1. 警備業界における高齢者雇用の現状
近年、警備業界では高齢者の雇用がますます進んでいます。背景には、慢性的な人手不足と、少子高齢化による労働人口の減少があります。特に警備業界は、24時間体制で施設や現場を守るため、多様な働き手が求められる業界。その中で、健康で働く意欲のある高齢者が注目されています。
総務省「労働力調査(2023年)」によると、65歳以上の就業者数は920万人を超え、年々増加傾向にあります。また、警備業界における高齢者雇用割合も高く、60歳以上の警備員は全体の約35%を占めると言われています(出典:警備業協会資料 2023年)。
これは、警備業務が必ずしも若年層でなければ担えない仕事ではないこと、そして高齢者ならではの特性が業務にマッチしていることが要因と言えます。
実際に、警備会社の求人サイトを見ても「60代以上歓迎」「70代も活躍中」といった文言が並び、高齢者の積極採用が業界全体で進められていることがわかります。
次に、なぜここまで高齢者の採用が進んでいるのか、その理由を具体的に5つ解説します。
2. 高齢者を積極採用する5つの理由
2-1. 豊富な人生経験と責任感
高齢者は、長年の社会生活で培った豊富な経験と責任感を持っています。警備業務では、冷静な判断力や周囲への配慮、トラブル時の的確な対応が求められます。その点、人生経験を積んだ高齢者は、想定外の事態にも落ち着いて対応でき、現場の安心感につながります。
また、仕事に対する責任感や真面目さも高齢者ならではの特性です。遅刻や無断欠勤が少なく、指示された業務をきちんと遂行する方が多いため、企業側も安心して任せられる存在です。
2-2. 体力よりも誠実さ・丁寧さが求められる仕事
警備の仕事は、必ずしも重労働ではありません。施設の出入口での受付、巡回業務、モニター監視など、体力よりも「誠実さ」「丁寧さ」「目配り・気配り」が求められる場面が多くあります。
高齢者は、こうした業務に対し、几帳面で真面目に取り組む傾向があり、勤務態度が良いと評価されるケースが少なくありません。また、「人の役に立ちたい」という気持ちが強く、来訪者への対応やトラブル防止に対しても積極的に取り組む方が多いのです。
2-3. 若手社員への良き手本となる
高齢者の持つ落ち着きや丁寧な仕事ぶりは、若手社員にとって良い手本となります。特に警備業界では、マナーや挨拶、基本動作などが重要視されるため、高齢者が現場でその姿勢を示すことは、若手の教育・育成にも効果的です。
実際に、多くの警備会社では、若手社員が高齢の先輩から「仕事の進め方」や「トラブル時の心構え」を学ぶ機会が生まれ、社内全体の士気向上にもつながっています。
2-4. シフト勤務や短時間勤務に柔軟に対応できる
高齢者の多くは、子育てや家庭の事情に縛られず、自身のライフスタイルに合わせた働き方が可能です。そのため、日勤・夜勤・早朝勤務・短時間勤務など、様々なシフトに柔軟に対応できる点も企業にとって大きなメリットです。
特に、深夜帯や休日の警備業務は、若年層から敬遠されがちですが、「自分のペースで働きたい」「収入を補いたい」という高齢者のニーズとマッチしやすく、双方にとってWin-Winの関係が築けます。
2-5. 離職率が低く長期的な戦力になる
高齢者の多くは、「定年後も社会とつながりたい」「健康維持のために働きたい」というモチベーションで働いています。そのため、転職やキャリアアップを目的とする若年層と比べて離職率が低い傾向にあります。
実際に、警備業界では高齢者の定着率が高く、長期的な戦力として期待できることが大きな魅力です。安定した人員確保が難しい警備業界において、これは非常に大きなメリットと言えるでしょう。
3. 高齢者採用のメリットと企業イメージの向上
高齢者を積極的に採用することは、単なる人員確保にとどまりません。企業全体のイメージアップや社会的評価にもつながります。
まず、近年注目されている 「多様性のある職場づくり(ダイバーシティ)」 の観点から見ても、高齢者の雇用は非常に有効です。年齢や性別、国籍にとらわれない働き方を推進する企業は、社会的責任を果たしている企業として、取引先や求職者からの信頼を得やすくなります。
また、厚生労働省が推進する「高年齢者雇用安定法」など、高齢者の雇用を支援する制度が拡充されており、それに積極的に取り組む企業は、自治体や関係団体からの評価も高くなる傾向にあります。
社会貢献活動の一環としての側面も見逃せません。
高齢者の就労機会を提供することで、定年退職後の生活支援や社会的孤立防止にも寄与できます。特に警備業界では、「人の役に立ちたい」「社会に貢献したい」という高齢者の意欲を活かせる環境が整っており、本人の生活の質(QOL)向上にもつながります。
さらに、採用活動においても、「シニア層を積極採用しています」と明示することで、求職者からの応募が増えるだけでなく、社会からの信頼獲得、企業ブランディング強化にも寄与します。
高齢者雇用は、企業・高齢者・社会の三方良しの取り組みと言えるでしょう。
4. 高齢者を採用する際の注意点と活用できる制度
高齢者を採用する際には、いくつかの注意点があります。シニア層特有の特性を理解し、働きやすい環境を整えることが、長期的な戦力化につながります。
【注意点①】業務内容の明確化と安全配慮
高齢者は、体力や瞬発力が若年層に比べて劣る場合があります。そのため、無理のない業務設計 が重要です。特に、長時間の立ち仕事や夜勤などは、本人と十分に相談し、可能な範囲での業務を依頼するようにしましょう。
また、安全配慮義務 として、業務前に健康状態を確認し、熱中症対策や休憩時間の確保など、健康面への配慮も欠かせません。
【注意点②】コミュニケーションと教育体制
高齢者はITツールの扱いや新しいマニュアルへの対応が苦手な場合もあります。そのため、丁寧な研修 と現場でのフォロー体制が必要です。特に、マニュアルだけでなく、対面での説明や実地研修を取り入れることで、不安なく業務に取り組めます。
また、世代間でのコミュニケーションギャップが生じないよう、若手社員にも高齢者との接し方を指導することが大切です。
【活用できる制度】
高齢者雇用を進める際には、国や自治体の支援制度を積極的に活用しましょう。代表的なものを以下にまとめます。
制度名 | 内容 |
---|---|
高年齢者雇用開発特別奨励金 | 60歳以上の求職者を雇用した場合、企業に助成金が支給される制度 |
65歳超雇用推進助成金 | 定年延長や定年制廃止、継続雇用制度の導入を行った企業に支給 |
特定求職者雇用開発助成金(高齢者雇用コース) | 高齢者をハローワーク等を通じて採用した場合に支給される助成金 |
これらの制度は、企業の採用コスト軽減や研修体制の強化にも活用できます。詳細は、厚生労働省の公式サイトで確認できます。
5. まとめ:高齢者採用で警備業界はもっと強くなる
警備業界が高齢者を積極的に採用する背景には、人手不足の解消だけでなく、高齢者ならではの特性を活かした職場環境づくり という大きなメリットがあります。
豊富な人生経験と責任感を持ち、誠実に業務に取り組む高齢者は、警備業務において非常に重要な存在です。体力的な不安を感じる場面もありますが、仕事内容の調整や安全配慮、丁寧な教育体制を整えることで、その力を最大限発揮してもらうことができます。
また、高齢者の採用は、若手社員の手本となり、組織全体の風通しを良くする効果 も期待できます。さらに、企業イメージの向上や社会的責任の遂行にもつながるため、持続的な成長を目指す警備会社にとっては、非常に有効な取り組みと言えるでしょう。
高齢者を積極的に採用し、年齢に関係なく誰もが働きやすい職場環境を整えることは、人材不足時代を乗り越え、業界全体をより強くするカギ になるはずです。
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