「健康のために働く」×「社会とつながる仕事」|シニア世代が始める実践ガイド

仕事

はじめに|“健康のために働く”という新しい選択肢

定年を迎えたあと、「もう働かなくてもいい」と思う人がいる一方で、「健康のために、もう少し体を動かしたい」と感じる人も少なくありません。実際、厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告(2024年)」によると、65歳以上で働いている人は過去最多の約930万人にのぼり、その理由の上位には「健康維持のため」「社会とのつながりを保ちたい」といった項目が挙がっています。
つまり、いま“働くこと”は単なる生活費のためではなく、「健康で長生きするための習慣」として注目されているのです。

とくに、身体を適度に動かす仕事や人と関わる仕事は、心身の健康を保つ効果が高いといわれています。仕事を通して外出する機会が増えれば、自然と運動量が上がり、会話やコミュニケーションを通じて脳の刺激にもつながります。さらに、収入が得られることで生活にハリが生まれ、自己肯定感も向上します。

「健康のために働く」という考え方は、シニア世代にとってまさに“一石三鳥”。この記事では、健康を維持しながら社会とつながれる仕事を選ぶポイントや、無理なく続けるコツを具体的に解説していきます。


第1章|なぜ「働くこと」が健康に良いのか?

シニア世代が「働くこと」を続ける最大のメリットは、心身の健康を維持できることにあります。実際に、厚生労働省と日本老年学的評価研究(JAGES)の共同調査によると、働いている高齢者は、働いていない人に比べて要介護リスクが約1.5倍低いことがわかっています。これは、日常的に体を動かすことや、人との関わりを持つことが、筋力や認知機能の維持につながるためです。

● 身体を動かすことで健康寿命が延びる

働くことで、自然と「体を動かす時間」が増えます。たとえば清掃、配送、農作業などの仕事では、軽い運動を継続的に行うことができます。運動は血流を促進し、生活習慣病の予防や筋力維持に効果的です。特に、1日30分以上の身体活動を継続する人は、心疾患や糖尿病の発症率が低いことが複数の研究で示されています(出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド」)。


● 脳を使うことで認知機能を維持

仕事では、段取りを考えたり、コミュニケーションを取ったりと、自然に「頭を使う」場面が多くあります。こうした活動は脳の前頭前野を刺激し、認知機能の維持や認知症予防に役立つといわれています。国立長寿医療研究センターの研究でも、知的活動を日常的に行う高齢者は、そうでない人に比べて認知症の発症リスクが低い傾向が報告されています。


● 社会参加がメンタル面の安定を支える

内閣府「令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査」では、地域活動や仕事を通じて社会と関わっている高齢者ほど、「生活に満足している」と回答する割合が高い傾向が示されています。
これは、社会的なつながりが心の健康や幸福感の維持に大きく寄与していることを裏付けています。


このように、「働くこと」は身体・脳・心のすべてに良い影響をもたらします。次章では、こうした健康効果をさらに高める「社会とのつながり」の重要性を掘り下げていきましょう。


第2章|社会とつながることが“生きがい”を生む理由

健康で長生きするためには、体を動かすことだけでなく、人とのつながりを持ち続けることが欠かせません。近年の研究では、「社会参加の有無」が高齢者の健康寿命や幸福度に大きく影響することが明らかになっています。内閣府「令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査」によると、地域活動や仕事などを通じて社会と関わっている高齢者は、そうでない人に比べて生活満足度が高い傾向が示されています。
この結果は、社会とのつながりが心の健康や幸福感の維持に重要な役割を果たしていることを示しています。

● 孤立を防ぎ、心の健康を守る

定年後に職場を離れると、急に人と話す機会が減り、孤独や閉塞感を感じやすくなります。孤立はうつ病や認知症のリスクを高める要因の一つとされており、特に男性では退職後に社会的つながりを失いやすい傾向があります。働くことやボランティアなどで他者と関わる機会を持つことは、孤立を防ぐ“予防薬”としても有効です。


● 「ありがとう」が生きる力になる

人から感謝される体験は、年齢を問わず心を豊かにします。心理学の研究では、感謝の言葉を受け取ることで脳内に“幸福ホルモン”と呼ばれるセロトニンやオキシトシンが分泌され、ストレスが軽減されることが知られています。つまり、「誰かの役に立つ」という実感が、生きがいや幸福感を育むのです。


● 地域や仲間との関わりが健康を支える

地域の清掃活動や見守りボランティア、趣味のサークルなど、身近なつながりを持つことで、体を動かす機会も増え、精神的な支えも得られます。特に、同年代だけでなく若い世代や子どもたちと関わることは、価値観を広げ、社会との距離を感じにくくする効果があります。これらの交流が、「自分はまだ必要とされている」という自信につながるのです。


人は誰かと関わることで心が満たされます。社会とのつながりを持つことは、単なる“活動”ではなく、“健康と幸福の源”です。
次章では、健康を維持しながら社会と関わることができる具体的な仕事例を紹介します。


第3章|健康と社会参加を両立できる仕事5選

「健康のために働く」ことを実践するなら、体を動かしながら人と関わる仕事が最適です。ここでは、社会とつながりを保ちつつ、無理なく続けやすい仕事を5つ紹介します。


① 公園・マンションの清掃スタッフ

体を動かしながら地域の人々と交流できる代表的な仕事です。公園やマンションの清掃は、朝から午前中の勤務が多く、生活リズムを整えたい人にぴったり。
また、住民や通行人から「いつもありがとうございます」と声をかけられる機会も多く、地域貢献の実感が得られます。作業内容もシンプルで、未経験者でもすぐに慣れるため、初めての再就職先として人気です。


② 送迎・配達ドライバー

子どもや高齢者の送迎、軽貨物配送など、運転スキルを活かせる仕事です。一定の集中力を保ちながら、人や荷物を安全に届ける責任感が健康維持にも好影響を与えます。
また、利用者や顧客との会話も多く、「ありがとう」と感謝される場面が多いのも特徴。週2〜3日、午前のみなど、体調に合わせた働き方ができるのも魅力です。


③ 飲食店のホール・調理スタッフ

飲食店での仕事は、体も頭も自然に動かす“健康仕事”の代表格です。ホールスタッフなら立ち仕事で軽い運動になり、注文を取ったり配膳したりすることで程よい刺激が得られます。
また、厨房での調理補助も人気。包丁を使ったり盛り付けをしたりする作業は、手先を使う脳トレ効果が期待できます。常連客との会話やスタッフ同士のチームワークもあり、「人と関わる楽しさ」を日々感じられる職場です。
近年ではシニア採用を積極的に進める飲食チェーンも多く、短時間勤務や希望シフトにも柔軟に対応してくれるところが増えています。


④ 学校や公共施設の見守り・サポート業務

地域の子どもや利用者を支える仕事は、心の健康にも良い影響を与えます。通学路での見守り、図書館・公民館での案内係、学校内での軽作業など、人とのつながりが感じられる業務が中心です。
特に子どもたちからの「おはようございます!」という挨拶や笑顔は、日々の活力になります。地域の安全を守るという使命感も生まれ、やりがいを持って続けられる仕事です。


⑤ 介護・保育施設での生活サポートスタッフ

「人の役に立つ」ことを実感できる職場として、介護・保育分野の仕事はシニア世代に人気です。食事やレクリエーションの補助、子どもたちの見守りなど、体力に応じた業務が選べます。
介護現場では「介護助手」、保育園では「サポートスタッフ」など、資格がなくても始められる仕事が増えています。子どもや高齢者の笑顔に触れる時間は、精神的な充実をもたらし、「まだ社会の中で必要とされている」という自信にもつながります。


どの仕事も、「健康を維持しながら社会と関わる」という理想的な働き方を実現できます。次章では、こうした仕事を無理なく長く続けるためのポイントを紹介します。


第4章|無理なく続けるためのポイント

「健康のために働く」ことを長く続けるためには、無理をしない働き方を心がけることが大切です。体調や生活リズムに合わせて仕事を選び、バランスを取りながら取り組むことで、心身ともに充実した日々を送ることができます。


● 1. “短時間勤務”からスタートする

定年後の再就職や新しい仕事を始めるときは、最初からフルタイムではなく、週2〜3日・1日4〜5時間といった短時間勤務から始めるのがおすすめです。
実際、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査でも、シニアが長く働き続けるための条件として「柔軟な勤務時間」「無理のない勤務日数」を重視する人が7割を超えています。最初から頑張りすぎず、慣れてきたら少しずつ勤務時間を増やすなど、ペース配分を意識することが大切です。


● 2. 健康管理を最優先にする

どんなにやりがいのある仕事でも、健康を損なっては本末転倒です。定期的な健康診断を受けるほか、睡眠や食事のバランスにも気を配りましょう。
また、体調に不安がある日は「無理をしない勇気」を持つことも大切です。企業によっては、シニア向けに体調や通院予定を考慮した柔軟シフト制度を導入しているところも増えています。
健康を守ることが、結果的に仕事の継続にもつながります。


● 3. “人との関わり”をモチベーションに変える

長く働くための最大の原動力は「人とのつながり」です。同僚やお客様、地域の人との会話が、日々の楽しみや刺激になります。
たとえば飲食店や介護施設のように、感謝の言葉をもらえる仕事では、やりがいや幸福感を感じやすく、仕事への意欲が自然と高まります。心理学や社会福祉学の研究でも、「社会的交流を持つ高齢者は、孤立している人よりも主観的幸福度が高い」との報告が多く見られます。例えば、国立長寿医療研究センターとJAGES(日本老年学的評価研究)の共同分析でも、地域活動に参加している高齢者ほど生活満足度や主観的幸福度が高い傾向が示されています。


● 4. “やりがい”より“バランス”を意識する

「やりがいがある=長く続けられる」とは限りません。特にシニア世代では、「体力・趣味・家族との時間」のバランスを取ることが継続のカギです。
無理をして働き続けるよりも、家庭や趣味の時間を確保しながら働くことで、ストレスを減らし、長期的に健康を保ちやすくなります。仕事を“生活の一部”として無理なく取り入れることが理想です。


働くことを「義務」ではなく「健康づくりの一環」として考えることが、長続きの秘訣です。
次章では、働くことで得られる“心の健康”の効果について詳しく見ていきましょう。


第5章|仕事を通じて得られる“心の健康”とは

働くことには「収入を得る」「体を動かす」以上の価値があります。
それは、心の健康を守る“社会的処方箋”としての役割です。特に定年後のシニア世代にとって、社会の一員として活動し続けることは、自分の存在価値を再確認し、人生にハリをもたらす効果があります。


● 1. 「役割」があることが生きる力になる

退職後、社会との関係が薄くなると、目的を見失いやすくなります。
しかし、仕事を通して「自分の役割」が明確になると、日々の行動に意味が生まれます。
国立長寿医療研究センターの研究では、「社会的役割を持つ高齢者は、そうでない人に比べて抑うつ症状の発症率が約半分に低下する」と報告されています。
つまり、「自分が誰かの役に立っている」という実感が、心の安定と意欲の源になるのです。


● 2. 感謝の言葉が“幸福ホルモン”を生む

職場での「ありがとう」は、何よりのエネルギーです。
感謝される経験は脳内でセロトニンやオキシトシンの分泌を促し、ストレス軽減や幸福感の向上につながることがわかっています。
これは心理学の分野で「感謝の心理的効用」と呼ばれ、特に対人サービスやサポート職など、人と関わる仕事ほどこの効果が高いとされています。
人の笑顔に触れ、自分も笑顔になる──この循環が、心の健康を自然に育てます。


● 3. 「まだできる」という自己効力感を取り戻す

定年を迎えると、「もう第一線ではない」と感じる人も多いですが、働き続けることで「まだできる」「自分も必要とされている」という自己効力感を取り戻すことができます。
心理学者バンデューラの理論でも、自己効力感が高い人ほど新しいことに挑戦し、精神的ストレスに強い傾向があるとされています。
仕事を通じて学びや挑戦を続けることが、心を若く保ち、前向きな生活を支える鍵となるのです。


● 4. 社会との接点が孤独を防ぐ

厚生労働省「令和5年版高齢社会白書」によると、高齢者の約4人に1人が“孤独感”を感じているといわれています。
しかし、仕事やボランティアを通じて他者と関わることで、そのリスクは大きく減少します。
出勤する、挨拶を交わす、会話をする──こうした何気ない日常の交流が、心の支えとなり、孤立を防ぐ最良の予防策となるのです。


働くことは、収入のためだけでなく、「人との関わり」や「感謝」「挑戦」を通じて心を健康に保つための行動です。
次章では、これまでの内容を振り返りながら、“健康のために働く”という新しい生き方のまとめをお届けします。


まとめ|“健康のために働く”がシニアライフを豊かにする

「働くこと」は、いまや“生活のため”だけでなく、“健康を保つための手段”としても注目されています。
体を動かすことが運動習慣になり、人と関わることで心が満たされ、社会の一員としての自信や誇りが生まれる——この3つの効果がそろうのが、「健康のために働く」という生き方です。

実際に、厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告(令和5年)」によると、65歳以上で働いている人は過去最多の約930万人にのぼります。
そのうち多くの人が「健康維持」「生きがい」「社会とのつながり」を就業理由として挙げており、働くことが心身の健康を保つ手段になっていることがわかります。
また、日本老年学的評価研究(JAGES)の分析によると、地域活動や仕事に継続的に関わっている高齢者は、要介護認定を受けるリスクが30%以上低いという結果も示されています。
つまり、「働き続けること」がそのまま“健康寿命をのばす”ことにつながっているのです。

これまで紹介したように、公園清掃・飲食店・送迎・見守り・福祉や保育など、シニアに向いた仕事は多様です。
大切なのは、自分の体力や興味に合った仕事を無理なく続けること。短時間でも社会と関わり続けることで、生活にハリが生まれ、心身ともに健やかな毎日を送ることができます。

「もう一度、社会の中で誰かの役に立ちたい」
そんな気持ちこそ、シニア世代が元気でいられる最大のエネルギー源です。
“健康のために働く”という選択が、あなたのセカンドライフをより豊かで、充実したものにしてくれるでしょう。

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