採用戦略の見直しは現場目線から!60代が活躍する職場の実態に学ぶ

【企業様向け】シニア採用

1.なぜ今、“現場目線”での採用戦略見直しが求められているのか

人手不足の深刻化と従来の採用手法の限界

近年、日本企業の多くが直面しているのが「慢性的な人手不足」です。総務省の労働力調査(2024年)によると、15~64歳の生産年齢人口は1995年のピークから年々減少し続け、今や全体の6割を下回る水準となりました。これにより、中小企業を中心に「募集を出しても人が来ない」「せっかく採用してもすぐ辞めてしまう」といった課題が日常的に発生しています。

その一方で、これまでの採用手法は若手中心の一括採用モデルに依存している企業が少なくありません。たとえば、フルタイム・週5日勤務の正社員を前提とした募集は、働き方の多様化が進む中でミスマッチの原因となっており、特に「60代以降の経験者層」には届きにくい仕様になっています。

人手不足の根本的な解決には、単なる「数合わせ」ではなく、年齢やライフスタイルを超えた「戦力としての人材確保」が不可欠です。そのためには、現場の実態を把握した上で、採用戦略を抜本的に見直す必要があります。とりわけ、経験豊富な60代人材は即戦力となり得る存在であり、その活用こそが持続可能な組織づくりの鍵となります。


現場から上がるリアルな声とは?

採用活動を人事部だけで完結させていないでしょうか。実際に人手不足の影響を強く感じているのは、現場で働くリーダーやベテランスタッフたちです。たとえば、製造業や小売業、介護現場では、「新人教育に時間が割けない」「欠員の補充が間に合わず休憩も取れない」といった切実な声があがっています。こうした声を無視して採用活動を続けても、結果として定着しない、戦力化しない、という悪循環を生み出してしまいます。

また、現場の担当者は「この業務なら時短勤務でも十分対応できる」「マニュアルがあるから高齢者でも即戦力になる」といった、実際の運用に即した採用条件のアイデアを持っていることが多いのです。こうした知見を採用戦略に反映させれば、これまで採用ターゲットから外していた60代人材に対しても、有効なアプローチが可能になります。

現場の声を吸い上げ、業務を見直し、60代でも無理なく働ける環境を整えることは、単なる“人員補充”ではなく、“組織力の底上げ”につながります。採用活動のスタート地点を「人事目線」ではなく「現場目線」に置くことで、より実効性の高い戦略を打ち出せるのです。


2.60代人材が支える現場の実態とは

日常業務の安定化に貢献するシニアの存在

現場では、60代以上のシニア層が業務の安定化に欠かせない存在になっています。たとえば、物流センターではピッキングや仕分け作業、介護現場では見守りや話し相手、小売店舗では品出しや棚の整理など、体力的な負担が少ない業務を中心に、多くの60代が活躍しています。

こうした業務は、必ずしも高スキルを要するわけではありませんが、「安定的に」「責任感を持って」こなすことが求められるポジションです。若年層のような転職志向が少ない60代は、勤怠も安定し、経験に基づいた柔軟な対応力を発揮できるため、現場ではむしろ“頼れる人材”として重宝されています。

実際、厚生労働省の「高年齢者雇用状況等報告(令和5年)」によれば、60歳以上の高齢者を雇用している企業の割合は約80%に達しており、特に中小企業では「人手不足解消に効果がある」とする評価が多く聞かれます。つまり、60代人材は補助的存在ではなく、業務の骨格を支える存在となっているのです。


若手との連携で職場のバランスが取れる理由

60代の人材が職場で果たす役割は、単なる作業要員にとどまりません。若手社員との“橋渡し”として、職場全体のバランスを取る存在としても注目されています。特に経験豊富なシニア層は、場の空気を読み、柔らかく指導しながら若手を支える“緩衝材”のような役割を果たすことができます。

たとえば、飲食店や量販店では、20代の新人が戸惑いやすい場面で、60代のスタッフが「大丈夫だよ」「こうやるとやりやすいよ」と自然にフォローに入る姿が見られます。こうしたやり取りは、マニュアルや研修ではカバーしきれない“人間関係の潤滑油”として機能します。

また、60代の従業員は、自らが主役になるよりも「縁の下の力持ち」として動くことをいとわない傾向があり、チーム全体の空気を落ち着かせる効果もあります。若手が仕事に慣れるまでの“受け皿”となり、結果的に離職防止にもつながるのです。

現場に多様な年齢層がいることで、視点の偏りも防げます。年齢もキャリアも異なるメンバーが同じ目標を共有することで、チーム全体が成長しやすい環境が生まれます。こうした相互補完の関係が築けるのは、60代人材ならではの強みと言えるでしょう。


3.シニア人材を活かすために企業が見直すべきポイント

業務分解と適材適所の再設計

60代人材の戦力化に成功している企業の多くは、まず「業務分解」から着手しています。これは、現場で行われている業務を細かく洗い出し、それぞれの作業内容やスキル要求を整理し直す工程です。たとえば、ある小売業では「レジ操作」「接客」「品出し」「在庫管理」といった一連の業務を分解し、シニアには「品出し」や「在庫チェック」など体への負担が少なく、かつ集中して取り組める業務を任せるよう再設計しました。

このように業務を切り分けることで、フルタイム勤務を前提とせず、1日3〜4時間の短時間勤務でも十分にパフォーマンスを発揮できる職場が実現します。また、体力に不安があるシニアでも安心して働けるため、採用母集団の拡大にもつながります。

業務分解の副次的な効果として、「非効率な作業」や「属人的な業務」も可視化され、業務改善のきっかけにもなります。つまり、シニア採用は単なる人材補充ではなく、業務全体の最適化を促す“経営改善のチャンス”でもあるのです。


就業環境の整備と柔軟な働き方の導入

シニア人材の定着と戦力化を進めるうえで、業務内容の見直しと並行して重要なのが「就業環境」の整備です。特に60代以降の人材は、体力面や家庭事情、健康上の都合などから、柔軟な働き方を求める傾向があります。こうしたニーズに応えることで、より多くの応募者を集め、継続就労を促すことができます。

たとえば、週2〜3日の勤務や、午前中だけ・夕方だけの短時間勤務を設定することで、無理なく働き続けられる環境を整備している企業があります。実際、公益財団法人 介護労働安定センターの調査(2023年)でも、「柔軟なシフト対応」「体に負担の少ない仕事内容」がシニア層にとって就労継続の重要な条件であることが示されています。

また、休憩室や更衣スペースのバリアフリー化、空調設備の整備、椅子付き作業の導入など、物理的な働きやすさの配慮も、シニア層の定着率を左右する大きなポイントです。さらに、スマホやタブレットの活用で勤怠管理や業務連絡を簡略化することで、デジタルに不慣れな方でもスムーズに業務に入れるよう支援する企業も増えています。

「シニアだから特別扱いする」ということではなく、「誰もが働きやすい環境を整える」ことで、結果的に多様な人材が活躍できる土壌が生まれるのです。


4.現場を起点に進める!シニア採用の具体的な方法と媒体選び

応募が集まる求人の書き方と募集要件の工夫

シニア採用では、求人内容の表現一つで応募数が大きく変わります。60代以上の求職者は、「自分にできるか」「無理なく働けるか」を慎重に判断する傾向が強く、若年層と同じ感覚で募集文を書くと応募に結びつきません。

たとえば、「未経験歓迎」「シニア活躍中」「週2日〜OK」「1日4時間から」など、安心して応募できる要素を具体的に記載することが重要です。さらに「座り作業あり」「重量物なし」「研修充実」など、身体的・精神的な不安を取り除く情報を積極的に盛り込むことで、応募のハードルは大きく下がります。

また、「65歳以上も活躍中」「最高年齢は○歳」といった情報は、年齢制限がないことの明示となり、安心感を与える強力なメッセージになります。募集要件に関しても「○○ができる方」より「○○に興味がある方」とするなど、間口を広げた表現が効果的です。


シニア層に届く求人媒体の選び方と活用法

シニア層に向けた採用では、使用する媒体の選定が極めて重要です。多くのシニアはハローワークや新聞折込、地域の広報紙など、従来型の媒体を好む傾向があります。一方、最近ではスマホを利用する60代も増加しており、インターネット求人への親和性も高まりつつあります。

特に注目すべきは、シニア専門の求人サイトです。たとえば「キャリア65」など、60代以上に特化した求人メディアでは、検索条件や仕事内容の表記もシニア目線で最適化されており、求人が届きやすくなっています。一般求人サイトでは埋もれてしまうシニア向けの仕事も、専門媒体なら高いマッチング率が期待できます。

さらに、地域のシニア活動団体やシルバー人材センター、自治体の就労支援窓口との連携も効果的です。オンラインとオフラインの両方から情報発信することで、幅広い層への訴求が可能になります。


定着率を高めるための選考・受け入れの工夫

採用後の定着を考えるうえで重要なのは、「選考時点でのすり合わせ」と「初期のフォロー体制」です。面接では一方的に質問するのではなく、業務内容や期待される役割について丁寧に説明し、不安や疑問をしっかり解消することが求められます。

また、健康面や生活スタイルについても柔軟にヒアリングし、勤務時間や業務内容の調整が必要であれば、現場と連携して対応できる体制を作りましょう。受け入れ後は、数日間の「慣らし期間」を設けることで、不安なく業務に入ってもらうことができます。

職場の雰囲気になじめるよう、紹介カードや歓迎メッセージを用意する企業もあります。こうした配慮が、「ここでなら続けられる」と感じてもらえる安心材料になります。


5.まとめ:60代人材の活用で組織に持続力を

現場の声を取り入れた採用が組織を強くする

60代人材の活用は、単なる人手不足の“穴埋め”ではなく、組織の安定と持続力を支える重要な戦略です。これまでの「若手中心・フルタイム前提」の採用モデルでは見逃されてきた、豊かな経験と安定した勤務態度を持つ人材こそ、現場では本当に必要とされています。

そのためには、人事部門が独自に採用計画を立てるのではなく、現場の課題やニーズを丁寧にヒアリングし、「誰が、どの業務を、どの時間帯に担えるか」という具体的な視点から人材戦略を練り直す必要があります。

現場目線の採用活動は、ミスマッチを防ぎ、離職率の低下にもつながります。そして多様な年齢層が協働する職場は、若手にとっても学びが多く、風通しのよい環境となります。結果として、組織全体の生産性と定着力が高まり、企業の競争力強化にも寄与するのです。


まず取り組むべき第一歩とは?

最初の一歩としておすすめなのは、「業務の洗い出しと分解」です。そこから「この業務は短時間勤務でも対応できるか」「経験が活かせるポジションはあるか」といった観点で再設計を行いましょう。そして、実際にシニア向け媒体を活用し、現場の声を反映させた求人を出してみることで、小さな成功体験を積むことができます。

変化を恐れず、現場とともに採用戦略をアップデートしていくことが、これからの企業にとって不可欠です。60代人材の活用は、すでに多くの現場で成果を生み出しています。今こそ、貴社の現場にも“現場目線”の変革を。

シニア人材の採用を本気で進めたい企業様へ。現場目線で活用できる求人サイト「キャリア65」をご活用ください。

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