1. はじめに｜なぜ今「シニア男性の楽しい働き方」が注目されているのか
日本はかつてないスピードで高齢化が進み、2024年10月1日現在で65歳以上は3,624万人（高齢化率29.3％）、うち75歳以上は16.8％に達しています。人生100年時代のいま、「年金だけでは不安」「体を動かして健康を保ちたい」「社会とつながり続けたい」というニーズが重なり、70歳以降の“生涯現役”が現実的な選択肢になっています。こうした背景から、収入確保だけでなく楽しさ・やりがいを軸に働くシニア男性が急増しているのです。
実際、就業構造を見ると60代後半の男性の就業率は61.6％。定年延長や再雇用を活用しつつ、体力や経験に合う仕事へシフトする動きが定着しています。「稼ぐ」だけでなく、長年培った技能・人脈を地域や職場で活かせる場を持つことが、自己効力感や生きがいの回復にも直結しているのが今の特徴です。
制度面でも追い風があります。改正高年齢者雇用安定法（2021年施行）は、企業に「70歳までの就業機会の確保」を努力義務として求め、定年引上げ・定年廃止・継続雇用、さらには70歳までの業務委託や社会貢献事業への従事など多様な選択肢を制度化しました。これにより、雇用・委託・地域貢献のいずれでも「働き続ける形」を設計しやすくなっています。
さらに、健康面のメリットも無視できません。厚生労働省のガイドラインは、定期的な身体活動がフレイル予防や生活習慣病リスク低減に有効と示しており、適度に身体を使い、人と関わる仕事は心身の維持に役立ちます。働くこと自体が日々の活動量と交流機会を増やし、健康寿命の延伸に寄与しうる点も、シニア男性の就業を後押ししています。
――以上を踏まえると、本記事が提案する「楽しい働き方＝収入・健康・つながりの三拍子」は、時代背景と制度、そして健康科学の観点からも合理的。次章以降では、70歳からでも無理なく始められ、“楽しい”を実感できる具体職種と選び方を解説します。
2. 働くことが健康・生きがいにつながる理由
シニア男性が70歳を超えても働き続けることには、経済面だけでなく、健康維持と精神的な充実という大きなメリットがあります。特に男性の場合、定年後に社会との接点が急減すると、生活リズムの乱れや孤立感の増大が健康リスクを高める傾向があります。働くことは、このリスクを軽減する有効な手段となります。
1. 身体活動の増加による健康維持
厚生労働省の「健康日本21（第二次）」では、日常的な身体活動や運動が生活習慣病予防やフレイル（虚弱）予防に効果的であると示されています。仕事を持つことで、通勤や業務中の移動、軽作業などが自然な運動となり、筋力や持久力の維持に直結します。特に施設管理や警備、配送などは適度な運動量が確保でき、無理なく体を動かせます。
2. 認知機能の低下予防
国立長寿医療研究センターの調査では、社会参加が多い高齢者は認知症発症リスクが低いという結果が出ています。仕事を通して人と話したり、課題を解決する経験は脳の活性化を促し、記憶力や判断力の維持にも効果的です。特に接客業や講師業など、人との関わりが多い職種はこの効果が高まります。
3. 精神的な充実と自己肯定感の向上
長年培ってきた技能や知識を仕事で活かすことは、「まだ社会で役に立てている」という自己効力感を高めます。内閣府の「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」でも、日本の高齢者は「役割を持つこと」が幸福感に大きく影響していることが示されています。特に男性は、家庭以外での役割や社会的な肩書きが生活満足度に直結する傾向が強く、仕事はその重要な場となります。
4. 健康寿命の延伸への貢献
健康寿命とは、日常生活を制限なく送れる期間のことです。仕事による身体活動・社会参加・精神的充実の三要素は、この健康寿命を延ばす要因として相互に作用します。結果として、働き続けることは単なる生計維持の手段ではなく、長く元気に暮らすための生活習慣にもなり得ます。
このように、「楽しい働き方」は単なる気分の問題ではなく、科学的にも健康と生きがいを支える根拠のある行動です。次の章では、この健康効果を実感できる、シニア男性に人気の仕事5選をご紹介します。
3. シニア男性に人気の仕事5選｜収入もやりがいも叶える職種
ここでは、70歳からでも無理なく始められ、収入・健康・社会参加の3つを満たしやすいシニア男性向けの代表的な仕事を紹介します。それぞれの特徴やメリット、向いている人の傾向も詳しく解説します。
① 施設管理員・ビルメンテナンス
ビルや商業施設、マンションなどでの設備点検・軽微な修繕・清掃監督などを担当します。力仕事は少なく、業務の多くは巡回や確認作業です。長年の職場経験で培った段取り力や責任感を活かしやすく、未経験でも研修制度が整っているケースが多いのも魅力です。週2〜3日勤務や半日勤務など、働く時間を柔軟に調整できる求人も多く見られます。
② 警備スタッフ
商業施設や工事現場、イベント会場などで安全を守る仕事です。常に需要が安定しており、体力に合わせて屋内外・日勤夜勤を選べます。制服着用や定型業務が多いため、未経験からでも始めやすく、再就職後も長く続けられる職種の一つです。立ち仕事中心ですが、適度な運動量が確保できるため健康維持にもつながります。
③ ドライバー・配送スタッフ
軽貨物配送や企業・施設の送迎バス運転など、運転技術を活かせる仕事です。地理に詳しい方や運転が好きな方には特に向いており、短時間やルート固定の求人も多いため、体力面で無理なく働けます。地域密着型の配送は、常連客との交流も生まれやすく、やりがいを感じやすい職種です。
④ 農業・園芸サポート
地元農家や自治体の農業支援事業で、植え付けや収穫、草刈り、庭の手入れなどを行います。自然と触れ合いながら体を動かせるため、ストレス解消や体力維持に効果的です。繁忙期は短期集中で働き、オフシーズンは自由な時間を持てるのも特徴。野菜づくりや園芸の知識が増え、家庭菜園や地域活動にも活かせます。
⑤ 趣味・特技を活かした講師業
囲碁・将棋、釣り、DIY、写真など、自分の趣味や特技を人に教える仕事です。カルチャーセンター、自治体主催の生涯学習講座、地域サークルなどで募集されることが多く、経験や知識をそのまま活かせます。単発の講座から始められるため、まずは試しにやってみたい方にもおすすめ。教えることで自分の技術がさらに磨かれるという相乗効果もあります。
これらの職種はいずれも、健康を維持しながら無理なく続けられること、人や地域との関わりが持てることが共通しています。次の章では、これらの仕事を実際に見つけるためのポイントと注意点を解説します。
4. 70歳からでも始められる！仕事探しのポイントと注意点
70歳からの仕事探しでは、「無理なく長く続けられること」と「自分らしい働き方を実現できること」の両立が重要です。ここでは、職種選びから応募、働き始めた後の注意点まで、具体的に解説します。
1. まずは健康状態と生活リズムを把握する
高齢期の働き方は、健康と直結します。持病や体力レベル、通院の有無、家族のサポート体制などを確認し、無理のない勤務時間・勤務日数を決めることが第一歩です。例えば、週2〜3日勤務や午前のみの仕事なら、体への負担を軽減できます。
2. 求人の探し方
・ハローワーク：シニア向け求人や短時間勤務の情報が多く、相談員によるマッチング支援も受けられます。
・シニア向け求人サイト：勤務地・時間・仕事内容などを細かく検索でき、応募もオンラインで完結。
・地域の就業支援センター：自治体や商工会議所が運営し、地元企業の求人や地域活動型の仕事情報を得られます。
・知人、友人からの紹介（リファラル）：信頼関係のある紹介は採用率が高く、働きやすさも事前に把握しやすいです。
3. 応募・面接時のポイント
・過去の経験を活かせる点を強調：年齢よりも経験・スキル・人柄をアピール。
・体力面の自己管理アピール：健康診断結果や日常の運動習慣を伝えることで安心感を与えられます。
・柔軟性の高さを示す：勤務日や仕事内容に柔軟に対応できる姿勢は、採用側に好印象。
4. 契約・条件面の確認
契約書や求人票は必ず詳細まで確認し、労働条件通知書や雇用契約書で就業時間・休日・賃金・保険の有無などを明記してもらいましょう。曖昧なまま働き始めると、条件トラブルの原因になります。
5. 注意点
・過度な肉体労働や長時間労働は避ける：健康を損なう恐れがあるため、業務負荷を事前に確認。
・不透明な求人に注意：極端に低賃金、仕事内容が曖昧、違法な長時間労働などの条件には応募しない。
・資格や免許の更新：運転免許や警備員資格など、有効期限や更新条件の確認を忘れずに。
このように、70歳からの仕事探しでは自分の体力と生活に合った条件を優先し、信頼できる求人ルートを活用することが成功のカギです。次の章では、働き始めてからも“楽しい”を維持するための工夫について解説します。
5. 働き方を楽しむための3つの工夫
70歳からの仕事は、ただ生活費を補うだけでなく、心身ともに充実感を得るための場として活用することが大切です。長く、そして楽しく働くためには、いくつかの意識や習慣が効果的です。ここでは、特に実践しやすく、効果を実感しやすい3つの工夫を紹介します。
1. 仕事以外の趣味や活動も大切にする
仕事が生活の中心になりすぎると、疲労やストレスが蓄積しやすくなります。勤務日数や時間をあえて抑えて、趣味や家庭の時間を確保することで、気持ちにゆとりが生まれます。例えば、週3日勤務にして残りの日は釣りや園芸、地域活動などに充てると、仕事と私生活のバランスが整い、仕事へのモチベーションも維持しやすくなります。
2. 職場の人間関係を良好に保つ
長く快適に働くためには、職場での人間関係が非常に重要です。日々の挨拶や感謝の言葉、報告・連絡・相談の徹底など、基本的なコミュニケーションを意識することで、信頼関係を築けます。また、年齢や立場にこだわらず、若い世代からも学ぶ姿勢を持つと、世代間の壁が低くなり、職場に馴染みやすくなります。
3. 学びを続ける
新しい知識やスキルを学び続けることで、自分の市場価値を保てるだけでなく、仕事への意欲も高まります。資格取得やオンライン講座への参加、職場での新しい業務への挑戦など、学びの場は意外に身近にあります。たとえば、パソコンやスマートフォンの操作を学ぶことで、事務作業や情報収集がスムーズになり、仕事の幅も広がります。
まとめると、楽しい働き方を実現するには「生活のバランス」「良好な人間関係」「継続的な学び」の3要素が不可欠です。この3つを意識するだけで、日々の仕事がより充実し、長く続けやすくなります。次の章では、今回紹介したポイントを踏まえ、自分らしい働き方でセカンドライフを充実させるための総まとめを行います。
6. まとめ｜自分らしい働き方で充実したセカンドライフを
70歳からの働き方は、単なる「生計の手段」ではなく、健康維持・社会参加・自己実現を同時に叶える大切なライフスタイルです。本記事で紹介したように、施設管理や警備、配送、農業サポート、趣味を活かした講師業など、シニア男性が得意分野や興味を活かせる選択肢は数多くあります。
働き方を楽しむためには、まず自分の健康状態や生活リズムに合った仕事を選ぶことが重要です。加えて、職場の人間関係を良好に保ち、学びを続けることで、長く快適に働き続けることができます。
また、制度や環境面の変化も追い風になっています。高年齢者雇用安定法の改正によって、70歳までの就業機会が確保されやすくなり、地域や企業でもシニア活用が進んでいます。こうした背景を踏まえ、自分に合った働き方を早めに模索しておくことで、将来の不安を減らし、より前向きなセカンドライフを迎えることができます。
最後に、働くことは「生活費を稼ぐため」だけでなく、「生きる喜びや自分らしさを再発見する場」にもなります。ぜひ、年齢を理由に諦めず、自分が笑顔になれる仕事を見つけて、これからの人生をより豊かにしていきましょう。
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