はじめに|健康と生きがいを支えるカギは“毎日のたんぱく質”にあり
「最近なんだか疲れやすくなった」「以前よりやる気が出ない気がする」──そんなふうに感じている方はいませんか?
実はその原因、年齢のせいだけではないかもしれません。特にシニア世代に多く見られるのが「たんぱく質不足」による体調不良。筋力や体力、さらには免疫力の低下にもつながるたんぱく質不足は、知らず知らずのうちに日常生活に支障をきたすこともあります。
本記事では、健康に過ごすために欠かせない「たんぱく質」に注目し、シニア世代が元気に働き、豊かな毎日を送るための食事の工夫をご紹介します。
1.シニアにたんぱく質が必要な理由とは
加齢による筋力・体力の低下とその影響
年齢を重ねると、筋肉量は自然と減少していきます。実際に、厚生労働省のデータによると、50代以降から筋肉の萎縮が始まり、70歳前後では20代の約7割程度にまで筋肉量が減るとされています(※1)。この筋力低下が進むと、立ち上がる、歩く、物を運ぶなどの動作が億劫になり、活動量が減ってしまいます。
活動量が減ると、さらに筋力が落ちるという“負のスパイラル”に陥ることも。これを防ぐためには、たんぱく質をしっかりと摂取し、筋肉の維持を心がけることがとても大切です。
たんぱく質が健康・免疫・心の安定に関わる理由
たんぱく質は筋肉だけでなく、内臓、皮膚、髪、爪、そしてホルモンや免疫物質の材料にもなります。つまり、たんぱく質が不足すると身体全体の機能が低下してしまうのです。
また、たんぱく質は神経伝達物質や幸福ホルモン「セロトニン」の材料でもあります。これが不足すると、イライラや落ち込み、睡眠の質の低下にもつながる可能性があります。
毎日を元気に、気持ちよく過ごすためにこそ、たんぱく質は欠かせない栄養素なのです。
※1 出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013」より
2.たんぱく質が不足するとどうなる?シニアに起きやすい不調
疲れやすさ・体力低下
たんぱく質不足によってまず表れやすいのが「なんとなく疲れやすい」という感覚です。筋肉が減少すると、日常動作に必要なエネルギー効率が悪くなり、少し動いただけで息切れしたり、長時間の立ち仕事がつらく感じたりします。
また、代謝が落ちるため「寝ても疲れが取れない」と感じることも。これは、回復に必要な栄養素が足りず、体のリカバリー機能がうまく働いていない状態です。
肌・髪・爪のトラブルや免疫力の低下
たんぱく質は皮膚・髪・爪の材料でもあるため、不足すると「髪のパサつき」や「肌のくすみ・たるみ」、「爪の割れやすさ」などの見た目の変化が目立つようになります。
さらに、体内の免疫細胞もたんぱく質でできているため、不足状態が続くと風邪や感染症にかかりやすくなるリスクも。
「最近、風邪をひきやすくなった」と感じる方は、体力の低下だけでなく栄養面にも目を向けてみるとよいかもしれません。
ケガや病気の回復が遅くなるリスク
高齢になると、転倒やケガのリスクが増加しますが、たんぱく質不足は回復力にも悪影響を及ぼします。傷の治りが遅かったり、風邪を引いてもなかなか治らなかったりといったケースでは、栄養の見直しが重要です。
特に働きながら生活している方にとって、回復のスピードはQOL(生活の質)を大きく左右します。日々の食事でたんぱく質を意識的に取り入れることが、健康寿命を延ばす第一歩になるのです。
3.意外と足りてない?シニア世代のたんぱく質摂取量の現実
1日の推奨量と実際の平均摂取量
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、シニア世代のたんぱく質摂取推奨量は1日50gとされています(※2)。
しかし、実際の摂取量はこれを下回ることが多く、特に朝食での摂取量が極端に少ない傾向が指摘されています。
たとえば、朝はパンとコーヒーだけ、昼はうどん、夜に魚か肉を少し食べるといった食生活では、たんぱく質の必要量には届きません。
どんな食事だと不足しやすいのか
以下のような食事傾向のある方は、たんぱく質不足になりやすいと言われています:
・朝食を軽くすませがち(トースト+コーヒーのみ など)
・麺類やごはん中心で、主菜が少ない
・肉や魚を控えすぎている
・野菜や果物はとるが、動物性たんぱく質が少ない
・食が細くなって量が食べられない
健康に気をつけて野菜中心の食生活をしていても、たんぱく質が不足してしまうことがあるため注意が必要です。
チェックリストで簡単セルフ診断
あなたのたんぱく質、足りてる?
以下のチェックに3つ以上当てはまる場合は、不足の可能性があります。
□ 朝食に肉・魚・卵・大豆製品をほとんど食べていない
□ 最近よく疲れる・だるい
□ 階段や坂道がつらくなってきた
□ 髪が細くなった/肌にハリがなくなった
□ 食事の量が減ってきたと感じる
□ 風邪をひきやすくなった
少しでも当てはまる方は、次の見出しでご紹介する「たんぱく質を上手にとるコツ」を参考に、食生活を見直してみてください。
※2 出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
4.毎日の食事でできる!たんぱく質を上手に摂るコツ
1日3回の食事でバランスよく摂取
たんぱく質は体内にためておけない栄養素です。そのため「夜にまとめて食べる」のではなく、朝・昼・夕の3食で分けて摂取することが大切です。
理想は、1食あたり15~20gずつを目安にバランスよく摂ること。たとえば朝食に卵と納豆、昼に鶏肉やツナ、夕食に魚や豆腐といったように、少しずつ多様なたんぱく質源を組み合わせるのがコツです。
手軽でおすすめ!高たんぱく食品リスト
以下は、シニア世代でも取り入れやすい高たんぱく食品の一例です。
食品 | たんぱく質量(目安) | ポイント |
---|---|---|
ゆで卵(1個) | 約6.5g | 手軽で常備しやすい |
納豆(1パック) | 約8g | 朝食にも便利。発酵食品で腸にも◎ |
鶏むね肉(100g) | 約23g | 高たんぱく低脂肪、加熱して冷凍保存も可 |
焼き鮭(1切れ) | 約18g | 和食にもぴったり、EPA・DHAも豊富 |
木綿豆腐(1/2丁) | 約10g | 調理しやすく、ヘルシーな選択肢 |
ギリシャヨーグルト(100g) | 約10g | 間食にもおすすめ、カルシウムも含む |
これらを活用すると、日々の食事に無理なくたんぱく質を加えることができます。
料理が面倒なときの時短テク&市販品活用術
「料理をするのが面倒」「時間がない」というときは、調理不要・レンジだけの簡単メニューを取り入れましょう。
例:
・サラダチキン+カット野菜
・レンチンできる豆腐バーグ
・納豆+キムチ+温泉卵のごはん
・レトルトのゆで大豆やひじき煮
また、高たんぱくの市販食品もおすすめです。コンビニやスーパーで買える「高たんぱくヨーグルト」「プロテインバー」「おから入り蒸しパン」などは、日常の中で無理なく取り入れられます。
“少し意識するだけ”で、たんぱく質は十分に摂ることができます。食事の工夫は、健康と元気な毎日の第一歩です。
5.たんぱく質を意識することで変わる、元気な働き方
たんぱく質で体力・集中力がアップする理由
たんぱく質は筋肉の維持だけでなく、脳内の神経伝達物質の材料にもなります。十分な量を摂取することで、身体がしっかり動くだけでなく、集中力や判断力もサポートされます。
特にシニア世代のパートタイム勤務やボランティア活動などでは、「長時間立っているのがつらい」「途中で疲れてしまう」といった声が多く聞かれますが、たんぱく質の補給を意識すると「仕事が終わっても疲れが残らない」「1日を快適に過ごせる」といった変化を実感する方も多いです。
栄養が整うことで得られる“心の余裕”と笑顔
身体の調子が整うと、心にも余裕が生まれます。逆に、慢性的な疲労感や体の不調があると、気持ちが塞ぎこみやすくなります。
たんぱく質には「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの合成にも関わる役割があり、これは気分の安定にも影響します。
朝しっかりたんぱく質を摂ることで、日中も元気に過ごせたり、人との会話を楽しめるようになったりと、“生活全体の質”がぐっと高まるのです。
健康習慣が働く意欲につながる好循環とは?
たんぱく質を意識することで、食事への関心が高まり、運動や生活リズムの改善にもつながるケースが多くあります。「栄養を意識するようになってから、自然とウォーキングを始めた」「健康が整ったことで“もう少し働いてみよう”と思えるようになった」など、行動が前向きに変わっていくのです。
これはまさに、「健康」と「働く意欲」が連動している証拠。日々の食事から小さな健康習慣を取り入れることが、シニア世代の生活をより豊かにしてくれます。
まとめ|無理なくたんぱく質をとって、充実した毎日を
シニア世代にとって「たんぱく質」は、健康的に働き、日々を元気に過ごすための鍵となる栄養素です。
疲れやすさや体力の低下、風邪をひきやすくなるなどの不調があると、つい「年齢のせいかな」と思いがちですが、実は食事からの栄養が足りていない可能性も十分あります。
毎日の食事で、卵や納豆、魚、肉、豆腐などをバランスよく摂ること。
「朝はパンだけ」「昼はうどんだけ」などの“炭水化物中心の食事”を見直すだけでも、たんぱく質の摂取量は大きく変わります。
そして何より、栄養状態が整うと、体も心も前向きに変化します。
「体が軽くなった」「気分が安定した」「外に出るのが楽しみになった」――そういった小さな変化の積み重ねが、これからの人生を豊かにしてくれます。
「最近、ちょっと疲れやすいな」と感じたら、まずは食事から“たんぱく質”を意識してみませんか?
あなたらしい、いきいきとした毎日が、きっとその先に待っています。
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