1.はじめに|「やりがい」と「生きがい」のために働くという選択
定年を迎えたあと、「もう働かなくてもいい」と思う人がいる一方で、「まだできることがある」「誰かの役に立ちたい」と感じる人も少なくありません。近年では、後者のように“やりがい”や“生きがい”のために働くシニアが増えています。
内閣府「令和元年度 高齢者の経済生活に関する調査」によると、60歳以上で働く理由として多く挙げられたのは「健康の維持・生きがいのため」や「収入を得るため」でした。
これは、仕事が単なる生活の糧ではなく、人生を豊かにする活動として再認識されていることを示しています。
また、「働くこと」は社会とのつながりを維持し、孤立を防ぐ重要な役割も果たします。人との会話や協力関係、日々の小さな達成感が心の健康を支え、前向きな気持ちを保つ原動力になります。
このように、シニア世代にとって仕事は「第二の人生のステージ」を充実させる手段です。本記事では、「やりがい」「生きがい」を軸に、定年後も無理なく働くための考え方や人気の仕事、そして長く続けるコツを紹介します。
2.働くことが健康につながる理由|体も心も動かす“仕事習慣”
「仕事=ストレス」と感じていた現役時代とは異なり、定年後に“自分のペース”で働くことは、健康維持にとても良い影響を与えます。実際、「働くこと」が体と心の健康を支えるという研究結果は数多くあります。
たとえば、国立長寿医療研究センターの「老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」では、社会的なつながりを持ち、役割をもつ高齢者ほど認知機能の低下リスクが低いことが示されています。働くことによって人との交流が生まれ、定期的な会話や判断機会が脳の活性化につながるのです。
さらに、体を動かす仕事は運動不足を自然に解消します。ウォーキングや軽作業を伴う仕事では、1日平均6,000~8,000歩を無理なく歩けることも多く、生活習慣病やフレイル(虚弱)の予防に効果的とされています。
また、仕事のスケジュールがあることで「朝起きる」「着替える」「出かける」という生活リズムが整い、心の張り合いが生まれます。こうした“仕事習慣”こそ、健康寿命を延ばす隠れたカギなのです。
定年後の働き方は、「収入を得ること」だけでなく、「健康を維持するための生活習慣」としても非常に価値があります。身体を動かし、人と関わり、誰かに感謝される。その積み重ねが、生きがいを感じる毎日を支えてくれるのです。
3.定年後のやりがいを見つけるコツ|「得意」や「経験」を活かす
定年後にもう一度働くとき、「何を基準に仕事を選べばいいのか分からない」という声をよく聞きます。そんなときは、“やりがい”を感じるための3つの視点――「得意なこと」「好きなこと」「社会に求められること」から考えるのがおすすめです。
まず大切なのは、「得意なこと」=経験を活かせる分野を意識すること。長年の仕事で培った知識や段取り力、人とのコミュニケーションスキルは、若い世代にはない大きな武器です。たとえば、元メーカー勤務なら品質管理や設備点検、営業職出身なら接客・販売のサポートなど、培ったスキルをそのまま活かせる仕事は数多くあります。
次に、「好きなこと」に注目すること。現役時代は“仕事”として避けていた趣味や関心を、今こそ“仕事”に変えるチャンスです。園芸・料理・清掃・DIYなど、生活に密着した分野では、シニアの丁寧さや誠実さが評価される傾向にあります。
そして最後に、「社会に求められること」。地域の高齢者支援や子ども見守り、観光案内など、「自分の存在が誰かの助けになる」と実感できる仕事は、生きがいを感じやすいものです。最近では、定年後も「健康の維持」や「生きがいのため」に働くシニアが増えています。仕事を通じて体を動かしたり、人と関わったりすることで、生活にハリや目的を感じられるようになるからです。
つまり、定年後の仕事探しは「何ができるか」ではなく、「何をしていると心が満たされるか」から考えるのがポイント。焦らず、少しずつ自分に合ったペースで挑戦を重ねることで、やりがいのある仕事に出会えるでしょう。
4.シニアに人気の“生きがい仕事”5選|無理なく続けられる働き方
定年後の働き方は「長く」「無理なく」「楽しく」がキーワードです。ここでは、やりがいと生きがいの両方を感じやすい、シニアに人気の仕事を5つ紹介します。どれも特別な資格がなくても始めやすく、地域に根ざして続けられるものばかりです。
① 施設管理・清掃スタッフ
静かで落ち着いた環境で働けるため、シニアに人気の高い仕事です。日常的な巡回や軽作業が中心で、「誰かの快適な空間を支える」というやりがいがあります。働く時間も短時間シフトが多く、体力に合わせて調整可能です。
② 学校・公園・公共施設の見守り員
地域の安全を守る社会貢献度の高い仕事。子どもや住民との交流も多く、「人の役に立っている」と実感できます。地方自治体が運営するケースも多く、安定した勤務体系が魅力です。
③ 配達・軽ドライバー
新聞配達や宅配補助など、「体を動かしながら働ける」仕事です。ウォーキングの延長感覚で運動にもなり、健康維持を目的に選ぶシニアも増えています。
④ 介護・福祉サポート(介護助手・送迎補助など)
近年、未経験でも挑戦できる「介護助手」などの職種が注目されています。身体介助ではなく、掃除や配膳、話し相手などを担当するため、無理なく続けられます。人とのつながりを感じやすい“ありがとうの多い仕事”です。
⑤ ガイドボランティア・観光案内スタッフ
地域の歴史や名所を紹介する仕事。人との交流を楽しみながら、自分の知識を活かせる点が魅力です。観光地だけでなく、市町村主催の地域ガイド制度も増えており、「学びながら社会とつながる」働き方として人気上昇中です。
いずれの仕事も、「自分のペースで働ける」「人に感謝される」ことが共通点。厚生労働省の「高年齢者雇用状況等報告」によれば、65歳以上で働く人の約4割が“やりがい”を重視して仕事を選んでいると報告されています。
定年後の働き方は、体力や収入だけでなく、心の満足度を基準に選ぶ時代。やりがいを感じながら、無理なく続けられる仕事を見つけることが、豊かなセカンドライフの第一歩です。
5.若い世代と関わることで得られる刺激と学び
「シニアが働く意味」は、収入や健康維持だけにとどまりません。
実は、若い世代との関わりが生きがいの源になるケースが多くあります。職場での会話や共同作業を通して、お互いの価値観や考え方を共有することは、世代間の理解を深める貴重な機会です。
内閣府の「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査(2020年)」では、人との交流が多い高齢者ほど生活満足度が高い傾向が示されています。若い世代との関わりは、心の健康を保ち、生きがいを感じる大切な要素です。
また、若い世代から新しい知識やデジタルスキルを学ぶことで、日常生活にも良い影響が生まれます。たとえば、SNSの使い方を覚えて孫とやり取りを楽しんだり、スマートフォンを活用して趣味や学びを広げたりと、「学びの循環」が広がっていくのです。
一方で、シニアが若者に与える影響も大きいです。長年の経験や人間関係のコツ、仕事の段取り力など、若手が学べることは多く、「頼られる存在」としてのやりがいを実感できます。企業によっては、シニア人材が“職場の潤滑油”としてチームの安定に貢献している例も増えています。
つまり、「世代を超えて働くこと」は、単なる雇用関係ではなく、学び合い・支え合う関係性を築くこと。そこから得られる刺激と感謝の連鎖が、まさに“働く喜び”そのものなのです。
6.まとめ|やりがいを持って働くことが、人生を豊かにする
定年後の働き方は、もはや「生活のため」だけではありません。
多くのシニアが、やりがい・生きがいのために働くという選択を通じて、心身の健康や社会とのつながりを取り戻しています。
働くことによって生まれる「ありがとう」の言葉や「今日も充実していた」という実感は、収入以上の価値をもたらします。特に、得意なことや好きなことを活かした仕事は、無理なく続けられるうえに、人生そのものを豊かにしてくれます。
また、若い世代との関わりから新しい刺激を受けたり、長年の経験を活かして地域に貢献したりすることで、「まだ自分にはできることがある」という自己肯定感が高まります。これこそが、定年後に働く最大の魅力です。
最後にもう一度確認したいのは、「やりがい」は特別な仕事でなくても得られるということ。清掃や配達、地域サポートなど、どんな仕事でも「人の役に立っている」と感じる瞬間があれば、それが生きがいの源になります。
“働くこと=生きること”。
その言葉を実感できる日々こそ、シニア世代にとっての「幸せな働き方」なのです。
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