「人が辞めない組織づくり」とは?離職防止につながる最新の人事戦略

【企業向け】シニア採用

1. 人が辞めない組織づくりとは?いま注目される背景

近年、多くの企業が直面している課題のひとつが「人材の定着」です。人手不足が深刻化する中で、優秀な人材を採用できても、短期間で辞めてしまえば採用コストも教育コストも無駄になってしまいます。とりわけ中小企業や地方企業では、新しい人材を確保すること自体が難しくなっており、「人が辞めない組織づくり」がこれまで以上に重要視されるようになっています。

背景には、労働市場の変化があります。総務省「労働力調査」(2024年)によると、日本の労働人口は1995年をピークに減少傾向が続いており、とくに若年層の労働力は大幅に縮小しています。その一方で、65歳以上の就業率は年々上昇し、2023年時点では25%を超えました。つまり、企業が人材を確保するには「シニア層を含む多様な人材を受け入れ、長く働き続けてもらう仕組みづくり」が欠かせなくなっているのです。

また、働き方に対する価値観も大きく変わっています。従来は「給与や福利厚生」が人材の定着に直結していましたが、近年は「働きがい」や「人間関係」、「ワークライフバランス」への関心が高まっています。リクルートワークス研究所の調査(2023年)によれば、転職理由の上位には「キャリアの成長が見込めない」「上司や同僚との関係に不満がある」といった項目が並んでおり、必ずしも給与だけが離職要因ではないことが明らかになっています。

このように、「人が辞めない組織づくり」とは単なる人材確保の戦略ではなく、企業の成長に直結する経営課題です。特に、シニア層を含む多様な人材が安心して働き続けられる環境を整えることは、持続可能な組織づくりに欠かせない視点となっています。


2. 離職が起きる原因|給与よりも重要なポイントとは

人材が離職する理由として、真っ先に思い浮かぶのは「給与水準」かもしれません。しかし、多くの統計や調査から明らかになっているのは、給与だけが離職の主要因ではないということです。むしろ、働く環境や人間関係、キャリア形成の見通しといった心理的・社会的な要素のほうが定着率に大きな影響を与えているのです。

厚生労働省「令和5年 雇用動向調査」(2024年)によれば、転職者が前職を辞めた理由の上位には「職場の人間関係が好ましくなかった」(男性9.1%、女性13.0%)や「労働時間・休日などの条件が良くなかった」が含まれています。給与や待遇はもちろん大切ですが、必ずしも最上位の理由ではなく、日々の働きやすさや人間関係の良し悪しが離職を決定づけるケースが多いことがわかります。

また、特にシニア層では「自身の経験やスキルを活かせない」「役割が不明確」といった状況がモチベーション低下や早期離職につながります。人材が年齢を重ねるほど、給与よりも「やりがい」や「自分の存在意義」を求める傾向が強まるため、企業としてはこうした心理的要素を軽視できません。

一方で若手人材の場合は「成長機会の不足」が大きな離職要因となります。DODA「転職理由ランキング(2023年7月〜2024年6月)」でも、「給与や昇給が見込めない」に加えて「人間関係が良くない」「社内の雰囲気が悪い」「スキルアップできない」といった回答が上位を占めています。つまり、給与条件に加えてキャリア形成や成長の場を提供できるかどうかが、定着率を左右するのです。

このように、人材が辞める本当の理由は「給与の不満」よりも「働きやすさ」「人間関係」「成長機会の不足」といった要素にあるといえます。したがって、企業が人が辞めない組織をつくるためには、報酬制度の見直しに加えて「役割の明確化」「人間関係の良好化」「キャリア支援」をバランスよく取り入れることが欠かせないのです。


3. シニア採用が人材定着に貢献する理由

人が辞めない組織づくりを考えるうえで、シニア層の採用と活用は重要なカギとなります。少子高齢化が進む日本において、シニア人材は「補完的な労働力」ではなく、「組織の持続的成長を支える存在」として期待されています。

まず大きな理由のひとつが 豊富な経験と知識 です。シニア層は長年のキャリアを通じて、業務知識だけでなく、人間関係の構築術やトラブル対応のノウハウを身につけています。これらはマニュアル化が難しい暗黙知であり、若手社員にとって大きな学びの源泉となります。シニア人材が社内にいることで、自然と「教育係」や「相談役」として機能し、結果的に若手の定着率向上につながります。

次に挙げられるのは、 職場の多様性と安心感の向上 です。厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告」(2022年)によると、65歳以上の従業員を雇用している企業の約7割が「職場の活性化につながった」と回答しています。世代を超えた交流が生まれることで、社員一人ひとりが「この会社にはいろんな人がいるから安心して働ける」と感じやすくなり、結果として離職防止につながるのです。

また、シニア層は 長期的に安定して働く傾向 があります。若手はキャリアアップや転職によるステップアップを志向することが多い一方、シニア層は「地元で長く働きたい」「最後まで現場で貢献したい」というニーズを持っています。こうした価値観は企業にとって貴重であり、採用後の定着率の高さという形で組織にプラスの影響を与えます。

さらに、シニア採用は 企業イメージの向上 にも直結します。シニア層を積極的に雇用し、多様な人材が活躍できる組織は「ダイバーシティ経営を実践している企業」として評価されやすく、取引先や求職者からの信頼度も高まります。これは長期的にみれば、優秀な人材の確保や社員定着率の向上に結びつく重要な効果です。

このように、シニア採用は単なる人員補充にとどまらず、経験の伝承、職場の安心感、長期的な定着率向上という観点から、「人が辞めない組織づくり」に大きく貢献するのです。


4. 人が辞めない組織づくりの具体的な施策5つ

人材の定着を実現するには、抽象的な理念だけでなく、実際に効果のある具体的な施策を打ち出すことが欠かせません。ここでは、多くの企業が取り入れて成果を上げている「人が辞めない組織づくり」の5つの施策を紹介します。

① キャリアパスの明確化

従業員が「この会社で自分はどう成長できるのか」をイメージできるようにすることは非常に重要です。厚生労働省「若年者雇用実態調査」(2021年)によれば、若手社員の早期離職理由の上位に「将来性が見えない」が挙がっています。昇進・昇格だけでなく、専門性の深化やジョブローテーションなど、複数のキャリアの道筋を提示することが、安心して働き続けられる要因となります。


② コミュニケーション環境の改善

離職理由の中でも「人間関係の不満」は常に上位に挙がります。定期的な1on1面談や、部署を超えた交流の機会をつくることで、従業員同士の理解を深めることができます。また、心理的安全性を担保するための仕組み(相談窓口や匿名アンケートなど)を導入すれば、安心して意見を出せる職場文化が育ちます。


③ 柔軟な働き方の導入

労働人口が多様化する今、柔軟な勤務形態を認めることは必須です。シニア層に対しては「短時間勤務」や「週3日勤務」、子育て世代に対しては「リモートワーク」や「フレックスタイム」など、ライフステージに合わせた柔軟な制度を導入することで、長期的に働きやすい職場を実現できます。


④ 評価制度の透明化

「頑張っても評価されない」という不満は、離職を加速させる要因です。評価基準を明確にし、成果だけでなくプロセスやチーム貢献度も加味することで、納得感のある評価制度を構築できます。特にシニア層の場合、若手育成や組織運営への貢献をしっかりと評価に反映させることが重要です。


⑤ 健康経営の推進

従業員の健康を守ることは、定着率を高めるうえで見逃せません。経済産業省の「健康経営銘柄」に選ばれる企業は、従業員の離職率が低い傾向にあると報告されています。定期的な健康診断の充実、メンタルヘルス相談窓口の設置、運動や食生活改善をサポートする福利厚生の導入は、社員の安心感を高め、結果的に長期定着につながります。

これらの施策を組み合わせて実行することで、「人が辞めない組織づくり」を現実のものとすることができます。重要なのは、単発の施策に終わらせず、企業文化として根付かせることです。


5. その検討と進め方

「人が辞めない組織づくり」を実現するためには、施策を単に導入するだけでなく、経営層・人事部・現場が一体となって検討・実行していくプロセスが欠かせません。ここでは、その進め方のステップを整理してみましょう。

ステップ1:現状分析

まずは、自社の離職状況を正確に把握することがスタート地点です。離職率、平均勤続年数、離職理由の傾向を定量的に分析し、どの層で離職が多いのかを明らかにします。例えば、若手の離職率が高ければキャリア形成支援の不足、シニア層の離職が多ければ役割設計の不備など、課題を特定しやすくなります。


ステップ2:施策の優先順位付け

すべての施策を一度に導入することは現実的ではありません。効果が大きいもの、現場でニーズが高いものから優先的に取り組むことが重要です。例えば、コミュニケーション不全が離職の大きな要因であれば「1on1ミーティング」や「相談窓口の設置」から始めると効果を実感しやすくなります。


ステップ3:経営層と現場の合意形成

施策を形骸化させないためには、経営層の強いコミットメントと現場の納得感が不可欠です。トップが「人が辞めない組織づくり」を経営戦略の一部として位置づけ、管理職や現場社員と意見交換を重ねながら具体化していくことが成功のカギとなります。


ステップ4:制度の設計と試行導入

いきなり全社導入するのではなく、まずは特定部署でパイロット的に導入し、効果を測定するのがおすすめです。小規模での試行により課題を洗い出し、本格導入に向けて改善点を反映できます。


ステップ5:効果測定と改善サイクル

施策を導入した後は、定期的にアンケートや離職率のデータを確認し、PDCAサイクルを回していくことが重要です。特に「働きやすさ」や「やりがい」といった心理的要素は数値化が難しいため、定性・定量の両面でデータを集め、改善を続けることが定着率向上につながります。

このように、検討と進め方を段階的に整理し、組織全体で取り組むことで初めて「人が辞めない組織づくり」は現実の成果につながります。単なる制度導入ではなく、企業文化として根づかせる視点が不可欠なのです。


6. まとめ|人が辞めない組織づくりが企業にもたらすメリット

「人が辞めない組織づくり」は、人手不足が常態化している現在の日本企業にとって避けて通れない課題です。本記事で見てきたように、給与や待遇だけではなく、キャリア形成の見通し、人間関係、役割の明確化、柔軟な働き方など、多面的な要素が人材定着に大きな影響を与えています。

特に、シニア人材の採用と活用は、組織に長期的な安定と多様性をもたらします。豊富な経験を若手に伝承し、安心感のある職場文化をつくり、さらに地域や社会から「多様な人材を活かす企業」として評価されることは、企業ブランドの向上にも直結します。

さらに、人が辞めない組織を実現することは、単なる離職防止の枠を超えた経営戦略となります。採用コストや教育コストの削減、社員エンゲージメントの向上、生産性の向上といった効果は、企業の競争力強化にも直結するのです。経済産業省の調査(2023年)でも、従業員の定着率が高い企業ほど業績の安定性が高いことが示されています。

一方で、「人が辞めない組織づくり」は一朝一夕で完成するものではありません。現状分析から施策の優先順位付け、試行導入、効果測定と改善サイクルまで、段階的かつ継続的に取り組むことが必要です。大切なのは、制度を導入すること自体ではなく、それを企業文化として浸透させることにあります。

人材の定着は、企業にとって最大の資産である「人」を守り、活かすことを意味します。高齢者を含む多様な人材が活躍できる環境を整えることは、これからの時代に持続的な成長を実現するための最重要テーマだと言えるでしょう。

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