1. なぜ若手社員はすぐに辞めてしまうのか?
定着しない理由は「ミスマッチ」と「環境の変化」
多くの企業が直面している「応募はあるのにすぐ辞めてしまう」という課題。その背景には、若手人材との価値観や働き方のミスマッチがあります。例えば、雇用条件や仕事内容、職場の雰囲気などが入社前の期待と異なることで、モチベーションを失いやすくなります。
また、最近の若手世代は「キャリアアップ」や「ライフワークバランス」を重視する傾向が強く、我慢して働き続けるよりも、合わないと感じた時点で早期に転職する文化が浸透しています。これは悪いことではありませんが、企業側としては採用や育成にコストをかけた人材が短期で離職することになり、大きな損失となります。
実際に、厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年版)」によれば、高卒新卒者の3年以内離職率は36.9%、大卒新卒者でも31.5%と非常に高い数字が報告されています(※1)。特に入社後1年以内で辞める若手も多く、企業にとっては慢性的な人材流出リスクとなっています。
職場が抱える“育成疲れ”の実態
採用した若手に一から教え、ようやく戦力になり始めたと思った矢先に退職されてしまう――このような経験が続くと、現場の教育担当者は「どうせまた辞めるのでは…」という諦めにも似た感情を抱くようになります。これが「育成疲れ」と呼ばれる状態です。
教育やフォローにかける手間が報われず、現場の士気が下がることで、新人を迎える空気そのものが悪化し、結果的にさらに離職率が高まるという悪循環が生じます。
さらに、若年層に比べてミドル・シニア層(特に60代)の離職率は極めて低く、定着率が高いこともデータで示されています。たとえば、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査では、60代前半の離職率は20代前半に比べて半分以下であるとされています(※2)。つまり、年齢層によっても離職傾向は大きく異なり、若年層だけに頼るリスクを見直す必要があるのです。
出典
(※1)厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年版)」
(※2)独立行政法人労働政策研究・研修機構「多様な就業形態に関するデータブック2023」
2. 60代採用が離職率を改善した理由とは?
仕事に対する価値観の違いが安定に直結
60代の求職者は、若手世代とは異なる価値観を持っています。彼らは「安定して長く働きたい」「社会とのつながりを保ちたい」「経験を活かして貢献したい」といったモチベーションを持って就職活動を行っています。報酬の額よりも、働きやすさや職場環境、人間関係を重視する傾向があり、それが職場への定着につながる大きな要因となっています。
また、シニア層は「今さら転職を繰り返すよりも、今ある職場で長く働きたい」という安定志向が強いため、1年未満の短期離職は非常に少なく、企業にとっては貴重な人材になります。特に、肉体的な負担の少ない軽作業や受付・管理業務などでは、定着率の高さが際立っています。
定着率の高い人材が職場に安定をもたらす
60代人材の大きな魅力は、「安定した勤務姿勢」です。勤勉で責任感が強く、時間を守る、遅刻をしない、欠勤が少ないといった基本的な勤怠の安定性が高い傾向があります。これは採用担当者にとって非常に心強い特性です。
また、人生経験に裏打ちされた落ち着きがあり、職場の空気を乱すことなく、周囲との協調性を大切にする方が多いのも特徴です。結果的に、現場でのトラブルが少なく、職場全体の雰囲気も安定しやすくなります。
このように、定着率が高い60代の採用は、離職に悩む企業にとって有効な解決策のひとつとなっています。
3. 成功事例に学ぶ!60代採用で職場が変わった企業の声
製造業:短期離職が激減し、教育負担も軽減
ある中堅製造業では、若年層中心の採用活動を行っていたものの、入社後半年以内の離職が相次ぎ、常に人材不足に悩まされていました。採用・育成コストが無駄になるたびに、現場の教育担当者も疲弊。結果的に生産ライン全体のパフォーマンスにも悪影響が出ていたのです。
そこで、思い切って60代のシニア層をターゲットに切り替えた結果、状況は一変しました。
60代の新規採用者は、これまでの職務経験を活かし、すぐに現場に適応。体力に配慮しつつ作業内容を細分化する工夫を加えたことで、無理なく長期間勤務できる環境が整いました。
結果として、半年以内の離職率が80%以上減少し、教育の手間も大幅に軽減されたのです。
担当者のコメントでは「教える手間が少ないだけでなく、自主的に後輩をサポートしてくれる存在になった。職場全体の空気も柔らかくなった」と高く評価されています。
小売業:ベテランの接客力が顧客満足度向上に貢献
また、別の小売業チェーンでも同様の成功事例があります。
若手アルバイト中心だった店舗では、接客マナーや商品知識の習得にバラつきがあり、顧客満足度アンケートの評価が低迷していました。そこで、接客経験豊富な60代人材を積極採用したところ、店舗の雰囲気と顧客対応力が大きく改善しました。
シニアスタッフは落ち着いた対応と豊富なコミュニケーション能力を活かし、お客様一人ひとりに丁寧に接するスタイルを徹底。その姿勢が若手にも良い影響を与え、店舗全体の接客レベルが向上しました。
採用半年後には、顧客満足度アンケートでの評価が15%以上改善するという成果が現れました。
この事例からも、単に人手を補充するだけでなく、60代人材の持つ「経験知」を戦略的に活かすことで、現場の質そのものを高められることがわかります。
4. 60代採用で注意すべきポイントとサポート制度
配慮すべき健康面・業務設計の工夫
60代人材を採用する際は、若年層とは異なる点に配慮する必要があります。特に注意したいのが健康面です。
60代は働く意欲が高い一方で、加齢に伴う体力の低下や、持病管理が必要なケースも少なくありません。
企業側としては、以下のような工夫が求められます。
・負担の少ない業務内容に設計する
→重量物の運搬を避ける、長時間の立ち仕事を減らすなど、業務内容を工夫する。
・休憩時間、休憩スペースの充実
→定期的に無理なく休憩が取れる環境を整備し、無理な連続勤務を防ぐ。
・体調報告、相談体制を整える
→日々の体調変化を報告できる仕組みを用意し、無理をさせない風土づくりを進める。
また、業務内容を細かく分解し、力仕事よりも経験値が活かせる「指導役」「補助業務」「受付・案内」「品質チェック」などのポジションを用意することで、60代人材が無理なく長く働ける体制が整います。
活用できる助成金やハローワーク支援制度
さらに、60代採用を進める際には、各種助成金や公的支援制度を積極的に活用することをおすすめします。
主な助成金制度は以下の通りです。
助成金名 | 内容 | 支給対象・条件 |
---|---|---|
65歳超雇用推進助成金 | 定年延長や定年廃止、継続雇用制度の導入に取り組む企業に支給 | 雇用管理制度整備、または70歳までの継続雇用計画策定が必要 |
特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース) | 高齢者(60歳以上)をハローワーク等経由で雇用した企業に支給 | 雇用保険加入、一定の雇用期間継続が条件 |
高年齢者無期雇用転換コース(2024年度新設) | 有期契約社員を無期雇用に転換した企業に支給 | 雇用形態転換後、一定期間継続雇用すること |
また、ハローワークでは「生涯現役支援コーナー」などを通じて、60代以上の求職者と企業とのマッチング支援を強化しています。地域によっては、高齢者雇用促進を目的とした相談員が常駐している場合もあり、採用活動において非常に心強いサポートが受けられます。
これらの制度を上手に活用することで、採用コストを抑えながら、安定した60代人材の確保が可能になります。
まとめ:60代採用で「安定した職場づくり」を目指そう
若手採用に力を入れても、離職率の高さに悩む企業は少なくありません。
そんな中で、60代人材の採用は、安定した職場づくりに大きな効果をもたらすことがわかってきました。
60代の求職者は、長期的な就業意欲が高く、社会とのつながりや役割を大切にする傾向があります。そのため、
・勤怠が安定している
・協調性が高くトラブルが少ない
・経験に裏打ちされた判断力と落ち着きがある
といった強みが、現場全体に良い影響をもたらします。
また、60代採用をきっかけに、職場の業務設計を見直したり、助成金や支援制度を活用したりすることで、より持続可能な人材戦略を構築できるチャンスにもなります。
人手不足が常態化する時代において、
年齢だけで採用対象を限定せず、多様な人材を活かす
という視点は、これからの企業経営に不可欠です。
離職率の改善に悩む企業こそ、60代人材の採用に一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。
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