1. そもそも消防団とは?|地域を支える“もうひとつの消防”
消防団とは、地域の防災活動を担う「非常勤・特別職の地方公務員」で構成された組織です。常備消防(いわゆるプロの消防署員)とは異なり、地域住民が本業の傍ら、地域の安全を守るために参加するボランティア的な位置づけで活動しています。全国でおよそ80万人が所属しており、人口減少や高齢化が進む中でも、各地で欠かせない存在となっています(出典:総務省「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する基本指針」)。
活動内容は多岐にわたり、火災時の初期消火支援はもちろん、台風や地震といった災害時の避難誘導、地域での防災訓練や啓発活動、さらには祭りやイベントでの警備支援なども行います。地域密着型の活動が中心となるため、顔なじみの住民との連携が取りやすく、行政がカバーしきれない“すき間”を埋める重要な役割を果たしています。
近年は高齢化に伴い、団員の年齢層も多様化。若者の加入が減る一方で、60代・70代の経験豊富な人材が注目されています。定年後の時間を有効に使いたい、地域に恩返しをしたいというシニア層が、「地域のために自分ができること」を探す中で、消防団という選択肢にたどりつくケースも少なくありません。
消防団は「地域に根差した、誰かの役に立てる仕事がしたい」と願う人にとって、非常にやりがいのある活動です。しかも、無理のない範囲で関われる柔軟な仕組みが整っており、「もうひとつの働き方」として、特にシニア世代からの注目が高まっています。
2. シニアが消防団で活躍できる理由とは?
かつては「若い人が中心」と思われていた消防団ですが、今では60代・70代のシニア世代が多く活躍しています。その背景には、団員の高齢化だけではなく、「シニアならではの強み」が消防団活動にマッチしていることがあります。
まず、シニア世代は豊富な社会経験と人間関係のスキルを持っています。長年働いた職場で培ったリーダーシップや調整力、地域への理解は、団員同士の信頼関係や地域住民との円滑なコミュニケーションに直結します。特に自治体や町内会との連携が必要な防災活動においては、その存在が欠かせません。
また、定年後は比較的自由な時間が取りやすくなるため、日中の訓練や講習、防災イベントへの参加もしやすくなります。体力面に不安があるという方も、近年は「機能別消防団員制度」が普及しつつあり、火災現場ではなく広報活動や後方支援、物資管理、避難所の運営サポートなど、自分に合った形で関われる仕組みが整ってきています。
さらに、「人とつながること」が健康寿命を延ばすという医学的知見も、シニアの消防団参加を後押ししています。仲間と目的を共有し、誰かの役に立てることは、生きがいや自己肯定感につながりやすく、孤立やうつの予防にも効果的です(参考:厚生労働省「健康日本21」)。
「地域の役に立ちながら、無理のないペースで活動したい」と考える方にとって、消防団は非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。
3. 収入だけじゃない!消防団で得られる“心の報酬”
消防団の活動は、決して無償ではありません。年額の報酬や出動手当、訓練参加に対する謝礼などが用意されており、これは各自治体の予算に基づいて支給されます。たとえば、東京都内では年額報酬が36,500円〜120,000円程度、出動1回あたりにつき8,000円前後の手当が支給される自治体もあります(出典:東京都総務局「消防団員の待遇」より)。ただし、これだけを生活の柱とするほどの額ではないため、多くの団員は「経済的メリット」よりも「心のやりがい」を重視しています。
では、その“心の報酬”とは何でしょうか?
一つは、「誰かの役に立っている」という実感です。火災や災害の際に地域住民の安全を守ることは、想像以上に大きな充実感と達成感をもたらします。また、日頃から防災訓練や広報活動を通じて、地域とのつながりを深めることで「自分の存在が地域に必要とされている」と感じることができるのです。
もう一つは、新しい人間関係の構築です。消防団には多様な職業・年齢層の人が集まっており、同じ目的を持つ仲間と協力することで、自然と深い信頼関係が築かれていきます。退職後、人とのつながりが減ってしまったという方でも、ここで新たな居場所を見つけることができるでしょう。
さらに、日常では味わえない非日常の体験も魅力の一つです。訓練や災害対応には緊張感が伴いますが、そのぶん刺激にもなり、「まだまだ自分は現役だ」と感じられる場面が多くあります。
消防団の活動は、金銭的な報酬以上に、「地域とのつながり」「仲間との連帯感」「役割を果たす喜び」といった内面的な満足感をもたらしてくれる、そんな“心の報酬”にあふれたフィールドです。
4. どうすれば入れる?消防団の参加方法と手続きの流れ
消防団に参加するのは、実はそれほど難しいことではありません。基本的に「その地域に居住している、または勤務している18歳以上の健康な人」であれば、男女問わず誰でも入団資格があります。年齢の上限は法律では定められていませんが、実際の受け入れ年齢や体力的な条件は自治体ごとに異なるため、まずはお住まいの市区町村の役所や消防署に相談するのが第一歩です。
▼参加までの主な流れ
1.問い合わせ・相談
→ 役所や消防署に「消防団に興味がある」と連絡を取る。地域の団員や担当者との面談が行われることもあります。
2.申込書の提出
→ 所定の申込書類を記入・提出。必要に応じて住民票などの書類が求められます。
3.面談・簡単な健康確認
→ 活動に支障がない健康状態であるかの確認が行われます。高齢者の場合でも、体力に応じた役割を担うことで問題ないケースも多いです。
4.入団決定と辞令交付
→ 入団が正式に決まると、自治体の長から「辞令」が交付されます。ここから正式な団員としての活動が始まります。
5.初期訓練への参加
→ 消火器の扱いや防火知識など、必要最低限の訓練を受けてから本格的な活動に入ります。
▼入団時の注意点
・活動地域は、原則として自分の居住地(または勤務先)です。
・自治体によっては年齢や活動可能時間に応じて、限定的な役割(たとえば「機能別消防団員」)として参加できる制度もあります。
・手当や報酬は、活動量に応じて支給されるため、参加頻度の高い方が多く受け取れる仕組みです。
興味を持ったタイミングが“始めどき”です。まずは地域の消防署や役所に相談して、自分にできる関わり方を探してみることから始めてみましょう。
5. 活動の実態は?気になるスケジュールと負担感
消防団に興味はあるけれど、「体力的に大丈夫かな?」「どのくらい時間が取られるの?」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。特にシニア世代にとって、無理なく続けられるかどうかは大きなポイントです。ここでは、消防団の活動スケジュールや負担感について、実情をわかりやすくご紹介します。
▼活動の頻度と内容
消防団の活動は、主に以下のようなものがあります。
・月1〜2回程度の訓練・ミーティング
地域によって差はありますが、定例会や操法訓練(消火や放水の基本操作)などが中心です。
・年間数回の防災訓練・イベント協力
自治体や地域の防災訓練に協力したり、祭りやマラソン大会の警備支援に参加したりするケースもあります。
・火災、災害時の出動(緊急)
実際に火災や災害が発生した場合は、招集の連絡が入り、出動を要請されることも。ただし高齢の団員については、無理のない範囲での参加が認められている地域も多く、体力や時間に合わせた活動参加が可能です。
▼実際の負担感は?
多くの団員は、本業や家庭生活の合間を縫って活動に参加しています。特に退職後のシニア層にとっては、週1回以下の活動であれば生活の負担にはなりにくく、むしろ「生活にハリが出た」「出かける目的ができた」と前向きな声が多く聞かれます。
また、自治体によっては「機能別消防団員」や「OB団員制度」を導入しており、消火活動を行わず、地域の見守りや避難誘導、資機材の管理など比較的負担の少ない役割に就くことも可能です。
▼家族の理解もポイント
出動の可能性があることから、家族の理解を得ることも大切です。ただし、火災や災害対応はごく限られた頻度であり、負担感は限定的です。むしろ地域とつながり、精神的な充実を得ている姿を見て、家族からの理解が深まるケースも多く見られます。
6. 地域に必要とされる喜び|消防団で見つける生きがい
退職後、「もう自分は社会の役に立てないのでは」と感じてしまう方も少なくありません。しかし、消防団の活動は、そんな不安を吹き飛ばしてくれる「居場所」と「役割」を与えてくれます。
消防団は、地域に密着した組織であり、住民一人ひとりの安全と安心を支える存在です。火災や災害が起きたとき、地域で最初に駆けつけるのが消防団であり、その迅速な対応が被害の拡大を防ぐ鍵となります。こうした活動を通じて、地域の人々から「ありがとう」と言ってもらえる経験は、何にも代えがたい達成感をもたらしてくれます。
特にシニア世代にとっては、「頼られること」が生きがいにつながります。若い団員に経験を伝える立場として、リーダー的な役割を担うこともあれば、防災の知識を地域に伝える「語り部」として活躍することも可能です。自分の人生で培ってきた知恵やスキルが、地域の中で必要とされている実感は、第二の人生を豊かにしてくれる大きな要素です。
また、活動を通じて自然と地域の人々と関係が深まるため、孤立しがちな高齢者にとっても良い刺激になります。顔見知りが増え、外出する機会が増えることで、心身の健康維持にもつながります。
「地域の一員として、できることをしたい」「自分の価値を再確認したい」と思う方にとって、消防団はまさにぴったりの選択肢。経済的な報酬以上に得られるものが、ここには確かに存在しています。
地域で輝くあなたに、ぴったりの仕事がきっと見つかります。 シニア向け求人サイト「キャリア65」を今すぐチェック!