1.「ラス婚」とは?──最期の恋に込められた想い
「ラス婚(ラスト婚)」とは、人生の後半期に出会い、結婚またはパートナーシップを築くことを指す言葉です。一般的には、60代以降のシニア世代が対象であり、「最後の恋」や「人生の締めくくりのパートナー」として、互いを尊重し合いながら支え合う関係性を築くことを目的としています。
現代の日本社会では、平均寿命の延伸や価値観の多様化により、再婚やパートナー探しが高齢期にも広がりを見せています。厚生労働省の統計によると、60歳以上の婚姻件数は年々増加傾向にあり、令和4年(2022年)には60歳以上同士の婚姻数が約1万7,000組に達しています(出典:厚生労働省「人口動態統計」)。
このような動きの背景には、「孤独を避けたい」「誰かとともに最期の時間を大切に過ごしたい」という心理が大きく関係しています。若いころとは違い、経済的な理由や子育ての必要性からではなく、「心の豊かさ」や「精神的な充足感」を求める結婚観が主流となりつつあるのです。
また、「結婚」という形にとらわれず、同居や週末だけのパートナーシップなど、自分たちのペースに合わせた関係性を選ぶ人も増えています。こうした柔軟なスタイルが、「ラス婚」という言葉をより身近なものにしている理由でもあります。
2.なぜ今、シニア世代で「ラス婚」が注目されているのか
近年、「ラス婚」がシニア世代の間で注目を集めている背景には、日本社会全体の構造的な変化があります。かつては「老後は家族と静かに過ごすもの」という価値観が一般的でしたが、今では“第二の人生”を自らの意志で充実させようとする高齢者が増えています。
まず大きな理由の一つは、「生涯未婚率」と「離婚率」の上昇です。国立社会保障・人口問題研究所によれば、2020年時点で70歳時点の生涯未婚率は男性で25%、女性で17%を超えており、さらに熟年離婚の件数も増え続けています。こうした背景から、60歳以降になって「もう一度パートナーと人生を歩みたい」と考える人が増えているのです。
さらに、定年退職後に迎える生活の変化も大きな要因です。仕事一筋だった日々から解放され、急に一人の時間が増えることで、「寂しさ」や「孤独感」に直面するケースが多くなります。そのため、生活リズムを整え、精神的にも満たされる相手を求めるようになります。
加えて、健康寿命の延びも見逃せません。厚生労働省によると、2022年の日本人の平均寿命は女性87.09歳、男性81.05歳。70代であってもまだ10〜15年以上の生活が見込まれることから、「もう一人のパートナーと残りの人生を楽しみたい」と考えるのは自然な流れです。
また、SNSやマッチングサービスの普及もラス婚ブームを後押ししています。これまでは「出会いのきっかけがない」と諦めていた方でも、オンラインで気軽に同年代の異性とつながることができるようになったことで、一歩を踏み出す人が増えています。
「最後の恋」ではなく「新たな始まり」と捉えるシニアが増えていることこそ、ラス婚が注目される本質的な理由なのです。
3.ラス婚がもたらすメリット──生きがい・健康・社会とのつながり
「ラス婚」は、単なる恋愛や結婚の枠を超えて、シニア世代に多くのメリットをもたらします。中でも特筆すべきは、生きがいの創出、健康の維持、そして社会とのつながりの再構築といった3つの側面です。
1. 生きがいと精神的な充実
高齢期においてもっとも大切なのは、日々の暮らしに張り合いを持つことです。「明日はこの人とどこへ行こう」「今日は一緒に夕飯を作ろう」といった小さな計画が、生活にリズムと楽しみを与えてくれます。恋愛感情というよりも、人生のパートナーとして寄り添う存在がいることは、孤独感を軽減し、心の安定につながります。
内閣府の「高齢者の生活と意識に関する調査(令和4年度)」によると、「自分の生活に満足している」と答えた人の割合は、配偶者やパートナーがいる高齢者の方が明らかに高いという結果が出ています。パートナーの存在が幸福感に直結しているのです。
2. 健康維持にもプラスに働く
心理的に前向きな状態を保つことは、身体的健康にも良い影響を与えます。パートナーと過ごすことで外出が増えたり、規則正しい生活を心がけるようになったりと、生活習慣が自然と改善される傾向があります。
また、「誰かに見守られている」という安心感は、高血圧やうつ症状の予防にも効果的とされています。米国の調査でも、パートナーがいる高齢者はそうでない人に比べて認知症のリスクが低いという研究結果が報告されています(出典:University College London, 2021年)。
3. 社会とのつながりの再構築
ラス婚によって新たな家族や友人関係が生まれることで、社会との接点も増えていきます。相手の家族や友人との交流、新たな趣味を共に始める機会などが、地域や社会との関係性を再構築するきっかけになります。
特に、退職後に人間関係が急激に狭まりがちなシニアにとって、「誰かとつながっている」という実感は、生活の質を大きく左右する要素となります。
4.こんな方におすすめ!ラス婚を考えるべきシニアの特徴とは
「ラス婚に興味はあるけど、自分には関係ないかも…」と思っていませんか?
実は、次のような特徴に当てはまる方は、ラス婚によって人生がより豊かになる可能性が高いと言えます。ここではラス婚を前向きに検討してみるべきシニアの特徴を紹介します。
1. 日常生活に寂しさや孤独を感じることが増えた方
配偶者に先立たれたり、子どもが独立したりして、急に一人の時間が増えた方は、孤独感を抱きやすくなります。人との会話やふれあいが減ると、気分が落ち込みやすくなったり、健康にも影響が出ることがあります。こうした方にとって、ラス婚は「心の居場所」を得る手段となりえます。
2. 第二の人生に何か変化がほしいと感じている方
定年後の生活がルーティン化してきて、「何か新しい刺激が欲しい」「人生にもう一度わくわくすることが欲しい」と思っている方にも、ラス婚は選択肢の一つです。誰かとともに新しいことを始めることで、日常が一気に活気づくことがあります。
3. 健康でアクティブに暮らしたいと考える方
パートナーができると、お互いの健康を気遣い合うようになります。散歩や旅行、地域イベントなどにも積極的に参加するようになり、結果として体力も維持しやすくなります。特に「これからも元気に暮らしたい」と考えている方にとって、ラス婚は生活に良い影響を与える可能性が高いのです。
4. 共感し合える相手と穏やかな時間を過ごしたい方
若いころのような「恋に落ちる」関係ではなく、価値観を共有し、人生の出来事を語り合えるような関係性を求めている方にも、ラス婚はおすすめです。気を張らず、自然体でいられる相手と一緒に過ごす時間は、何ものにも代えがたい安心感をもたらします。
5.ラス婚を叶えるためにできること──出会いの場と心構え
「ラス婚をしたい」と思っても、「どこで出会えるの?」「どう始めればいいの?」と感じている方は多いはずです。ここでは、実際にラス婚を目指すためにできる行動と、その際に大切にしたい心構えをご紹介します。
出会いの場を見つけるには?
1. 地域のシニア交流イベントに参加する
各自治体や地域センターでは、シニア向けの趣味サークルや交流会が開催されています。音楽、ダンス、料理教室、ハイキングなど、自然な出会いが生まれる場は意外と多く、共通の関心を通じて仲を深めることができます。
2. シニア向けの婚活・マッチングサービスを活用する
最近では、50歳以上を対象とした婚活イベントやマッチングサイトも数多く登場しています。例として、「O-net スーペリア」や「茜会」では、婚活バスツアーなどの中高年専門のサービスを提供しており、価値観やライフスタイルに合った相手探しが可能です。
3. 友人や知人の紹介を頼る
信頼できる人からの紹介は、お互いの人柄を理解したうえでのマッチングになるため、安心して関係を築きやすい方法です。「誰かいい人がいたら紹介してね」と周囲に伝えておくだけでも、可能性が広がります。
ラス婚に向けた心構え
1. “完璧な人”を求めすぎない
相手に過剰な理想を抱かず、まずは「一緒にいて心地よいか」を大切にすることが、長続きする関係の第一歩です。
2. 自分から行動する勇気を持つ
待っているだけでは出会いは訪れません。イベントに参加してみる、SNSで声をかけてみるなど、小さな一歩を踏み出すことが未来を変えるきっかけになります。
3. 過去より“今”と“これから”を大切にする
過去の結婚や恋愛にこだわらず、今の自分と相手を素直に受け入れる姿勢が、ラス婚を成功させる秘訣です。
人生の後半にこそ、心から信頼できる相手と穏やかな時間を築くことが可能です。ラス婚は「最後の恋」ではなく、「新しい人生のスタート」なのです。
まとめ:ラス婚は“幸せに生ききる”ための新しい選択肢
人生100年時代を迎えた今、「老後=静かに過ごすもの」という常識は変わりつつあります。シニア期こそ、心から信頼できるパートナーとの出会いが人生をより豊かに、充実したものにしてくれるのです。
「ラス婚」は、ただの“再婚”ではありません。それは、人生の後半をより前向きに、より人間らしく生きるための手段のひとつです。生きがいを見つけたい方、誰かと一緒に穏やかな時間を過ごしたい方、社会とのつながりを感じていたい方にとって、「ラス婚」は希望に満ちた選択肢です。
もちろん、すべての人が結婚という形を選ぶ必要はありません。事実婚やパートナーシップという柔軟な関係性も含め、自分に合ったスタイルでつながりを持つことが大切です。
「もう歳だから」と諦める必要はありません。70代でも80代でも、人生をともに歩む相手と出会い、共に笑い合い、支え合える関係はつくれます。
“最期の恋”ではなく、“最後まで幸せに生きるための恋”として、ラス婚を前向きにとらえてみてはいかがでしょうか。
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