学び直しで広がるシニアの可能性|リカレント教育が仕事・生きがいを変える

仕事

1.リカレント教育とは?シニア世代に必要な“学び直し”の意味

「リカレント教育(Recurrent Education)」とは、人生のあらゆる段階で繰り返し教育を受け、必要な知識やスキルを身につけていく学習のあり方を指します。1970年代にOECD(経済協力開発機構)が提唱した概念で、日本でも近年、働き方やライフスタイルの多様化に伴い、注目が高まっています。

定年後こそ“学び直し”のタイミング

リカレント教育は、若者の就職支援や中高年のキャリアアップだけでなく、シニア世代にとっても非常に有効な手段です。定年退職後、「まだ体力もあるし、社会と関わりたい」「生活費を補うために働きたい」と考える人は少なくありません。しかし、再就職の場では、新しい技術や知識の有無が採用の可否に影響するケースも。

そこでリカレント教育を通じて、パソコンスキルやビジネスマナー、介護や保育などの基礎知識を学んでおけば、シニアでも“即戦力”として社会に戻るチャンスが広がります。


「学び直し」は自己肯定感を高める

シニア世代の学び直しは、単に再就職のためだけではありません。新たな知識を得ることそのものが、自分自身の成長や達成感につながります。
ある調査(内閣府「高齢者の生活と意識に関する調査」2022年)によると、「日々の生活に張りがある」と感じている高齢者の多くは、趣味や学習など“自分の時間”を大切にしている傾向があります。


キーワードは「生涯学習」

「学びは若い人のもの」という考え方はすでに過去のものです。今は“人生100年時代”ともいわれ、60代・70代になってから大学に通う人や、資格取得に挑戦する人も増えています。こうした動きは、国の教育政策としても支援が進められており、各自治体でも「生涯学習講座」や「市民大学」などの取り組みが広がっています。


2.なぜ今、シニアにリカレント教育が注目されているのか

少子高齢化が進む日本社会では、“シニア世代の活躍”が社会全体の活力維持に欠かせない存在となっています。その中で「リカレント教育」は、単なる再就職の手段ではなく、社会参加・生涯現役を支える重要な基盤として再評価され始めています。

背景にあるのは「働きたい高齢者の増加」

厚生労働省の「高年齢者雇用状況等報告」(2023年)によると、65歳以上で働いている人は約930万人。これは過去最多で、今後も増加が予想されています。
働く理由としては、

・「収入を得たい」
・「健康を維持したい」
・「社会とつながっていたい」

などが挙げられ、仕事=生活の質を支える手段と捉える高齢者が増えているのが特徴です。


求められるのは“即戦力”としてのスキル

一方、企業側も深刻な人手不足に直面しており、シニア人材に期待する声は年々強まっています。特に、接客・介護・物流・清掃など、人と接する現場では、経験や協調性のある高齢者が歓迎される傾向にあります。

しかし、現場の業務では「タブレットの操作」「レジ打ち」「衛生管理」など、最低限のITリテラシーや実務知識が求められることも少なくありません。そこで、リカレント教育を通じてこうしたスキルを補うことで、より多くの現場にマッチしやすくなるのです。


国や自治体も後押し

国もシニアの学び直しを後押ししています。たとえば、文部科学省は「職業実践力育成プログラム(BP)」を大学などと連携して提供しており、シニア層も対象に含まれています。また、ハローワークなどでも、求職中の高齢者向けに無料の職業訓練やスキルアップ講座が開かれています。

こうした支援制度を活用すれば、低コストまたは無料で新しい学びを始められるのも大きなメリットです。


3.学びが再就職や副業につながる!シニアのキャリア事例

リカレント教育を通じて「新たな一歩」を踏み出したシニアの事例は全国各地に存在します。定年後に学び直しを選んだことで、再就職・副業・地域貢献といった新しいキャリアを切り拓いた人たちの実例をいくつかご紹介します。

事例①:パソコン講座で“デジタル就労”に挑戦(69歳・男性)

定年後、施設管理の仕事を退職したAさんは「今後は体力より知識で勝負できる仕事をしたい」と考え、市の生涯学習センターで開かれていた高齢者向けパソコン教室に通い始めました。

半年後には、ワード・エクセルの基礎に加え、Zoomやメール、簡単なチラシ作成まで習得。現在は、地域のNPOで事務スタッフとして週3日勤務しながら、副業として町内会のお知らせ作成も請け負っています。

「これまでは紙の世界で生きてきたけれど、今では“デジタルって便利だな”と実感しています」(Aさん)


事例②:介護職員初任者研修で“ケアの現場”へ(70歳・女性)

Bさんは主婦として家庭を支えてきましたが、子育てを終えたあとに「誰かの役に立つ仕事をしたい」と一念発起。地域の職業訓練校で介護職員初任者研修を受講し、約3ヶ月後に地元のデイサービスでパート勤務を始めました。

高齢者同士の距離が近く、「利用者から“話しやすい”と信頼される存在」として重宝されています。月8万円程度の収入があり、生活にもハリが出たと語っています。


事例③:資格取得で“趣味を仕事に”(68歳・男性)

長年趣味だった家庭菜園や環境保全活動を活かし、「自然観察指導員」の資格を取得したCさん。地元の公民館と連携して、小学生向けの自然体験イベントを開催するようになり、現在は地域の環境教育アドバイザーとして講演依頼も受けています。

「学び直したからこそ、“誰かに教える立場”になれるなんて、想像していませんでした」


これらの事例に共通しているのは、「学び直しをきっかけに、新しい仕事や社会参加につながっている」という点です。
リカレント教育は、ただ知識を得るだけでなく、自分の経験や個性を活かす“道具”として働いてくれるのです。


4.どこで学べる?シニア向けリカレント教育の場とサービス

リカレント教育と聞くと「大学に入り直さないといけないの?」「お金がかかりそう…」と不安に思う方もいるかもしれません。
ですが、近年ではシニアでも気軽に始められる学びの場が充実してきています。ここでは、主な選択肢を紹介します。


1.【公的機関】自治体の生涯学習講座・市民大学

多くの市区町村では、「生涯学習センター」や「市民大学講座」を通じて、シニア向けの学び直しプログラムを提供しています。内容は、

・パソコン/スマホ講座
・健康/栄養の基礎
・地域福祉や介護の入門
・地元の歴史や文化

など多岐にわたり、参加費は無料または数百円程度と非常にリーズナブルです。

例:東京都世田谷区「せたがや生涯現役ネットワーク」
高齢者向けに職業訓練・地域活動・学びの機会をワンストップで提供
https://www.city.setagaya.lg.jp/02100/1009.html


2.【職業訓練】ハローワークやシルバー人材センター

ハローワークでは、求職中の60歳以上を対象に無料で職業訓練を実施している場合があります。人気の分野には以下があります。

・介護職員初任者研修
・清掃や施設管理業務
・パソコンや簿記の基礎

また、シルバー人材センターでも、実際の仕事につながる実務講習や安全講習などが定期開催されています。


3.【民間サービス】オンライン講座・通信教育

外出が難しい人や、自分のペースで学びたい人には、オンライン講座や通信教育もおすすめです。

サービス名特徴シニア向け講座の例
ユーキャン資格・教養講座が豊富。紙の教材もあり初心者向け介護入門、パソコン、趣味実用
Udemy実務スキルを動画で学べる。買い切り型でお得Excel入門、在宅ワーク、副業ノウハウ
NHK学園NHKが運営する通信講座。文化・健康ジャンルが豊富健康体操、文章講座、園芸

4.【大学等】「科目履修生」や「公開講座」

大学の中には、高齢者向けに一般開放された「科目履修制度」や「公開講座」を設けているところもあります。通学型だけでなく、近年はオンライン化も進み、全国どこからでも受講が可能です。

例:明治大学リバティアカデミー
社会人・シニア向けの講座が豊富。受講料も比較的手頃で、単発参加も可能です。
https://academy.meiji.jp/


このように、学ぶ手段は豊富にあり、費用や体力に応じて柔軟に選べる時代になっています。
自分に合ったスタイルで、「やってみたい」から始めてみましょう。


5.リカレント教育で得られる“生きがい”と“社会とのつながり”

シニアにとっての学び直しは、単なるスキルアップや就職の手段ではありません。
リカレント教育は、“生きがい”や“社会との接点”を持ち続けるための大切なきっかけでもあります。


自分の可能性を再発見できる

定年後、日々のルーティンがなくなると「自分は何をすればいいのか」「役割を失ったようで寂しい」と感じる人は少なくありません。
そんな中で学びに向き合うことで、

・「まだ知らない世界がある」
・「新しいことに挑戦できる」
・「知識が役立ってうれしい」

といった前向きな感情が生まれ、自分の価値を再確認できるようになります。
これは自己肯定感や生活の満足度を高める効果にもつながります。


人との出会いが“つながり”を生む

リカレント教育の講座や勉強会では、同じような立場・関心を持つ人との交流が生まれます。
たとえば、ある自治体の市民大学講座では、受講生同士が仲間となり、地域ボランティアやサークル活動に発展するケースも。

「学びの場がきっかけで友人ができ、外出の機会も増えました。話すこと自体が脳の活性化になります」(70代男性・パソコン講座参加者)

このように、孤立の防止や心の健康の維持にも、リカレント教育は役立っているのです。


“働く”こと以外にも広がる活躍の場

学び直しの成果は、再就職に限りません。たとえば…

・地域の子ども食堂で栄養講座を担当
・公民館の手芸教室で講師デビュー
・デジタル化支援ボランティアとして地域のスマホ相談員に

など、「誰かの役に立つ」ことを通して社会とつながる道が広がっています。

高齢者を対象とした調査(内閣府「高齢者の生活と意識に関する調査」2022年)でも、「日常生活に満足している」と答えた人の多くが、「人とのつながり」や「地域活動への参加」を重視している傾向が見られました。


学びは単に知識を得る手段ではなく、人生に“張り”や“役割”をもたらす重要な営み
リカレント教育は、まさにその“入り口”です。


6.無理なく始めるために|学び直しを続けるコツと心構え

「学び直したいけれど、年齢的に大丈夫だろうか」「ついていけなかったらどうしよう」
そんな不安は、多くのシニアが感じるものです。しかし大切なのは、“完璧を目指す”のではなく、“楽しむこと”を大切にする姿勢
ここでは、リカレント教育を無理なく続けるためのコツをご紹介します。


1.小さな一歩から始めてOK

いきなり本格的な講座や資格取得に挑戦する必要はありません。まずは、

・市や区の短期講座に1日だけ参加してみる
・興味のあるテーマのオンライン動画を見る
・図書館で入門書を読んでみる

といった「お試し感覚」の入り口から入ることで、学びへの抵抗感が減っていきます。


2.「できない」は成長のサイン

新しい分野に挑戦すれば、わからないこと・覚えられないことがあるのは当然。
そのたびに「こんな歳で…」と引け目を感じるのではなく、「脳が活性化している証拠だ」と前向きに捉える姿勢が重要です。

特に年齢を重ねると、人と比べて落ち込むことも増えがちですが、“自分なりのペース”を守ることが継続のコツです。


3.目的を「楽しさ」に置き換える

学びの目的を「仕事のため」「収入のため」だけに設定してしまうと、うまくいかない時に挫折しやすくなります。
一方で、

・「昔できなかったことに挑戦したい」
・「孫にパソコンを教えたい」
・「誰かと話すきっかけがほしい」

など、“楽しさ”や“交流”を主軸にした目標であれば、自然と継続につながります。


4.一人で抱え込まない

「学び」は一人でするものと思われがちですが、仲間と一緒に学ぶことがモチベーション維持につながるケースも多くあります。
たとえば…

・講座の参加後にカフェで情報交換
・同じ趣味の仲間とサークルを立ち上げる
・SNSで学びを記録/発信する

といった工夫で、“孤独な勉強”から“楽しい体験”に変えることができます


学び直しは、年齢に関係なく始められる「未来の自分へのプレゼント」です。
小さな好奇心から始めて、自分のペースでじっくり育てていきましょう。


7.まとめ|リカレント教育でシニアの人生はもっと豊かに

リカレント教育は、単なる再就職や副業の手段にとどまらず、新たな生きがいや社会とのつながりを生み出すチャンスでもあります。
年齢を理由に「もう遅い」と感じる必要はありません。
大切なのは、「もう一度、学んでみよう」という一歩を踏み出す勇気です。

・小さな学びが、新たな仕事や役割に
・新しい知識が、自己肯定感と健康を支える
・出会いが、孤立を防ぎ生活に彩りを与える

「まだまだ自分は成長できる」
そう思える日々を過ごすために、ぜひあなたも“学び直し”を始めてみてはいかがでしょうか。

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