はじめに｜なぜ今「展示会」が採用担当者の教材になるのか
採用を取り巻く環境は、少子高齢化や働き方の多様化によって大きく変化しています。特に人材不足が深刻化する中で、採用担当者は「どうすれば必要な人材を確保できるのか」という課題に直面しています。こうした状況で注目されているのが「展示会を学びの場」として活用する方法です。
展示会と聞くと「新製品の紹介」や「販路開拓の場」というイメージが強いかもしれません。しかし、実際には人材採用や人事・労務に関する専門展示会も多数開催されており、最新の採用トレンドや業界の動きを一度に把握できる機会となっています。
特に展示会の特徴は次の3つです。
・最新情報を短時間で幅広く収集できる
・業界の動向やトレンドを“肌で感じられる”
・専門サービスやツールの提供企業と直接対話できる
また、展示会は単なる情報収集にとどまらず、他社がどのような課題を抱えているのか、どのような解決策を導入しているのかを知るヒントにもなります。こうした「リアルな現場感覚」は、Web検索や資料だけでは得られない貴重な学びとなり、自社の採用戦略に直接活かせるのです。
人事担当者にとって展示会は、採用戦略の教材であり、実践的な学びの場。特にシニア人材の活用を検討している企業にとっても、展示会は有効なヒントを得られる重要な機会となります。
1．展示会で得られる最新トレンドとは？
展示会の大きな魅力は、採用や人材活用に関する最新のトレンドを直接キャッチできることです。人事担当者が普段の業務の中で新しい情報を得ようとしても、ネット記事や書籍ではどうしても情報が一歩遅れがちです。対して展示会は、サービス提供企業や専門家が“今まさに注目されているテーマ”を中心に情報発信しているため、スピーディーにトレンドを把握できます。
採用市場の動向を肌で感じられる
展示会では、来場者や出展企業の声を通して、「どのような人材が求められているのか」をリアルに感じ取ることができます。例えば近年では、短時間勤務やリモート対応が可能な求人が増加している傾向があり、そうした柔軟な雇用形態に対応するためのサービスや事例が紹介されることも多くあります。
厚生労働省のデータでも、65歳以上の就業者数は2023年時点で約912万人と過去最多を更新しており（出典：総務省「労働力調査」2023年）、展示会でも「高齢者を含む多様な人材をどう活かすか」というテーマが一層取り上げられるようになっています。
人材活用に関する最新のサービスや技術を知る
展示会では、人事・採用領域に特化した最新のシステムやソリューションを直接体験できます。たとえば以下のようなサービスです。
・採用管理システム（ATS）
・AIを活用した応募者マッチングツール
・面接、適性検査のオンライン化サービス
・シニアや多様な人材に特化した求人メディア
こうしたツールやサービスを実際に目で見て比較できるのは、展示会ならではのメリットです。自社の課題にマッチする解決策を探すための効率的な手段となり、導入検討にも直結します。
このように展示会は、採用市場全体の動向を把握すると同時に、最新のサービスや技術に触れられる場所です。ここで得た知見を整理しておくことが、次のステップである「シニア人材活用」への学びにつながります。
2．シニア人材活用のヒントを展示会で学ぶ方法
展示会は、単に最新の採用市場を知る場にとどまらず、シニア人材を効果的に活用するためのヒントを得られる場でもあります。高齢化が進む日本社会において、シニア層の豊富な経験をどう生かすかは、企業にとって避けて通れない課題です。展示会では、その解決につながる具体的なサービスや考え方を学ぶことができます。
経験豊富な人材を活かす職務設計のアイデア
シニア人材を採用する際に重要なのは、その経験や知識を十分に発揮できる環境を整えることです。展示会では「業務を細分化して無理なく担当できるようにする仕組み」や、「若手社員の教育・指導役としてシニアを配置するモデル」などのアイデアが紹介されることがあります。
実際に厚生労働省が公表している「高年齢者雇用実態調査（2021年）」によれば、シニア人材を活用している企業の約6割が「経験や知識を活かした指導・育成業務」を任せていると回答しており、こうした職務設計は現場でも広がりを見せています。
シニア採用を支援するサービスやソリューション情報
展示会では、シニア人材に特化した求人媒体やマッチングサービス、さらには雇用をサポートする研修プログラムなども出展されます。例えば以下のようなものです。
・シニア世代を対象にした求人ポータルサイト
・高齢者向けのスキル再教育、リスキリングサービス
・短時間勤務や週数日の勤務に対応したシフト管理システム
・定年後の人材を顧問やメンターとして活用する仕組み
これらを比較検討できるのは展示会ならではの利点であり、「どのサービスを導入すれば自社に最適か」を判断する大きな手がかりになります。
展示会を通じて得られるこれらの情報は、単なる知識にとどまらず、シニア人材の強みを活かした具体的な採用戦略のヒントとなります。
3．人事担当者が参加すべき展示会の探し方
展示会を効果的に活用するためには、まず「どの展示会に参加すべきか」を知ることが大切です。採用や人材活用に関連する展示会は全国で開催されていますが、特に首都圏の大規模イベントは情報量が豊富で、人事担当者にとって学びの機会が多いのが特徴です。
オンラインで最新イベント情報を検索する
展示会の最新情報は、公式サイトや展示会ポータルサイトから検索できます。代表的な情報源としては以下のようなものがあります。
・日本展示会協会（https://www.nittenkyo.ne.jp/）
・全国主要見本市・展示会一覧 Web版（https://biz.nikkan.co.jp/brand/eventexpo/）
・主催者の公式ページ（例：リード エグジビション ジャパン、ブティックス、SmartHR）
これらを活用することで、自社の課題に合ったイベントを効率的に見つけることができます。
業界団体や専門メディアの情報を活用する
人材業界や採用分野に関する団体やメディアも、関連展示会の案内を積極的に発信しています。特にHR関連の展示会は、人事担当者向けの学びが多く含まれているため要チェックです。
例えば以下のような大規模展示会があります。
HR EXPO（人事労務・教育・採用に関する専門展）
採用管理システムから研修サービス、シニア採用支援まで、人事領域全般をカバーする大型イベント。毎回数百社が出展し、人事担当者同士の交流の場としても有名です。
総務・人事・経理Week
総務や経理といった管理部門全体をテーマにした総合展示会。人事制度や労務管理の最新トレンドを学べるとともに、シニア人材を含む多様な働き方への対応策に触れることができます。
バックオフィスWorld
バックオフィス部門に特化した展示会で、業務効率化やDX化の事例が多く紹介されます。人事労務のデジタル化を進めたい担当者におすすめのイベントです。
人事・労務DX EXPO
人事・労務領域のDX（デジタルトランスフォーメーション）に焦点を当てた展示会。勤怠管理や評価制度のクラウド化など、最新技術を活用した採用・労務のあり方を学べます。
このように、展示会を探す方法は「オンライン検索」と「業界団体・専門メディアのチェック」の二本柱で進めるのが効率的です。実際の展示会名も把握しておけば、参加計画も立てやすくなるでしょう。
4．展示会参加を効果的にするためのポイント
展示会は情報収集や人脈形成の貴重な機会ですが、ただ参加するだけでは学びを十分に活かせません。採用戦略に結びつけるには、事前準備と参加後の活用プロセスが欠かせません。
事前準備で注目ブースをリストアップ
展示会は規模が大きいほど出展社数も多く、効率的に回らなければ必要な情報を取りこぼしてしまいます。そのため、事前に注目ブースをリストアップしておくことが重要です。
・公式サイトやパンフレットから出展社情報を確認する
・自社が抱える課題（例：シニア採用支援、面接効率化）と関連するサービスをピックアップ
・目的に合わせて「必ず訪れるブース」「余裕があれば立ち寄るブース」を分類しておく
これにより、展示会当日は効率的に情報を集められます。
セミナーや講演を積極的に活用する
展示会では、多くの場合ブース出展と並行して専門家や企業が登壇するセミナー・講演が行われています。採用市場の最新データや、成功企業の事例、人材活用の新しい取り組みを学べる貴重な機会です。
シニア人材の活用をテーマにした講演や、労務管理の制度改正に関する解説セッションも増えているため、時間を確保して参加することで展示会の学びをさらに深められます。
学んだ情報を自社に落とし込む方法
展示会で得た情報は、そのままでは単なる「知識」で終わってしまいます。大切なのは、自社の採用戦略にどう組み込むかを考えることです。
具体的には、以下の流れで整理すると効果的です。
１．展示会で収集した情報を社内共有する
→ 人事チーム内で学んだポイントを報告し合う。
２．自社の課題と照らし合わせる
→ 例えば「シニア人材の応募は増えているが定着が難しい」という課題に対して、展示会で知った支援サービスを検討する。
３．導入の優先順位を決める
→ 費用や導入効果を比較し、実現可能なものから試していく。
また、展示会後には出展企業からのフォローアップも多く届きます。気になるサービスがあれば積極的に情報交換を行い、実際の導入検討につなげましょう。
展示会は一度参加しただけでも十分な学びがありますが、定期的に参加することで最新トレンドを継続的にキャッチできる点も大きなメリットです。特にシニア採用のように社会的関心が高まっているテーマは、今後も新しいサービスや事例が登場していくため、継続的な参加がおすすめです。
まとめ｜展示会を活かしてシニア採用を成功に導こう
展示会は「製品やサービスの紹介の場」と考えられがちですが、人事担当者にとっては採用戦略を学ぶ教材のような存在です。最新の採用市場の動向を肌で感じられるだけでなく、実際に役立つツールやサービスを比較検討できる点は、日常業務では得がたい大きなメリットといえます。
特にシニア人材の活用に関しては、職務設計の工夫や専用サービスの導入といった具体的なヒントが得られる場でもあります。高齢化が進む中で「経験豊富な人材をどう活かすか」は企業にとって重要課題となっており、展示会はその答えを探るための絶好の機会です。
さらに、展示会参加を成果につなげるには、事前の計画と参加後の整理が不可欠です。事前に注目ブースをリストアップし、当日は目的意識を持って情報を収集する。そして展示会で得た知見を社内に共有し、自社の課題と照らし合わせて具体的な施策に落とし込む。このプロセスを徹底することで、展示会の学びをシニア採用の成功につなげることができます。
人材不足が深刻化する時代において、シニア人材は企業の成長を支える大きな戦力です。展示会を活用して最新情報を吸収し、実践的な採用戦略を構築することが、今後の競争力強化につながるでしょう。
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