1.なぜ今「80歳まで働く」が現実的になってきたのか
かつては「定年退職=引退」というのが一般的な考え方でした。しかし現在では、定年後も働き続ける「生涯現役」という選択肢が、現実的なものになっています。その背景には、社会全体の高齢化と、それに伴う経済的・社会的な変化が深く関係しています。
高齢者の就業率は上昇中
総務省「労働力調査(2023年)」によると、65歳以上の就業率は男性で約32.4%、女性で18.0%と、年々上昇傾向にあります。特に70代でも働いている人は増えており、75歳以上で働く人の数も過去最多を記録しています。これは「働ける高齢者」が増えていること、そして「働きたい」と思う人が増えていることの両方を意味しています。
年金や生活費への不安が後押しに
背景には、年金だけでは生活が難しいという現実もあります。実際、老後資金の不足を感じて「少しでも収入を得たい」と考えるシニアは少なくありません。物価高の影響もあり、「働くこと=安心して暮らすための手段」と考える人が増えているのです。
さらに、「健康のために外に出たい」「人とのつながりを持ちたい」という、精神的な面でのニーズも高まっています。働くことは単なる収入源にとどまらず、生きがいや社会との接点としても注目されているのです。
2.シニアが働きやすい職場には共通点がある
「年齢を重ねても、無理なく働ける職場はあるのだろうか?」
そう感じる方も多いでしょう。しかし実際には、シニア世代が安心して働ける職場には“共通する特徴”があります。そのポイントを知ることで、長く続けられる仕事選びのヒントが見えてきます。
年齢に配慮した仕事内容と適切な業務分解
まず注目したいのが、体力や経験に応じた業務内容をきちんと設計しているかどうかです。たとえばスーパーや福祉施設では、「重い荷物を持つ作業」と「レジでの接客業務」を分けたり、「清掃業務の中でも椅子に座りながらできる範囲」に限定するなど、作業内容を“業務分解”してシニアに最適化している職場も増えています。
このような配慮があることで、「無理せず働ける」「自分にもできそう」と感じやすくなり、定着率も高まります。
柔軟な勤務体制と人間関係の安心感
また、シニアが働きやすい職場の特徴としては、「週2〜3日・1日4時間だけ」といった柔軟なシフトが組める点も挙げられます。健康状態や家庭の事情に合わせて調整できるため、無理なく続けられるのが魅力です。
加えて、職場の雰囲気や人間関係も重要なポイントです。年齢に関係なくお互いを尊重し合える環境、シニア人材を“戦力”として捉えてくれる職場では、安心して自分らしく働くことができます。
企業側も「シニア人材」の力に注目
企業側にとっても、シニア人材は「経験が豊富」「真面目に取り組んでくれる」などの理由から、貴重な存在となっています。最近では「シニア歓迎」や「年齢不問」の求人も増えており、企業と働き手の“マッチングの仕方”が進化してきていると言えるでしょう。
3.80歳まで働ける仕事って?具体的な職種例
「80歳まで働けるなんて本当に可能なの?」と思われる方もいるかもしれません。しかし実際には、年齢に関係なく長く続けられる仕事は数多く存在します。ここでは、70代〜80代のシニア世代でも無理なく従事できる代表的な仕事をご紹介します。
1. 清掃スタッフ・警備スタッフ
商業施設やオフィスビル、マンションの共用部分などの清掃業務は、高齢者にとって続けやすい仕事の一つです。ルーティン作業が多く、短時間勤務や午前中だけのシフトも選べることが多いため、生活リズムにも無理なく取り入れられます。
また、警備スタッフも高齢者に人気の仕事です。特に施設の常駐警備や駐車場での案内など、動きの少ない業務であれば体力に不安がある方でも対応可能です。防犯意識の高さや責任感が求められますが、それだけにやりがいを感じる方も多い分野です。
2. 家事代行・ベビーシッター
「家事が得意」「子育て経験がある」そんな方には、家事代行やベビーシッターの仕事もおすすめです。依頼者の自宅に訪問して掃除・洗濯・料理などを行う家事代行は、自分のペースで動けるため、身体への負担も少なめです。
また、近年では高齢者によるベビーシッター需要も増加中。長年の育児経験が信頼される要素となり、保育士資格がなくても受け入れられる場面もあります。特に「安心感のあるおばあちゃん像」が求められることも多く、70代・80代でも重宝されています。
3. 施設の受付・事務スタッフ
自治体の施設や企業、医療機関などでの受付・事務補助業務も、80代まで続けやすい職種の一つです。来訪者の案内や電話対応、資料の整理など、落ち着いた対応力や社会人経験が活かされます。
また、パソコン入力や簡単な書類作成ができる方であれば、事務補助としてバックオフィス業務を担うことも可能です。働く時間帯も相談しやすく、体力を大きく消耗しない点が高齢者にとっての魅力です。
4. 介護・福祉関連の仕事
介護や福祉の現場では、高齢者自身が「支える側」として活躍する場もあります。たとえば、特別な資格がなくてもできる「食事の配膳」「入浴後の着替え補助」「話し相手・見守り」などのサポート業務が該当します。
「同世代だからこそ寄り添える」「人生経験があるから安心感を与えられる」といった理由で、シニアスタッフが求められる場面も増えています。週2回・1日2~3時間から働ける施設も多く、働くことで“地域に貢献している実感”が得られるのも特徴です。
5. 自営・在宅型の仕事(講師・内職・趣味活用)
これまでのスキルや資格を活かして「地域向けの講座を開く」「写真加工やデザインを在宅で行う」など、自営・副業型で活躍する方もいます。近年はスマホやタブレットを活用して自宅で収入を得るシニアも増えており、年齢の制約を感じにくい働き方が可能です。
以上が、80歳まで続けやすい具体的な職種の一例です。ポイントは、「年齢や体力に合った働き方を選ぶ」こと。これまでの経験や得意分野を活かせる仕事を選べば、年齢にとらわれず、イキイキと働き続けることができます。
4.年齢で断られないために|応募時に気をつけたいポイント
「年齢で不利になるのでは…」「もう80歳近いから採用は難しいかも」――
そんな不安を抱えている方も多いかもしれません。しかし、働きたいという意欲があるなら、年齢にとらわれすぎず“応募の工夫”をすることで、採用につながる可能性は十分にあります。
ここでは、応募時や面接時に意識したいポイントを紹介します。
年齢よりも“意欲と協調性”を伝える
面接の場では、年齢そのものよりも「この人はどれだけ前向きに働こうとしているか」が重視されます。特に高齢者の採用に積極的な企業では、
・無理なく働ける体力があるか
・周囲と協調して働けるか
・欠勤が少なく、誠実に勤務できそうか
といった点を見ています。たとえば、
・「週3日、午前中なら安定して働けます」
・「接客経験が長いので、お客様対応には自信があります」
・「若い人とも協力しながら働きたいです」
など、前向きな姿勢や具体的な働き方のイメージを伝えることで、信頼感や安心感を与えることができます。
書類で差をつけるなら“志望理由と経験”を明確に
履歴書や職務経歴書には、年齢を書く欄がありますが、それよりも大切なのは「この人がなぜこの仕事に応募したか」「どんな経験が活かせるか」という点です。
特にシニア世代の場合、
・「接客を20年以上経験しており、来客対応が得意です」
・「清掃のパートを長く続けた経験があります」
など、これまでの安定した就業経験や責任感のある働きぶりは強みになります。簡潔かつ具体的に記載しましょう。
このように、年齢を理由に諦める必要はありません。ちょっとした“伝え方の工夫”や“自分の強みの整理”が、採用への第一歩になります。
5.無理なく長く働くために大切な3つの視点
80歳まで働き続けることは可能ですが、無理をしてしまっては長続きしません。
大切なのは、「心身ともに無理なく」「自分らしく」「前向きに」働ける環境を選ぶことです。
ここでは、シニアが長く働くうえで意識したい3つの視点をご紹介します。
1. 自分の体調と相談する習慣を持つ
シニア世代が働く際、最も大切なのは体調管理です。
「無理をして体を壊してしまったら元も子もない」ということを、常に意識する必要があります。
・週に何日働けるか
・1日に何時間が限度か
・立ち仕事と座り仕事、どちらが自分に合っているか
などを、あらかじめ自分自身で見極めておくと、応募先の選定でも迷いが少なくなります。働きながらでも、自分の体調に合わせてペースを見直す柔軟さを持ちましょう。
2. 働き方と生活リズムを両立させる
「働くこと」が生活の負担にならないよう、ワークライフバランスも大切です。特に70代・80代になると、家事・介護・通院など、他にも時間を必要とすることが増える傾向にあります。
たとえば、
・午前中だけ働く
・通院日のある週は勤務を減らす
・趣味や家族との時間も大切にする
といったように、「働くことが生活の一部に自然に組み込まれている状態」を目指すのが理想です。無理をせず、生活全体を俯瞰しながら働ける環境を選ぶことで、長く続けることができます。
3. 社会とのつながりを意識する
仕事を通じた人との交流は、健康にも心にも良い影響をもたらします。
特に高齢になるほど、「家にこもりがち」「孤独になりがち」という課題が生まれやすいため、職場という“社会との接点”は非常に重要です。
・同世代の仲間がいる職場を選ぶ
・若い世代とも自然に会話できる環境に身を置く
・地域密着型の職場で、地域社会とつながる
といった工夫をすることで、仕事が単なる収入源ではなく、「生きがい」や「安心感」のある場へと変わっていきます。
これら3つの視点を意識することで、無理なく、そして自然体で“生涯現役”を実現することが可能になります。
6.まとめ|あなたらしい“生涯現役”を叶えるために
「80歳まで働けるなんて本当?」と最初は驚く方もいるかもしれませんが、今やそれは夢物語ではなく、現実的な選択肢となりつつあります。重要なのは、「年齢」ではなく「働き方の工夫」や「自分に合った仕事との出会い」です。
今回の記事では、以下のような視点を紹介してきました。
・高齢者の就業率が年々上がり、社会的なニーズも高まっていること
・シニアが働きやすい職場の共通点(業務分解・柔軟な勤務・人間関係)
・実際に80歳まで続けられる具体的な仕事(清掃・家事代行・受付・介護補助など)
・応募時のポイントや、聞かれると不適切なNG質問への対応法
・長く働き続けるために意識したい「体調」「生活との両立」「社会とのつながり」
働くことで得られるのは、収入だけではありません。
「誰かの役に立っているという実感」「社会との接点」「毎日の充実感」といった、心の健康にもつながる大きなメリットがあります。
人生100年時代と言われるいま、70歳・80歳はまだまだ“現役”。
ご自身のペースで、ご自身らしく、働き続ける道を一歩ずつ見つけていきましょう。
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