はじめに:なぜ今、シニア採用は「タイプ別」に考える必要があるのか
近年、シニア採用が注目される背景には、深刻化する人手不足だけでなく、「高齢者の働き方・社会参加の多様化」があります。一口にシニア人材と言っても、働く理由や社会との関わり方は決して一様ではありません。にもかかわらず、年齢や過去の役職、保有資格といった“属性”だけで採用を進めてしまうと、期待とのズレや早期離職といったミスマッチが起こりやすくなります。
こうした課題を整理する視点として有効なのが、LONGLIFE総合研究所が示している「シニアの就労・社会参加活動を6つのタイプに分類する考え方」です。この分類では、シニアの行動を「年齢」や「職歴」ではなく、“なぜ働くのか”“どのように社会と関わりたいのか”という動機軸で整理しています。
具体的には、
① 生活費の確保を目的とする「生活費型」
② これまでのキャリアを活かし続けたい「現役延長型」
③ 社会的な役割ややりがいを重視する「いきがい型」
④ 習慣や人との交流を求める「習慣・交流型」
⑤ 無理のない範囲で収入を得たい「小遣い型」
⑥ 就労や社会参加に積極的でない「無関心型」
という6つのタイプに整理されています。
人事担当者にとって重要なのは、どのタイプのシニアを採用したいのかを明確にすることです。タイプが異なれば、適した業務内容、雇用条件、声かけの仕方、定着施策も大きく変わります。逆に言えば、この分類を理解しておくことで、求人票の設計から面接、配置、定着支援までを一貫して設計しやすくなります。
シニア採用を「年齢対策」や「人手不足対策」で終わらせず、戦力化と定着につなげるための実務的なフレームワークとして、タイプ別に考える視点が今、求められているのです。
シニアの就労・社会参加は6つのタイプに分けられる
LONGLIFE総合研究所が提唱する6分類は、シニアの就労・社会参加を「働く動機」という視点で整理した点に特徴があります。従来のように「年齢」「フルタイムかパートか」「経験年数」といった外形的な区分ではなく、本人が何を目的に働こうとしているのかに着目することで、採用・配置・定着の精度を高めることができます。
6つのタイプを簡潔に整理すると、以下のようになります。
| タイプ | 主な動機・特徴 | 人事視点でのポイント |
|---|---|---|
| ① 生活費型 | 生活費や家計補填が目的 | 安定したシフト・収入設計 |
| ② 現役延長型 | キャリア継続・専門性活用 | 権限・役割の明確化 |
| ③ いきがい型 | 社会貢献・役割意識 | 感謝・承認の仕組み |
| ④ 習慣・交流型 | 生活リズム・人とのつながり | 職場の雰囲気・チーム性 |
| ⑤ 小遣い型 | 無理のない副収入 | 短時間・業務分解 |
| ⑥ 無関心型 | 就労意欲が低い | 採用対象外判断も含む |
重要なのは、この6タイプに優劣はないという点です。企業側の都合だけで「即戦力になりそう」「長く働いてくれそう」と判断するのではなく、自社の業務特性や課題に、どのタイプが合うのかを見極めることが重要になります。
また、同じシニア人材でも、ライフステージや健康状態の変化によってタイプが移行するケースもあります。例えば、現役延長型だった人が、数年後には習慣・交流型や小遣い型へシフトすることも珍しくありません。そのため、採用時点だけでなく、採用後の関わり方や役割の見直しにも、この分類は活用できます。
この6タイプを理解しておくことで、シニア採用は「なんとなく人を入れる施策」から、「意図をもって人を活かす戦略」へと進化します。次章からは、それぞれのタイプについて、人事実務にどう落とし込むかを具体的に見ていきます。
① 【生活費型】収入確保が最優先のシニア人材
「生活費型」のシニア人材は、年金だけでは生活費が足りない、あるいは家計にゆとりを持たせたいという経済的理由を主な動機として働いています。シニア採用の中でも比較的わかりやすいタイプですが、条件設計を誤ると早期離職につながりやすいため、企業側の配慮が欠かせません。
このタイプの特徴は、働く目的が明確である一方、仕事内容そのものへのこだわりは相対的に低い点にあります。「やりがい」よりも「安定して働けるか」「想定どおりの収入になるか」が重視されるため、求人票や面接では収入・勤務日数・契約期間をできるだけ具体的に示すことが重要です。
人事実務の観点では、以下のような仕事設計と相性が良いといえます。
・シフトが安定している業務
・業務内容が比較的単純で、習熟に時間がかからない仕事
・突発的な残業や業務変更が少ないポジション
一方で注意したいのは、「生活費型=体力的に厳しくても我慢して働く人」と誤解しないことです。無理な業務設計は、欠勤や体調不良による離脱を招き、結果的に職場の負担を増やします。業務の切り出しや作業量の調整を前提にした設計が、安定稼働につながります。
また、生活費型のシニア人材は、条件が合わなくなった場合に転職をためらわない傾向があります。これはネガティブな要素ではなく、「目的が明確だからこそ合理的な判断をする」と捉えるべきです。企業側は、定期的な面談や条件のすり合わせを行い、本人の状況変化を把握することが重要になります。
生活費型のシニア人材をうまく活用できる企業は、業務分解や標準化が進んでいることが多く、人件費のコントロールと安定した人員確保を両立しやすくなります。人手不足対策として即効性が高い一方で、設計力が問われるタイプだと言えるでしょう。
② 【現役延長型】これまでのキャリアを活かし続けたいシニア人材
「現役延長型」のシニア人材は、定年後もこれまで培ってきた専門性・経験・判断力を活かし続けたいという強い意欲を持っています。収入面も一定重視しますが、それ以上に「自分はまだ現役として役に立てるか」「経験が正当に扱われているか」が就労継続の判断軸になります。
このタイプの特徴は、業務理解が早く、即戦力化しやすい点にあります。特に、管理職経験者、専門職、長年同一業界で働いてきた人材は、現場の暗黙知や意思決定プロセスを理解しており、若手や中堅では補いにくい価値を発揮します。
一方で、採用時・配置時に注意したいのは、役割の曖昧さが不満につながりやすい点です。現役延長型のシニアに対して「とりあえず入ってもらう」「空いている業務をお願いする」といった姿勢で接すると、モチベーション低下や職場摩擦を招きやすくなります。
人事実務としては、以下のような設計が有効です。
・期待する役割/守備範囲を明確にする
・意思決定権限の有無を事前に整理する
・若手/現場との関係性(指導か補佐か)を言語化する
特に重要なのは、「若手の上司」として位置づけるのか、「専門アドバイザー」「プロジェクト支援役」とするのかを明確にすることです。現役延長型のシニア人材は、肩書きよりも役割の実態を重視するため、この整理が不十分だと「思っていた働き方と違う」という不満につながります。
また、評価制度にも工夫が必要です。成果や貢献度が見えにくいまま年齢だけで処遇を下げてしまうと、経験を活かすどころか、逆に組織の活力を削ぐ結果になりかねません。役割ベースでの評価軸を設けることで、現役延長型の力を最大化できます。
現役延長型のシニア採用は、単なる人手補充ではなく、組織の知見を次世代へつなぐ投資でもあります。うまく設計できれば、若手育成や業務品質の底上げにも直結する、非常に価値の高いタイプだと言えるでしょう。
③ 【いきがい型】社会との関わりや役割を重視するシニア人材
「いきがい型」のシニア人材は、収入そのものよりも、社会の中で役割を持ち続けることや、誰かの役に立っている実感を重視して働きます。LONGLIFE総合研究所の分類においても、このタイプは「就労=生きがい・社会参加」と捉えている点が特徴的です。
このタイプのシニアは、必ずしも高い報酬やフルタイム勤務を求めているわけではありません。それよりも、
・自分の存在が職場や利用者にどう貢献しているのか
・役割がきちんと認識されているか
・感謝や評価が言葉として伝えられているか
といった心理的報酬が、継続就労の大きな動機になります。
人事・現場マネジメントの観点では、いきがい型のシニア人材は職場の雰囲気を良くする存在になりやすい傾向があります。丁寧な仕事ぶりや、周囲への気配り、若手への声かけなど、数値化しにくい貢献を積み重ねるケースが多く、結果としてチームの安定や定着率向上に寄与します。
一方で注意したいのは、「善意に甘えすぎない」ことです。いきがい型のシニアは頼まれると断れない性格の人も多く、業務量が知らず知らずのうちに増えてしまうことがあります。役割と業務範囲を明確にし、無理をさせない設計が不可欠です。
このタイプに向いている施策としては、以下が挙げられます。
・利用者や顧客からの感謝を共有する仕組み
・定期的な声かけや面談による承認
・肩書きや役割名称を工夫する(例:サポーター、アドバイザー等)
いきがい型のシニア人材は、直接的な生産性だけで測ると価値を見誤りがちですが、組織文化やチームの土台を支える存在として非常に重要です。人手不足が続く今だからこそ、こうした「見えにくい価値」をどう活かすかが、人事戦略の差になります。
④ 【習慣・交流型】人とのつながりや生活リズムを重視するシニア人材
「習慣・交流型」のシニア人材は、収入やキャリア継続よりも、生活リズムを保つことや人とのつながりを持ち続けることを目的に働いています。毎日家にいるよりも、決まった時間に外出し、人と会話を交わすこと自体が価値になっているタイプです。
このタイプの特徴は、就労を“生活の一部”として捉えている点にあります。そのため、勤務時間や日数が多少短くても問題になりにくく、「週2〜3日」「午前中だけ」といった働き方でも高い満足度を得やすい傾向があります。
人事・現場視点で見ると、習慣・交流型のシニアは、以下のような場面で力を発揮します。
・職場の雰囲気を和らげる
・新人や若手が話しかけやすい存在になる
・欠勤が少なく、安定して出勤する
特に、接客補助、受付、軽作業、現場サポートなど、「人がいること自体に意味がある業務」との相性が良いタイプです。
一方で注意すべきなのは、「成果」や「スピード」を過度に求めすぎないことです。習慣・交流型のシニアに対して、若手と同じKPIや数値目標を設定すると、負担感が増し、就労継続が難しくなる場合があります。役割は“補助・支え”であることを前提に設計することが重要です。
このタイプを活かすためのポイントとしては、
・固定シフトで生活リズムを作る
・休憩時間や雑談の余地を残す
・チーム内で「いてくれると助かる存在」として位置づける
といった工夫が挙げられます。
習慣・交流型のシニア人材は、即戦力としての派手さはありませんが、職場の安定感や心理的安全性を高める存在です。人手不足対策だけでなく、職場環境の改善という観点からも、積極的に検討する価値のあるタイプだと言えるでしょう。
⑤ 【小遣い型】無理なく短時間で働きたいシニア人材
「小遣い型」のシニア人材は、生活費を支えるほどの収入は求めておらず、自分のペースで無理なく、少額でも収入が得られればよいと考えて働いています。年金や貯蓄を主な生活基盤としつつ、「社会との接点を持ちたい」「多少の余裕がほしい」という動機で就労するケースが多いのが特徴です。
このタイプの最大の特徴は、労働時間や負荷に対する感度が高い点にあります。長時間勤務や急なシフト変更、責任の重い業務を任せると、一気に負担感が増し、離職につながりやすくなります。逆に言えば、条件さえ合えば、長期的に安定して働いてくれる可能性が高い層でもあります。
人事実務の観点では、以下のような仕事設計と相性が良いタイプです。
・1日2〜4時間程度の短時間業務
・業務内容が明確で、責任範囲が限定されている仕事
・繁忙期/閑散期に応じて調整しやすい補助業務
特に近年は、業務分解を進めることで、小遣い型シニアが担える仕事の幅が広がっています。例えば、清掃の一部工程、備品管理、簡単な入力作業、見守りや立ち会いといった業務は、短時間でも十分に機能します。
注意点としては、「人手が足りないから、つい頼りすぎてしまう」ことです。小遣い型のシニアは、頼まれると断れず、結果として想定以上の業務を抱えてしまうことがあります。契約内容・業務範囲を明文化し、超えない運用を徹底することが、定着のカギとなります。
小遣い型のシニア人材を上手く活用できる企業は、結果的に、
・業務の棚卸しが進む
・無駄な作業が可視化される
・人件費を抑えつつ人手不足を補える
といった副次的効果も得やすくなります。柔軟な働き方を前提とした採用設計が、企業側にもプラスをもたらすタイプだと言えるでしょう。
⑥ 【無関心型】就労意欲が高くないシニア層をどう捉えるか
「無関心型」は、就労や社会参加に対する関心が現時点では高くないシニア層を指します。LONGLIFE総合研究所の6分類の中でも、このタイプは「積極的に働きたい層」ではないため、企業側からすると扱いづらい印象を持たれがちです。
しかし、人事実務の観点では、無関心型を無理に採用対象に含める必要はありません。重要なのは、「採用しない」という判断も戦略の一部であると理解することです。すべてのシニアを労働力として捉えようとすると、結果的にミスマッチや早期離職が増え、現場の負担が大きくなります。
一方で、無関心型は将来的に他のタイプへ移行する可能性がある層でもあります。健康状態の変化、家族構成の変化、社会との接点の減少などをきっかけに、「少し働いてみようかな」と意識が変わるケースは少なくありません。そのため、企業としては「今すぐ採用するかどうか」ではなく、接点をどう残すかという視点が重要になります。
具体的には、
・地域イベントや説明会への参加機会を設ける
・シニア向けの働き方事例を発信する
・短時間/短期間の仕事情報をオープンにしておく
といった取り組みが、無関心型との緩やかな接点づくりにつながります。
また、採用広報の中で「フルタイム前提」「即戦力重視」といったメッセージだけを強く打ち出している場合、無関心型だけでなく、本来マッチするはずの習慣・交流型や小遣い型まで遠ざけてしまう可能性があります。入口を狭めすぎない情報設計も、人事にとっては重要なポイントです。
無関心型は“採用すべき人材”というよりも、将来の潜在層としてどう向き合うかが問われるタイプです。この視点を持つことで、シニア採用は短期的な人手補充から、中長期の人材戦略へと広がっていきます。
タイプ別に変えるべき「求人票・面接・配置」の設計ポイント
シニア採用を6つのタイプで捉える最大のメリットは、求人票・面接・配置を一貫した思想で設計できることにあります。ここが曖昧なまま採用を進めると、「採れたが活かせない」「現場が疲弊する」といった事態が起こりやすくなります。
求人票:最初に“動機のズレ”を防ぐ
求人票では、スキルや経験以上に、どのタイプのシニアを想定しているかを意識した情報設計が重要です。
・生活費型/小遣い型
→ 勤務日数、時間帯、月収目安を具体的に記載
・現役延長型
→ 任せたい役割、裁量の有無、期待値を明示
・いきがい型/習慣交流型
→ 職場の雰囲気、誰の役に立つ仕事かを言語化
「やりがいがあります」「アットホームな職場です」といった抽象表現だけでは、動機の異なるシニアに誤解を与えてしまいます。
面接:スキルより“なぜ働きたいか”を聞く
シニア採用の面接では、職歴の深掘り以上に、就労動機の確認が重要です。
・なぜ今、働こうと思ったのか
・どんな働き方なら長く続けられそうか
・収入/時間/役割の優先順位はどこか
これらを丁寧に聞くことで、6タイプのどこに近いかが自然と見えてきます。
配置:タイプに合わない配置は失敗のもと
採用後の配置でよくある失敗は、「空いているところに入れる」ことです。
タイプ別に見ると、
・現役延長型に補助業務だけを任せる
・小遣い型に責任の重い業務を任せる
・習慣/交流型に数値目標を課す
といった配置は、早期離職の原因になります。
シニア採用は、採ることよりも“どう使うか”が8割です。6タイプを意識した設計を行うことで、採用・定着・戦力化が一本の線でつながります。
まとめ:6タイプで考えると、シニア採用は“戦力化”と“定着”が両立できる
シニア採用が難しいと感じられる最大の理由は、「採用した後にどう活かせばよいか分からない」という点にあります。年齢や職歴だけで判断すると、期待と現実のギャップが生まれやすく、結果として早期離職や現場の不満につながります。
その点、LONGLIFE総合研究所が示す就労・社会参加を6つのタイプで捉える視点は、人事実務にとって非常に再現性の高いフレームです。働く動機を起点に考えることで、
・誰を採るべきか
・どんな仕事を任せるべきか
・どんな配慮が必要か
を事前に整理できるようになります。
特に重要なのは、「全員を即戦力にしようとしない」ことです。生活費型や小遣い型は安定稼働の担い手として、現役延長型は知見継承の要として、いきがい型や習慣・交流型は職場の土台を支える存在として、それぞれ異なる価値を持っています。役割を分けて考えることで、組織全体のパフォーマンスが底上げされます。
また、この考え方はシニア採用に限らず、業務分解や働き方の見直しにも波及効果をもたらします。「この仕事は誰がやるべきか」「本当にフルタイムである必要があるのか」といった問いが生まれ、結果として若手や中堅の負担軽減にもつながります。
シニア採用を単なる人手不足対策で終わらせるのではなく、組織設計の一部として戦略的に取り込む。6タイプで考える視点は、そのための実践的な地図となるはずです。
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