1. 音読はなぜ脳トレになる?|認知症予防につながる理由
音読は「声に出して読む」という単純な行為に見えますが、実は脳の幅広い領域を同時に使う優れたトレーニングです。目で文字を追い、内容を理解し、声帯や口を動かして発音する――この一連の流れは、視覚・聴覚・運動機能・言語処理を一度に刺激することにつながります。
特にシニア世代にとっては、脳の前頭葉(思考・判断を司る部分)や海馬(記憶に深く関わる部分)が活性化するとされ、認知症予防に効果がある可能性が指摘されています。たとえば国立長寿医療研究センターが参加した大規模研究「J-MINT研究」では、運動・食事・社会参加・認知トレーニングなどを日課に取り入れた高齢者グループは、そうでないグループに比べて認知機能の低下が抑えられる効果がみられたと報告されています(出典:国立長寿医療研究センター・J-MINT研究)。
さらに音読は、「文章の内容を理解する力」や「感情表現の豊かさ」にも関わります。これらを継続的に使うことで、記憶力や集中力を支える神経回路を鍛える効果が期待できるのです。
「読む」だけでなく「声に出す」ことで、脳はより強く刺激されます。特に毎日5分程度の短時間でも、習慣化することで効果が現れるとされており、生活に取り入れやすい点も魅力です。
2. 早口言葉で鍛える集中力と記憶力
「生麦生米生卵」「隣の客はよく柿食う客だ」など、早口言葉は一見遊びのようですが、実は脳にとって非常に高度なトレーニングです。短い時間に正確な発音を繰り返そうとすると、口の筋肉の動き・舌の位置・息の使い方を瞬時にコントロールしなければなりません。そのため、脳が集中して指令を出し続ける必要があり、自然と注意力や集中力の強化につながります。
また、早口言葉は暗唱して使うケースが多いため、記憶力の向上にも効果的です。特に繰り返し唱えることでワーキングメモリ(作業記憶)が鍛えられ、日常生活における「買い物リストを覚える」「予定を忘れない」などの力もサポートしてくれます。
音読は、脳の前頭部分を含む幅広い領域を使うため、日常的に続けることで脳を活性化させる習慣として注目されています。
さらに、早口言葉を家族や友人と一緒に楽しめば、笑いや交流のきっかけにもなります。言葉に詰まって笑い合う時間自体がストレス軽減につながり、心の健康維持にも役立ちます。
3. 遅口言葉で養う思考力と滑舌改善
「早口言葉」と対になるのが「遅口言葉」です。これは、わざとゆっくりと文章を発声するトレーニングのこと。言葉を一つひとつ丁寧に区切って発音することで、脳の思考を整理し、言語化する力を高める効果が期待できます。
人は急いで話すと内容が曖昧になったり、伝えたいことがうまく整理されなかったりします。しかし、遅口で話すと自然に「次に何を言うか」を意識するようになり、論理的な思考の流れを作る訓練となるのです。
また、遅口言葉は発音を意識するため、滑舌の改善にも効果があります。特に「さ行」「た行」「ら行」など噛みやすい音を意識してゆっくり話すことで、口や舌の筋肉が鍛えられ、クリアで聞き取りやすい声に近づきます。これは接客や面接、地域活動などで人と関わる場面でもプラスに働きます。
加えて、遅口での発声はリズムを整える効果もあり、気持ちが落ち着く点もメリットです。実際に、心理学や呼吸法の研究でも「ゆっくりとした発声や呼吸は副交感神経を優位にし、リラックス効果をもたらす」と考えられています。
つまり遅口言葉は、単なる発声練習にとどまらず、思考整理・滑舌改善・リラックスという複数の効果をもたらし、日常生活を快適にする力を持っています。
4. 音読×早口言葉×遅口言葉の相乗効果
音読・早口言葉・遅口言葉は、それぞれ単体でも効果がありますが、組み合わせて行うことでより高い脳トレ効果を得られます。
まず、音読は基礎的な発声練習として脳全体を活性化させます。その上で早口言葉を取り入れると瞬発力・集中力が鍛えられ、さらに遅口言葉でゆっくり丁寧に話す練習をすれば、思考の整理や滑舌改善につながります。つまり、
・音読 → 基礎力アップ
・早口言葉 → 瞬発力と集中力強化
・遅口言葉 → 思考力と表現力向上
という役割分担があり、3つを組み合わせることでバランスの良いトレーニングになるのです。
実際に、複数の刺激を交互に与える「クロストレーニング(交差訓練)」は、脳科学やスポーツ分野でも効果的だとされています。異なるアプローチを組み合わせることで神経回路が多面的に働き、認知機能の維持・向上に役立つのです。
さらに、この組み合わせは「飽きにくい」という利点もあります。単調な音読だけでは続けにくいと感じても、早口・遅口を交互に取り入れることでゲーム感覚になり、自然と習慣化しやすくなります。
認知症予防の観点から見ても、こうした「複数の刺激を継続的に与えること」が重要です。楽しみながら続けられる音読習慣こそ、シニア世代にとって理想的な脳トレーニングといえるでしょう。
5. 自宅でできる!毎日5分のおすすめ練習法
音読や早口言葉・遅口言葉は、特別な道具や場所がなくても自宅で簡単に始められるのが魅力です。ここでは、シニア世代でも無理なく続けられる5分間の練習ルーティンをご紹介します。
ステップ1:音読でウォーミングアップ(2分)
新聞や好きな小説、エッセイなど、声に出して読んでみましょう。重要なのは正確に読もうとせず、気持ちよく声を出すことです。姿勢を正して腹式呼吸を意識すると、声が出しやすくなります。
ステップ2:早口言葉で集中力アップ(1分)
「赤巻紙青巻紙黄巻紙」や「東京特許許可局」など、よく知られた早口言葉を選びましょう。最初はゆっくりで構いません。慣れてきたら少しずつスピードを上げることで、脳の瞬発力と発声の敏捷性が鍛えられます。
ステップ3:遅口言葉で思考整理(2分)
最後に「ゆっくり、はっきり」を意識して文章を読む練習です。たとえば、短い詩や自分の好きな文章を選び、一語一語を区切るように発声します。これにより滑舌改善とリラックス効果が得られ、気持ちを落ち着けることができます。
この5分間ルーティンを毎日続けるだけで、脳の活性化・記憶力維持・滑舌改善といった複数の効果が期待できます。特に朝の時間に行うと、頭がスッキリして一日を気持ちよく始められるためおすすめです。
また、練習内容を日替わりにしたり、スマートフォンの録音機能で自分の声をチェックしたりすると、より楽しみながら取り組むことができます。
6. 仲間と一緒に続けるメリット|社会参加で心も元気に
音読や早口言葉・遅口言葉は、自宅で一人でもできますが、仲間と一緒に取り組むことで効果がさらに高まります。特にシニア世代にとっては、社会とのつながりを持つこと自体が認知症予防に有効とされています。
グループで音読会や発声練習を行うと、単に声を出すだけでなく「聞いてもらう」「一緒に挑戦する」というコミュニケーションの要素が加わります。これにより、脳の活性化に加えて、心の満足感や安心感も得られます。
実際、厚生労働省が発表している「健康寿命延伸プラン」でも、社会参加活動が認知症リスクを下げることが報告されています(参考:厚生労働省「健康寿命延伸に向けた取組」)。人との交流や会話の機会は、脳を刺激する大切な要素なのです。
また、仲間と一緒にやることで「続けやすい」という利点もあります。例えば、地域のサークルや高齢者向け教室に参加して「今日の早口言葉はこれ!」と挑戦すれば、楽しさが倍増します。間違えて噛んでしまっても笑い合える雰囲気があり、ストレス解消にもつながります。
さらに、若い世代や孫世代と一緒に取り組むのも効果的です。「おじいちゃん、これ言える?」と遊び感覚で一緒に練習すれば、世代間交流のきっかけになり、自分の経験や存在を改めて実感できる時間になります。
7. まとめ|楽しい習慣が認知症予防と健康維持に役立つ
音読、早口言葉、遅口言葉は、それぞれに異なる効果を持ちながら、組み合わせることでより高い認知症予防効果が期待できる「声を使った脳トレ」です。
・音読 → 脳全体を活性化し、認知機能を維持
・早口言葉 → 集中力・記憶力を強化し、遊び感覚で脳を刺激
・遅口言葉 → 思考の整理と滑舌改善、リラックス効果
この3つを毎日5分でも続けることで、認知症予防に加え、発声や会話の質が高まり、人との交流も円滑になります。特に、仲間や家族と一緒に取り組むことで、社会参加の機会が増え、心の健康にもつながる点が大きな魅力です。
「声を出すこと」は、体と心を同時に元気にしてくれるシンプルで強力な習慣です。今日から新聞を声に出して読んでみたり、早口言葉で遊んでみたり、遅口で落ち着いた発声を試してみましょう。小さな積み重ねが、未来の自分の健康と安心を支えてくれるはずです。
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