1. なぜ“もう一度働きたい”と思ったのか？｜シニアの本音と背景
70歳のAさんは、60歳で長年勤めた小売店を退職後、しばらくのんびりとした生活を送っていました。当初は「毎日が日曜日」状態を楽しんでいたものの、数か月が経つと徐々に違和感を覚えるようになりました。
自由な時間が多すぎて、日々の目標がなくなり、誰とも話さない日が続く。気がつけばテレビを見て1日が終わることもありました。
一方で、生活費にも少しずつ不安が…。年金だけではレジャー費や医療費をまかないきれず、貯金の目減りにも敏感になります。そんな中、「もう一度働いてみようかな」という気持ちが自然と芽生えたのです。
Aさんと同じように、再び働くことを考えるシニアは増えています。背景には以下のような理由があります。
・収入面の不安：年金に加えて少しでも収入を得たい
・社会とのつながり：人との関わりが減ると孤独を感じやすい
・健康維持の意識：適度な緊張感や体の動きが健康維持に役立つ
・自分の存在価値を再確認したい：「まだ誰かの役に立てる」と思いたい
さらに最近では、「ブランクがあっても大丈夫」と明記した求人も増えており、勇気を持って一歩を踏み出すシニアも少なくありません。
2. 働くことで得られる3つのメリット｜収入・健康・人間関係
再び働くことには、「お金のため」だけではない、多くのメリットがあります。特にシニア世代にとって、働くことは生活の質を高める重要な要素になっています。ここでは代表的な3つのメリットを紹介します。
1. 収入の安定｜年金＋αで暮らしに余裕を
多くの方がまず考えるのは、やはり収入面の補填です。
総務省の「家計調査（高齢夫婦無職世帯）」によれば、2023年時点での平均的な実収入は約23万円。そのうち約20万円が公的年金ですが、実支出は平均26万円ほどで、月に3万円以上の赤字が生じている家庭も少なくありません（※1）。
パートタイムで月5万円〜8万円ほど稼ぐだけでも、こうした赤字を解消し、旅行や趣味への出費にも余裕が生まれます。
2. 健康の維持｜体と心のバランスが保たれる
仕事に出るというだけで、生活にリズムが生まれます。毎日決まった時間に起き、軽く身体を動かすだけでも健康効果は大きいもの。
また、仕事を通じて人と会話することで、脳の活性化にもつながります。認知機能の維持には、運動だけでなく「人との関わり」が重要だと言われています。
3. 人とのつながり｜孤立を防ぎ、心に張りを
仕事を再開することで、自然な形で社会とつながることができます。定年後は人との接点が急減しがちですが、職場や利用者との何気ない会話が、日々の活力につながります。
中には「久しぶりの人間関係が不安」という方もいますが、近年ではシニア層を歓迎し、丁寧なフォローをしてくれる職場も増えています。ブランクがあっても、「無理せず働ける環境」が整っているので安心です。
※1 出典：総務省統計局「家計調査年報（家計収支編）2023年」
3. 70歳から始められる仕事の特徴とは？無理なく続けられるポイント
「もう一度働きたい」と思っても、体力や気力に不安を感じる方は少なくありません。だからこそ、70代の再就職では“無理なく続けられる仕事”を選ぶことが大切です。
ここでは、70歳からでも始めやすく、長く続けやすい仕事の特徴をご紹介します。
特徴1：身体的な負担が少ない
シニアに人気の仕事には、立ちっぱなし・重労働ではない業務が多く選ばれています。たとえば「受付」「清掃」「マンション管理」「施設スタッフ」などは、軽作業や見守り業務が中心で、体力面の心配が比較的少ないのが特徴です。
特徴2：シフトが柔軟で働き方が選べる
「週2日だけ」「午前中だけ」といった柔軟な働き方ができることも大きな魅力です。高齢者向けの求人では、勤務時間や日数を本人の希望に合わせて調整できるケースが増えています。
ブランクがある方も、短時間勤務から慣らしていくスタイルなら、安心してスタートできます。
特徴3：スキルや経験が活かせる
店頭での接客経験や、人とのコミュニケーション力、長年のビジネスマナーなど、過去の経験が評価される職場も多くあります。特に「販売補助」や「案内係」「図書館のスタッフ」などは、特別な資格がなくても始められ、経験がそのまま活きるポジションです。
特徴4：シニアを歓迎する職場が増加中
高齢化が進む今、企業や地域でもシニア世代を積極採用する動きが広がっています。たとえば、シニア雇用に特化した求人サイトでは「60代・70代活躍中」と明記されている求人も多く、ブランクがあっても前向きに受け入れてくれる風土があります。
このように、自分の体調や希望に合った条件で選べば、70歳からでも無理なく働き続けることができます。
4. おすすめの仕事例5選｜シニアに人気のパート・アルバイトとは？
70代でも無理なく続けられる仕事には共通点があります。それは「体力的に負担が少ない」「人と関わることができる」「経験が活かせる」の3点。
ここでは、実際にシニアに人気のある仕事を5つご紹介します。いずれもブランクがあっても始めやすい職種です。
① マンション管理人（管理員）
共用部の見回りや掃除、ごみ出しの確認などが主な業務。住民対応もありますが、特別な資格は不要です。
勤務日数や時間が限定されている場合が多く、「週2～3回、午前中だけ」など柔軟な働き方が可能。適度に体を動かしながら、社会と関われる職種です。
② 店舗スタッフ・品出し補助
スーパーやドラッグストアでの簡単な品出し、レジ補助、買い物かごの整理などを行う仕事。特に朝の時間帯は人手不足になりやすく、シニアを歓迎する職場も多くあります。
接客が好きな方には向いており、再雇用などで「前職の経験を活かせる」ケースも。
③ 清掃スタッフ（施設・ビル・公共機関）
オフィスビルや病院、学校などの共用スペースを清掃する仕事。
体力を使うと思われがちですが、「短時間・エリア限定」の業務も多く、慣れれば比較的続けやすいのが特徴。黙々と作業したい方にもおすすめです。
④ 家事代行・ベビーシッター
掃除や洗濯、簡単な料理といった家庭内の家事をサポートする仕事は、シニアの生活経験がそのまま強みになります。
また、近年は「祖父母のように接してくれるベビーシッター」が求められることも増えており、子育て経験のある方にとっては非常に親しみやすい仕事です。
短時間勤務やスポット依頼も多く、体への負担を抑えながら社会と関われる点が魅力。
特別な資格が不要な場合も多いため、未経験でも始めやすく、シニア世代からの応募も歓迎されています。
⑤ 警備スタッフ（施設常駐・夜間見守り）
工場や店舗などの巡回・出入口チェックを行う仕事。夜間帯や短時間勤務の求人も多く、シニア歓迎の求人が年々増加中です。
警備業法に基づく「新任研修」を受ければ、未経験でもスタート可能。座り業務も多く、体力に合わせた働き方が選べます。
これらの仕事は、すべて「ブランクOK」や「60歳以上活躍中」などと記載された求人も豊富で、安心して応募しやすいのがポイントです。
5. 働く前に確認したい！体力・時間・希望条件の整理術
「70歳から働く」と言っても、若いころのように無理はできません。自分に合った仕事を見つけるためには、働き始める前の“自己チェック”がとても重要です。ここでは、再就職前に整理しておきたい3つの視点をご紹介します。
1. 自分の体力・健康状態を正しく把握する
まず最優先で確認したいのが、自分の体力や健康の程度です。
・長時間の立ち仕事に耐えられるか？
・階段や重い物の持ち運びは問題ないか？
・定期的な通院や服薬はあるか？
たとえば、体力に自信がない方は座り仕事や軽作業中心の仕事を。逆に「適度に体を動かしたい」という方は、屋外や巡回業務なども選択肢に入ります。
2. 生活リズムに合った勤務時間を選ぶ
「朝が弱い」「週末は家族との時間を取りたい」など、生活スタイルに合わせた働き方も重要です。
・週何日働きたいか？
・1日の勤務時間はどのくらいが理想か？
・朝、昼、夜のどの時間帯が負担にならないか？
シニア求人の多くは週2〜3日・短時間勤務が可能なケースも多く、まずは“自分にとって無理のないシフト”から始めるのがおすすめです。
3. 自分が「何を大切にしたいか」を整理する
単に収入だけでなく、「人との関わりがほしい」「静かな環境で働きたい」「これまでの経験を活かしたい」など、働く目的や価値観も明確にしておきましょう。
実際にシニア向けの求人では、「未経験歓迎」「人柄重視」「60代以上のスタッフ多数在籍」など、ブランクがあっても安心できる条件が増えています。
条件が合わなければ無理に妥協せず、自分の軸に合う仕事を選ぶことが、長く続けるための秘訣です。
こうした自己チェックをもとに、条件を整理しておくことで、応募時や面接時もスムーズに話を進めることができます。自分に合った働き方を選ぶ準備として、ぜひ一度紙に書き出してみるのもおすすめです。
6. 就職活動の始め方｜シニア世代向け求人の探し方と注意点
「働きたい気持ちはあるけれど、どこから探したらいいの？」という不安の声はよく聞かれます。
70代でも安心して始められる就職活動のコツと、よくある注意点についてご紹介します。
シニア向けの求人は“専門サイト”が効率的
現在は、シニア向け求人に特化した専門サイトやアプリが多数あります。たとえば「シニア歓迎」「60代・70代活躍中」と絞り込みができるサイトを活用すれば、年齢で落とされる心配が減り、安心して応募できます。
▼代表的な探し方の例：
・シニア特化型求人サイト（例：キャリア65、グラン・ジョブなど）
・ハローワーク（公共職業安定所）
・地域のシルバー人材センター
・地元の掲示板、役所の福祉課
・知人、友人の紹介（リファラル）
特に最近では、「ブランクOK」「未経験歓迎」と明記された案件も多く、自信がなくても挑戦しやすい環境が整ってきています。
面接でよくある質問と準備のポイント
シニア向け求人の面接では、「週に何日働けるか？」「体調に問題はないか？」「どのような働き方を希望するか？」など、柔軟性や継続性を確認する質問が多いのが特徴です。
準備しておくと安心なポイント：
・これまでの職歴（ざっくりでOK）
・なぜ働きたいと思ったか
・働ける曜日、時間帯
・通勤手段と時間
無理して若作りする必要はありません。「自分らしく、誠実に話すこと」が何より信頼につながります。
注意したいのは「ブラック求人」や過剰な負担
中には、シニアでも応募できると謳いながら、実際には過重労働を求められるケースもあるため注意が必要です。
✔ 求人票の内容に「高収入」「自由出勤」などの過剰な表現がある場合は要注意
✔ 実際に働いている人の年齢層や仕事内容を確認できる求人サイトを選びましょう
✔ 不安な場合は、複数の求人を見比べて判断するのが基本です
最初から完璧を目指す必要はありません。ブランクがあっても、「働きたい」という気持ちがあれば、きっとあなたに合った職場に出会えます。
7. まとめ｜「働くこと」が人生を前向きに変える第一歩に
70歳を迎えた今、「もう一度働いてみたい」と感じるのは、ごく自然なことです。
生活費の補填や健康維持、新しい人間関係の構築など、働くことにはさまざまなメリットがあります。
本記事では、70代からでも始めやすい仕事の特徴や、おすすめの職種、働く前の自己チェックの重要性、就職活動の進め方までをご紹介しました。
特に印象的なのは、「ブランクがあっても歓迎される職場が確実に増えている」という点です。かつては「高齢＝仕事がない」と言われた時代もありましたが、今は“70代が主力”という職場も存在するほどに変化しています。
もちろん、体調や家庭の事情でフルタイムは難しいかもしれません。しかし、自分に合った働き方を選ぶことで、無理なく社会とつながり、心と体の健康を保つことができます。
人生100年時代といわれる現代。
「働く」という選択肢が、あなたの生活に新たなリズムと生きがいをもたらしてくれることを願っています。
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