1. コグニサイズとは?注目される背景と基本情報
高齢化が進む現代において、「健康寿命」を延ばすことは大きな社会的課題の一つです。特に高齢者の間では、運動不足と認知症のリスクが深刻視されており、それらを同時に予防・改善する手段として注目を集めているのが「コグニサイズ」です。
「コグニサイズ(Cognicise)」とは、認知(Cognition)と運動(Exercise)を組み合わせた造語で、簡単にいえば“脳と体を同時に鍛える”新しい健康習慣です。国立長寿医療研究センターによって開発されたこのメソッドは、歩きながら計算したり、手足を動かしながら言葉を発したりすることで、脳と身体の両方に刺激を与え、認知機能の維持や向上を図ることを目的としています。
たとえば、ウォーキング中にしりとりをしたり、数を数えながら足踏みをするようなシンプルな内容でも効果があるとされており、日常生活に無理なく取り入れやすいことも人気の理由の一つです。
このような背景から、コグニサイズは全国各地の自治体や高齢者施設でも取り入れられ始めており、健康づくりだけでなく、地域のつながりを強化するツールとしても期待されています。
2. コグニサイズの定義と仕組み
コグニサイズは、国立長寿医療研究センターが開発した「認知課題」と「運動課題」を同時に行う健康プログラムです。その目的は、脳の前頭葉を中心とする認知機能の活性化と、身体機能の維持・向上を同時に促すことにあります。
● コグニサイズの基本構造
コグニサイズの基本的な構造は以下の通りです。
・有酸素運動(ウォーキング、足踏みなど)
・認知課題(計算、しりとり、記憶再生など)
この2つを同時に実行することがポイントです。たとえば、「3の倍数を言いながら足踏みをする」「歩きながら、動物の名前を順番に言っていく」などが典型的な例です。運動だけ、脳トレだけではなく、“同時に行う”ことで脳の司令塔である前頭前野がより活性化されるという研究結果が報告されています。
参考:国立長寿医療研究センター「コグニサイズとは」
● シニアにも優しい工夫
高齢者が無理なく行えるように、強度は軽めの運動で構成されているのが特徴です。椅子に座ったままでもできるコグニサイズもあり、体力に不安がある方でも取り組みやすくなっています。
また、グループで取り組むプログラムも多く、会話や笑顔が自然と生まれる設計になっているため、身体と脳だけでなく「心」も元気にしてくれる仕組みです。
3. なぜ今、シニア世代に注目されているのか
近年、コグニサイズがシニア世代に広く注目されるようになった背景には、いくつかの社会的・医学的な要因があります。
● 認知症予防への関心の高まり
厚生労働省の推計によると、2025年には高齢者の約5人に1人が認知症になるとされています(※出典:厚生労働省「認知症施策の推進」)。この現実に、多くのシニアが「できることなら予防したい」と考え、生活の中でできる認知症対策を模索しています。
そんな中、「認知症を予防するために“何かを始めたい”」というニーズに応える形で、コグニサイズは注目を集めています。特別な器具も場所も不要で、自分のペースで続けられる点が、シニア層の心に響いています。
● 社会とのつながりを持ちたいという願い
また、退職後や子育て終了後に訪れる“孤立感”も、シニア世代の大きな課題です。コグニサイズの多くはグループ活動形式で実施されており、同世代との交流の場としても機能しています。
日々の会話や笑いを通して得られる「社会的つながり」は、うつ予防や自己肯定感の向上にもつながるといわれています。実際に、参加者の多くが「毎回、仲間に会えるのが楽しみ」「自分にもできることがあると感じた」と話しており、生活への前向きな変化を実感しています。
● 自立した生活を続けたいという思い
シニア世代が仕事や趣味、社会貢献などを続けるためには、「元気な体と頭」が不可欠です。コグニサイズは、医療や介護に依存しない生活を送る「健康寿命の延伸」に大きく貢献するアプローチとして、多くの専門家からも支持されています。
4. コグニサイズの効果──脳と体へのうれしい変化
コグニサイズは、単なる運動でも、単なる脳トレでも得られない、“同時刺激”による総合的な健康効果が得られる点が大きな特徴です。ここでは、主に2つの側面──「脳への効果」と「身体への効果」に分けてご紹介します。
認知機能の維持・向上につながる理由
コグニサイズが脳に良いとされる理由は、前頭前野への複合的な刺激にあります。前頭前野は、「判断力」「集中力」「記憶力」などを司る脳の司令塔。運動しながら考えたり、判断したりすることで、この部分が活発に働き、脳全体のネットワークを強化します。
実際、国立長寿医療研究センターが行った実証実験では、週2回・6か月間のコグニサイズ実施により、注意力や記憶力が有意に改善されたという結果が報告されています。
特に、高齢期に起こりやすい“気づかないうちに進行する認知機能の低下”に対し、予防的に働くとされており、「今は問題ないけど将来が不安」という方にも効果が期待できます。
筋力やバランス感覚の改善で転倒予防にも
身体面でもうれしい効果が報告されています。コグニサイズで取り入れる軽い有酸素運動(例:その場足踏み、手足を動かす運動など)は、下半身の筋力やバランス感覚を養うのに最適です。
加齢とともに筋肉量は減少し、特に転倒や骨折のリスクが高まりますが、こうしたリスクを軽減するためにも、継続的な軽運動は欠かせません。コグニサイズでは「脳が指示し、体を動かす」という流れを繰り返すため、“動きのキレ”や“反応速度”の向上にもつながります。
その結果として、「つまずきにくくなる」「姿勢が良くなる」「歩くのが楽しくなる」といった日常生活の変化を実感できる方も多いのです。
5. 今日から始める!シニアでも無理なくできるコグニサイズのやり方
コグニサイズの魅力は、「特別な道具や場所がなくても、今日からすぐに始められる」という手軽さにあります。ここでは、自宅で気軽にできる実践例と、地域・オンラインで参加できる方法をご紹介します。
自宅でできる簡単なコグニサイズ3選
以下は、自宅で1人でも安全に取り組める簡単なコグニサイズです。
1. 足踏みしながらしりとり
・その場で足踏みをしながら、「くだもの」や「動物」などのテーマでしりとりを行います。
・脳の言語処理と運動を同時に行うことができ、軽く汗ばむ程度の有酸素運動にもなります。
2. 数を数えながらスクワット
・ゆっくりとスクワットを行いながら、1〜30までの数字を3の倍数だけ声に出すなどの工夫を加えると、集中力が鍛えられます。
・回数は無理のない範囲でOK。慣れてきたら逆順や奇数などに変更して負荷を調整します。
3. 手拍子リズムと記憶ゲーム
・「パン・パン・グー・グー」といった手の動きを覚えて実行し、その順番を増やしたりランダムに入れ替えたりします。
・記憶力と運動の両方を刺激でき、座っていてもできるのがポイントです。
どの運動も1日5~10分程度で十分。テレビの合間や朝の習慣として取り入れることで、自然に継続できます。
地域やオンラインでの参加方法と探し方
自治体や高齢者福祉施設では、コグニサイズの教室を定期的に開催しているところも増えています。以下のような方法で情報を探してみましょう。
・市区町村の広報誌やホームページで「健康教室」「介護予防教室」をチェック
・地域包括支援センターや地域福祉センターに問い合わせる
・オンライン講座やYouTube動画で「コグニサイズ」「認知症予防運動」と検索する
最近ではZoomやLINEなどを活用した「オンライン健康教室」も登場しており、自宅にいながら複数人と一緒に運動できる環境も整ってきています。
6. 無理なく続けるコツ──楽しみながら習慣化するために
コグニサイズは、継続することでこそ効果が実感できる健康習慣です。ただし、「三日坊主になりやすい」「一人だと続かない」という声も多いのが現実。そこでここでは、無理なく、楽しくコグニサイズを続けるための工夫をご紹介します。
仲間と一緒に取り組むことでモチベーションアップ
人は誰かと一緒に取り組むことで、「やる気」や「継続力」が高まりやすくなります。特にシニア世代にとっては、社会的なつながりが継続のモチベーションになることも。
・ご近所の友人を誘って、週に1回“コグニサイズの日”を決める
・地域の健康サークルや介護予防教室に参加する
・オンラインで“コグニサイズ仲間”とつながる
こうした仕組みをつくることで、「誰かが待っているから行こう」「みんなでやると楽しい」という気持ちが芽生え、無理なく継続できるようになります。
目標設定と記録で達成感を味わう
コグニサイズに限らず、習慣化のために重要なのは「目標」と「記録」です。目に見える成果があると、人は自然と続けたくなります。
・週3回実施を目標にカレンダーにチェックを入れる
・1か月続いたら、自分に小さなご褒美を
・数字や記録をスマホや手帳にメモする(歩数や回数など)
小さな成功体験を積み重ねることで、「私にもできる」「続けるのが楽しい」という気持ちが育ちます。
また、家族に宣言するのも効果的です。「今日もやったの?」「すごいね!」といった何気ない声が、次への原動力になります。
まとめ:健康と笑顔を手に入れる“第一歩”としてのコグニサイズ
年齢を重ねるごとに感じる体や心の変化──それをただ受け入れるだけでなく、「今できることから始める」という前向きな一歩が、これからの人生を大きく変えてくれます。
コグニサイズは、脳と体を一緒に動かすことで、認知機能の維持や筋力の強化を促し、さらに日々の生活にリズムや張り合いを与えてくれるメソッドです。特別な知識や道具は不要で、シニア世代でも無理なく、楽しく続けられるのが魅力。さらに、仲間と取り組むことで社会的つながりも得られ、「孤立」や「不安」といった感情を遠ざけてくれる力もあります。
仕事やボランティア、趣味を通じて新しい生活を築こうとしている方にとって、コグニサイズはまさに“健康づくりの土台”。この習慣が、いきいきとした毎日と、もう一度社会と関わる喜びを支えてくれるでしょう。
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