1.職業訓練受講給付金とは?
主にどんな人が対象?シニアも対象になる理由
職業訓練受講給付金は、就職を希望する求職者が職業訓練を受講する間、一定の生活支援を受けられる制度です。厚生労働省が実施する「求職者支援制度」の中核を成しており、主に収入の少ない無職の人が対象となっています。
この給付金の魅力は、年齢を理由に対象外とされない点にあります。実際に、70代の高齢者でも以下の条件を満たせば受給可能です。対象年齢が明確に制限されていないため、「まだ働きたい」「新しいスキルを身につけて再就職したい」と考えるシニア層にとっては、大きなチャンスといえます。
ハローワークでは、就職意欲と受講の必要性があると判断されれば、シニア層にも積極的に訓練の案内や申請サポートを行っています。現在は高齢者の就業支援が国を挙げて推進されており、その流れの中で、こうした給付金制度がより身近になってきています。
加えて、受講中の訓練はパソコン操作や介護・清掃・接客など、シニア層が実際の仕事に活かしやすい内容が多く、現場復帰の足がかりにもなります。定年後も“現役”でいたいと考える人にこそ、知っておいてほしい制度です。
求職者支援制度との違いとは?
職業訓練受講給付金は、「求職者支援制度」の中に含まれるひとつの給付金です。この制度には、就職に必要なスキルを身につけるための「職業訓練」と、生活支援のための「給付金支給」の2つの柱があります。
【求職者支援制度の特徴】
・対象は、主に雇用保険を受給できない人(離職後に失業手当がもらえない人)
・訓練の受講費用は原則無料
・一定の要件を満たす場合、月10万円の給付金+通所手当が支給される
・訓練期間は約2〜6ヶ月の短期型が中心
一方で、給付金の支給はすべての訓練受講者に対して行われるわけではなく、審査によって決まります。収入や資産の状況、家族の収入状況、過去の受講歴などが判断材料となります。
つまり、「訓練を受けること」と「給付金をもらえること」は必ずしもイコールではないという点に注意が必要です。特に給付金を希望する場合は、ハローワークの職業相談で意欲や必要性をしっかり伝えることが重要になります。
2.給付金をもらうための条件とは?
収入・資産・就労意欲などの主な条件
職業訓練受講給付金は、誰でも簡単にもらえる制度ではありません。国の制度である以上、給付の対象者には明確な条件が定められており、特に「生活支援を必要とする状態」であることが求められます。主な要件は以下の通りです(※2024年時点、厚生労働省の公式情報を基に整理)。
【職業訓練受講給付金の主な支給要件】
1.本人の収入が月8万円以下
2.世帯全体の収入が月25万円以下
3.世帯全体の金融資産が300万円以下
4.現在、雇用保険の失業給付などを受けていない
5.訓練開始前にハローワークでキャリア相談を行っていること
6.過去に職業訓練給付金を受給していない(もしくは一定期間経過)
7.訓練に通う意思と就職する意欲があるとハローワークが認めた場合
上記の条件にすべて合致する必要があります。特に収入や資産の要件はシビアで、たとえ本人の収入がなくても、配偶者の年金やアルバイト収入が多いと対象外になることもあります。加えて、「働く意欲の有無」も審査の大きなポイントになります。
そのため、制度の利用を考える場合は、事前に自身の収入・資産の状況を確認しておくとともに、ハローワークでしっかりと職業相談を行うことが重要です。
70代でも該当するケースは?具体例で紹介
「年齢が高いと給付金はもらえないのでは?」と心配する方も多いかもしれませんが、実際には年齢制限は設けられていません。つまり、70代でも上記の条件を満たせば給付対象となります。
たとえば、以下のようなケースでは70代でも申請が通る可能性があります。
【例1】年金暮らしの夫婦世帯(本人:70歳)
・本人は無職で年金月額6万円
・配偶者も年金月額10万円、就労なし
・金融資産は200万円
→ 世帯収入・資産要件を満たしているため、条件クリア
【例2】一人暮らしの元工場勤務男性(71歳)
・年金以外の収入なし
・就労意欲あり、清掃や警備の仕事に再就職希望
→ ハローワークで相談を経て、訓練と給付金が認められるケースも多い
なお、厚生労働省の報告書(※)でも、50代後半~70代の受講者が年々増加していることが示されています。高年齢でも、「働く意思と準備」が見られれば、年齢だけを理由に不支給とされることはありません。
※出典:厚生労働省「令和5年度公的職業訓練実施状況(実績)を踏まえた今後の方向性」
https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/content/contents/002187888.pdf
3.職業相談から受給までの流れ
ハローワークでの相談の流れ
職業訓練受講給付金の申請を始めるには、まずハローワークでの「職業相談」が出発点となります。単に書類を提出するだけでは受給できず、就職に向けた真剣な意欲を職員に伝えるプロセスが非常に重要です。
【ハローワークでの基本的な流れ】
1.来所予約と受付
最寄りのハローワークで「求職者支援制度を利用したい」と伝えます。混雑することも多いため、事前予約がおすすめです。
2.求職申込みとキャリアカウンセリング
求職票を作成し、職員と面談。就労意欲、生活状況、職業経験、健康状態などを踏まえて「職業訓練が必要かどうか」を判断されます。
3.訓練コースの提案・説明
地域の訓練校で実施されるコース(例:介護、事務、清掃など)から、希望に沿ったものを紹介されます。多くの場合、説明会の参加が求められます。
4.就職支援計画の作成
相談を踏まえ、「どの訓練を受け、どう就職を目指すか」という計画を職員と一緒に立てます。これが給付金の審査資料のひとつになります。
この段階で、ハローワークの担当者が「給付金支給が妥当かどうか」を判断します。実際には、申請者の生活状況、真剣な就職希望、訓練の必要性が確認されることが重視されます。
申請書類の提出と審査にかかる期間
職業相談を経て、就職支援計画が作成された後、正式に給付金の申請手続きに進みます。申請には以下のような書類が必要です。
【主な提出書類】
・職業訓練受講給付金支給申請書
・本人、世帯収入を確認できる資料(年金通知書、給与明細など)
・金融資産を示す通帳写し
・雇用保険の受給履歴が分かる書類(該当者のみ)
・通所経路図や交通費の計算資料 など
提出後は、ハローワークと自治体の審査を経て、支給の可否が決定されます。審査には約2〜3週間程度かかることが多く、特に新年度や訓練開始時期前は混み合うため、早めの手続きを心がけましょう。
審査が通れば、訓練開始月から毎月10万円(上限)+通所手当が支給されます。ただし、出席率などの条件を満たさないと、給付が打ち切られる場合もありますので注意が必要です。
4.給付金を受けながら選べる職業訓練の内容
人気の訓練コースとその特徴
職業訓練は、再就職に必要なスキルや知識を身につけることを目的とした公的な教育制度です。厚生労働省の「求職者支援訓練」では、受講料は原則無料で、月10万円の職業訓練受講給付金を受けながら学ぶことができます。
訓練コースは全国の委託訓練校や公的機関で開講されており、以下のような分野が人気です。
【主な人気コース】
・パソコン基礎、Word/Excel操作:事務系再就職に必須のスキル
・介護職員初任者研修:高齢化社会で需要が高い介護分野の入門資格
・ビル清掃、環境整備:体力があるシニア層に適した実務中心の訓練
・接客、販売業務スキル習得:スーパーや飲食など再雇用ニーズが高い業種
・軽作業、倉庫管理:シンプルな作業で高齢者も対応しやすい分野
訓練期間は2〜6ヶ月が主流で、週4〜5日の通所型が中心です。多くの場合、実技を含んだ実践的な内容となっており、資格取得が目指せるコースも少なくありません。
シニアにおすすめの訓練内容とは?
70歳前後の方にとって、「無理なく続けられる」「就職先が見つかりやすい」「過去の経験を活かせる」といった観点でコースを選ぶことが大切です。以下のような訓練は、シニア世代に特に人気があります。
【シニアに向いている訓練コース】
・介護、福祉サポート系
→ 資格が取得できる上、人手不足で採用率も高い。人とのふれあいを大切にしたい方に最適。
・清掃、設備管理、マンション管理系
→ 定年後に始める人が多く、時間や体力に配慮された働き方も選べる。
・IT、パソコン初級講座
→ 事務補助・受付業務などへの就職に有利。文字入力ができれば受講可能。
・就職支援、キャリア形成講座
→ 面接の受け方や履歴書の書き方など、就職活動そのものを学べる講座も。
また、最近ではオンライン訓練に対応した講座も増えており、自宅で受講できるコースを選べば移動の負担も軽減できます。訓練内容の詳細は、厚生労働省「ハロートレーニング」ポータルサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/hellotraining_top.html)でも確認できます。
まとめ:経済的不安を和らげ、学び直しの一歩を踏み出そう
定年を迎えた後も、「もう一度社会で働きたい」「少しでも家計の足しにしたい」と考える方は少なくありません。そうしたシニア世代にとって、職業訓練受講給付金は、生活の安定と再就職の両方を支えてくれる貴重な制度です。
この制度の大きな特徴は、「年齢による制限がないこと」と「生活支援と学び直しがセットで提供されること」です。月10万円の給付金は、再就職までの不安を軽減し、訓練に集中できる環境を整えてくれます。また、清掃、介護、パソコン操作など、シニアにも無理なく身につけられる訓練内容が充実しており、70代での新しいスタートも十分可能です。
申請には一定の条件があり、書類の準備やハローワークでの相談も必要ですが、その一歩を踏み出すことで、新たな働き方や役割が見つかるかもしれません。
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