【はじめに】人手不足に悩む小売業が無料求人に注目する理由
近年、小売業界では慢性的な人手不足が深刻な問題となっています。特に中小規模の店舗では、採用コストが大きな負担となり、「求人広告を出したいけど予算が足りない」という声も少なくありません。そこで注目されているのが、「無料で求人を出す方法」です。
採用活動において「いかにコストを抑えて、適切な人材を確保するか」は、多くの人事担当者が抱える共通の課題です。中でも65歳以上の高齢者、いわゆるシニア層は、経験や責任感を持ち、安定して働ける人材として高く評価されています。
実際、厚生労働省が発表した「高年齢者雇用状況等報告（令和5年）」によると、65歳以上を継続雇用・新規採用している企業の割合は年々増加しており、高齢者の就労意欲の高さも明らかです。
（出典：厚生労働省「高年齢者の雇用状況」）
この記事では、小売業で採用コストをかけずに人材を確保する具体的な方法や、高齢者採用のメリット、成功事例などを交えながら、効果的な採用戦略をご紹介します。
無料で求人を出す方法とは？おすすめの手段と活用ポイント
無料で求人を出すには、以下のような手段があります。それぞれの特徴と活用ポイントを見ていきましょう。
1. ハローワーク
全国どこでも利用可能な公共職業安定所（ハローワーク）は、完全無料で求人掲載ができます。年齢や性別を問わず幅広い求職者に届きやすく、特にシニア層の利用も多いため、ターゲットに合致しやすい媒体です。
ポイント：
・店舗近隣のハローワークに求人票を提出するだけでOK
・職業相談員によるマッチング支援も受けられる
・高年齢者雇用に関する助成制度の案内も受けられる
2. 自社ホームページやSNSの活用
コストゼロで求人情報を掲載できる方法として、自社のホームページやSNS（Facebook、Instagramなど）も有効です。
ポイント：
・店舗の雰囲気や仕事内容を写真や動画で発信できる
・フォロワーとのつながりを活用すれば拡散力も期待できる
・投稿のタイミングや頻度を調整して、長期的な採用ブランディングにも効果あり
3. 地域密着型の無料求人サービス
近年、シニア向けに特化した無料求人媒体も増えてきました。また、多くの自治体では、地元企業と求職者をつなぐための無料求人掲載サービスやマッチング支援を実施しています。市区町村のホームページ、広報誌、地域ポータルサイトなどで求人情報を掲載できる制度もあり、特に地域で働きたい高齢者層にとっては貴重な情報源です。
ポイント：
・シニア層に特化したマッチングで、採用後の定着率も高い
・初期費用、掲載費用が無料で掲載できる媒体だと、小売業でも負担が少ない
・自治体や非営利団体が運営する地域密着型サイトだと、無料で掲載できることが多い
4. リファラル採用・アルムナイ採用の活用
従業員や元従業員のネットワークを活かすリファラル（紹介）採用や、退職者を再雇用するアルムナイ採用も、無料で優秀な人材を確保できる強力な手段です。高齢者の採用を検討する際も、過去に勤務していた60代のスタッフやその知人・家族を紹介してもらうケースが増えています。
リファラル採用のポイント：
・現在のスタッフに「紹介カード」や声がけを依頼するだけで手軽に始められる
・社風を理解した人材が集まりやすく、定着率が高い
・成果に応じてインセンティブを設定するのも効果的
アルムナイ採用のポイント：
・退職者に「戻ってきませんか」と連絡をとるだけでも好印象
・業務理解があるため再教育の必要が少なく、即戦力になりやすい
・勤務条件を柔軟にすることで、シニア層の復職にも対応しやすい
5. 地域向けの掲示案内・ポスター掲示
意外に効果を発揮するのが、店舗の入口や近隣施設に掲示する「求人ポスター」や「手作りの案内チラシ」です。高齢者の多くは日常的に散歩や買い物で地域を歩いているため、目に入りやすい「アナログな情報源」も侮れません。
掲示に向いている場所：
・自店の入口、レジ周辺、ガラス扉
・地域の公民館、スーパーの掲示板
・高齢者がよく利用する薬局、病院、商店街組合の掲示板
・地元新聞の折込チラシ（地域によって無料枠がある場合も）
掲示のポイント：
・「60代・70代歓迎」「週2日からOK」などシニア向けの言葉を入れる
・大きめの文字と見やすいレイアウトにする
・電話番号、担当者名、連絡可能な時間帯を明記
・QRコードを付けて、応募ページやLINEに誘導するのも効果的
高齢者の採用が注目される背景とそのメリット
少子高齢化が進む中、企業の人手不足は今後ますます深刻化すると予測されています。そんな中、労働力としての「高齢者」に改めて注目が集まっています。厚生労働省によると、2023年時点で65歳以上の就業者数は約915万人に達し、これは全就業者の約14％を占めています。
（出典：総務省統計局「労働力調査（基本集計）」2023年）
小売業における高齢者採用には、以下のような明確なメリットがあります。
1. 安定した勤務態度と責任感
シニア層は時間を守り、指示に忠実に従う傾向が強く、接客業においても顧客対応に安心感があります。また、職場でのトラブルが少なく、信頼して仕事を任せられる人材が多いのも特長です。
2. 地域に根ざしたネットワークと信頼
多くの高齢者は地域に長年住んでいるため、地域密着型の小売業にとっては、顧客との信頼関係構築にもプラスに働きます。地元のお客様との会話や距離感も自然で、リピーター獲得にも貢献してくれます。
3. 若手社員の育成や相談役としての存在
経験豊富なシニア人材は、若手スタッフの教育役としても活躍が期待されます。新入社員の相談役やサポート役として現場の安定にも寄与し、職場の人間関係を円滑にしてくれるケースも多くあります。
4. 勤務形態の柔軟さに対応しやすい
「週2〜3日」「午前中のみ」など、短時間勤務の希望が多いシニア層は、小売業のシフト制にフィットしやすく、繁忙時間帯だけの戦力確保にも適しています。
このように、高齢者の採用は単なる“人手不足対策”にとどまらず、職場全体の安定・成長を支える大きな要素として位置づけられつつあるのです。
高齢者を無料で採用するための具体的な施策
高齢者を採用する際、「どこで出会えばいいのか？」という課題を持つ人事担当者は多いです。特に無料で人材を確保したい場合は、シニア層に特化した求人サービスや掲載料のかからない媒体を活用するのがポイントです。ここでは、具体的なサービスとその特徴を紹介します。
1. キャリア65
65歳以上の人材に特化した、シニア向け求人マッチングサイト。合同会社福祉人事が運営支援しており、企業は無料で求人を掲載できます。小売・接客業の募集にも相性が良く、首都圏の事業者に特におすすめです。
・初期費用、掲載料が無料
・完全成果報酬型で1名採用するごとに3万円
・高齢者を対象としているためミスマッチが少ない
2. シルバー人材センター
各自治体が設置している就業支援組織。高齢者の働きたい意欲に応える形で、仕事をマッチングしてくれます。雇用契約ではなく、原則「請負・委任契約」となります。
・小売店の清掃や品出し、軽作業に適している
・地域住民なので通勤トラブルが少ない
・中間マージンあり（報酬の一部をセンターが管理）
3. ハローワーク「生涯現役支援窓口」
厚生労働省が運営するハローワークは、企業が無料で求人を出せる定番の公共サービス。最近は「シニア専用窓口」や「生涯現役支援コーナー」も設けられ、60歳以上の求職者と出会いやすくなっています。
・完全無料で掲載可能
・職員がマッチング支援してくれる
・就労意欲のある60代・70代の登録者が多い
URL：https://www.hellowork.mhlw.go.jp/
4. Indeed（インディード）無料プラン
求人検索エンジンとして国内でもトップクラスの集客力を誇るIndeedは、無料掲載プランでも効果的な採用が期待できます。検索結果で上位表示されるには工夫が必要ですが、無料でも十分な露出が得られる媒体です。
・原稿作成、掲載まですべて自社で完結可能
・「60代歓迎」などのキーワードで高齢者にもアプローチできる
・応募管理やスカウトなど、有料機能も併用可能
ポイント： 求人内容の「わかりやすさ」「勤務地・シフトの柔軟性」を明記することで、高齢者からの応募率が高まります。
5. 地域SNS・掲示板（ジモティーなど）
「家の近くで働きたい」ニーズの強い高齢者に響くのが、ジモティーや地域掲示板を使った求人募集です。地域に根ざした求職者にアプローチできるのが強みです。
・地元住民との接点を持ちやすい
・掲載が無料（一部条件下で）
・短期、単発、スポット採用にも向いている
ジモティーURL：https://jmty.jp/
以上のように、無料で利用できる媒体でも、高齢者の採用には特化型の求人サービスと検索エンジンを併用するのが効果的です。
特に「キャリア65」や「Indeed（無料プラン）」は掲載の自由度も高く、小売業界との相性も抜群。まずはこの2つから試してみるのが良いでしょう。
【成功事例】無料求人で高齢者を採用した小売業の声
ここでは、実際に無料の求人媒体を活用して高齢者を採用し、成功した小売業の事例をご紹介します。コストをかけずに優秀な人材を確保したいと考える企業にとって、具体的な成功体験は非常に参考になります。
事例1：東京都内の食品スーパー（従業員数30名）
利用媒体：Indeed
60代後半の男性を採用。勤務は週3日、午前中の品出し業務を担当。
導入の背景：
早朝シフトの人員が不足していたが、求人広告を出す予算がなかった。人事担当者がWebから「Indeed」を知る。
成果：
掲載から3週間で応募があり、面接を経て即採用。元々スーパー勤務経験があり、即戦力として活躍中。丁寧な接客でお客様からの評判も良く、若手スタッフの教育にも貢献。
事例2：地方都市のドラッグストアチェーン（従業員数15名）
利用媒体：ハローワーク（シニア専用窓口）
60代女性を採用。レジと接客を週4日勤務で担当。
導入の背景：
地域柄、高齢者のお客様が多く、同世代のスタッフがいれば安心感につながると考えた。
成果：
「同年代のスタッフが対応してくれると話しやすい」と顧客から好評。高齢者同士ならではの丁寧な対応が信頼感を生み、シニア顧客のリピーター化にもつながった。
事例3：郊外の衣料品店（家族経営）
利用媒体：ジモティー
65歳の女性を採用。陳列や品出し、簡単な接客などを週3日で担当。
導入の背景：
求人広告にかける余裕がなく、娘がSNSで調べてジモティーの無料掲載を提案。
成果：
2週間で2件の応募があり、1名採用。シフトの穴を柔軟に埋めてくれ、働きぶりにも満足。応募のスピード感や手軽さに驚き、次回の採用もジモティーを使いたいとの声。
成功の共通点は？
１．求人情報をわかりやすく明記している（仕事内容・時間・年齢歓迎の表現など）
２．短時間・柔軟な勤務形態を用意している（週2〜3日、午前中だけなど）
３．採用後のコミュニケーションを大切にしている（無理なく続けられる配慮）
これらを意識することで、無料求人でも質の高い応募者と出会える確率が高まります。
【まとめ】コストをかけずに、経験豊富な人材を確保するために
小売業における人手不足は、今後さらに深刻になることが予測されます。しかし、無料で求人を出せる媒体やシニア層の活用をうまく組み合わせれば、採用コストをかけずに安定した人材を確保することが可能です。
この記事で紹介したように、ハローワーク・キャリア65・シルバー人材センター・Indeed・地域掲示板といった無料の採用チャネルを活用することで、60代以上の経験豊富な人材と出会えます。さらに、採用後の職場環境づくりやシフトの柔軟性に配慮することで、長く安心して働いてもらえる体制が整います。
高齢者は、単なる「人手」ではなく、職場の安定・顧客対応・若手の育成に貢献できる貴重な戦力です。企業イメージの向上や地域社会への貢献という面でも、シニア採用は多くのメリットがあります。
コストを抑えながらも「質の高い採用」を実現したい人事担当者の方は、まずは無料で利用できるサービスから取り入れてみてはいかがでしょうか？
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