1. プラス10(+10)とは?──健康寿命を延ばすための新習慣
「プラス10(プラス・テン、+10)」とは、今の生活に“1日10分間の身体活動を追加する”ことで、健康寿命を延ばそうという国の推進する健康習慣です。厚生労働省が2013年に提唱し、特に中高年から高齢者に向けた健康増進のキーワードとして注目されています。
この「身体活動」は運動に限りません。日常の掃除や買い物、通勤や庭仕事、階段の上り下りなど、軽い動きでも継続すれば効果ありとされており、「わざわざ運動する時間がない」という方でも取り入れやすいのが特徴です。
実際に、厚生労働省の報告によれば、「1日10分間の身体活動を追加することで、死亡リスクを約3.2%減少させる可能性がある」とされています(出典:厚生労働省「健康日本21(第二次)」)。
高齢期に入るとどうしても運動量が減少し、筋力低下や体力の衰えにつながります。プラス10は、そうした体の変化を緩やかにし、自立した生活を延ばす助けになるという意味で、多くの医療機関や地域支援センターでも推奨されているのです。
2. なぜ「+10」がシニア世代に効果的なのか?
70代に差しかかると、多くの人が感じるのが「体力の低下」や「筋力の衰え」です。実際、加齢に伴い、何もしなければ1年に1%程度の筋肉が減るといわれています。これは日常動作の負担が増え、転倒や要介護リスクが高まる原因にもなります。
そこで注目されているのが、「プラス10」のアプローチです。
「+10」は、今ある生活にほんの少し動きを増やすだけ。高齢者にありがちな「やらなきゃ」というプレッシャーではなく、「できることを+10分する」だけなので、取り組みやすく、継続しやすいのがポイントです。
たとえば、以下のような行動も立派な「+10」です。
・掃除機をかける時間を5分延長
・スーパーまで徒歩で行くようにする
・バス停を1つ手前で降りて歩く
・自宅で足踏み運動を10分する
これらの小さな習慣が、筋力の維持や血行促進、転倒防止につながり、結果として自立した生活を長く維持することができます。
また、軽度な運動や活動を継続することで、気分が前向きになるというメンタル面での効果も実証されています。たとえばウォーキングなどの有酸素運動は、うつ予防にも効果があるという研究が多くあり、閉じこもりがちな高齢者の気分転換としても非常に有効です。
つまり「+10」は、体だけでなく心の健康にも働きかける、シニア世代に最適な健康法といえます。
3. 高齢者でも無理なく実践できる「プラス10」の方法とは
「プラス10」と聞くと、「毎日10分も運動しなきゃいけないの?」と構えてしまう方もいるかもしれません。でも心配は不要です。+10は日常の中に自然に取り入れることができる身体活動であり、特別なトレーニングやスポーツジム通いを前提としていません。
以下は、70代の女性でも無理なくできる具体的な「プラス10」の実践例です。
● 家の中でできる+10
・テレビを見ながらその場足踏み(10分)
・掃除を1部屋多くする
・植木に水やり+軽く剪定
・椅子に座って足を前後に動かす「足のばし運動」
● 外出ついでの+10
・買い物に行くときは徒歩に切り替える
・エレベーターを使わず階段を使う(1〜2階まででOK)
・公園まで散歩してベンチで一休み
● 人とのつながりも「+10」
・近所の人にあいさつしながらウォーキング
・地域の体操クラブや防犯パトロールに参加
・孫と一緒に遊ぶ、散歩する
つまり、「+10」はわざわざ“運動の時間”を確保しなくても、生活の中でちょっと動きを増やすだけでOKなのです。そしてそれが継続できる仕組みこそが、「健康寿命を延ばす」ことに直結します。
また、スマホの歩数計アプリや活動量計を使えば、自分の動きを「見える化」できるので、モチベーション維持にもつながります。「昨日より多く歩けた!」という小さな達成感が、継続のコツになります。
4. 「+10」を続けることで得られる働く力とやりがい
「プラス10」は単なる健康法ではなく、シニアが“働き続ける力”を維持するための習慣としても大きな意味を持ちます。
高齢になると、「ちょっと動くだけで疲れる」「長時間立っているのがつらい」など、体力や持久力の低下が理由で働くことをあきらめる方も少なくありません。しかし、「+10」のように日常的に軽い活動を増やすことで、筋力や体力がじわじわと維持・向上し、仕事を続ける基盤が整っていきます。
たとえば、以下のような効果が期待できます。
・長時間の立ち仕事に耐えられるようになる
・歩くスピードが上がり、外出や通勤が楽になる
・階段や段差に不安がなくなり、移動範囲が広がる
こうした体の変化が、シニア世代にとっての「働く自信」につながり、「自分はまだまだ現役」と思える大きな力になります。
さらに「+10」は、ただの体力づくりにとどまりません。活動を増やすことで自然と人との交流も増え、生活にリズムや役割が生まれます。それがやがて「社会とのつながり」や「自分の存在意義」となり、やりがいを感じるきっかけにもなります。
実際に、地域の清掃や防犯パトロール、配達補助の仕事をしているシニアの中には、「仕事があるからこそ健康でいられる」「人と会話する機会が増えて笑顔が増えた」と話す方が多くいます。つまり、「+10」は単に長生きするためでなく、“楽しく元気に働く”ための手段でもあるのです。
5. 実際に+10を取り入れて変わった!シニアの体験談
実際に「+10」を生活に取り入れ、体調や働く意欲に変化を感じたシニアの声を紹介します。ここでは、東京都在住の70歳女性・Aさんの実例をもとにご紹介します。
● Aさん(70歳女性/元・小売業店長/現在:パート勤務)のケース
60歳で定年を迎えたAさんは、当初「やっと自由な時間ができる」と感じていましたが、3年ほど経った頃から生活に張り合いがなくなり、外出も減って体力が落ちていることを自覚するようになりました。
ある日、地域の保健師に勧められたのが「プラス10」。最初は半信半疑でしたが、「1日10分ならできるかも」と、毎朝の家事後にラジオ体操と近所のスーパーまでの散歩(片道約7分)を始めました。
● 実践して1か月後の変化
・階段の上り下りが楽になった
・肩こりや腰痛が軽くなった
・外出の機会が増えて、気持ちが前向きに
「動くだけでこんなに変わるんだと驚きました」と語るAさん。その後、知人の紹介で近所の配食サービス会社のパート勤務に応募。現在は週3回、地域のお宅にお弁当を届けながら「ありがとう」と言ってもらえるのが喜びだといいます。
● Aさんのメッセージ
「+10をきっかけにまた社会とつながれた。もう“ただの老後”じゃなくて、毎日に役割があるって嬉しいことですね。」
このように、「+10」は高齢者の心と体にポジティブな影響を与え、新たな社会参加や就業への第一歩となる力を秘めています。
6. まとめ:毎日の+10が第二の人生を豊かにする第一歩に
「健康寿命を10年延ばす」──それは夢のように聞こえるかもしれませんが、「+10」というシンプルな習慣から、その可能性は十分に広がります。
特にシニア世代にとって、「ただ長生きする」のではなく、“自分らしく、元気に、社会とつながって生きる”ことこそが本当の意味での健康寿命ではないでしょうか。
+10のよさは、次の3点に凝縮されます。
1.続けやすい:運動が苦手でも日常生活の中で無理なく取り入れられる
2.体が変わる:筋力・体力の維持、転倒予防、持久力のアップ
3.心も変わる:社会参加への意欲、役割の実感、人とのつながり
仕事を探している方にとっても、「+10」を取り入れることで体力に自信がつき、より前向きに行動できるようになります。これは、求人に応募する勇気や面接でのアピールにもつながっていく、大きな原動力です。
高齢になってから新しいことを始めるのは勇気がいりますが、最初の一歩は“たった10分の動き”でいいのです。その一歩が、第二の人生をより豊かに、より自分らしく彩るきっかけになります。
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