シニア人材活用の成功事例集 ~高齢者雇用に積極的な企業から学ぶ

【企業様向け】シニア採用

1.シニア活躍推進企業が増えている

大手企業の約3割が70歳就業制度を導入済

2021年に施行された改正高年齢者雇用安定法では、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務とされました。この法改正をきっかけに、シニア人材の活用を積極的に進める企業が増加しています。

厚生労働省の「令和5年 高年齢者雇用状況等報告」によると、従業員31人以上の企業のうち約31.5%が70歳まで働ける制度を導入しており、特に大手企業では定年の引き上げや継続雇用制度の導入が進んでいます(出典:厚生労働省「令和5年 高年齢者雇用状況等報告」)。

この背景には、人手不足への対応に加えて、長年培った知識・経験の継承や、職場の安定感を高める効果が期待されていることがあります。シニア人材の活用は、いまや経営戦略の一環として捉えられつつあるのです。


高齢者雇用の先進事例に学ぶ意義

高齢者の採用・活用は、単なる社会貢献ではなく組織の戦力強化として重要性が増しています。先進的な企業では、年齢に関係なく実力で評価し、活躍の場を提供することで、シニアのモチベーションと貢献意欲を引き出しています。

人事担当者にとって注目すべきポイントは以下のとおりです。

処遇や役割設計の工夫により、やりがいを維持しながら長く働ける仕組みを作る
・シニア人材を若手社員の教育・サポート役として位置づけることで、世代間連携を促進
・年齢ではなく役割や成果で評価することで、公平な職場風土を醸成

これらはすべて、高齢化社会における持続可能な人材活用に向けたヒントとなるでしょう。


成功事例1:定年延長で組織力強化

65歳定年制と70歳までの継続雇用を導入

ある大手サービス業では、少子高齢化による人手不足を受け、早い段階から定年延長に取り組んできました。まずは定年を65歳に引き上げたうえで、希望者には70歳までの継続雇用制度を提供。この制度では、本人の健康状態や希望に応じて週3~5日の勤務を選べる柔軟なシフトを導入しています。

この仕組みによって、長年勤めてきたベテラン社員が引き続き職場に残り、熟練のスキルやノウハウを若手に伝える環境が整備されました。また、雇用延長者には、定年時の評価を踏まえて再契約を行うことで、能力に見合った待遇が維持されており、意欲的な働き方が実現しています。


役職定年・一律処遇引き下げを廃止しモチベーション維持

さらにこの企業では、シニア層のモチベーションを損なわないよう、役職定年や一律の処遇引き下げ制度を廃止しました。従来、60歳を超えると管理職を外れたり、賃金が自動的に下がったりするケースが一般的でしたが、それが不公平感や早期退職につながっていたのです。

そこで、能力や貢献度に応じた評価制度に切り替えることで、年齢に関係なく組織内で責任あるポジションに留まれる仕組みを整備しました。その結果、シニア層の離職率が下がり、現場の安定感と生産性が向上したとの報告もあります。

このように、定年延長と処遇の見直しを組み合わせることで、「長く働きたい」という高齢者の意欲と「戦力として活用したい」という企業側のニーズがマッチし、組織力の強化につながっています。


成功事例2:定年後も正社員待遇

定年後の再雇用区分「エルダー社員」を新設

ある小売系の大手企業では、定年を迎えた従業員を対象に、新たな再雇用区分「エルダー社員」を設けています。この制度の特徴は、雇用形態を限定正社員とすることで、非正規ではなく安定的な待遇を確保している点です。

従来の再雇用制度では、契約社員として再雇用し、勤務時間や職務内容も限定されることが一般的でしたが、この制度ではフルタイム勤務も可能で、希望と能力に応じて仕事の幅が設定されます。

この柔軟な設計によって、ベテラン人材がこれまでと変わらない役割を担うことができ、職場の安定と継続性が保たれる効果を発揮しています。


役割が同じなら給与など処遇も同等に

この制度のもう一つのポイントは、同一役割・同一責任であれば、定年前と同等の給与水準を維持するという方針です。定年後の再雇用者であっても、業務内容が変わらない限り、評価制度や給与テーブルを分けることはありません。

これにより、従業員は「定年を迎えても評価される」「処遇が下がらない」という安心感を持ち、長く働くモチベーションを維持することができます。

また、他の社員にとっても「年齢に関係なく貢献が報われる」職場としての印象が強まり、公平性が高い職場文化の醸成にもつながっています。


シニアも管理職登用可能にし意欲アップ

この企業ではさらに、再雇用後の社員にも管理職登用の道を開いています。再雇用者がサブマネージャーや店舗責任者を務める例もあり、若手スタッフとの橋渡しや現場統率において重要な役割を果たしています。

年齢を理由に職位の上限を設けるのではなく、本人の意欲と能力に応じて責任ある立場を任せる姿勢は、企業のダイバーシティ推進にも貢献しています。

このように、定年後も「正社員として活躍できる環境」を整えることで、シニア人材のエンゲージメントと戦力化を高い水準で維持することが可能になります。


成功事例3:定年制廃止で実力主義へ

定年そのものを撤廃し、成果・役割主義で評価

ある製造業の企業では、シニア人材の戦力化をさらに進めるために、定年制度そのものを撤廃しました。これにより、年齢による一律の退職タイミングはなくなり、本人の意思と能力に応じて、何歳でも働き続けられる環境が整っています。

同社では、年齢ではなく「職務上の役割」と「業務成果」に基づいて評価を行う成果主義を徹底しており、70代で現役の管理職として活躍する社員も存在します。人事制度の軸を「年齢」から「実力」へと切り替えることで、本人のやる気と働きがいを引き出し、組織全体のパフォーマンス向上にも寄与しています。


年齢に関係なく活躍できる環境整備と社内浸透

定年制度の廃止には、評価制度の見直しや安全衛生面への配慮など、制度設計の工夫が欠かせません。同社では、以下のような取り組みを実施しています:

定期的な健康チェックと就業制限の仕組みで、過労やリスクを未然に防止
本人の希望と適性を踏まえた業務調整により、長期的な就業をサポート
社内の意識改革研修を通じて、「年齢にとらわれない実力主義」が組織文化として定着

こうした環境整備によって、若手社員にとっても「努力次第で長く活躍できる」「成果が公平に評価される」という信頼感が醸成され、年齢に関係ないフラットな職場が実現されています。

このように、定年制を廃止するという大胆な制度変更は、リスクもある一方で、高い意欲を持ったシニア人材が力を発揮できる環境づくりの一例として注目されています。


他にもあるシニア活用の取り組み

定年を65歳に引き上げ、役職定年制を廃止した事例(製造業)

ある技術系メーカーでは、60歳だった定年を65歳に引き上げるとともに、従来設けていた役職定年制を廃止しました。これにより、経験豊富な技術職や管理職が引き続き要職にとどまることが可能になり、若手への技術継承やマネジメントの安定化が実現しました。

また、制度改定にあたっては「高齢社員への期待と信頼を社内で明示する」ことにも力を入れており、シニア社員のエンゲージメント向上と組織文化の成熟が同時に進んでいます。


小規模企業でも可能!地域密着型のシニア雇用成功例(サービス業)

中小のクリーニング店を営む企業では、地域に住む60代・70代の方を積極的に採用し、短時間勤務・軽作業中心の就労スタイルを導入しています。特に朝夕のピーク時間帯だけの勤務や、接客を伴わない裏方業務を切り出して提供することで、体力的な負担を軽減しつつ戦力化に成功しています。

この企業では、応募の際に「年齢不問」を明示するだけでなく、「年金受給中の方も歓迎」「週2日からOK」といった文言を記載することで、地域の高齢者からの応募を大幅に増加させています。

また、若手との相互補完が進み、店舗運営全体の生産性や雰囲気が向上しており、「高齢者雇用は企業の競争力に貢献する」という手応えを得ているとのことです。


このように、大企業に限らず中小企業・地域企業でも、工夫次第でシニア人材を活かすことができる時代です。企業規模にかかわらず、高齢者の活用には大きな可能性が広がっています。


まとめ:事例から読み解く成功の共通点と自社への活かし方

共通するポイント(制度整備、公平な処遇、意欲尊重など)の整理

今回ご紹介した複数の事例に共通して見られるのは、以下のような**「制度」「評価」「環境整備」への明確な取り組み**です。

就業制度の整備:定年延長、定年廃止、再雇用制度の刷新など、シニアが継続して働ける選択肢を用意
公平な処遇設計:役割や成果に基づいて処遇を決定し、年齢による一律の引き下げを避ける
働きやすさへの配慮:健康状態や体力に応じた業務調整、柔軟な勤務形態の導入
意欲の尊重と活躍の場の創出:シニアでも責任あるポジションに就ける道を確保

これらの要素が揃うことで、企業はシニア人材の「経験」と「意欲」を最大限に活かし、生産性向上や職場の安定、さらには若手育成まで波及効果を広げることができます。


自社でシニア活躍を進めるために取れる一歩

「とはいえ、自社でどこから始めればよいかわからない…」という声もあるでしょう。その場合は、以下のステップから始めることをおすすめします。

現状の人事制度の棚卸し:定年後の就労環境、処遇ルールなどを確認し、改善ポイントを洗い出す
既存社員の声を聞く:シニア層の社員からのヒアリングで、ニーズや不安を把握する
外部の支援を活用:ハローワーク、地域のシルバー人材センター、シニア向け求人サイトなどを活用して情報を収集
求人情報の工夫:高齢者に伝わりやすい表現、体力面への配慮や柔軟勤務の明示が応募数アップに直結します

また、無料で高齢者採用の相談や求人掲載ができる専門サイトを活用すれば、コストをかけずに第一歩を踏み出すことも可能です。

高齢者雇用は、単なる「社会貢献」ではなく、「事業成長を支える重要な経営資源」。本記事で紹介した事例を参考に、自社に合ったシニア活用の形を模索してみてはいかがでしょうか。

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