1.なぜ今、「大人の習い事」が人生を豊かにすると言われているのか
定年や子育ての一区切りを迎えたあと、「自由な時間は増えたけれど、何をして過ごせばいいのかわからない」と感じる人は少なくありません。特に60代後半以降は、仕事中心だった生活から一転し、社会との接点が急に減ったと感じることもあります。そんな中で注目されているのが、「大人の習い事」です。
大人の習い事は、単に新しい知識や技術を学ぶだけのものではありません。生活にリズムを取り戻し、外に出るきっかけをつくり、人とのつながりを生む存在でもあります。週に1回でも決まった予定があることで、「今日は何もすることがない」という感覚が減り、日常に張り合いが生まれます。
また、年齢を重ねたからこそ、学びに対する向き合い方も変わってきます。若い頃のように「成果」や「評価」を求めるのではなく、「楽しい」「心地よい」「誰かと共有できる」といった価値を大切にできるようになります。この変化が、習い事を“続くもの”にしてくれる大きな理由です。
さらに、大人の習い事には「自分を再発見する場」という側面もあります。これまで仕事や家庭の中で当たり前にやってきたことが、別の場所では「教えてほしい」「頼りにされるスキル」になることもあります。そうした経験は、「まだまだ自分は役に立てる」という実感につながり、自己肯定感を自然に高めてくれます。
人生100年時代と言われる今、60代・70代は決して「余生」ではありません。これからの時間をどう過ごすかで、人生の豊かさは大きく変わります。
大人の習い事は、その第一歩として、多くの人にとってちょうどよい選択肢になっているのです。
2.続けられる人が実践している「習い事選び」3つの視点
大人の習い事でよく聞く悩みのひとつが、「最初は楽しかったけれど、いつの間にか行かなくなってしまった」というものです。実は、続くかどうかは“意志の強さ”よりも、選び方でほぼ決まります。ここでは、長く楽しんでいる人に共通する3つの視点をご紹介します。
視点①:興味よりも「生活に無理なく組み込めるか」
「楽しそう」「人気がある」という理由だけで選ぶと、移動時間や準備の負担が積み重なり、次第に足が遠のいてしまいます。続いている人ほど、自宅から近い、昼間の時間帯に通える、1回あたりの所要時間が短いなど、生活リズムに合うかどうかを重視しています。
特に60代後半以降は、体調や予定が変わりやすくなります。だからこそ、「頑張らないと行けない習い事」より、「今日は気分転換に行こう」と思える距離感が大切です。
視点②:上達よりも「人との相性・雰囲気」
大人の習い事は、学校や資格講座とは違い、成果を競う場ではありません。続けている人が大切にしているのは、先生や参加者との相性、教室の雰囲気です。
・年齢層が近い人が多い
・初心者を歓迎してくれる
・雑談や交流の時間が自然にある
こうした環境があると、「上手くできないから行きづらい」という気持ちが生まれにくくなります。技術の上達よりも、「行くと気持ちが明るくなるか」を基準にすると、失敗しにくくなります。
視点③:「役割」や「活かせる場面」が想像できるか
続く習い事には、「自分の居場所」があります。たとえば、受付を手伝う、初心者に声をかける、ちょっとした相談役になるなど、小さな役割が自然に生まれることがあります。
これまでの仕事や人生経験は、思っている以上に価値があります。「教わる側」だけで終わらず、「誰かの役に立てそう」と感じられる習い事は、生きがいにつながりやすく、長く続く傾向があります。
習い事選びで大切なのは、「何を学ぶか」よりも、「その場でどんな自分でいられるか」です。この視点を持つだけで、習い事はぐっと身近な存在になります。
3.人生が前向きに変わる!大人の習い事で得られる5つのメリット
大人の習い事は、「時間をつぶすための活動」ではありません。実際に続けている人の多くが、「始めてから生活の感じ方が変わった」と話します。ここでは、特に多く聞かれる5つのメリットを整理します。
メリット①:生活にリズムとメリハリが生まれる
習い事がある日は、自然と身支度を整え、外に出る理由ができます。週に1回でも予定が入ることで、1週間の流れがはっきりし、「今日は何曜日だったかな」という感覚が減っていきます。こうしたリズムは、心身の安定にもつながります。
メリット②:人との会話が増え、社会との距離が縮まる
大人の習い事は、年齢や立場を超えた交流の場です。「最近どう?」といった何気ない会話が増えるだけでも、孤立感は大きく減ります。特に、仕事を離れたあとに減りがちな“雑談の機会”を補ってくれる点は、大きな価値と言えるでしょう。
メリット③:新しい刺激が脳と心を活性化させる
新しいことに触れる、覚える、試すという行為は、年齢に関係なく良い刺激になります。難しい内容である必要はなく、「初めてやってみる」こと自体が、日常に新鮮さをもたらします。「昨日と同じ今日」から抜け出すきっかけになります。
メリット④:「まだできる」「まだ成長できる」という実感が持てる
小さな上達や達成感を積み重ねることで、「年齢を理由にあきらめなくていい」と実感できるようになります。この感覚は、自信となって他の場面にも広がり、「仕事をもう少し続けてみよう」「別のことにも挑戦してみよう」という前向きな気持ちを生みます。
メリット⑤:人生の選択肢が広がる
習い事を通じて得た経験や人脈が、思わぬ形で役立つこともあります。地域活動への参加、ちょっとした仕事の相談、ボランティアへの誘いなど、新しい選択肢が自然に増えていくのです。
大人の習い事の本当の価値は、「何かができるようになること」以上に、「人生の感じ方が変わること」にあります。小さな変化の積み重ねが、日々の満足度を大きく高めてくれます。
4.社会とのつながりが生まれやすい人気の大人向け習い事ジャンル
大人の習い事を選ぶうえで、「人とのつながりが生まれるかどうか」はとても重要なポイントです。ここでは、実際に交流が生まれやすいとされるジャンルを中心に、具体的な事例を挙げながら紹介します。
① 体を動かしながら交流できる「健康・運動系」
・ヨガ/ストレッチ
・太極拳/気功
・ウォーキングサークル
・フラダンス/社交ダンス
・ゴルフ
これらは、運動量が比較的ゆるやかで、年齢層も近くなりやすいのが特徴です。レッスン前後の雑談や、体調を気遣う会話が自然に生まれやすく、「顔なじみ」から「仲間」へ発展しやすいジャンルです。
② 会話が自然に増える「文化・教養系」
・書道/ペン習字
・俳句/短歌
・歴史講座/郷土史講座
・読書会
作品を見せ合ったり、感じたことを共有したりする場面が多く、「話すこと」が前提になっています。特に読書会や俳句は、人生経験がそのまま価値になるため、年齢を重ねた世代ほど居心地の良さを感じやすい傾向があります。
③ 作品を通じてつながる「ものづくり・創作系」
・手芸/編み物
・陶芸/木工
・絵画/水彩画
・写真教室
完成した作品をきっかけに会話が広がりやすく、「上手・下手」より「個性」が尊重される場です。展示会や作品発表の機会がある教室では、達成感と一体感も生まれやすく、長く続く人が多いジャンルです。
④ 生活に直結しやすい「実用・生活系」
・料理教室/パン教室
・整理収納/暮らし講座
・パソコン/スマホ教室
「家でも役立つ」「家族に話せる」という点がモチベーションになります。特にパソコンやスマホ講座では、受講者同士で教え合う場面も多く、自然に頼られる存在になるケースも少なくありません。
⑤ 経験が活きやすい「地域・社会参加型」
・ボランティア講座
・傾聴ボランティア養成
・子ども/高齢者支援講座
これまでの仕事や人生経験が、そのまま役立つジャンルです。「学ぶ」より「関わる」要素が強く、活動を通じて地域とのつながりが深まります。結果として、仕事や継続的な活動につながることもあります。
⑥ 音や声で一体感が生まれる「音楽・表現系」
・コーラス/合唱
・楽器(ピアノ/ウクレレなど)
・朗読/話し方教室
声や音を合わせる活動は、短期間でも距離が縮まりやすいのが特徴です。発表会やイベントを目標にする教室では、共通の目的が生まれ、自然と連帯感が強まります。
このように、「交流が生まれる構造」を持った習い事を選ぶことで、習い事は単なる趣味を超え、社会との接点になります。
5.習い事が「仕事」や「収入」につながるケースもある
大人の習い事は、「楽しみ」や「健康」のためだけのものと思われがちですが、実は仕事や収入につながる可能性を持つものも少なくありません。ここで大切なのは、「最初から稼ぐ目的で始めないこと」です。結果として、自然につながるケースが多いのが特徴です。
ケース①:教室や仲間から声がかかる
長く通っていると、教室の運営を手伝ったり、初心者のサポートを任されたりすることがあります。受付補助や準備の手伝いなど、短時間・低負担の役割が多く、無理なく関われる仕事として広がっていくことがあります。
ケース②:経験や得意分野が再評価される
習い事の場では、これまでの職歴や人生経験が話題になることも多くあります。たとえば、接客経験、事務経験、調整役としての立ち回りなどは、教室運営や地域活動で重宝されやすいスキルです。「そんな経験があるなら手伝ってほしい」と声がかかることも珍しくありません。
ケース③:地域活動・ボランティアから仕事へ
朗読、傾聴、パソコン支援、子ども・高齢者向け活動などは、最初はボランティアとして関わり、後から謝礼や業務委託につながるケースもあります。収入は大きくなくても、「社会の役に立っている」という実感と両立しやすいのが魅力です。
ケース④:副業・ちょっとした収入源になる
手芸作品の販売、写真の提供、料理教室のアシスタントなど、習い事を通じて得たスキルが「ちょっとした収入」になることもあります。金額よりも、「自分の時間が価値になる」感覚が、生活の満足度を高めてくれます。
ケース⑤:「働く自信」を取り戻すきっかけになる
直接仕事につながらなくても、習い事を通じて人と関わり、「まだ働ける」「もう一度挑戦してみよう」と思えるようになる人も多くいます。この心理的な変化が、再就職やパート探しへの一歩になることもあります。
習い事は、無理に「仕事化」しなくても構いません。ただ、選択肢を増やす土台として、とても相性の良い活動だと言えるでしょう。
6.失敗しない大人の習い事の探し方|教室・講座の見つけ方ガイド
「やってみたい習い事はあるけれど、どこで探せばいいかわからない」という声はとても多く聞かれます。ここでは、大人世代が失敗しにくい探し方を、具体的な方法ごとに紹介します。
① 市区町村の広報誌・公式サイトをチェックする
自治体が主催・後援している講座は、参加費が比較的安く、年齢層も近いのが特徴です。「生涯学習講座」「市民講座」「文化講座」などの名称で掲載されていることが多く、初心者歓迎のものも豊富です。まずはここから探すと安心です。
② 公民館・文化センターを直接のぞいてみる
実際に人が集まっている場所へ行くと、雰囲気がよく分かります。掲示板に貼られたチラシや、受付での案内から、「どんな年代の人が通っているか」「どんな頻度で活動しているか」を確認できます。見学や体験ができるかも、その場で聞いてみるのがおすすめです。
③ 民間教室は「体験レッスン前提」で探す
民間の教室やスクールは、選択肢が多い反面、雰囲気の差も大きくなります。ホームページだけで判断せず、体験レッスンを通じて、「通いやすさ」「先生の話し方」「無理のないペースか」を確認しましょう。大人世代に配慮がある教室ほど、体験を歓迎しています。
④ SNSや口コミは「雰囲気確認」に使う
SNSや口コミサイトは、評価を見るというより、「写真」や「投稿の内容」から雰囲気をつかむのに向いています。年齢層が極端に若すぎないか、イベントや交流があるかなどを確認すると、ミスマッチを防ぎやすくなります。
⑤ 仕事探し・地域活動の延長線で探す
求人情報サイト、地域の掲示板、ボランティア募集の中には、「講座」「研修」「活動説明会」という形で学びの場が用意されていることもあります。習い事と仕事を切り分けず、「関わりながら学ぶ」という視点で探すと、新しい選択肢が見えてきます。
⑥ 最初から「長く続ける」と決めすぎない
失敗しない最大のコツは、「合わなければやめてもいい」と思って始めることです。1回きり、1か月だけ、という気軽さがある方が、結果的に自分に合う習い事に出会いやすくなります。
探し方を工夫するだけで、習い事は「特別なもの」から「生活の一部」へと変わります。
7.まとめ|習い事は「何を学ぶか」より「どう生きたいか」で選ぼう
大人の習い事は、特別な才能や目的がなくても始められるものです。大切なのは、「何を身につけるか」よりも、「その時間をどう過ごしたいか」「どんな毎日を送りたいか」という視点です。
人と話す機会を増やしたい、体を少し動かしたい、誰かの役に立ちたい。こうした気持ちは、年齢を重ねるほど自然なものになります。習い事は、その思いを無理なく形にできる場です。週に1回でも外に出て、顔なじみと挨拶を交わすだけで、生活の印象は大きく変わります。
また、習い事を通じて得た経験やつながりは、仕事や地域活動、ボランティアなど、次の一歩につながることもあります。すぐに収入にならなくても、「自分はまだ関われる」「役割を持てる」という実感は、人生の安心感や前向きさを支えてくれます。
これからの人生を豊かにするために、完璧な選択をする必要はありません。気になるものを、少し試してみる。それだけで十分です。習い事は、人生を広げる入口。今の自分に合う形で、一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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