1.「イマ活」とは?“今を満たす”ことに投資するシニア新潮流
「イマ活」とは、“老後のために今を我慢する”のではなく、元気に動ける「今この時間」を楽しむために時間とお金を使うライフスタイルのことです。終活や断捨離が「未来に備える思考」だとすれば、イマ活はその正反対。「後悔しないために、今、自分を喜ばせる選択をする」という価値観が中心にあります。
かつてはシニア世代に対して、
・節約
・我慢
・子どもや家族を優先
といった価値観が重視されてきました。
しかし近年、価値観は大きく変化しています。定年延長や働き方の多様化により、「60代以降も経済的に自立している人が増えた」こと、そしてSNSで他人の楽しみ方を知れる時代になり、「我慢して将来のために」は必ずしも幸福につながらないという考えが広がっています。
さらに、「いつか行こう」「いつかやろう」と思っていたことが、体力や健康の問題で実現しなかったという経験談も多く、“今できるうちに楽しむ”という判断が肯定されるようになりました。
イマ活は贅沢ではありません。
“浪費”ではなく“満足を買う消費”です。
モノを増やすより、心に残る体験を選ぶ。
効率より、感情を優先する。
この新しい価値観が、「シニア向けプレミアム体験サービス」「高額文化イベント」「豪華な体験型旅行」の需要を後押ししています。
あなた自身を笑顔にするために“今”を楽しむ。
それが「イマ活」であり、多くの人が注目する理由なのです。
2.高額でも売れる理由|シニアが価値ある“体験消費”に動く背景
「イマ活」を象徴する動きとして、シニア向けの高額体験サービスやプレミアムイベントが“価格を理由に迷わず選ばれる”現象があります。これは、「安いから行く」ではなく、「満足できるから選ぶ」という価値基準への明確な転換です。
例えば、シニア向け女性誌で知られるハルメクのイベントでは、
・オペラ鑑賞
・大相撲のプレミアム観戦
・豪華ホテル利用プラン
など、10万円を超える体験が即完売するケースが相次いでいると言われています。
なぜ「高額でも売れる」のか?
理由は大きく3つあります。
① “今しかできない”が強い動機になる
体力、健康、行動力——
それらは永遠ではありません。
「行きたいけれど、いつか…」
と後回しにするうちに、行けなくなる可能性は誰もが意識しています。
「今なら楽しめる」
その条件がそろっている時間は、意外と長くありません。
この感覚が、価格より時間と経験を優先する選択につながっています。
② 子育てや仕事を終え、“自分のための消費”が解禁された
長年、家族や仕事を優先してきた多くの人にとって、「自分のために使う」お金は特別な喜びです。
・家族旅行は行けなかったけど、今なら自由に行ける
・子どもの学費や住宅ローンが終わった
・「自分が喜ぶこと」の優先順位が上がった
この開放感が、「イマ活」消費の原動力になっています。
③ SNSで“体験の価値”が共有され、認知され始めた
「行って良かった」という感想は、口コミではなく写真・動画・ストーリーとして可視化される時代です。
体験は記録され、発信され、共感を呼び、再消費を生みます。
・クルーズの船上写真
・豪華ホテルの朝食
・プレミアム観劇の余韻
リアルとSNSが連動し、体験が2度・3度と楽しめる時代になりました。
この“価値の再利用”こそ、今の消費行動と非常に相性がいいと言えます。
高額でも売れる理由は、贅沢志向ではなく、「満足度」を中心に考える新しい人生観の表れです。
「元気なうちに」「後悔しないように」「今だからできる」
この3つが、イマ活を後押ししています。
3.イマ活の価値|人は“物より記憶”を求める時代へ
「イマ活」が多くの人に支持されている理由は、消費の価値が“モノを所有する”から、“記憶を所有する”へ移っているからです。
人は思い出したときに心が満たされる体験を求め始めています。
過去には、家具、家電、車、ブランド品など、物質的な豊かさが幸福に直結する時代がありました。しかし、現代の消費者は同じ額を使うなら、「共感」「感動」「感情の揺れ」「余韻」といった「心の価値」を求める傾向が強くなっています。
心理学の研究では、体験に使ったお金のほうが、物を買ったときよりも長い幸福感をもたらすと示されています(引用を強制せず表記)。体験は時間が経つほど価値が増し、語ることで再び喜びを感じることができます。
イマ活が“モノ消費”より優れている理由
| モノ消費 | イマ活(体験消費) |
|---|---|
| 手元に残るが慣れる | 形は残らないが思い出が残る |
| 価値が時間とともに下がる | 時と共に価値が「語り」に変わる |
| 誰かと共有しづらい | SNSや会話で共有でき、共感が生まれる |
| 収納・管理が必要 | 心に残るだけで荷物にならない |
体験には、「その瞬間の喜び」だけでなく、「思い返す喜び」「共有して広がる喜び」という三段階の楽しみがあります。
“未来の不安”より“今の満足”を選ぶ発想へ
未来のために我慢することが美徳だった時代から、「今、味わえる幸福に投資する」考え方が肯定される時代へと変わりました。
・豪華クルーズ
・プレミアム観劇
・上質なホテルステイ
・人生で一度は訪れたい旅先
こうしたイマ活は、「憧れ」や「夢」を現実に変える手段です。
体験は形には残りませんが、心の中にだけ残る贅沢があります。
そしてその記憶は、日々の会話や何気ない瞬間に思い出となって蘇り、人生の満足度を高め続けます。
「モノを減らす終活」と
「思い出を増やすイマ活」は
どちらも人生を豊かにする手段ですが、
心が動く体験に投資する価値が注目されているのは、“残すより、残る”を重視する時代だからです。
4.人気のイマ活ジャンル5選
イマ活と一口にいっても、贅沢な旅行だけを指すわけではありません。
「自分の心が満たされるもの」「“今”味わいたい体験」にお金と時間を使うことがイマ活です。ここでは、特に人気が高まっているジャンルを5つ紹介します。
① 豪華旅行|「いつか行く」ではなく「今行く」へ
・豪華クルーズ
・世界遺産巡り
・プレミアム列車の旅
・高級旅館ステイ
SNSや動画で見た景色を「自分の目で見たい」という欲求は、シニア層でも強く、“一生の思い出”を作れる体験として支持されています。
“元気なうちに”という考えが背中を押し、「憧れを叶える旅行」に投資する動きが加速しています。
② 上質なグルメ|食事を“イベント”に変える
・ミシュラン掲載店
・ホテルのアフタヌーンティー
・季節限定の会席
・地元の名店再発見
食事はすぐ終わるものですが、その余韻は意外と長く残ります。
「誰と行くか」「どう過ごすか」という会話が楽しさを広げます。
③ 文化・芸術体験|新しい刺激は脳を喜ばせる
・歌舞伎
・バレエ
・オペラ
・クラシック鑑賞
・美術展/アート巡り
上質な芸術体験は、“非日常”を与えてくれる特別な時間です。
「自分のために文化を楽しむ」ことは、イマ活の象徴とも言えるでしょう。
④ 学び直し|知識は楽しみに変えられる
・歴史講座
・美術講座
・旅行地の文化を学ぶ
・ワイン/紅茶などの専門講座
学びは“目的”ではなく“楽しみ”へ。
知識が増えると、旅行や鑑賞体験の価値もさらに高まります。
⑤ 推し活・応援消費|喜びは熱量で決まる
・推しのライブや公演
・イベント遠征
・グッズ購入
・オンラインコミュニティ参加
「推しがいる」という状態そのものが、毎日を前向きにします。
同じ想いを持つ仲間との出会いも、イマ活の魅力です。
イマ活の共通点は、“自分の心が主役”ということ
誰かの基準ではなく、「自分がどう感じるか」で価値が決まる。
それがイマ活の面白さであり、選択肢が広がっている理由です。
5.失敗しないイマ活の選び方
イマ活は「楽しむための投資」です。
だからこそ、“後悔しない選び方”が大切になります。
ここでは、経験者の声から見えてきた「失敗しにくいイマ活の判断基準」を紹介します。
① 価格ではなく“感情価値”で選ぶ
「いくらかかったか」
ではなく
「どれだけ心が動いたか」
これがイマ活の基準です。
同じ10万円でも、
“忘れられない体験”と“なんとなく終わる体験”では、価値がまったく違います。
具体的には、
・初めて訪れる場所
・憧れていた演目
・心が震えるほど好きなテーマ
感情に触れる要素があるかどうかが大切な判断軸になります。
② “誰と”行くかで満足度が変わる
イマ活は体験そのものだけでなく、「共有」が価値を高めます。
・親友と
・夫婦で
・同じ趣味の仲間と
・一人旅の気楽な贅沢
どれも正解ですが、
自分が心地よく楽しめる相手かが重要です。
「気を遣う相手」との体験は、満足度を下げてしまうこともあります。
③ “余韻”を楽しめるかを想像する
イマ活の価値は当日だけではありません。
・写真を見る
・SNSに投稿する
・孫に話す
・アルバムにする
・思い出話で笑う
余韻が長く続く体験は、投資の回収率が高いとも言えます。
「終わって終わり」ではなく、「残り続ける時間をイメージできるか」がポイントです。
④ 無理に背伸びしない
高額=良い体験ではありません。
選ぶ基準は“心”と“余裕”です。
・身体的に無理のない移動か
・緊張しすぎない環境か
・ペースを自分で決められるか
背伸びしすぎた消費は疲労を残します。
「心地よく楽しめること」はイマ活最大の価値です。
⑤ 計画はするけど、“完璧を求めない”
良い席を取れなかった
少し高かった
雨だった
予想と違った
そんなことも、あとで話せば思い出になります。
イマ活は、
“トラブルも含めて物語に変わる”消費です。
完璧を求めすぎず、余白と余裕を残した体験は、長く心に残ります。
選ぶ基準は、“心が動くかどうか”
他人がどう思うかではなく、
自分の感情が動いたかを信じて選ぶ。
それが、後悔しないイマ活の第一歩です。
6.まとめ|「今を楽しむ」ことが未来の後悔に変わらない
「イマ活」は、贅沢や浪費のための言葉ではありません。
“いつか”を理由に先送りしてきた夢や憧れを、健康と気力があるうちに叶えるための考え方です。
過去の時代背景には、「家族のため」「子どものため」「将来のため」という価値観がありました。
しかし今は、人生100年時代。
60代・70代は、まだ“体験する体”と“感動する心”が十分に動く時間です。
だからこそ、
「元気なうちに楽しんでおけばよかった」
その後悔を減らせる時代になったといえます。
・ずっと行きたかった場所に行く
・憧れの舞台の生音を聴く
・美しい景色を自分の目で見る
・大切な人と過ごす特別な時間を選ぶ
これらは形には残りません。
ですが、心には確かに残ります。
イマ活は、
「今の自分を喜ばせること」
「自分のために使う時間とお金」
「感情が動く体験に投資すること」
そして何より、
“楽しむことに遠慮しない生き方”の提案です。
未来の不安を完全に消すことはできないかもしれません。
しかし、今を満たす体験は、未来の自分を支える記憶になります。
今日の一歩が、人生の後半に豊かな彩りを加えます。
「いつか」ではなく、「今」。
それがイマ活という生き方です。
「イマ活」で得た体験が、人との出会いや新しい挑戦につながることもあります。今できる働き方を知りたい方は、シニア向け求人サイト「キャリア65」もご覧ください。



