1. なぜいま、“多様なキャリアプラン”がシニアに注目されているのか?
近年、定年後も働き続けたいと考えるシニア層が増えています。背景には「年金だけでは不安」「健康のために社会とつながっていたい」「自分の経験を活かしたい」など、経済的・社会的・心理的な理由があります。
さらに、労働市場の変化も後押ししています。少子高齢化によって人手不足が深刻化し、企業は経験豊富なシニア人材に期待を寄せるようになりました。特に、柔軟な働き方や短時間勤務など、選択肢が多様化してきたことで、シニア層も“自分に合った働き方”を見つけやすくなってきています。
また、政府も高齢者の就業促進を支援しています。たとえば「生涯現役社会の実現」を掲げ、65歳以上の就業率の向上を目指す施策が進められており、総務省の調査(※)によると、65~69歳の就業率は2023年時点で約50%に達しています。
このような環境の変化が、“多様なキャリアプラン”を持つことの重要性をより強くしています。
※出典:総務省統計局「労働力調査(基本集計)」2023年平均結果
2. 選択肢はひとつじゃない!シニア世代におすすめの働き方5選
「働く」といっても、その形はひとつではありません。ここでは、シニアにおすすめの働き方を5つご紹介します。
① パート・アルバイト
最も取り組みやすい働き方。スーパーの品出し、施設清掃、受付、マンション管理など、体への負担が少ない仕事も豊富です。
② 自営業・スモールビジネス
得意なことを活かして個人で活動するスタイル。たとえば家庭菜園の野菜販売、DIY作品のフリマ販売、趣味を活かした教室運営なども人気です。
③ シェアワーク(ギグワーク)
時間や場所に縛られない仕事がしたい人向け。スキマ時間にできる配達代行やWEBアンケート回答、オンライン相談などが該当します。
④ 地域密着型の仕事
自治体や地域企業が提供するシニア向けの雇用制度を活用する方法。たとえばシルバー人材センターでの軽作業や公園整備などがあります。
⑤ ボランティア+αの仕事
収入だけでなく「やりがい」も重視したい人におすすめ。報酬は少なくても、感謝される仕事や人の役に立つ仕事が心の充足感につながります。
このように、キャリアプランの幅は広がっており、自分の体力や関心、ライフスタイルに合わせて選ぶことができます。
3. 収入だけじゃない!働くことで得られる“もうひとつの価値”とは?
定年後に仕事をする理由は「収入の確保」だけではありません。実際に働き続けることで、シニア世代が得られる“もうひとつの価値”に注目が集まっています。
健康の維持・増進
働くことで日々の生活にリズムが生まれ、体を動かす機会が自然と増えます。これが健康維持に大きく貢献します。特に軽作業や接客など、人と関わる仕事では、認知機能の維持にも効果があるといわれています。
厚生労働省の調査によると、働いている高齢者の方が、そうでない方に比べて「自分の健康に自信がある」と答える割合が高いという結果もあります(※)。
社会とのつながり
退職後、孤独感を感じる方は少なくありません。しかし、働くことで地域や職場とつながりを持つことができ、社会的な孤立を防ぐことができます。特にシニア層にとって、役割や居場所があるということは大きな安心感につながります。
自己肯定感と達成感
自分が誰かの役に立っていると実感できることは、年齢に関係なく人の心を満たしてくれます。たとえば「ありがとう」と言われる機会があること、「また来てね」と頼られることが、自己肯定感や生きがいを支える重要な要素となります。
新しい学びと刺激
再就職や新しい働き方へのチャレンジは、脳への良い刺激にもなります。新しいスキルや知識を身につけることは、若々しさを保ち、老化の進行を遅らせる効果があるとする研究も存在します。
働くことは、単なる“生計手段”ではなく、心身の健康、社会的つながり、自分らしさの再発見にもつながる、大切な「生き方の一部」と言えるでしょう。
※出典:内閣府「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」令和2年度
4. 自分に合ったキャリアを見つけるための3つのステップ
多様なキャリアプランがあるとはいえ、「どれを選べばいいのかわからない」と感じる方も多いはずです。特にシニア世代は、体力・生活スタイル・価値観に個人差が大きいため、“自分に合った働き方”を見つけることが何より重要です。
ここでは、自分にぴったりのキャリアを見つけるための3つのステップをご紹介します。
ステップ①|これまでの経験や得意なことを“棚卸し”する
まずは、今までの仕事や趣味、地域活動など、自分の「できること」「好きなこと」「評価されたこと」を書き出してみましょう。
たとえば――
・工場勤務で培った体力やルーティン作業の正確さ
・地域行事での段取り力や人との調整力
・家庭で続けてきた料理、手芸、ガーデニングなどの技術
自分にとっては当たり前でも、他人から見れば“価値あるスキル”であることは少なくありません。
ステップ②|どんな働き方が自分に向いているかを考える
「体力を使いすぎる仕事は避けたい」「人と話すのは好き」「週に2~3日だけ働きたい」など、自分の希望を整理しましょう。
また、以下のような観点で考えると方向性が明確になります。
観点 | 自分の希望や条件例 |
---|---|
勤務時間 | 1日3~5時間、週2~3日など |
働く場所 | 自宅近く/在宅/屋外/屋内 |
対人関係 | 人と話したい/裏方で黙々と働きたい |
収入の優先度 | 収入重視/やりがい重視/両方 |
ステップ③|情報を集めて行動に移す
方向性が見えてきたら、求人情報をチェックしましょう。最近は「シニア歓迎」「未経験OK」といった仕事も増えており、求人サイトや自治体の相談窓口などを活用するのがおすすめです。
また、地域のイベントに参加して情報交換したり、シルバー人材センターやハローワークの活用も有効です。実際に動いてみることで、「これは無理」「これは楽しそう」という自分の本音も見えてきます。
キャリア探しは、一度で決める必要はありません。試しながら、見つけながら、自分らしい働き方に出会えるのが“多様なキャリアプラン”の魅力です。
5. 失敗しない!シニアのキャリア選びで気をつけたいポイント
シニア世代が新たに働き始める際、勢いだけで始めてしまうと「想像以上にきつかった」「思ったより合わなかった」と後悔することもあります。だからこそ、キャリア選びの際には以下のような“つまずきやすいポイント”に注意しておくことが大切です。
① 体力や健康状態を過信しすぎない
元気なシニアの方も多いですが、「毎日のフルタイム勤務」「重いものを持つ作業」は想像以上に負担になることも。面接時には仕事内容を詳しく確認し、「自分のペースで続けられるか」を判断材料にしましょう。
② 勤務条件や報酬をあいまいにしない
特に非正規や短期の仕事では、口頭のみの契約や曖昧な条件でトラブルになることも。
以下の点は必ず確認しておきましょう。
・時給/日給/月給などの金額と支払日
・交通費支給の有無
・労働時間/休憩/休日の有無
・雇用形態(業務委託、アルバイト、パートなど)
「言いにくい」と感じても、きちんと質問して明確にしておくことが重要です。
③ 家族とのすり合わせを忘れない
仕事に前向きになるのは良いことですが、家庭とのバランスも大切です。
特に配偶者や家族との時間、介護や持病の通院などがある方は、「どれくらい働けるか」「どの時間帯なら無理がないか」などを話し合っておくと安心です。
④「やりがい」や「人間関係」にも注目する
仕事を長く続けるためには、「やっていて気持ちが満たされるか」「無理なく人と接することができるか」も大切な視点です。特にシニア世代は、ストレスや人間関係のトラブルが身体にも大きく影響します。
面接の際に職場の雰囲気や、同じ年代の人がいるかどうかを聞いてみると、ミスマッチを防げます。
自分にとって心地よく働ける環境を選ぶことは、収入以上に「人生の充実度」を左右します。焦らず、自分のペースで選ぶことが成功のカギです。
6. まとめ|“働くこと”は人生を豊かにする最強の選択肢
定年後の人生は、「もう働かない」と決めつけてしまうにはあまりにも長く、そして大切な時間です。年金や貯金だけで生活は成り立つかもしれませんが、“働くこと”にはそれ以上の価値があります。
多様なキャリアプランが広がる今、シニア世代は「体力的に無理がない働き方」「好きなことを活かせる仕事」「人とつながれる役割」など、自分らしい働き方を自由に選ぶことができます。
働くことによって――
・生活にハリが出て、健康が維持できる
・社会との接点が生まれ、孤独を防げる
・誰かに必要とされている実感が持てる
・新たな学びや成長を感じられる
といった、豊かな“生きがい”を得ることができるのです。
最初の一歩は小さくて構いません。まずは自分の得意なこと、興味のあることから始めてみましょう。そして、自分のペースで「もう一度、社会に関わる」ことを楽しんでください。
人生100年時代、“働くこと”はシニアにとって最強の選択肢です。
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