1.毎日を充実させる「健康寿命」とは?
平均寿命と健康寿命のギャップを知る
定年を迎え、これからの時間をどう過ごそうかと考えたとき、多くの人が願うのは「いつまでも元気で、自分の足で歩き、好きなことを楽しみたい」ということではないでしょうか。ここで意識したいのが、「平均寿命」と「健康寿命」の違いです。
平均寿命とは「生まれてから亡くなるまでの期間」のことです。一方、健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を指します。実は、この2つの寿命には大きな「ギャップ」が存在します。
| 性別 | 平均寿命 | 健康寿命 | ギャップ(差) |
|---|---|---|---|
| 男性 | 約81歳 | 約72歳 | 約9年 |
| 女性 | 約87歳 | 約75歳 | 約12年 |
※参考:厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」等のデータを基に概数で作成
表を見るとわかるように、男性で約9年、女性で約12年もの間、何らかの健康上の問題を抱えながら生活する期間があるとされています。このギャップをいかに短くし、健康寿命を平均寿命に近づけていくかが、シニアライフの質を大きく左右するのです。
充実したシニアライフには心身の健康が不可欠
健康寿命を延ばすということは、単に長生きするということではありません。経済的な安心感を得るために再び社会で活躍したい、新しい学びを得たい、家族や友人と笑顔で過ごしたい。そうした「充実した毎日」を実現するための土台となるのが、心身の健康です。
年齢を重ねるとともに体力や筋力が低下するのは自然なことですが、日々の小さな習慣の積み重ねによって、そのスピードを緩やかにすることは十分に可能です。次章からは、心身の若々しさを保ち、いきいきとした毎日を送るための具体的なキーワードについて詳しく見ていきましょう。
2.健康寿命を伸ばす4つのキーワード「テクテク・カミカミ・ニコニコ・ドキドキ」
日本成人病予防協会が提唱する健康習慣
健康寿命を延ばし、活力ある毎日を送るために、私たちは日常のなかで何を意識すればよいのでしょうか。その分かりやすい指標となるのが、特定非営利活動法人 日本成人病予防協会が提唱している「4つの生活習慣」です。
同協会では、生活習慣病を予防し、心身ともに健やかな状態を保つためのキーワードとして、以下の4つの言葉を掲げています。
・テクテク:歩くこと(適度な運動による足腰の強化)
・カミカミ:よく噛むこと(健康な食生活と脳への刺激)
・ニコニコ:笑うこと(ストレス解消と免疫力の向上)
・ドキドキ:感動すること(社会参加や生きがいによる脳の活性化)
これら「テクテク・カミカミ・ニコニコ・ドキドキ」という言葉は、決してハードなトレーニングや厳しい食事制限を強要するものではありません。誰もが今日からすぐに始められる、日常のちょっとした心がけを分かりやすく表現したものです。覚えやすく親しみやすいフレーズであるため、全国で多くの方の健康づくりに取り入れられています。
年齢を重ねてから新しい学びを始めたり、再び社会とのつながりを持とうとしたりする際にも、この基本となる健康習慣が心強い土台となってくれます。次からは、それぞれのキーワードが持つ具体的な健康効果と、日常生活への無理のない取り入れ方について、一つずつ順番に詳しく解説していきます。
2.第1のキーワード「テクテク」:無理なく体を動かそう
日常生活の中で歩く習慣をつける
年齢を重ねても自立した生活を送り、社会とのつながりを持ち続けるためには、ご自身の足で歩ける「足腰の筋力」を維持することが非常に重要です。第1のキーワードである「テクテク」は、まさにその「歩くこと」の大切さを表しています。
健康のためとはいえ、急にジムに通ったり、激しいスポーツを始めたりする必要はありません。大切なのは、毎日の生活の中で少しずつ「歩く機会」を増やすことです。例えば、「買い物に行くときは少し遠回りをしてみる」「天気の良い日は、ご夫婦で近くの公園まで散歩に出かける」「無理のない範囲で階段を使ってみる」といった小さな工夫で十分です。歩くことは全身の筋肉の多くを使う有酸素運動であり、心肺機能の維持にも大いに役立ちます。
足腰を鍛えて生活習慣病を予防する
日々「テクテク」と歩く習慣は、足腰の衰えを防ぐだけでなく、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の予防にも直結します。歩くことで血流が促進されて代謝が上がり、結果として動脈硬化などのリスクを軽減することにもつながるのです。
また、外の空気を吸い、季節の移ろいを感じながら歩くことは、脳への良い刺激となり、気分転換やストレス解消にも効果的です。まずは怪我のないよう、クッション性の高い歩きやすい靴を選び、ご自身のペースで心地よいリズムを刻むことから始めてみましょう。
3.第2のキーワード「カミカミ」:よく噛んで美味しく食べる
噛む回数を増やすことで得られる健康効果
毎日の食事でぜひ意識したいのが、第2のキーワードである「カミカミ」です。年齢を重ねると、無意識のうちに柔らかいものばかりを選んでしまったり、噛む回数が減って早食いになってしまったりすることがあります。しかし、よく噛んで食べることは、胃腸の負担を軽くするだけでなく、全身の健康に大きなメリットをもたらします。
ひとくちにつき30回を目安にしっかりと噛むことで、唾液の分泌が促されます。唾液には消化を助ける成分が含まれているほか、お口の中を清潔に保ち、免疫力をサポートする働きもあります。さらに、ゆっくりと時間をかけて食事をすることで満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを防いで適正な体重を維持することにも役立ちます。
脳の活性化と健康な体づくりにつながる食事
そして、「カミカミ」のもう一つの重要な効果が、脳への良い刺激です。あごの筋肉をしっかりと動かして噛むことで、脳への血流が増加し、脳が活性化することが分かっています。これにより、記憶力や集中力の維持・向上が期待できるのです。
これから先、新しい知識やスキルを学んだり、若い世代を含めた周囲の人々と円滑なコミュニケーションをとったりする際にも、クリアで若々しい脳の働きは欠かせません。毎日の食卓で「美味しく、よく噛む」ことを意識するだけで、活動的な日々を支える大切な土台作りになります。
4.第3のキーワード「ニコニコ」:笑顔で心に栄養を
笑いがもたらすストレス解消と免疫力アップ
毎日を健やかに過ごすために欠かせないのが、第3のキーワード「ニコニコ」です。笑うことが心身の健康に良い影響を与えることは、広く知られています。思い切り笑うと、体内でウイルスなどの外的から体を守る「NK(ナチュラルキラー)細胞」が活性化し、免疫力が高まると言われています。
また、笑うことで脳内には幸福ホルモンと呼ばれる物質が分泌され、ストレスを軽減し、心身をリラックスさせる効果も期待できます。面白いことがあって声を出して笑うのが一番ですが、たとえ作り笑いであっても、口角を上げて表情筋を動かすだけで、脳は「楽しい」と認識してポジティブな効果をもたらすそうです。
周囲とのコミュニケーションが笑顔の源に
しかし、家の中で一人きりで過ごしていては、なかなか自然な笑顔は生まれにくいものです。心からの「ニコニコ」を引き出す一番の特効薬は、やはり人とのコミュニケーションに他なりません。家族や友人と何気ない会話を楽しんだり、同じ目標を持つ仲間と交流したりすることが、自然な笑いを生み出します。
定年を機に現役時代と比べて人と関わる機会が減ってしまったと感じる方こそ、意識して誰かと話す環境を作ることが大切です。他者と関わり、互いの経験を共有したり感謝を伝え合ったりすることは、孤独感を和らげ、笑顔あふれる穏やかで豊かな時間をもたらしてくれます。
5.知っておきたいもう一つのキーワード「モグモグ」:栄養バランスの良い食事を
「カミカミ」とセットで実践したい食の基本
「テクテク・カミカミ・ニコニコ・ドキドキ」の4つに加えて、合わせて意識したいキーワードとして挙げられるのが「モグモグ」です。これは、単に食べるだけでなく「栄養バランスの良い食事をしっかりと摂る」ことを意味しています。先ほどご紹介した「カミカミ(よく噛むこと)」とセットで実践することで、消化吸収が良くなり、その効果はさらに高まります。
年齢を重ねると、食事の量が減ったり、あっさりしたものばかりを好むようになったりして、知らず知らずのうちに栄養が偏ってしまうことがあります。せっかく「テクテク」と歩く習慣をつけても、体を動かすエネルギーとなる栄養が不足していては、元気に活動し続けることはできません。
体を内側から支える食材選びのポイント
健康的な体を内側から支えるためには、様々な食材をまんべんなく食べることが大切です。特に、筋肉を作るもととなる「タンパク質」(肉、魚、大豆製品、卵など)や、骨を丈夫にする「カルシウム」(乳製品、小魚など)は、シニア世代にとって非常に重要な栄養素です。
「今日は少しお肉を食べてみよう」「いつものお味噌汁に卵や豆腐をプラスしてみよう」といった、毎日のちょっとした工夫が健康寿命をしっかりと支えてくれます。ご夫婦で一緒に献立を考えたり、季節の旬の食材を取り入れたりしながら、日々の食卓を豊かに彩っていきましょう。
6.第4のキーワード「ドキドキ」:感動や生きがいを見つける
新しいことへの挑戦が脳を若々しく保つ
4つ目のキーワードである「ドキドキ」は、決して心臓に負担をかけるような緊張を意味するわけではありません。ここでいう「ドキドキ」とは、新しい知識に触れたときの驚きや、目標に向かって挑戦する際の「ワクワクする高揚感」のことです。
人は年齢に関わらず、未知のものに出会ったり、何かに感動したりすることで脳が強く刺激されます。定年を迎えて生活が単調になりがちな時期だからこそ、「新しいスキルや知識を学んでみたい」「今まで経験したことのない分野に触れてみたい」といった好奇心を持ち続けることが、脳を若々しく保つ最大の秘訣となります。昨日と同じ今日を繰り返すのではなく、ほんの少しでも変化を取り入れることで、毎日の生活に彩りが生まれるのです。
社会とのつながりがもたらす「ワクワク」感
そして、心からの「ドキドキ」や「生きがい」を与えてくれる最も大きな要素が、社会とのつながりです。誰かの役に立ち、「ありがとう」と感謝される喜びは、自己肯定感を高め、人生を前向きに歩むための大きな原動力となります。
長年培ってきた豊かな経験や知識は、社会にとってかけがえのない財産です。その経験を若い世代と共有したり、新たな環境で社会貢献を果たしたりすることは、ご自身の存在価値を再確認する素晴らしい機会になります。「自分のペースで再び社会に出て、役割を持ってみる」という新たな一歩を踏み出すことで、日々に適度な緊張感と心地よい高揚感がもたらされ、精神的にも経済的にも充実したシニアライフへとつながっていくのです。
7.これらのキーワードを取り入れて、明日をもっと豊かに
まずはできることから!日常への簡単な取り入れ方
ここまで、「テクテク・カミカミ・ニコニコ・ドキドキ」、そして「モグモグ」という健康寿命を延ばすためのキーワードをご紹介してきました。これらをすべて今日から完璧にこなす必要はありません。大切なのは、ご自身のペースで無理なく、長く続けていくことです。
例えば、「明日は少し遠くのスーパーまで歩いてみよう(テクテク)」「今日の夕食はご夫婦で会話を楽しみながら、いつもよりよく噛んで味わおう(カミカミ・モグモグ)」など、生活のワンシーンに意識的に取り入れるだけで十分です。日々の小さな積み重ねが、将来の元気な身体と穏やかな毎日を作っていくのです。
社会参加を通して「ニコニコ」「ドキドキ」の機会を増やそう
さらに、これらの健康習慣を最も効率よく、しかも楽しみながら実践できる方法があります。それが「ご自身のペースで社会に出て働くこと」です。仕事に出かければ自然と歩く機会が増え、人と会話をすることで笑顔が生まれ、新しい業務や周囲との関わりが脳への心地よい刺激となります。
「日々の生活費の足しにしたい」「もう一度自分の経験を誰かのために役立てたい」という思いは、人生を前向きに楽しむための素晴らしいエネルギーです。ご自身の体力やライフスタイルに合わせた働き方を見つけることで、経済的なゆとりと精神的な充実感の両方を手に入れることができます。ぜひ、明日からの毎日をもっと豊かにするために、新しい一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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