1. 地域共生社会とは?|その基本的な考え方と背景
「地域共生社会」とは、年齢や性別、障害の有無、経済状況などにかかわらず、誰もが安心して暮らし、支え合いながら生きていける社会を指します。厚生労働省は2016年に「我が事・丸ごと」地域共生社会の実現を掲げ、地域全体で高齢者・子育て世帯・障害者など多様な人々を包括的に支援する仕組みづくりを推進してきました【出典:厚生労働省「地域共生社会の実現に向けて」】。
背景には、日本の急速な少子高齢化があります。総務省の統計によれば、2024年時点で65歳以上の人口は全体の29.1%に達しており、今後もさらに増加すると予測されています【出典:総務省統計局「人口推計」2024年】。この状況のなかで、高齢者が単に「支えられる存在」ではなく、地域の一員として活躍することが重要視されているのです。
また、従来の「行政が一方的にサービスを提供する」形では限界が見え始めています。地域共生社会の考え方では、住民・行政・企業・NPOが連携し、互いに支え合う「共助」の仕組みを築くことが目標とされています。たとえば、高齢者が子育て世帯をサポートしたり、若者が高齢者のデジタル活用を手助けしたりする取り組みは、まさに地域共生社会の実例といえるでしょう。
つまり地域共生社会は、単なる福祉政策ではなく、誰もが「役割」を持ちながら暮らすための新しい社会の形といえるのです。
2. なぜシニア世代が地域共生社会に欠かせないのか
地域共生社会を語るうえで、シニア世代は欠かせない存在です。その理由は大きく3つあります。
1. 豊富な経験と知識を持っている
長年の職業経験や生活知識を持つシニア世代は、地域にとって「知恵袋」のような存在です。例えば、工場や建築現場で働いていた人は安全管理や作業効率の工夫を共有できますし、教育や事務職経験を持つ人は学習支援や地域活動の運営で力を発揮できます。これらの経験は、若い世代や地域全体の成長に大きな貢献となります。
2. 健康で活動的な高齢者が増えている
厚生労働省「国民生活基礎調査」(2022年)によれば、65歳以上でも「自分の健康状態を良好」と答える人は約6割にのぼります。つまり「高齢=要介護」というイメージは過去のものとなりつつあり、多くのシニアが積極的に地域活動や就労に関わることができるのです。
3. 社会的つながりが孤立を防ぐ
内閣府「高齢社会白書」(2023年版)によると、高齢者の約4人に1人が「日常生活で孤独を感じる」と答えています。こうした背景から、シニア自身が地域で役割を持ち、他者との関わりを持つことは、孤立防止にも直結します。地域共生社会では「助けられる立場」だけでなく「誰かを助ける立場」にもなることで、精神的な充実感を得られるのです。
このように、シニア世代は「支えられる側」と「支える側」の両方を担うことで、地域共生社会の中心的な役割を果たしているといえます。
3. 地域で活躍できるシニアの具体的な活動例
シニア世代が地域で活躍できる場は、想像以上に幅広く存在します。「働く」「学ぶ」「支える」という3つの側面から見てみましょう。
1. 働く場面での活躍
シニアが活躍できる仕事は、体力に合わせた多様なものがあります。
・地域施設の管理や清掃:体を動かしながら収入を得られる仕事。
・学校の見守りスタッフや交通安全指導員:地域の安全を守る大切な役割。
・農業や園芸のサポート:自然の中でのびのびと働けると人気です。
総務省「労働力調査」(2023年)によれば、65~69歳の就業率は 52.0% にのぼっており、半数以上が何らかの形で働いています。地域での仕事は、シニアの社会参加や生きがいづくりに直結していることが分かります【出典:総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」2023年】。
2. 学ぶ・教える場面での活躍
シニア世代の知識や技術を若者や地域に還元する取り組みも広がっています。
・学習支援や読み聞かせ:子どもたちへの 学習支援(算数や国語の補習)、図書館や学校での 読み聞かせボランティア
・生活スキルを伝える活動:料理/裁縫/園芸など、日常に役立つスキルのワークショップ、
「昔ながらの知恵(防災、生活の工夫)」を伝える交流会
・地域活動の運営:趣味のサークルや体操教室を手伝う、イベントの進行補助
こうした活動は「学び直し(リスキリング)」としても人気が高く、シニア自身の成長にもつながります。
3. 支える場面での活躍
地域共生社会では、助け合いの精神が欠かせません。
・買い物や外出支援:車を持たない高齢者の移動を助ける。
・福祉施設でのボランティア:利用者との交流を通じて生活を支える。
・地域サークルやイベントの運営:仲間づくりと居場所づくりを実現。
内閣府「高齢社会白書」(2023年)によると、ボランティア活動に参加している65歳以上の割合は約3割。特に「地域とのつながりが生きがいにつながる」と答える人が多く、参加者の満足度も高いのが特徴です。
このように、シニアの活躍の場は多岐にわたり、「仕事」「学び」「支え合い」のすべてが地域共生社会の実現に直結しているといえます。
4. 働きながら地域とつながるメリットとは
シニア世代にとって、仕事は単に収入を得る手段にとどまりません。地域共生社会の視点から見ると、「働くこと」そのものが地域とのつながりを深め、心身の健康を保つ大きなメリットをもたらします。
1. 経済的な安心感を得られる
年金だけでは生活が厳しいと感じる人にとって、収入源を確保できることは大きな安心材料です。特にパートタイムや短時間勤務なら、無理なく続けられるため、家計の補填と生活の安定に直結します。経済的な不安が減ることで、精神的なゆとりも生まれ、前向きな生活が実現します。
2. 健康維持につながる
厚生労働省「国民健康・栄養調査」(2022年)によれば、適度な身体活動はフレイル(加齢に伴う虚弱)の予防に効果的であると報告されています。シニアが仕事を通じて体を動かすことは、まさに「日常の運動習慣」となり、健康寿命を延ばすことにつながります。また、人と会話する機会が増えることで認知症予防にも役立つといわれています。
3. 社会的つながりが生まれる
仕事を通して地域の人々と交流することで、孤立感を防ぐことができます。例えば、地域施設の管理や子どもの見守りの仕事は、自然に顔なじみができ、安心できる人間関係を築くきっかけとなります。内閣府「高齢社会白書」(2023年)でも、働いている高齢者ほど「地域に役立っている実感がある」と回答する割合が高いことが示されています。
4. 自己肯定感が高まる
「自分の役割がある」「誰かに必要とされている」と感じることは、心の健康を支える重要な要素です。特にシニア世代にとって、役割を持ち続けることは「生きがい」や「人生の充実感」につながります。働くことで得られる自己肯定感は、日々をより活き活きと過ごす原動力になるのです。
このように、シニアが働きながら地域とつながることは、経済的・身体的・精神的の三つの側面でプラスの効果をもたらし、まさに地域共生社会を支える柱となります。
5. 地域共生社会を支える仕組みや制度を知ろう
地域共生社会は、個人の努力や善意だけで成り立つものではありません。行政や地域団体が整備する制度や仕組みがあるからこそ、多くの人が安心して参加できるのです。ここでは代表的な制度や取り組みを紹介します。
1. 地域包括支援センター
厚生労働省が全国に設置を進めている「地域包括支援センター」は、高齢者やその家族の総合相談窓口です。介護や医療だけでなく、生活支援や権利擁護など幅広い相談に対応しており、地域共生社会の中核的な役割を担っています【出典:厚生労働省「地域包括支援センターについて」】。
2. 生活支援コーディネーター制度
地域住民やボランティア、NPOなどをつなぎ、生活支援や交流活動を調整するのが「生活支援コーディネーター」です。この制度は2015年から本格的に導入され、買い物支援やサロン活動の立ち上げなど、地域ニーズに応じた多様な取り組みを後押ししています。
3. シルバー人材センター
高齢者が短時間・臨時的な仕事を請け負える仕組みとして「シルバー人材センター」があります。地域の仕事をシニアが担うことで、収入確保と社会参加を同時に実現できるのが特徴です。公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会によれば、2023年時点で会員数は約67万人にのぼり、多くのシニアの活躍の場となっています。
4. 地域福祉計画と自治体の取り組み
各自治体では「地域福祉計画」を策定し、住民・事業者・行政が協力して地域共生社会を推進しています。例えば、子育て世帯と高齢者の交流イベントや、空き家を活用した多世代交流拠点づくりなど、地域ごとの特色を活かした取り組みが広がっています。
このような仕組みや制度を活用することで、シニア世代も安心して地域活動や就労に参加でき、持続可能な地域共生社会の実現につながります。
6. まとめ|シニアが主役となる地域共生社会の未来
地域共生社会の実現は、少子高齢化が進む日本において避けて通れない課題です。しかし、それは同時にシニア世代にとって大きなチャンスでもあります。
これまで培ってきた経験やスキルを活かして地域に関わることで、収入の補填だけでなく、心身の健康維持、社会的つながりの拡大、そして「自分はまだ必要とされている」という自己肯定感を得ることができます。
制度や仕組みを通じて行政や地域がサポートする環境が整いつつある今、シニアが主役として活躍できる舞台は確実に広がっています。たとえば、シルバー人材センターや地域包括支援センターを活用すれば、自分に合った活動を見つけやすくなり、また地域ボランティアや就労の場を通じて若い世代と交流することも可能です。
地域共生社会は「支え合う社会」であると同時に、「役割を持ち続けられる社会」でもあります。これからの時代、シニア世代は単なる支援対象ではなく、地域の未来をつくる「担い手」として大きな存在感を発揮していくでしょう。
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