1.なぜ今「理念・ビジョン」が採用活動で重要なのか?
理念を重視する求職者が増えている理由とは
かつては給与や待遇が求人選びの最優先事項でしたが、現在では「企業のビジョンや理念」に共感して応募する求職者が増えています。特に中高年層や転職経験者、定年後に再び働き始めようとするシニア層にとっては、仕事内容以上に「その会社で働く意味」「社会とのつながり」を重視する傾向が顕著です。
実際、ミドル層やシニア層を対象とした採用市場においては、「理念への共感」を軸に応募先を選ぶ動きが強まっていると、多くの人材紹介事業者も指摘しています。条件だけでなく“企業の考え方”に価値を感じる傾向は、年齢が上がるほど顕著です。
理念は企業の「人格」とも言える存在。求職者が「ここでなら長く働けそう」と思えるかどうかは、制度や給与だけではなく、会社が掲げる価値観に共感できるかどうかが大きな分かれ目です。
理念共感が企業への信頼・定着率を高める
理念やビジョンに共感したうえで入社した人材は、入社後の定着率が高い傾向があります。なぜなら、組織の方向性や価値観と自身の考えが一致しているため、日々の業務やチームとの関係の中で「ズレ」を感じにくいからです。
また、「理念に共感して入社した」という原点があることで、困難な状況にも前向きに向き合えるという心理的な安定感も生まれます。特に多様な世代が混在する職場では、理念が共通の指針となり、世代間の価値観の違いを乗り越える土台となります。
2.シニア人材こそ「やりがい」で動く|理念が働く理由になる
お金だけじゃない“働く動機”を支えるもの
シニア人材の採用において、見落としがちなのが「動機の質」です。若い世代がキャリアアップや収入増を求めて職を探すのに対し、シニア層が重視するのは「やりがい」や「社会貢献感」であることが多く、そこに会社の理念が深く関係してきます。
総務省「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」によれば、60代後半〜70代の就業者のうち、約65%が「働くことが生きがいになっている」と回答しています。
また、「誰かの役に立てる」「社会とつながっていたい」といった心理的欲求が、仕事継続の原動力となっていることもわかっています。
つまり、給与や勤務条件だけではシニア層の心は動きません。彼らが「自分の価値を再確認できる場」として選びたくなるのが、“理念やビジョンが明確な会社”なのです。
「誰かの役に立てる」感覚を生むビジョンの力
ビジョンは、企業が何を目指しているかを示す未来の地図です。特にシニア人材にとっては、その地図に「自分の経験や力がどう活きるのか」が具体的にイメージできるかどうかが重要な判断軸になります。
たとえば、「地域社会との共生」「若手の育成を重視」「安心・安全なサービス提供」といったキーワードが掲げられていれば、それに対し「自分の経験で貢献できそう」と前向きに捉える方が増えるのです。
また、理念を通して「誰かの役に立つ」「社会に必要とされている」と実感できれば、働くことそのものが誇りとなり、結果として長期的な定着にもつながります。
3.採用活動で理念を伝えるための具体的な工夫とは?
求人票・募集要項に“想い”を込める
採用活動の最初の接点となる「求人票」や「募集要項」は、理念を伝えるための重要な媒体です。
多くの企業が業務内容や条件面ばかりを記載していますが、そこに企業のビジョンや社会的使命をひとこと添えるだけで印象は大きく変わります。
たとえば、
「地域の方々の安心と笑顔を守るために、経験を活かした見守りサポートを担っていただける方を歓迎します」
という表現があるだけで、「自分の役割が明確にイメージできる」と応募意欲が高まります。
特に、やりがいを重視するシニア層には、「なぜこの仕事が必要なのか」「自分がどう貢献できるのか」という視点で伝えることが効果的です。
面接で理念を共有し、相互理解を深める
面接は理念を“言葉”で伝える絶好のチャンスです。企業の目指す方向性や価値観を、単なる説明ではなく、面接官自身の経験や思いとともに語ることで、求職者との距離が一気に縮まります。
たとえば、「私たちは“誰かの役に立ちたい”という想いを持つ方と一緒に働きたいと思っています」など、感情を含めて語ることで、共感を生み出しやすくなります。
また、応募者にも「あなたはなぜ働きたいと思ったのか」「これまでどんなことでやりがいを感じてきたか」を聞き、理念との接点を探ることで、採用のミスマッチも防ぐことができます。
採用ページや説明会でのストーリーテリングの活用
企業ホームページや会社説明会では、理念を「体験談」として伝える工夫が有効です。たとえば、
・実際にシニア社員が活躍している事例
・理念がきっかけで入社した社員インタビュー
・ビジョンに基づいた地域貢献活動の紹介
など、ストーリー仕立てで伝えることで、理念が“リアルなもの”として求職者の心に残ります。
理念は「掲げる」だけでは意味がありません。“感じてもらう”ことが、採用の第一歩なのです。
4.理念が活きる職場づくりで、ミスマッチを防ぐ
価値観の共有がエンゲージメントを高める
採用時にいくら理念を伝えても、入社後の職場にその“実体”がなければ、ミスマッチは避けられません。
理念が活きる職場とは、日々の業務の中に価値観が浸透し、従業員一人ひとりが共通の目的意識を持って働ける環境のことです。
たとえば、企業理念に「地域社会への貢献」を掲げているならば、
・高齢者の見守りや声かけの取り組み
・地元イベントへの協賛、参加
・地域清掃活動への社員参加
など、社員が理念を体感できる場面をつくることが重要です。
このような取り組みは、特にシニア層にとって「ここで働く意味がある」「社会とつながっている」と実感するきっかけになります。
理念と実行が一致している企業では、社員のワークエンゲージメント(仕事への熱意や没頭度)も高まり、離職率の低下につながります。
理念に共鳴する人材の定着率が高い理由
理念に共鳴して入社した人材は、たとえ困難な状況に直面しても「自分はこの会社の想いに共感して働いている」という心理的な支えがあるため、継続意欲が高くなります。
これはシニア層に限らず、若手や中堅社員にも共通する傾向ですが、特に再就職を選ぶ高齢者にとっては、「最後の職場」としての安心感を感じられるかどうかが重要です。
また、理念が日常の中に根づいている職場では、価値観に共鳴し合う社員同士の信頼関係が育ちやすく、世代間の壁も自然と低くなるという副次的な効果も期待できます。
こうした土壌のある企業では、採用活動においても“理念”が強力なブランディング要素となり、「共感」で人が集まり、「共鳴」で人が残る仕組みができあがります。
5.まとめ|ビジョンがつなぐ未来の人材戦略とは
企業が人材を確保し、持続的に成長していくためには、「何を目指している会社なのか」を明確に示す必要があります。
給与や条件の差では差別化しにくくなった今、求職者が判断材料とするのは、その会社がどんな理念を掲げ、どんな価値を社会に届けているかという点です。
特にシニア層のように「やりがい」「貢献感」「人生の意味づけ」を重視する人材にとって、理念は単なるスローガンではなく、“働く理由そのもの”になります。
理念がしっかりと伝わっている企業には、以下のような効果が期待できます。
・求職者の共感を呼び、応募者の質が向上する
・入社後の価値観のギャップが減り、定着率が上がる
・経験やスキルだけでなく、企業文化への適応力も高まる
・世代を超えて価値観を共有する風土が生まれる
理念は「伝えるもの」ではなく、「共に育てていくもの」。
だからこそ、採用活動の入口から、入社後の組織運営に至るまで、一貫してビジョンを打ち出し、実践することが重要です。
人が集まり、人が育ち、人が残る会社には、いつも「共感できる理念」が存在しています。
採用難の時代だからこそ、“企業の想い”を伝えることが、人材戦略の要となるのです。
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