体力より“寄り添い力”|シニア世代が活躍できる「歩行訓練士」という仕事

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1.歩行訓練士とは?「見えにくい人の外出」を支える専門職

歩行訓練士とは、視覚障害のある人が安全に外を歩き、自分らしく生活できるよう支援する専門職です。
病気や事故で視力を失ったり、加齢や疾患によって「見えにくくなった」人が、再び一人で外出できるようになるための訓練を行います。

ここで言う「歩行」とは、単に足を動かすことではありません。
白杖を使って道の段差を感じ取る方法、信号の音を頼りに横断歩道を渡るコツ、駅やスーパーの中を迷わず移動する工夫など、“見えない・見えにくい世界で安全に動く技術”を教えるのが歩行訓練士の仕事です。

日本歩行訓練士会の定義では、歩行訓練士は
「視覚障害のある人に対して、歩行、日常生活、コミュニケーションの訓練を行い、自立した生活と社会参加を支援する専門職」
とされています。白杖歩行だけでなく、点字やスマートフォンの操作、調理や買い物の工夫なども支援の対象になります。

この仕事の本質は、「誰かの目と足になる」ことです。
「一人で病院に行けるようになった」
「また買い物に行けるようになった」
そんな変化を一緒に喜べる、社会的にもとても意義のある仕事なのです。


2.なぜ今、歩行訓練士が社会に必要とされているのか

歩行訓練士のニーズが高まっている背景には、日本の急速な高齢化と、それに伴う「見えにくさ」を抱える人の増加があります。白内障、緑内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性など、視覚に影響する病気は年齢とともに増えやすく、「失明ではないけれど外出が怖い」という人が多くなっています。

こうした状態は「ロービジョン」と呼ばれます。視覚障害者の多くは、完全に見えないわけではなく、見え方に大きな制限がある状態で生活しています。外を歩くときに段差や信号が見えづらく、転倒や事故のリスクが高くなるため、外出をあきらめてしまう人も少なくありません。

しかし、歩行訓練や生活訓練を受けることで、再び一人で移動できるようになるケースは多くあります。日本歩行訓練士会や視覚障害リハビリの現場では、「訓練によって外出や就労、地域参加が可能になる」ことが広く知られています。つまり、歩行訓練士は、単なる介助ではなく“社会復帰を支える専門職”なのです。

また、在宅生活を続ける高齢者が増える中で、「施設に入らず、地域で暮らし続けたい」という希望を実現するためにも、歩行訓練士の役割は重要になっています。見えにくくなっても、買い物や通院ができれば、生活の自立度は大きく保たれます。

このように、歩行訓練士は高齢社会の中で、孤立や閉じこもりを防ぐ“要”の仕事として、ますます必要とされているのです。


3.歩行訓練士の仕事内容|白杖・屋外歩行・生活訓練とは

歩行訓練士の仕事は、「見えにくい人が自分の力で生活できるようになる」ことを目的にした実践的なリハビリ支援です。単に付き添って歩くのではなく、一人で歩けるようになるための技術を教えるのが大きな特徴です。

まず中心となるのが白杖歩行訓練です。白い杖を使って地面の凹凸や段差、障害物を感じ取りながら歩く方法を教えます。信号の音を頼りに横断歩道を渡る練習や、駅のホームやエスカレーターの位置を把握する練習も行います。屋内だけでなく、実際の道路や商店街での訓練も行うため、日常生活に直結した技術が身につきます。

次に、ロービジョン(弱視)の人への訓練があります。残っている視力を最大限に活かすために、文字の拡大方法、スマートフォンの読み上げ機能、色のコントラストを活かした見え方の工夫などを一緒に試します。最近は、スマホやタブレットを使った外出支援も重要な仕事になっています。

さらに、日常生活訓練も大切な業務です。
たとえば、
・調理の際に包丁や火を安全に使う方法
・お金や薬の管理の仕方
・服の色を間違えない工夫
など、「見えにくい生活」を安全に続けるための実用的なスキルを教えます。

歩行訓練士は、こうした一つひとつの動作を、利用者のペースに合わせて丁寧に支援します。教えるのは技術ですが、支えているのはその人の“自立した人生”なのです。


4.体力より“寄り添い力”が活きる理由|シニアに向いている仕事

歩行訓練士というと、屋外で歩く訓練をするため「体力勝負の仕事」と思われがちですが、実際に現場で求められるのは、筋力よりも“寄り添う力”です。だからこそ、この仕事はシニア世代ととても相性が良いのです。

視覚障害のある人が外を歩くとき、一番大きな壁になるのは「怖さ」です。段差が見えない、車の位置がわからない、人にぶつかるかもしれない——こうした不安が重なると、外出そのものをあきらめてしまう人もいます。歩行訓練士は、その不安を一つひとつ取り除いていく役割を担います。

そのために大切なのは、
「大丈夫ですよ」「今ここに段差があります」「ゆっくり行きましょう」
といった落ち着いた声かけと、相手の気持ちをくみ取る姿勢です。急かしたり、無理をさせたりすると、かえって危険になります。人生経験を積んだシニア世代は、こうした“相手のペースに合わせる力”に長けています。

また、歩行訓練の利用者の多くは、同じように中高年から高齢の方です。年齢が近いからこそ、「見えなくなる不安」や「外出できなくなるつらさ」に共感しやすく、信頼関係を築きやすいという強みもあります。

体を酷使する介護ではなく、心を使う支援
これが歩行訓練士の本質です。だからこそ、定年後に「人の役に立ちたい」「誰かの力になりたい」と思うシニアにとって、非常にやりがいのある仕事なのです。


5.歩行訓練士の収入・働き方|非常勤・パートでの活躍も可能

歩行訓練士は、フルタイムで長時間働く職種というより、非常勤やパートで専門性を活かして働く人が多い仕事です。とくにシニア世代にとっては、「無理のない時間で、社会に貢献しながら収入も得られる」点が大きな魅力になります。

勤務先は、視覚障害者支援施設、リハビリセンター、盲学校、地域の福祉施設などが中心で、週2〜4日、1日4〜6時間といった働き方が一般的です。利用者の訓練時間帯に合わせてシフトが組まれるため、早朝や夜勤はほとんどありません。

収入は地域や施設によって差がありますが、専門職として扱われるため、一般的な介護補助よりはやや高めの時給が設定されることが多い傾向にあります。月に数万円〜十数万円の収入を得ながら、年金と組み合わせて生活する人も多く、「働きすぎず、でも社会とつながり続けたい」というニーズにぴったり合います。

また、経験を積めば、非常勤の指導員として複数の施設を回るといった働き方も可能になります。若い頃に福祉や教育の経験があった人はもちろん、まったく別の仕事をしてきた人でも、「教える・見守る」という役割に適性があれば評価されます。

歩行訓練士は、年齢を重ねるほど価値が高まる仕事とも言えます。落ち着き、忍耐力、共感力——それらは、シニア世代が自然に身につけてきた強みだからです。


6.歩行訓練士になるには?養成校・資格・学び直しの道

歩行訓練士は、白杖歩行や視覚障害者の外出支援を行う専門職です。
安全に人を外へ導く仕事であるため、だれでも名乗れる職種ではなく、視覚障害リハビリの養成課程を修了した人が現場に立つ仕組みになっています。

「どこで学べばいいのか?」を調べるときに一番わかりやすいのが、
日本歩行訓練士会の公式サイトです。
ここでは、47都道府県別に養成機関や研修先を探すことができるようになっており、自分の住んでいる地域で学べる場所を簡単に確認できます。
【日本歩行訓練士会 公式サイト➡】https://www.nippokai.jp/

シニア世代が目指す場合は、いきなり養成課程に入るよりも、まず
視覚障害者施設やリハビリ施設でのボランティアや非常勤から関わる
というルートが現実的です。現場を知った上で、「本格的に学びたい」と感じたら養成課程に進むことで、ミスマッチを防げます。

歩行訓練士は、「資格を取ること」よりも、人の自立を支える専門性を身につけることに意味があります。
年齢を重ねてきたからこそ持っている落ち着きや共感力が、そのまま価値になる仕事です。


7.どこで働く?盲学校・視覚障害者施設・リハビリセンター

歩行訓練士が活躍する場所は、私たちが普段あまり意識しないところに数多くあります。中心となるのは、視覚障害のある人の自立と社会参加を支える専門機関です。

代表的なのが、視覚障害者支援施設(更生施設・訓練施設)です。ここでは、病気や事故で視力を失った人が、再び一人で生活できるようになるための訓練を集中的に行います。歩行訓練士は、白杖歩行や屋外移動、買い物や通院の練習などを担当し、利用者が地域に戻るための土台を作ります。

次に多いのが、盲学校(視覚特別支援学校)です。子どもから若者まで、視覚に障害のある生徒に対して、安全な移動方法や生活スキルを教えます。ここでは教育職と連携しながら、成長段階に応じた歩行訓練を行います。

また、リハビリテーションセンターや医療機関でも活躍の場があります。視力を失った直後の人や、病気の進行で見えにくくなった人が、退院後に一人で生活できるようになるための訓練を行う場です。医師や視能訓練士、ソーシャルワーカーとチームで支援します。

最近では、地域の在宅支援サービスや就労支援施設でも歩行訓練士のニーズが高まっています。「施設に入るほどではないが、外出が不安」という高齢者が増えているため、地域での訓練や訪問支援が重要になっているからです。

どの現場に共通しているのは、「見えにくさがあっても、その人らしい生活を続けられるようにする」という目的です。歩行訓練士は、地域と人をつなぐ橋渡し役として、さまざまな場所で求められています。


8.歩行訓練士の求人の探し方とシニアの応募ポイント

歩行訓練士の求人は、一般的なアルバイトサイトのように大量に出ているわけではありません。専門性が高く、募集は施設ごとに静かに行われることが多い仕事です。そのため、「探し方」を知っているかどうかがとても重要になります。

まず活用したいのが、福祉・医療系に強い求人サイトです。
こうしたサイトには、一般の求人サイトには載らない、
「視覚障害者支援」「自立訓練」「リハビリ指導員」「生活訓練スタッフ」
といった専門職の募集が集まっています。
歩行訓練士という名前で出ていなくても、実質的に同じ仕事が多く含まれています。

検索するときは、
「視覚障害 生活訓練」
「自立訓練 視覚障害」
「リハビリ 指導員」

などの言葉で探すのがコツです。

次に見るべきなのが、視覚障害者支援を行う社会福祉法人や施設の公式サイトです。
専門職の募集は、求人サイト以外に、自分たちのホームページの採用ページに直接出す施設が非常に多いのもこの業界の特徴です。
自信が住む「地域名」+「視覚障害者 生活訓練」「自立訓練 視覚障害」「盲学校」「ロービジョン 支援」などの言葉で検索し、施設の公式ページを一つずつ見ていくのも王道です。

さらに、求人が出ていなくても、直接問い合わせることも有効です。
歩行訓練士は人材が限られているため、
「今は募集していないが、良い人がいれば検討したい」
という施設が少なくありません。

シニア世代が応募する際に強みになるのは、年齢そのものです。視覚障害のある利用者の多くは中高年〜高齢者であり、年齢が近い支援者のほうが安心感を持たれやすいからです。
応募書類では、「長年の社会経験」「落ち着いた対応」「人の話を聞く姿勢」「安全意識」を具体的に書くことで、専門職としての適性を伝えられます。

歩行訓練士の採用は、即戦力よりも信頼できる人かどうかで決まる世界です。
それは、シニア世代にとって非常に有利な条件でもあります。


9.まとめ|人生経験が“誰かの目と足”になる仕事

歩行訓練士は、見えにくさを抱える人が再び外に出て、社会とつながるための“橋渡し”をする専門職です。白杖の使い方や屋外歩行、日常生活の工夫を通じて、その人の「できる」を取り戻していきます。

この仕事がシニア世代に向いているのは、体力よりも寄り添う力、落ち着き、共感力が何より大切だからです。年齢を重ねたからこそ、利用者の不安に共感でき、ゆっくり丁寧に支援することができます。

また、非常勤やパートとして関われるため、年金と組み合わせて無理なく働けるのも魅力です。学び直しを通じて専門性を身につければ、定年後でも「社会に必要とされる仕事」に就くことができます。

歩行訓練士は、あなたの人生経験そのものが価値になる仕事です。誰かの一歩を支えることが、自分自身の生きがいにもつながっていきます。

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