定年後も健康に働くために|脳血管障害を知り、予防する習慣と働き方

健康

1.【脳血管障害とは?】脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の基礎知識

脳血管障害とは、脳の血管に何らかのトラブルが起き、血流が途絶えたり、出血したりすることで脳の機能が損なわれる病気の総称です。代表的なものに「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」があります。

● 脳梗塞(のうこうそく)

脳の血管が血栓(血のかたまり)などで詰まり、酸素や栄養が届かなくなることで脳細胞が壊死してしまう病気です。日本人の脳血管障害の中で最も多く、全体の約7割を占めます(厚生労働省「令和3年患者調査」より)。


● 脳出血(のうしゅっけつ)

高血圧などが原因で血管が破れ、脳内に出血するタイプです。脳の圧迫により神経障害が起こりやすく、発症後の後遺症も重くなりがちです。


● くも膜下出血(くもまくかしゅっけつ)

脳を覆う「くも膜」の下にある血管が破裂し、出血する病気です。主な原因は脳動脈瘤の破裂で、突然の激しい頭痛と意識障害が特徴です。致死率が高く、緊急対応が必要になります。


● 早期発見がカギ

いずれの病気も、発症から時間が経つほど脳へのダメージが大きくなり、回復が難しくなります。「顔のゆがみ」「片側の手足のしびれ」「言葉が出ない」などの症状が突然現れた場合は、すぐに医療機関へ連絡することが命を守る第一歩です。


2.【シニア世代に多い理由】加齢と生活習慣の影響を知っておこう

脳血管障害は高齢者に多い病気として知られています。その背景には、「加齢にともなう身体機能の変化」と「長年の生活習慣」が大きく関係しています。

● 血管の老化がリスクを高める

年齢を重ねると、血管の弾力性が失われ、動脈硬化が進行しやすくなります。血管の内壁にコレステロールなどがたまり、血流が悪化すると、脳への酸素供給が不安定になります。この状態が続くと、脳梗塞などの発症リスクが大きく高まります。

また、長年の高血圧を放置していると、血管に負荷がかかり続けるため、脳出血やくも膜下出血の原因にもなり得ます。


● 高血圧・糖尿病・脂質異常症は要注意

いわゆる「生活習慣病」と呼ばれる疾患は、脳血管障害の危険因子です。特に高血圧は、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血すべての発症に関与しています。

日本脳卒中学会の報告によれば、脳卒中患者の約7割が高血圧を患っており(※参考:日本脳卒中学会「脳卒中データバンク2020」)、血圧管理の重要性が改めて示されています。


● 若い頃の習慣が将来に影響する

偏った食生活、喫煙、過度の飲酒、運動不足といった習慣が、何十年もかけて脳血管をむしばむこともあります。そのため、若いころからの生活の積み重ねが、60代・70代以降の発症リスクに直結するのです。


3.【予防の第一歩】食事・運動・睡眠で“脳を守る”生活習慣

脳血管障害の多くは、日々の生活習慣を見直すことで予防できるといわれています。特に「食事」「運動」「睡眠」の3つは、脳と血管の健康を守るうえで欠かせない基本習慣です。

● 食事:減塩とバランス重視の和食を意識

高血圧は脳卒中の最大リスク要因であり、塩分の過剰摂取がその一因です。厚生労働省が推奨する1日の塩分摂取目標は男性7.5g未満ですが、日本人の平均はこれを上回っているのが実情です(※出典:厚生労働省「国民健康・栄養調査」)。

味噌汁や漬物などの和食文化は塩分が多くなりがちなので、「減塩タイプの調味料」「出汁でうまみを加える」などの工夫を。さらに、魚・野菜・海藻・大豆製品を中心とした地中海式や和食中心のメニューは、血管の老化予防にも効果的です。


● 運動:無理のない範囲で“毎日続ける”ことが大切

ウォーキングやラジオ体操といった軽い有酸素運動は、血圧の安定、血流改善、ストレスの軽減にもつながります。理想は1日30分程度の運動を週5日以上。ただし、持病がある方は主治医と相談しながら進めましょう。

散歩がてら買い物に出かけたり、庭の草むしりをしたりと、日常の中で体を動かす習慣を持つことが予防につながります。


● 睡眠:脳のメンテナンス時間をしっかり確保

睡眠中は脳内の老廃物を排出し、神経細胞を修復する時間とされています。慢性的な睡眠不足は、高血圧や糖尿病、動脈硬化のリスクを高めるだけでなく、脳卒中の引き金にもなり得ます。

65歳以上の高齢者の場合、6~7時間程度の質の良い睡眠が理想とされています。寝つきを良くするためには、就寝前のスマホやカフェイン摂取を控え、就寝・起床時間を一定に保つことが重要です。


4.【社会参加がカギ】人とのつながりが脳血管障害の予防になる理由

脳血管障害の予防には、食事や運動などの生活習慣に加えて、「社会とのつながり」が大きな役割を果たします。実は、孤立や孤独は、脳の健康にも悪影響を与えることが明らかになっています。

● 孤立は脳血管障害のリスク要因

国立長寿医療研究センターの研究では、「社会的に孤立した高齢者は、そうでない人に比べて脳卒中の発症リスクが高い」と報告されています。人との関わりが少ないと、運動量や外出頻度が減り、生活習慣が乱れやすくなるだけでなく、ストレスやうつ症状の要因にもつながります。

ストレスは血圧を上昇させ、血管に負荷をかけるため、間接的に脳血管障害のリスクを高めてしまうのです。


● 日常的な会話や外出が“脳の刺激”になる

他人と話したり、共通の目的に向かって活動したりすることは、脳に良い刺激を与えます。たとえば、地域のボランティア活動や趣味の集まりに参加することで、感情の活性化・思考力の維持につながります。

特に70代以降は、現役時代と比べて刺激が少なくなる傾向があるため、「誰かと話す」「何かをする」だけでも、脳の働きを保つ意味で非常に有益です。


● 社会参加=生活リズムの安定にも

何曜日にどこへ行く、誰と会う、といった“定期的な予定”があることは、生活リズムの維持にも役立ちます。生活リズムが整うことで、睡眠の質や食事の時間も安定し、結果として血圧や代謝などの健康状態も良好に保ちやすくなります。


5.【働くことが予防に】体と脳を動かす“仕事”が脳血管障害を防ぐ理由

「もう歳だから仕事はムリ」と思い込んでいませんか?
実は、シニア世代にとって“働くこと”そのものが、脳血管障害の予防に大きな効果をもたらすことが分かってきています。

● 仕事=「生活習慣の軸」になる

仕事をしていると、毎日の起床時間や食事、活動のリズムが整いやすくなります。これは健康維持に欠かせない「生活リズムの安定」を生む大きなメリットです。

たとえば週3回、決まった時間に通勤するだけでも、自然にウォーキングの時間が確保され、軽度の運動習慣が生まれます。これにより血圧が安定し、脳血管障害のリスクを下げることができます。


● 脳がフル回転する「働く環境」

職場では、段取りを考えたり、相手の言葉を理解したり、自分の役割を果たしたりと、知らず知らずのうちに脳を使っています。これがいわば“日常のリハビリ”のような効果を持ち、脳の機能低下を防ぐことにもつながります。

さらに、少しの緊張感や責任感は、脳の血流を活発にし、前向きな気持ちを保つエネルギーにもなります。


● 働くことで「自己効力感」も得られる

脳血管障害のリスクを高める要因のひとつが、ストレスやうつなどの精神的な不調です。仕事を通じて誰かに感謝されたり、自分の役割を果たしていると感じることは、シニアにとって非常に重要な「心の栄養」になります。

たとえば、施設清掃、軽作業、警備、園芸などの仕事は、体を軽く動かしながら人と関われるため、脳と体の両面で無理のない“予防的な働き方”としておすすめです。


【まとめ】健康と収入、社会とのつながりを両立する生き方

脳血管障害は命にかかわるだけでなく、回復後も長いリハビリや生活の変化を強いられる可能性がある病気です。しかし、正しい知識を持ち、日々の生活習慣や社会との関わりを大切にすることで、そのリスクは大きく下げることができます。

特にシニア世代にとって重要なのは、「健康」「収入」「社会参加」の3つのバランスを意識することです。

・食事、運動、睡眠を整えることで血管の健康を保ち、
・地域のつながりや人との交流を通じて脳に刺激を与え、
・無理のない範囲で働くことで、生活にリズムと目的が生まれる。

こうした日々の積み重ねが、脳血管障害を防ぎながら、より充実した“定年後の人生”を支えてくれます。

「年齢的にもう遅い」と諦める必要はありません。
70代であっても、自分の体力や興味に合った仕事や活動を見つけることで、健康と生きがい、そして社会とのつながりを同時に得ることができるのです。

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