1.はじめに|定年後こそ「学び直し」で輝くチャンス
定年を迎えて一息ついたとき、「これから何をしようか」と考える方は少なくありません。長年勤めた仕事を離れると、社会との関わりが薄れたり、時間を持て余したりすることもあります。しかし、今の時代は“定年=引退”ではありません。むしろ、人生100年時代の第二ステージをどう生きるかが注目されるようになっています。
特に注目されているのが、「学び直し(リスキリング)」と「スキルアップ」。これまでの経験を活かしながら、新しい知識を身につけることで、再び社会に貢献できるチャンスが広がります。文部科学省の「生涯学習・社会教育をめぐる現状・課題(2022年)」によると、60歳以上の多くが“健康維持”や“社会参加”を目的に学び直しへ関心を持っており、生涯学習の重要性が高まっていることが報告されています。
また、企業側も“経験×学び”を持つシニア層に注目しています。たとえば地域密着の介護施設や観光業では、接客スキルや人とのつながりを大切にする仕事が増加。スキルを磨きながら、地域社会と関わることで「やりがい」を感じられる働き方が広がっています。
このように、学び直しは「仕事」だけでなく「生きがい」も取り戻す鍵です。本記事では、やりがいとスキルアップを両立できる仕事や、60代からでも取得できる資格を具体的に紹介します。
2.スキルアップできる仕事とは?シニア世代に求められる“学び直し”の価値
「スキルアップできる仕事」とは、単に新しい技術や資格を身につけるだけでなく、日々の業務を通じて自分の成長を実感できる仕事のことです。たとえば、人と接する中でコミュニケーション力を磨いたり、現場で問題を解決する経験を積むことも立派なスキルアップです。
特にシニア世代にとって、学び直しやスキルアップには3つの大きな価値があります。
①「経験の再活用」と「知識の更新」
長年の仕事で培った経験を“そのまま終わりにしない”こと。現場感や人間関係の構築力など、若い世代にはない強みをベースに、時代に合わせて新しい知識を加えることで、仕事の幅がぐんと広がります。
たとえば、設備管理の経験者がパソコン操作を学んで「デジタル点検表」を扱えるようになると、より効率的に業務をこなせるようになります。
②「脳と体の健康維持」
厚生労働省が推進する「生涯現役促進地域連携事業」などの取り組みでも、高齢者が働き続けることや新しいことに挑戦することは、健康維持や生きがいの向上につながるとされています。
学び続ける姿勢そのものが、心身の若さを保つ秘訣です。
③「社会とのつながりの維持」
スキルアップを目的に仕事を選ぶと、自然と人との交流が増えます。講座や職場で若い世代と関わることで刺激を受けたり、地域活動で同世代の仲間と支え合ったりすることができます。結果として「孤立しない」「誰かの役に立てる」という喜びを得やすくなります。
このように、スキルアップは「再就職のため」だけでなく、「人生をもう一度充実させるための投資」でもあります。学び直しは、定年後の不安を前向きなエネルギーに変える第一歩なのです。
3.やりがいとスキルを両立できる仕事の特徴
「せっかく働くなら、やりがいも成長も感じたい」──そう思うシニア世代は増えています。実際、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)の報告書『70歳就業時代の展望と課題』(2021年)によると、60歳以上の就業者の多くが「仕事のやりがい」や「社会とのつながり」を働く理由として挙げています。年齢を重ねても成長や貢献を感じながら働くことが、意欲の維持につながっていることが分かります。では、やりがいとスキルアップを両立できる仕事には、どんな特徴があるのでしょうか?
① “成長実感”を得られる環境がある
学んだことをすぐに実践できる環境が整っている仕事は、成長を感じやすい傾向があります。たとえば、介護補助員や設備管理員のように「現場で経験を積みながら覚える」仕事は、日々の変化を感じやすく、モチベーションの維持につながります。
② 人と関わる機会が多い
人とのつながりがある職場ほど、フィードバックや学びの機会が多く得られます。利用者との会話から気づきを得る介護現場、チームで改善を進める清掃管理など、コミュニケーションを通じてスキルが磨かれる仕事は、やりがいを感じやすい代表例です。
③ 社会貢献や地域との連携が実感できる
「誰かの役に立っている」と感じられることも大きなやりがいの一つです。地域の子ども食堂や観光ボランティア、シニア向けパソコン講師など、自分の活動が地域の笑顔につながる仕事は、スキルアップと同時に心の満足度を高めてくれます。
④ 柔軟な働き方ができる
短時間勤務や週数日勤務など、体力に合わせて働ける職場では、無理なく学び続けることが可能です。たとえば、自治体主導の「生涯現役支援センター」などでは、スキルアップを前提とした短時間就労プログラムも用意されています。
つまり、シニア世代にとって理想の仕事とは、「成長を感じながら、社会に貢献できる環境」があること。自分の経験を活かしつつ、新しい知識を積み重ねていける職場こそ、真のやりがいを感じられる場所なのです。
4.スキルアップにつながる具体的な職種5選
ここでは、60〜70代のシニア世代でも「やりがい」と「学び直し」の両方を実感しやすい仕事を5つ紹介します。いずれも未経験から始められ、現場で経験を積みながらスキルアップできる職種です。
① 介護補助員(ケアアシスタント)
介護の現場は、人生経験が活かせる代表的な職場です。利用者の生活を支える中で、介護の基礎知識やコミュニケーション力、観察力などが自然と身につきます。
介護職員初任者研修などの資格を取得すれば、より専門的な業務にも挑戦可能。厚生労働省の「介護人材確保の現状について」(2023年)では、60歳以上の採用も積極的に進んでおり、学びながら長く働ける環境が整っています。
② 施設管理員・マンション管理人
設備や清掃、入居者対応など幅広い業務を通じて、トラブル対応力・安全管理の知識・コミュニケーション力が磨かれます。
研修や資格(第二種電気工事士、防火管理者など)を取得することで業務の幅を広げられるのも魅力。技術面と人間関係の両面で成長できる仕事です。
③ 観光・地域ガイド
地域の魅力を伝えるガイド業は、「学び続ける楽しさ」が詰まった仕事。観光地の歴史や文化を調べたり、英語などの外国語スキルを活かしたりと、知的好奇心を刺激する学びが得られます。
自治体や観光協会が主催するボランティア研修も多く、60代からでも挑戦しやすい分野です。
④ 農業サポート・市民農園スタッフ
屋外で体を動かしながら働けるため、健康維持にも効果的です。種まきや収穫などの基本作業を通じて、農業知識・季節ごとの作業スキル・チームワークを学べます。
最近では自治体が行う「シニア農業塾」も人気で、初めてでも指導付きで実践的に学べる環境が整っています。
⑤ デジタル講師・スマホ教室スタッフ
スマートフォンやパソコンの使い方を教える仕事は、デジタルスキルと人との交流が同時に得られる注目職種です。特に自治体や携帯ショップが行う「スマホ講座」では、同世代を教えるシニア講師が増加中。
自らの経験を教えることで社会貢献につながり、同時に新しい技術に触れ続けることでスキルアップができます。
このように、スキルアップできる仕事は「特別なキャリア」よりも、「学び続ける意欲」と「人とのつながり」を重視する傾向があります。経験を活かしながら成長できる環境を選ぶことが、やりがいある働き方への近道です。
5.60代からでも挑戦できる!学び直しに役立つ資格リスト
「もう60代だから資格なんて…」と感じている方も多いかもしれません。
しかし実際には、年齢を問わず取得できる資格や学び直しの制度が増えています。むしろシニアの強みである“経験+学び”を組み合わせることで、新しい活躍の場が広がる時代です。ここでは、60代からでも挑戦しやすい代表的な資格をジャンル別に紹介します。
①【介護・福祉系】人の役に立つ知識を身につける
介護・福祉分野は、シニア層の受け入れが特に進んでいる業界です。
・介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級):約1〜2か月で取得可能。資格があれば施設勤務だけでなく、訪問介護にも活かせます。
・福祉住環境コーディネーター:住まいと福祉の知識を兼ね備えた資格で、住宅改修やバリアフリー提案の際に役立ちます。
これらの資格は、経験を積みながら次のステップ(実務者研修・介護福祉士)にも進める点が魅力です。
②【パソコン・デジタル系】“学びながら現役”を続けられる
オンライン講座や通信教育で自宅からでも学べる資格が増えています。
・MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト):WordやExcelなどの操作スキルを客観的に証明。事務系や講師業にも有利です。
・デジタル推進委員(総務省登録制度):地域のデジタル支援者として活動でき、スマホ講座などで教える機会が得られます。
デジタル学習は「仕事」だけでなく「趣味の幅」を広げる効果もあり、やりがいと学びを両立できる分野です。
③【地域・教育系】経験を地域貢献に活かす
地域活動や教育支援に関わりたい方には、次のような資格が人気です。
・市民後見人:判断能力が低下した高齢者をサポートする制度。自治体の研修を受けて登録できます。
・生涯学習インストラクター:地域講座での講師活動やボランティア指導に役立つ資格です。
・観光ボランティアガイド養成講座:自治体・観光協会などが実施。地域の魅力を伝える活動につながります。
④【健康・運動系】“自分の健康”も守れる資格
体を動かすことが好きな方には、健康づくり関連の資格もおすすめです。
・健康運動実践指導者:運動習慣づくりや体力測定の知識を学べる。フィットネス施設や自治体の健康教室で活用可能。
・介護予防運動指導員:介護予防の観点から体操や運動をサポートする役割を担います。
これらの資格の多くは、通信教育・短期講座・自治体主催の講習で取得可能。
新しい知識を得ながら人の役に立てる資格は、「第二のキャリア」だけでなく「生きがいづくり」にも直結します。
6.スキルアップを通じて社会とつながる3つのメリット
スキルアップは、自分の能力を高めるだけでなく、社会とのつながりを維持・拡大する手段でもあります。年齢を重ねても学び続ける人ほど、健康で前向きな生活を送りやすいことが各種調査でも示されています。ここでは、60代以降の学び直しがもたらす3つのメリットを紹介します。
① 経済的な安心につながる
新しいスキルや資格を身につけることで、再就職や副業など収入の選択肢が広がるのは大きなメリットです。
たとえば、介護補助や地域ガイド、パソコン講師といった仕事は、資格や経験に応じて時給が上がる傾向にあります。
総務省「就業構造基本調査(2022年)」によると、60代後半で働く人の約3割が“収入確保”を目的に学び直していると回答しており、スキルを磨くことが経済的安定にも直結していることが分かります。
② 健康・生活リズムが整う
働くために学ぶという目的があると、生活リズムにハリが出ます。朝起きて勉強したり、講座や仕事に出かけたりすることで、身体活動量や社会的交流が自然と増えるのです。
日本老年学的評価研究(JAGES)の報告によると、学びや地域活動を行う高齢者は、閉じこもりや要介護リスクが低い傾向にあるとされています。
つまり、スキルアップは健康維持にも効果的な「心身のトレーニング」といえます。
③ 生きがいと自信を取り戻せる
学び直しを通じて「まだ成長できる」「誰かの役に立てる」と感じることは、自己肯定感や幸福度を高める大きな要素です。
地域講師やボランティアガイドなど、人と関わる場で学びを実践することで、社会の一員としての誇りを取り戻せます。
やりがいを感じながら自分の成長を実感できる仕事こそ、シニア世代が最も充実感を得られる働き方なのです。
このように、スキルアップは「働くための手段」にとどまらず、健康・経済・生きがいの3つを支える土台です。
学び続けることで、人生後半の時間をより豊かに、前向きに過ごすことができます。
7.まとめ|学び続けることで“生涯現役”を実現しよう
定年後の働き方は、「稼ぐ」だけでなく「学び続ける」ことがカギになっています。60代・70代になっても、新しいことを吸収しようとする姿勢がある人は、心身ともに若々しく、社会とのつながりを長く保ちやすい傾向があります。
今回紹介したように、介護補助や地域ガイド、デジタル講師などの仕事は、自分の経験を活かしながらスキルアップできる代表的な働き方です。また、資格取得や講座受講を通じて、知識を深めることが次の仕事や活動のチャンスにもつながります。
文部科学省の報告書『生涯学習・社会教育をめぐる現状・課題』(2022年)では、生涯を通じた学びの重要性が強調されています。また、日本老年学的評価研究(JAGES)の分析でも、学びや社会参加の機会が多い高齢者ほど主観的幸福度が高いことが示されています。
つまり、学びは“幸せに生きる力”でもあるのです。
今からでも遅くはありません。
「もう一度、自分を成長させたい」「社会に貢献したい」と思ったその瞬間が、新しいキャリアのスタートラインです。
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