓄積された経験や視点を活かし、シニア人材が研究や提言の場で活躍しています。注目したいのは、“再雇用”ではなく、“新しい役割を担う専門人材”として迎えている点。
過去の実績だけでなく「今この瞬間に必要とされる知恵」としての価値を見出しているのが印象的です。年齢に関係なく、専門性や知的好奇心を活かす場があることで、本人も前向きに働けるのです。
ダイキン工業株式会社
ダイキン工業では、シニア社員が70歳まで活躍できる再雇用制度を整備。成果に応じた報酬体系も導入し、「働きがい」にもしっかり応えています。
実際に、定年後も約9割が再雇用され、国内外の現場で経験を活かしながら活躍されています。AIやIoTとの融合で業務革新を牽引する姿も。年齢にとらわれず挑戦し続ける環境があり、そこにこれからの人材活用のヒントが詰まっています。
大和証券
大和証券では、シニア社員が“もう一度、自分のキャリアを描ける”環境づくりに早くから取り組んできました。2013年には、意欲と能力のある人が年齢に関係なく働ける「上席アドバイザー制度」を導入。
介護と仕事の両立にも配慮し、休職制度や在宅勤務など柔軟な働き方も整えています。シニア世代が自分らしいゴールを描ける、その背中をそっと後押しする姿勢が印象的です。
オムロン エキスパートリンク株式会社
オムロン エキスパートリンク株式会社では、定年後も働きたいという社員の思いを尊重し、希望者が再び活躍できるしくみを整えています。特に長年の経験を活かした“人材育成”や“技術指導”の分野で活躍されている方が多く、人材不足に悩む中小企業とのマッチングを行っているのです。
単なる再雇用ではなく、個人の強みや希望を汲み取った“その人らしい働き方”が実現できているのがポイントです。無理なく、自然体で活躍できる環境づくりのヒントが詰まっています。
シニア社員の採用ならキャリア65にお任せ
ここまでシニア社員の活用事例も含めて、シニア社員を雇用するメリット・デメリット、成功させるポイントをご紹介してきました。しかし、シニア人材の活用に関心はあっても、どう進めればいいか分からないと感じている声も少なくありません。
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