1.【なぜ足りない?】年金だけでは生活が苦しくなる現実
「老後は年金でなんとかなる」と考えていたものの、実際に生活を始めてみると「思ったより足りない」と感じるシニアが多くいます。その背景には、物価上昇・医療費増加・年金額の目減りなど、複数の要因が複雑に絡み合っています。
■ 年金支給額と支出のギャップ
総務省の「家計調査(2023年/高齢夫婦無職世帯)」によれば、
・月間の平均支出:約26.5万円
・年金などの平均実収入:約21.5万円
つまり、毎月約5万円の赤字が発生しているというのが現実です。この不足分は預貯金を取り崩して賄うか、収入を増やす必要があります。
しかもこれは「夫婦二人」のケースであり、一人暮らしの場合は家計における支出の割合が増えるため、さらに厳しい数値になることが想定されます。
■ 想定外の支出が増える高齢期
年齢を重ねるにつれて、以下のような予想しづらい支出が発生しやすくなります。
・医療費の増加(慢性疾患、通院、入院等)
・介護関連費用(要介護状態への備え)
・家の修繕、バリアフリー化
・子や孫への援助(冠婚葬祭、教育費支援など)
これらは年金だけではまかなえないケースが多く、生活の見通しが立ちにくくなる原因になります。
■ 物価上昇と年金制度の限界
近年は食品・光熱費・日用品など、身近な生活コストが上昇傾向にあります。一方で、年金額は物価上昇ほどには増額されず、実質的な「年金の目減り」が進んでいます。
加えて、現行の年金制度は「現役世代が高齢者を支える仕組み」であるため、少子高齢化が進む日本では将来的な給付水準の引き下げも懸念されています。
■「生活できるか」から「生活を続けられるか」へ
年金だけで最低限の生活は可能かもしれませんが、「安心して」「継続的に」暮らしていくには不安が残ります。旅行や趣味、孫との時間など、人生の楽しみを持ち続けるためには、もう少しゆとりのある生活設計が必要です。
このように、年金に頼り切った生活にはリスクが伴います。だからこそ、早めに支出と収入のバランスを見直し、「備える姿勢」が求められているのです。
2.【支出の見直し】老後の生活費を抑えるコツとポイント
年金だけでは足りない時代、支出の見直しは「老後マネー」を守る第一歩です。特に固定費や日々の生活費をムダなく管理することが、将来の安心につながります。ここでは、まずやるべき家計の見える化から、実践しやすい節約術まで詳しく解説します。
■ 最初にすべきは「家計チェック」
まず、何にいくら使っているかを正確に把握することが重要です。以下のような方法を使えば、無理なく始められます。
【方法1】ノートや家計簿アプリで毎日の支出を記録
→ 食費、日用品、交際費など、細かく分類してみることで、ムダな出費が可視化されます。
【方法2】1か月分の銀行口座・レシート・クレジット明細を確認
→ 大まかに固定費(家賃・保険・光熱費)と変動費(食費・娯楽など)に分けてみるだけでも効果的です。
【方法3】「1週間だけ」など短期集中で記録する
→ 継続が難しい人には、まずは1週間だけ記録し、支出の傾向を知る方法もおすすめです。
※特に、現金ではなくカードや電子マネー払いが多い方は、自動連携できる家計簿アプリ(例:マネーフォワードME、Zaim)を活用すると便利です。
■ 節約ポイント①:住居費の見直し
老後の支出で重くのしかかるのが住居費。以下の工夫で削減が可能です。
・賃貸なら家賃の安い高齢者向け住宅やUR賃貸を検討
・持ち家なら固定資産税の減免やシェア居住(子ども世代との同居)も選択肢
・公営住宅や地域の福祉住宅制度も要チェック
・家に空き部屋があるようなら、レンタル収納のシェアサービスやルームシェアを検討
■ 節約ポイント②:食費の管理
食費はちょっとした意識で大きく変わります。
・安売り日、特売日を狙ってまとめ買い
・献立を立てて無駄なく使い切る
・作り置き、冷凍保存を活用
・1週間単位で食費予算を設定する
また、地域の高齢者向け配食サービスなどを利用すれば、栄養バランスを保ちつつコストも抑えられることがあります。
■ 節約ポイント③:光熱費・通信費の見直し
・電気やガスは「まとめて契約」できる会社に乗り換えるとお得な場合も
・スマホは格安SIMに変更するだけで数千円節約可能
・不要なサブスク(動画・雑誌アプリなど)を見直す
■ 節約ポイント④:保険・医療費の見直し
・子育てが終わったら保障の大きな生命保険は見直し対象
・通院、薬代は「ジェネリック医薬品」を活用
・健康診断やがん検診は自治体の無料制度を積極的に利用
■ 節約ポイント⑤:趣味・交際費を賢く楽しむ
生活の質を下げずに楽しむには、
・図書館やシニア割引のある施設を活用
・ボランティア活動やサロンなど“無料”の場に参加
・外食はクーポン活用やランチ中心に
「お金の流れを“見える化”すること」は、節約の第一歩です。日々のちょっとした習慣が、老後の安心とゆとりに大きくつながっていきます。
3.【収入源を増やす】無理なく続けられる“もうひとつの仕事”とは?
老後の生活費を補うために、無理なく働ける「もうひとつの仕事」を探すシニアが増えています。年齢や体力、ライフスタイルに応じて選べる仕事は多く、健康維持や社会参加といった“お金以上のメリット”も得られる点が注目されています。
以下に年齢を問わず、無理なく小さく働ける仕事を紹介します。
1. お弁当の配送スタッフ
高齢者向けの配食サービスはニーズが拡大しています。地域ごとに決められたルートを回り、利用者に温かい食事と笑顔を届ける仕事です。週2〜3日、午前中だけでもOKの案件が多く、気軽に始められます。
2. マンション・施設管理スタッフ
共用部分の清掃や設備の簡易点検、来客対応などを行う仕事です。屋内勤務が中心のため、体に負担が少なく、再就職先としても人気です。
3. 清掃・軽作業スタッフ
ビルや商業施設、オフィスなどでの清掃業務、または工場での仕分け・検品といった軽作業は、年齢問わず募集があり、未経験でも始めやすい職種です。短時間勤務にも対応しており、体力に自信のない方にもおすすめです。
4. ベビーシッター・家事代行スタッフ
子育てや主婦経験が活かせる仕事として注目されているのがこの分野です。ベビーシッターでは、保護者が不在の間、子どもの見守りや遊び相手などを担当。家事代行では掃除や洗濯、買い物代行といった日常業務を請け負います。特別な資格がなくても始められるケースが多く、主婦層や女性シニアに人気です。
5. 介護補助スタッフ(資格不要のサポート役)
介護施設やデイサービスでの補助業務も、シニア層に人気です。食事の配膳や移動の見守り、話し相手などが主な仕事内容で、介護資格がなくても勤務できる職場も増えています。人の役に立ちたいという思いを持つ方に最適な仕事です。
これらは体力的にも比較的負担が少なく、短時間勤務で社会とつながることもできます。働くことで収入を得られるのはもちろんのこと、生活にリズムが生まれ、心身の健康維持にも役立ちます。
また、シニア歓迎の求人を多数掲載している求人サイトを活用すれば、自分に合った仕事が見つかりやすくなります。自分の過去の経験や得意なことを活かせる職種を選ぶと、働くことがより楽しく、意義のあるものになるでしょう。
4.【公的制度を活用】高齢者向けの給付金・助成金制度
老後の収入を補う手段は、仕事や節約だけではありません。国や自治体が用意している給付金や助成金、減免制度を活用することで、家計を大きく助けることができます。これらは意外と知られておらず、申請しないと受け取れないものが多いため、知っておくだけでも大きな差になります。
以下に代表的な支援制度をご紹介します。
1. 高額療養費制度
医療費の自己負担が一定額を超えた場合、その超過分が払い戻される制度です。年齢や所得に応じて上限額が設定されており、70歳以上の一般的な所得層の場合、1か月あたりの上限は約14,000円程度です(※厚生労働省「高額療養費制度について」より)。
→ 医療費がかさんだ月には、必ず申請するようにしましょう。
2. 国民健康保険・介護保険料の減免
収入が大幅に減った場合や災害などの理由がある場合、保険料が減額または免除される場合があります。各自治体で判断されるため、お住まいの役所の窓口で確認してみてください。
3. 介護サービスの利用と負担軽減
要介護・要支援の認定を受けると、介護保険サービスを1〜3割の自己負担で利用できます。訪問介護、デイサービス、ショートステイなど、必要に応じた支援が受けられ、家族の負担も軽くなります。
4. 特別給付金や生活困窮者支援金(自治体独自)
一部の自治体では、一定年齢以上の住民に対して特別給付金や生活支援金を支給しているケースもあります。たとえば東京都では、住民税非課税の高齢者に対して5千〜1万円程度の給付を行っている実績があります。
5. シニア割引・福祉サービス
直接的な「給付金」ではないものの、日々の生活費を下げるために活用できる制度です。たとえば、
・公共交通機関のシニア割引(例:敬老パス)
・公民館、スポーツ施設の利用料割引
・ごみ袋、水道料金の減免制度
など、自治体独自のサービスが多数あります。
制度を使いこなすためのポイント
1.必ず申請が必要な制度が多い
多くの制度は自動で適用されません。わからない場合は、地域の「地域包括支援センター」や「社会福祉協議会」に相談するのがおすすめです。
2.年金生活者でも対象になる制度がある
「働いていないから対象外」と思い込まず、収入・世帯構成・健康状態などによって適用される制度もあります。
3.インターネットやチラシをこまめにチェック
市役所や地域センターで配布されている広報誌やチラシ、公式サイトなどには、支援制度の最新情報が掲載されています。
これらの制度を上手に活用することで、収入が増えなくても実質的な生活の支援につながります。「知らなかった」で済まさず、まずは自分に使える制度があるかどうか、確認してみましょう。
5.【“働く”で得られるもう一つの価値】健康・つながり・自己肯定感
老後に働く理由は、収入だけではありません。実際に仕事を続けているシニアの多くが「健康を維持できる」「人と関われる」「社会の役に立っていると実感できる」といった“お金以外の価値”を口にしています。
人と会話をし、体を適度に動かし、役割を持つことは、認知症予防や生活習慣病のリスク軽減にも効果的です。特に孤独を感じやすい高齢期においては、「働くこと=社会とつながること」とも言えます。
また、自分の得意なことを生かして感謝されたとき、「まだ自分は必要とされている」という実感が生まれ、それが生きがいや自己肯定感につながります。これは、精神的な安定と幸福感をもたらし、結果的に健康寿命をのばす効果も期待できます。
6.【まとめ】お金・人・健康のバランスが、老後を支える力になる
老後の生活は、「年金だけでは足りない」と感じる場面が増える時代になっています。しかし、悲観する必要はありません。生活費を見直し、無理のない範囲で収入源を確保し、さらには行政の支援制度を上手に活用することで、経済的不安を軽減することは十分に可能です。
そして、働くことは単なるお金稼ぎではありません。日々の生活にリズムが生まれ、人と関わる機会が増え、心身の健康を保つことにもつながります。特に、長く働いてきた経験やスキルは、地域社会や職場で再び活かすことができ、自分の存在価値を再確認するきっかけにもなります。
これからの時代、シニアにとって最も大切なのは「お金・人・健康」のバランスを整えることです。どれか一つだけが突出していても、持続的な安心にはつながりません。小さな一歩からでも構いません。まずは情報を知り、行動してみることが、明るい老後を切り拓く第一歩になります。
自分らしく、心地よく、前向きに――。
老後マネーの不安を減らしながら、充実した毎日を歩んでいきましょう。
自分に合った仕事で、収入も生きがいも手に入れませんか?シニア歓迎の求人はシニア向け求人サイト「キャリア65」からチェック!