はじめに|なぜ今「多様なキャリアデザイン」が注目されているのか
かつては、定年退職と同時に「仕事人生が終わる」のが一般的でした。しかし、今や平均寿命が延び、「人生100年時代」といわれる時代。60代・70代でも元気に働ける人は多く、退職後の数十年をどう生きるかが大きなテーマとなっています。
こうした背景のもと、近年注目されているのが「多様なキャリアデザイン」という考え方です。これは、年齢や職種にとらわれず、自分に合った働き方や生き方を主体的に描いていくという発想。特にシニア世代にとっては、収入の確保だけでなく、健康維持・社会参加・生きがいの実現といった観点からも重要なキーワードになっています。
また、厚生労働省の調査によると、60代後半の約7割が「働く意欲がある」と回答しており(※出典:令和4年版高齢社会白書)、多くの高齢者が第二のキャリアを求めている現状が見えてきます。
このような時代においては、「もう年だから」ではなく、「これからどう生きるか」が問われる時代です。この記事では、シニア世代が自分らしく働き続けるための多様なキャリアデザインの考え方と実践方法について、順を追ってわかりやすく解説していきます。
1.シニア世代に必要なキャリアの見直しとは?再設計のポイントを解説
定年を迎えると、多くの人が「これからどう生きていくべきか」と考えるようになります。年金や貯蓄だけで生活できるかという不安に加えて、「もう一度働きたい」「社会とつながっていたい」という思いも芽生えるものです。
こうしたタイミングで重要になるのが、キャリアの“再設計”です。
なぜキャリアの見直しが必要なのか?
若い頃のキャリアは、昇進や給与アップなど“成果”や“地位”を重視して設計されてきた人が多いはずです。しかし、シニア期においては、「自分のペースで働けるか」「身体に無理なく続けられるか」「人の役に立てる実感があるか」といった価値観の転換が起こります。
つまり、単なる“延長線上の仕事探し”ではなく、年齢や今の自分の状況に合ったキャリアの再構築が求められるのです。
再設計で意識すべき3つの視点
以下の3つの視点が、シニア世代がキャリアを見直すうえでのポイントとなります。
視点 | 内容 | チェックポイント |
---|---|---|
1. 健康とのバランス | 無理のない働き方を選ぶ | 週何日・何時間なら働ける?立ち仕事は可能か? |
2. 社会とのつながり | 孤立せず、人との関わりを持てる仕事か | チームで働く?個人で完結? |
3. 経済的な安心 | 生活費に必要な収入を得られるか | 月々いくら稼ぎたい?副業も視野に? |
特に「健康」と「収入」のバランスをどうとるかは、個人によって大きく異なります。そのため、自分自身の生活スタイル・体力・希望する働き方をしっかり見つめ直すことが、第一歩となります。
2.“働く意味”の変化|定年後に大切にしたい価値観とは
現役時代の「働く意味」は、多くの人にとって“収入を得ること”や“家族を養うこと”でした。しかし、定年を迎えた今、その価値観は大きく変わりつつあります。お金のためだけではなく、「誰かの役に立ちたい」「社会と関わりたい」「自分らしくありたい」——そんな思いが、働く理由に加わってきます。
シニア世代が見つける“新しい働く理由”
内閣府の「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査(令和2年度)」によると、60代後半〜70代の高齢者のうち、「働くことに生きがいを感じている」と回答した人は約6割にも上ります。年齢を重ねるほど、「誰かと話す機会がある」「身体を動かす」「社会と関われる」ことが、健康や幸福感の維持にもつながっているのです。
たとえば、以下のような“働く理由”は、収入とは別の大切な価値となります。
・自分の知識や経験を次の世代に伝えること
・誰かに「ありがとう」と言ってもらえる喜び
・日々の生活にリズムと目的を持てること
・孤独を防ぎ、人とのつながりを感じられること
働くことが健康と自己肯定感につながる
特に定年後は、「人から必要とされている感覚」が薄れやすくなります。そんなとき、“何かしらの役割を持つこと”が、精神的な安定と自己肯定感につながります。
実際、働き続けているシニアは、認知機能や身体機能の維持にも良い影響があることが多くの研究で示されています。
「働く意味」が“お金のため”から“生きがいのため”へと変わるこのタイミングは、自分の価値観と向き合う絶好のチャンス。
次の章では、自分に合ったキャリアをどう描いていくか、そのヒントを探っていきましょう。
3.どう考える?自分に合ったキャリアを描くための視点とヒント
シニア期のキャリアは、「何をするか」以上に「どう働きたいか」が重要です。選択肢が多様化している今、何を基準に自分に合った働き方を選ぶのか、その「視点」を持つことがキャリアデザインの第一歩です。
自分の“これまで”と“これから”を見つめ直す
まずは、以下の2つを紙に書き出してみましょう。
・これまでやってきた仕事/得意なこと/好きなこと
・今後大切にしたいこと/無理せずできること/やってみたいこと
これらを整理することで、過去の経験がヒントになり、将来のキャリアの方向性が見えてきます。
キャリア設計に役立つ4つの視点
視点 | 解説 | 自分への問いかけ |
---|---|---|
① 健康・体力 | 続けられる勤務時間や仕事内容か? | 週何日働ける?立ち仕事は可能? |
② 役割・やりがい | 誰の役に立てるか?どんな貢献ができるか? | 感謝される経験があった仕事は? |
③ スキル・経験 | 自分の知識や経験が活かせるか? | 人に教えたこと、任された業務は? |
④ 人との関わり | 人と関わる働き方がいいか、一人で完結がいいか? | 会話が好き?自分のペースで動きたい? |
たとえば、「人との会話が好きで、これまで接客経験がある」人は、地域の観光案内ボランティアや施設の受付などが向いているかもしれません。一方、「体力に自信があり、黙々と作業するのが得意」な人は、清掃や軽作業などがフィットする可能性もあります。
選択肢を狭めないことが成功のカギ
「年齢的に無理だろう」「未経験だから難しい」と、自分で自分の可能性を狭めてしまうのはもったいないこと。むしろ今は、シニア歓迎の仕事や未経験OKの職場も増えており、チャレンジできる環境は広がっています。
「自分に何ができるか」ではなく、「これから何をやってみたいか」を出発点に、キャリアを柔軟に考えてみましょう。
4.選択肢はいろいろ!定年後に広がる多様なキャリアの具体例
「キャリアデザイン」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、実際にはもっと身近で、実行しやすい選択肢がたくさんあります。定年後は、働き方も職種も柔軟に選べる時代。ここでは、シニアに人気の具体的なキャリア例をご紹介します。
1. 体を動かす仕事:健康維持と収入を両立
・清掃スタッフ/マンション管理人
→短時間勤務が多く、体を動かすことで健康維持にも効果的。
・警備員(施設警備/夜間巡回)
→シフト制で選べる勤務形態が多く、70代でも活躍例あり。
2. 経験を活かす仕事:知識や技術を次世代へ
・職業訓練校/シルバー人材センターでの技能指導
→長年の専門職経験を活かして若者に技術を伝える。
・地域の講座/ワークショップの講師
→パソコン、園芸、DIYなど趣味を活かせる分野も豊富。
3. 人と関わる仕事:社会とつながりを持ち続ける
・受付/案内スタッフ(病院・施設など)
→接客経験を活かし、人と話す機会が多い仕事。
・観光ガイド/地域ボランティア
→地域愛を伝える活動としてやりがいも◎。
4. 趣味や特技を仕事に変える
・写真撮影/動画編集/手芸などの作品販売
→メルカリやSNSでの販売、副業としても人気。
・ブログ執筆/体験談の投稿
→自分の経験を活かした情報発信で収入を得るケースも。
5. 自由な働き方ができる在宅ワーク
・文字起こし/アンケート回答/軽作業
→パソコンがあれば自宅でできるため、体力に不安があってもOK。
・オンライン事務サポート
→エクセルやメール対応のスキルを活かせる仕事。
どの選択肢も、「年齢に合った無理のない働き方」ができる点がポイントです。さらに、地域や自宅に近い場所でできる仕事も増えており、移動の負担が少ないのも魅力です。
5.必要なスキルや準備とは?学び直しでキャリアの幅を広げよう
定年後に新たなキャリアを築くためには、「今あるスキルを活かす」だけでなく、「新たな知識や技術を身につける」という視点も欠かせません。特に60代以降でも学び直しにチャレンジする人は増えており、学び直し(リスキリング)はキャリアの幅を広げる有力な手段となっています。
シニア世代におすすめのスキルとは?
以下のようなスキルは、年齢に関係なく再就職・副業に役立ちます。
スキル | 活用できる仕事 | 習得方法 |
---|---|---|
パソコン(Word・Excel) | 事務、在宅ワーク、資料作成 | 公共のパソコン講座、YouTube、eラーニング |
コミュニケーション | 接客、受付、介護補助 | 地域活動、ボランティア参加で実践的に習得 |
整理整頓・管理能力 | 清掃、倉庫作業、施設管理 | シルバー人材センターでのOJT型業務 |
専門知識(例:介護、ファイナンシャルプランナーなど) | 資格を活かした再就職や講師活動 | 通信講座・自治体のスキルアップ支援 |
「学び直し」ができる場所・制度
・シニア大学/シルバー大学校:自治体が主催する高齢者向け講座。キャリア支援や地域貢献のテーマも多数。
・ハローワークの職業訓練(高年齢者向け):無料または低価格で受講可能。事務や福祉関連の実務スキルが学べる。
・eラーニング/オンライン講座:自宅で学習できるため、移動の負担もなし。
例)「gacco」「Udemy」など。
小さな一歩がキャリアを大きく変える
「新しいことを学ぶのは不安」という声もありますが、学び直しはすべてをゼロから始める必要はありません。過去の経験に少しプラスするだけで、新しい仕事につながることも多いのです。
たとえば「接客経験がある」人が「パソコン入力」を学べば、病院受付や窓口業務の仕事に就ける可能性が広がります。
“今の自分”に小さな投資をすることが、第二のキャリアを豊かにする鍵となります。
6.多様なキャリアデザインを実現するためのステップと心構え
「自分らしい働き方をしたい」「無理せず続けられる仕事を見つけたい」——そう思っても、何から始めればよいのかわからず、一歩を踏み出せない方も多いでしょう。ここでは、多様なキャリアデザインを現実にするための具体的なステップと、意識しておきたい心構えについてお伝えします。
実現への3ステップ
ステップ1|現状を整理する
・「働きたい理由」「収入の目標」「健康状態」「家族との関係」などを明文化。
・例:「月に5万円稼ぎたい」「週3日まで働きたい」「人と関わる仕事がしたい」など。
ステップ2|情報を集める・選択肢を広げる
・求人サイト(例:シニア向け専門サイト)やハローワーク、地域の講座などを活用。
・自分に合った働き方・職種をリストアップし、「できそう」と思えるものから候補に。
ステップ3|小さく始める
・まずは「週1回の仕事」「月1のボランティア」など、試すことから始める。
・続けられそうなら徐々に頻度や役割を広げていくスタイルが、長続きのコツです。
心構え:“年齢”より“行動力”がカギ
多様なキャリアデザインを実現するうえで最も大切なのは、「もう年だから」と諦めず、一歩踏み出す勇気を持つことです。
人生100年時代において、60代・70代は“まだ折り返し”のようなもの。社会全体でもシニア人材の活用が進み、年齢に関係なく活躍できる場が増えています。
「やってみたら案外できた」「新しい人との出会いがうれしかった」——そんな体験を通じて、自分の未来に自信が持てるようになります。
年齢を「壁」ではなく「武器」に
豊富な人生経験、安定した人間関係、仕事への責任感——これらはすべて、シニアだからこその強み。
これからの時代、“何歳まで働くか”ではなく、“どう働くか”が問われる時代です。
7.まとめ|キャリアの選択は“これから”が本番
定年を迎えたからといって、「働く人生」が終わるわけではありません。むしろ、経験も知恵も蓄えた今だからこそ、自分の意思で自由にキャリアを選べるチャンスが広がっています。
本記事でご紹介したように、働き方は多様化し、年齢にとらわれず、自分らしく生きられる道は無数にあります。
多様なキャリアデザインを考えることで、次のようなメリットが得られます。
・経済的な安心感を得ながら、生活にリズムが生まれる
・社会とつながり続けることで、心の健康を保てる
・新しい知識や人との出会いから、人生に再び張り合いが生まれる
大切なのは、「もう遅い」と決めつけるのではなく、「今の自分に何ができるか」「これからどう生きたいか」を丁寧に見つめ直すことです。
自分に合った働き方は、必ず見つかります。そして、それは“これから”の人生を豊かにする確かな第一歩です。
あなたに合った“第二の仕事”がきっと見つかる!シニア歓迎の求人をシニア向け求人サイト「キャリア65」で今すぐチェックして、理想の働き方をスタートしよう。