1.そもそも「かたりべ」とは?観光・地域で活躍する仕事の基本
「かたりべ」とは、地域の歴史や文化、暮らしの知恵、思い出などを自分の言葉で“語り伝える人”のことを指します。もともとは昔話や民話を語る存在として使われてきた言葉ですが、近年では観光ガイドや地域案内役として活動する人を指すケースが増えています。
特別な資格や専門知識が必須というわけではなく、
・昔からその土地で暮らしてきた経験
・地域の変化を見てきた実体験
・自分なりに調べて覚えた歴史やエピソード
こうした「人生の中で自然に身についた知識」が、そのまま価値になります。
観光地を歩きながら名所の由来を説明したり、昔の暮らしや仕事の話を交えたりと、教科書には載っていない“生きた話”ができることが、かたりべの大きな魅力です。
仕事の形もさまざまで、自治体や観光協会が主催するツアーの案内役として活動する人もいれば、地域団体に所属して来訪者を案内する人もいます。中には、有償で活動するケースもあれば、最初はボランティアから始めて、徐々に仕事につながる例もあります。
体を大きく動かす重労働ではなく、歩きながら話すことが中心のため、定年後も無理なく続けやすい仕事です。また、人と接する機会が多く、「ありがとう」「また来たい」という言葉を直接もらえることが、やりがいや生きがいにつながる点も特徴といえるでしょう。
2.なぜ今、シニア世代に「かたりべ」が注目されているのか
近年、「かたりべ」という役割がシニア世代から注目されている背景には、社会側のニーズの変化とシニア本人の価値観の変化の両方があります。
まず社会的な背景として、地域観光やまち歩き、体験型ツアーへの関心が高まっています。単に有名な観光地を巡るだけでなく、「その土地でどんな暮らしがあったのか」「昔はどんな仕事が主流だったのか」といった物語性のある観光を求める人が増えています。こうしたニーズに応えられる存在として、長年その地域で暮らしてきたシニア世代の語りは、非常に価値が高いものです。
一方で、シニア世代自身も「年金+少しの収入」「無理のない範囲で社会と関わりたい」という考えを持つ人が増えています。かたりべの仕事は、フルタイム勤務ではなく、月に数回・週に数日といった柔軟な関わり方がしやすいため、体力面や生活リズムを崩しにくい点が支持されています。
また、かたりべは単なる収入源にとどまらず、
・人と話す機会が増える
・若い世代や観光客と交流できる
・自分の経験が誰かの役に立つ
といった「社会とのつながり」を実感しやすい役割です。特に定年後、「役割を失ったように感じる」「人と話す機会が減った」と感じる人にとって、自然な形で居場所を取り戻せる仕事として選ばれています。
このように、観光ニーズの変化と、シニア世代の働き方・生き方の変化が重なった結果、「かたりべ」は今、定年後の選択肢として現実的で魅力ある仕事として注目されているのです。
3.かたりべの主な仕事内容|観光ガイド・歴史案内・地域活動
かたりべの仕事は、「観光ガイド」という言葉だけでは収まりきらないほど、実に幅広いのが特徴です。共通しているのは、地域に根ざした話を、自分の言葉で伝えること。ここでは代表的な仕事内容を紹介します。
もっとも多いのが、観光・まち歩きガイドです。神社仏閣、史跡、古い町並みなどを歩きながら、「なぜこの場所が大切にされてきたのか」「昔はどんな人たちが暮らしていたのか」といった背景を説明します。観光パンフレットに書かれている情報だけでなく、自身の体験や地域に伝わるエピソードを交えることで、参加者の満足度が高まります。
次に、歴史・文化の語り部役としての活動があります。地域の資料館や交流施設、学校行事などで、昔の暮らしや仕事、地域行事について話をするケースです。特に小中学生や若い世代に向けて、「昔の遊び」「昭和の生活」「地域産業の変遷」などを語る場面では、シニア世代ならではのリアルな話が重宝されます。
また、観光に限らず、地域活動の一環としてのかたりべもあります。移住希望者向けの地域説明会、まちづくりイベント、交流会などで、地域の魅力や暮らしやすさを伝える役割を担います。ここでは「案内役」というより、「地域の顔」としての存在感が求められます。
いずれの仕事も、専門的な資格よりも、
・人に分かりやすく話そうとする姿勢
・相手の反応を見ながら話を調整する柔軟さ
・地域を大切に思う気持ち
こうした点が重視されます。長年働き、生活してきたシニア世代だからこそ、自然に備わっている力が、そのまま仕事につながるのが、かたりべの大きな特徴といえるでしょう。
4.収入は得られる?有償・ボランティア型かたりべの違い
「かたりべは仕事になるのか」「収入はどのくらい得られるのか」は、多くの方が気になるポイントです。結論から言うと、かたりべには有償型とボランティア型の両方が存在し、地域や関わり方によって位置づけが大きく異なります。
まず、有償型のかたりべは、自治体や観光協会、旅行会社などが主催するツアーや案内業務に関わるケースです。1回あたり数千円の謝礼が支払われることが多く、半日・数時間単位で活動する形が一般的です。頻度は月に数回という場合が多く、「年金に少しプラスできれば十分」という方にとって、無理のない収入源になります。
一方で、ボランティア型のかたりべも多く存在します。こちらは報酬が出ない、もしくは交通費程度の支給にとどまるケースですが、その分、活動の自由度が高く、プレッシャーも少なめです。「まずは人前で話すことに慣れたい」「地域活動として関わりたい」という方が、最初の一歩として選ぶことが少なくありません。
重要なのは、ボランティア型=収入ゼロで終わる、とは限らない点です。実際には、
・ボランティア活動を通じて経験を積む
・評判が広がり、別の有償案件を紹介される
・観光協会などから正式に依頼される
といった形で、徐々に有償の仕事につながるケースも見られます。
かたりべは、高収入を目指す仕事ではありませんが、「社会と関わりながら、少しの収入を得る」「お金以上のやりがいを感じる」という点で、定年後の生活にちょうどよくフィットする働き方だといえるでしょう。
5.未経験でもできる?かたりべに向いている人の特徴
「人前で話した経験がない」「ガイドの仕事は初めて」という方でも、かたりべとして活動することは十分に可能です。実際に活躍している人の多くは、定年後に初めて“語る役割”に挑戦したシニア世代です。
かたりべに向いている人の特徴として、まず挙げられるのは、話すことが得意でなくても、人の話を聞く姿勢があることです。一方的に説明するよりも、参加者の反応を見ながら会話をすることが大切なため、「相手に合わせて話そう」とする姿勢が評価されます。
次に、完璧な知識を求めすぎない人も向いています。かたりべの役割は、学者のように正確な年号を並べることではなく、「昔はこうだった」「自分が若い頃はこんな様子だった」といった、生活感のある話を伝えることです。分からないことがあれば「今度調べておきます」と素直に伝えられる柔軟さも、大切な資質といえるでしょう。
また、歩くことが苦にならない人も適性があります。観光ガイドやまち歩きでは、ゆっくりしたペースとはいえ、数十分から数時間歩くことが多いため、日常的に散歩ができる程度の体力があれば十分です。激しい運動ではないため、「身体を動かしながら働きたい」という人に向いています。
さらに、「人や地域の役に立ちたい」「誰かに喜んでもらえることがうれしい」と感じる人は、かたりべの仕事を長く続けやすい傾向があります。収入だけを目的にするよりも、社会とのつながりを楽しめるかどうかが、続ける上での大きなポイントになります。
6.健康面のメリット|歩く・話す仕事が心身に与える良い影響
かたりべの仕事は、「収入」や「やりがい」だけでなく、健康面においても多くのメリットがあります。特に定年後、「運動不足になりがち」「人と話す機会が減った」と感じている方にとって、自然に健康を意識できる働き方といえるでしょう。
まず大きな特徴は、無理のない運動習慣が身につくことです。観光案内やまち歩きでは、急いで歩くことはほとんどなく、参加者に合わせたゆっくりしたペースで移動します。距離も数キロ程度が一般的で、日常的な散歩に近い感覚です。そのため、「運動のために時間を作る」のではなく、働きながら自然に体を動かせる点が、継続しやすさにつながります。
次に、話すこと自体が心身の刺激になる点も見逃せません。かたりべは、説明や雑談を通じて人と会話を重ねる仕事です。声を出して話し、相手の反応を感じながら言葉を選ぶことは、脳への良い刺激になります。「今日はどんな話をしよう」「どう伝えたら分かりやすいだろう」と考える時間そのものが、日常にメリハリを与えてくれます。
さらに、屋外で活動する機会が多いことも、健康面ではプラスに働きます。日光を浴びながら歩き、季節の変化を感じることは、生活リズムの安定につながります。自宅にこもりがちになると、気分が沈みやすくなる人もいますが、予定があることで外出のきっかけが生まれる点は大きなメリットです。
加えて、「人の役に立っている」「必要とされている」という実感は、精神的な健康にも良い影響を与えます。参加者から「話が面白かった」「また来たい」と声をかけられることで、自己肯定感が高まり、日々の生活に前向きな気持ちをもたらします。
このように、かたりべは特別なトレーニングをしなくても、歩く・話す・人と関わるという基本的な行動を通じて、心と体の両面を支えてくれる仕事なのです。
7.かたりべの仕事はどう探す?募集の見つけ方と始め方
かたりべに興味を持っても、「どこで募集を探せばいいのか分からない」と感じる方は少なくありません。一般的な求人サイトでは見つかりにくいため、探し方のポイントを知っておくことが大切です。
まず最初に確認したいのが、自治体や観光協会の情報です。市区町村の公式サイト、観光協会のホームページ、広報誌などには、「観光ガイド募集」「かたりべ養成講座」「観光ボランティア募集」といった案内が掲載されることがあります。特に春や秋の観光シーズン前は、募集情報が出やすい時期です。
次におすすめなのが、地域の交流施設や公民館です。掲示板に募集チラシが貼られていたり、職員に尋ねることで最新の情報を教えてもらえることもあります。インターネットが苦手な方でも、直接足を運ぶことで得られる情報が意外と多いのが特徴です。
また、「最初から有償の仕事を探さなければならない」と考える必要はありません。多くの場合、
・観光ボランティアとして登録
・イベント時の案内役を経験
・評価や実績を積む
という流れで活動が広がっていきます。最初はボランティアでも、「続けられそうか」「自分に合っているか」を確かめる意味では、無理のないスタートになります。
さらに、地域によってはガイド養成講座や説明会に参加した人限定で活動の場を紹介してもらえるケースもあります。「募集が見つからない」と感じた場合は、講座や説明会への参加を入口にするのも現実的な方法です。
かたりべの仕事探しは、「求人を探す」というよりも、地域とのつながりを作ることに近いイメージです。一歩踏み出して情報に触れることで、思いがけない縁が生まれることもあります。
8.まとめ|経験を活かし、社会とつながり続ける「かたりべ」という選択
かたりべの仕事は、特別な資格や長い職歴を誇示する必要があるものではありません。むしろ、これまで普通に生きてきた人生そのものが、そのまま価値になる働き方です。
定年後、「まだ体は動くのに、活躍の場が見つからない」「収入も社会とのつながりも、少しずつ減っていくのが不安」と感じる人は少なくありません。かたりべは、そうした不安に対して、無理のない形で応えてくれる選択肢です。歩きながら話し、人と関わり、地域の魅力を伝える——その一つひとつが、日常に役割と張り合いをもたらします。
収入面では大きく稼ぐ仕事ではないものの、「年金に少しプラスする」「外に出る理由をつくる」という意味では、現実的で続けやすい働き方です。さらに、人から感謝される経験は、お金以上の満足感につながることもあります。
また、かたりべは一人で完結する仕事ではありません。観光客、地域の人、若い世代との交流を通じて、「自分の経験が誰かの役に立っている」と実感できる点が、大きな魅力です。これは、定年後の生活において、心の充実を支える重要な要素といえるでしょう。
これまで積み重ねてきた人生経験を、次の世代や訪れる人に伝えていく。
かたりべは、「働くこと」「健康でいること」「社会とつながること」を、自然に両立できる、シニア世代ならではの仕事なのです。
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