1．はじめに｜「健康のために働く」という新しい選択肢
定年を迎えたあとも、「健康のためにもう少し働いてみよう」と考える人が増えています。かつては「老後＝ゆっくり休む」時代でしたが、いまや“働くこと自体”が健康維持の手段として注目されています。特に、身体を適度に動かす仕事は、運動不足の解消や筋力の維持につながり、生活習慣病の予防にも効果的です。
実際、厚生労働省が公表する『健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023』でも、就業や通勤、社会参加といった活動も、身体活動を増やす良い機会であるとされています。つまり「働くこと」は、日常生活の中で自然に体を動かすきっかけとなり、健康の維持・増進に役立つと考えられています。
また、仕事をすることで社会とのつながりを保ち、孤立感を防ぐことができる点も重要です。身体だけでなく“心の健康”にも良い影響を与えるため、仕事はまさに「健康と生きがいの両方を支える」存在といえるでしょう。
「収入のため」だけでなく、「健康のために働く」という意識の変化は、今後のシニア世代にとって大きなテーマとなるはずです。特に週2～3日や短時間勤務など、自分のペースで続けられる仕事は、体に無理なく、健康と生きがいの両立を実現する新しい働き方といえます。
2．なぜ“身体を動かす仕事”が健康にいいのか
身体を動かす仕事には、単なる「運動不足の解消」以上のメリットがあります。最大のポイントは、“自然に体を動かし続けられること”です。ジムに通うとなると三日坊主になりがちですが、仕事の一部として体を動かすことで、日常の中に運動が習慣化されやすくなります。
適度な運動は、血流の改善や筋力の維持につながり、フレイル（虚弱）や転倒リスクの予防にも効果的です。特に下半身を使う動作が多い仕事――たとえば清掃、配達、介護補助、販売業務などは、脚の筋肉を維持し、心肺機能の低下を防ぐ働きがあります。
また、身体を動かす仕事は“脳の健康”にも良い影響をもたらします。体を使うことで脳への血流が増え、注意力や判断力が保たれやすいことが研究で示されています。さらに、仕事を通じて人と会話したり、笑ったりすることでストレスが減り、メンタル面の安定にもつながります。
つまり、「体を動かす仕事」は、運動・社会参加・心の安定という3つの健康要素を同時に満たす理想的な選択肢。働くことがそのまま“健康づくり”になる、まさに一石三鳥のライフスタイルなのです。
3．シニア世代に人気の“身体を動かす仕事”おすすめ5選（修正版）
「健康のために働く」という目的で仕事を選ぶなら、ポイントは“適度に身体を動かせること”と“無理なく続けられること”です。ここでは、シニア世代に人気のある5つの仕事を紹介します。
1．清掃スタッフ（ビル・公共施設・オフィスなど）
掃き掃除やモップがけなど、軽い運動をしながら体を動かせる仕事です。決まったルーティンで仕事に取り組めるため、精神的な負担も少なめ。腰をかがめる・歩く動作が多く、日常生活の延長で筋力維持が期待できます。
2．配達・軽作業スタッフ（宅配・クリーニング・生協など）
荷物を運ぶ、店舗や家庭を回るなど、外を歩く時間が多い仕事です。適度な有酸素運動になり、心肺機能の維持に効果的。電動アシスト付き自転車を使う業務もあり、体力に合わせて無理なく続けられます。
3．介護補助・送迎ドライバー
介護施設などで利用者の見守りや送迎を行う仕事です。会話や見守りなどの軽作業中心で、人との交流も多く、心身両面で健康に良い影響をもたらします。車の運転や軽い介助を通して、バランス感覚を保つのにも役立ちます。
4．販売・接客スタッフ（スーパー・ドラッグストアなど）
レジや品出しなどで立ち仕事が中心のため、自然に体を動かせます。お客様とのやりとりも多く、「ありがとう」と言われるやりがいを感じながら、社会的つながりを保てる点も魅力です。
5．家事代行・ベビーシッター
掃除・洗濯・料理など、家庭の中での家事スキルを活かせる仕事です。軽い家事動作の積み重ねがちょうどよい運動になり、筋力や柔軟性の維持にもつながります。特に子どもや家族との関わりがあるベビーシッター業務では、心の交流や温かいコミュニケーションを通じて“生きがい”を感じやすいのも特徴です。
どの仕事も、体を無理なく動かしながら人と関われる点が魅力。週2〜3日の勤務や短時間シフトが多く、体力や生活リズムに合わせて続けられます。
4．無理なく続けられる！体力に合わせた働き方の工夫
「健康のために働きたい」と思っても、体力に不安を感じる人は少なくありません。そこで大切なのが、“頑張りすぎない働き方”を意識することです。ポイントは、自分のペースで無理なく続けられる仕組みをつくることにあります。
まず、勤務日数や時間を調整すること。たとえば週2〜3日・1日4時間程度のシフトから始めてみると、体への負担を抑えつつ生活リズムを整えることができます。慣れてきたら少しずつ勤務時間を増やすなど、段階的に調整していくのが理想的です。
次に、仕事内容の選び方も重要です。同じ「体を動かす仕事」でも、掃除・配達・接客など動きの強度はさまざま。腰や膝に不安がある場合は、立ち仕事よりも歩行中心の軽作業を選ぶなど、体への負担が少ない職種を選びましょう。
また、職場環境のチェックも欠かせません。エレベーターや休憩スペースの有無、通勤距離なども継続のしやすさに影響します。最近では、高齢者の雇用に慣れている企業も増え、体調に配慮した柔軟なシフト制度を導入する職場も多く見られます。
さらに、仕事前後のセルフケアも続けるコツです。軽いストレッチや水分補給を意識することで、疲労をためにくくなります。無理なく続けることこそが「健康のために働く」最大のポイント。長く元気に働くためには、“体力を守る働き方”を自分でデザインすることが大切です。
5．働くことがもたらす“こころ”の健康効果
「健康のために働く」ことは、身体面だけでなく“心の健康”にも大きな効果をもたらします。人と関わり、社会の一員として役割を持つことは、心の張りや生きがいを生み出し、メンタル面の安定につながるからです。
仕事をしていると、「ありがとう」「助かりました」といった感謝の言葉をもらう機会が増えます。この“誰かに必要とされる実感”が、自己肯定感を高め、ストレスや孤独感の軽減につながります。
特に退職後の生活では、社会的なつながりが減ることで心の健康を損ないやすい傾向にあります。そうした中で、仕事を通じて人と関わり続けることは、認知機能の維持にも効果的だといわれています。
また、働くことで生活リズムが整い、1日の中に“目的”や“緊張感”が生まれることも重要な要素です。たとえ短時間でも外に出て体を動かすことで、気分転換や睡眠の質向上にもつながります。
近年は「ウェルビーイング（心身の充実）」という考え方が注目されており、健康とは“体だけでなく心も満たされた状態”を意味します。まさに、シニア世代にとって「働くこと」はこのウェルビーイングを高める最良の手段のひとつといえるでしょう。
6．まとめ｜健康も生きがいも手に入る、理想の働き方へ
「健康のために働く」という考え方は、いまや多くのシニア世代に広がっています。無理のないペースで身体を動かす仕事を選ぶことで、運動不足を解消しながら社会とのつながりを保つことができ、心身ともに充実した毎日を送ることができます。
特に、清掃・配達・介護補助・販売・家事代行などの仕事は、日常動作の延長で自然に体を動かせるため、健康維持に最適です。さらに、人との交流を通じて「ありがとう」と言われる喜びを得られるのも、働くことの大きな魅力です。
大切なのは、「長く続けられる働き方」を選ぶこと。自分の体力や生活リズムに合わせ、週2〜3日や短時間勤務など柔軟に働くことで、無理なく健康を保ち続けることができます。
働くことが健康づくりになり、健康でいることが働く原動力になる——。そんな好循環をつくることで、人生の後半戦をいきいきと過ごせるはずです。
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