1.なぜ今「自宅を貸して住み替える賃貸経営」が注目されているのか
定年後の生活で多くの人が直面するのが、「年金だけでは少し心もとない」という現実です。総務省の家計調査によると、高齢夫婦無職世帯の平均的な実収入は月約25万円前後なのに対し、支出はそれを上回る水準になるケースも少なくありません。つまり、多くの世帯が毎月少しずつ貯蓄を取り崩しながら生活しているのが実態です。
こうした背景の中で、いま注目されているのが「自宅を資産として活用する」という考え方です。すでに住宅ローンを完済している、あるいは残債が少ない持ち家がある場合、その家を人に貸すことで毎月安定した家賃収入を得ることができます。これが「自宅を貸して、別の賃貸に住む」という住み替え型の賃貸経営です。
この方法が注目されている理由は大きく3つあります。
1つ目は、新たな借金をせずに始められることです。アパート経営のように多額のローンを組む必要がなく、すでに所有している住宅をそのまま収益化できるため、リスクが小さいのが特徴です。
2つ目は、暮らしを身軽にできる点です。戸建ては定年後の夫婦2人暮らしには広すぎることが多く、掃除や修繕の負担も増えていきます。駅や病院に近い、段差の少ない賃貸マンションに住み替えることで、日常生活がぐっと楽になります。
3つ目は、家賃収入が「第二の年金」になることです。毎月10万円前後の家賃収入があれば、年金に上乗せされる形で家計に余裕が生まれます。これは、長い老後を安心して過ごすための大きな支えになります。
このように「自宅を貸して住み替える賃貸経営」は、
大きな借金をせずに、生活をコンパクトにしながら、毎月の安定収入を得られる仕組みです。
これからの老後を「節約」ではなく「仕組み」で安定させたい人にとって、有力な選択肢のひとつと言えるでしょう。
2.「自宅を貸す+賃貸に住む」とは?仕組みをやさしく解説
「自宅を貸して、別の賃貸に住む」と聞くと、少し複雑に感じるかもしれませんが、仕組みはとてもシンプルです。
簡単に言えば、自分がオーナー(大家)になり、同時に借り手(入居者)にもなるというスタイルです。
流れを整理すると、次のようになります。
1.いま住んでいる自宅を賃貸として貸し出す
2.その家から引っ越して、別の賃貸住宅に住む
3.自宅から家賃収入を受け取り、賃貸住宅には家賃を支払う
4.その「差額」が毎月の手取り収入になる
つまり、自宅を「家賃を生む資産」に変え、そこから得られる収入で自分の住まいをまかなうイメージです。
たとえば、郊外の一戸建てを月15万円で貸せたとします。
一方で、自分たちは駅近のバリアフリー賃貸に月10万円で住むとすると、
家賃収入 15万円
− 賃貸の家賃 10万円
= 毎月5万円のプラス
となり、何もしなくても毎月5万円が手元に残ることになります。年間では60万円。これは年金の不足分を補うには十分大きな額です。
この仕組みの良い点は、不動産投資のような「買い増し」が不要なことです。すでに持っている自宅を活用するだけなので、新たにローンを組む必要もなく、金融リスクが非常に低いのが特徴です。
また、シニア世代にとって重要なのが「住み替えの自由度」です。
自宅を貸し出してしまえば、駅に近い、病院が近い、段差が少ない、エレベーターがあるなど、今のライフステージに合った住まいを選べるようになります。これは老後の生活の質を大きく左右します。
つまりこの方法は、
・自宅という資産を眠らせずに活かす
・生活しやすい住まいに移る
・その上で毎月の収入も得る
という、「お金」と「暮らし」の両方を同時に整える仕組みなのです。
3.どれくらい収入になる?家賃収入と家賃支出の考え方
「自宅を貸したら、本当にいくらくらい手元に残るのか?」
ここが一番気になるポイントですよね。賃貸経営は、家賃収入 − 自分が払う家賃 − 必要経費 = 実際の手取りで考えます。
まずは、一般的な目安を見てみましょう。
国土交通省の「住宅市場動向調査」や不動産ポータルの家賃相場を見ると、都市近郊のファミリー向け一戸建ての家賃は、月12万〜18万円程度が多くなっています。一方で、駅近マンションやバリアフリー対応の賃貸は8万〜12万円前後がよくあるレンジです。
ここではモデルケースで整理してみます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 自宅の家賃収入 | 15万円 |
| 自分が住む賃貸の家賃 | 10万円 |
| 管理費・修繕積立(目安) | 1万円 |
| 固定資産税(月割) | 約1万円 |
| 毎月の手取り | 約3万円 |
この例では、毎月3万円、年間で約36万円が“働かなくても入ってくるお金”になります。
これに加えて、物件によってはもう少し家賃が高く取れたり、修繕費が少なく済めば、月5万円以上のプラスになるケースも十分あります。
また重要なのが、ローンの有無です。すでに住宅ローンを完済していれば、収益性は一気に高まります。仮にローンが残っていても、その返済額を家賃収入でカバーできる場合は、実質的に「借りている人がローンを返してくれている」状態になります。
もうひとつのポイントは、「空室リスク」と「家賃の下落」です。
ずっと満室で同じ家賃が入るわけではありませんが、自分の自宅は築年数や立地をよく把握しているため、無理のない家賃設定をすれば長期入居につながりやすいというメリットがあります。
このように、「自宅を貸して住み替える賃貸経営」は、大きく儲ける投資ではなく、安定した年金補完収入をつくる仕組みと考えるのが現実的で、シニア世代にとって非常に相性の良い方法です。
4.始める前に確認したい4つのチェックポイント(住宅ローン・税金・年齢・空室)
自宅を貸して賃貸経営を始める前に、必ず確認しておきたいポイントが4つあります。ここを見落とすと、「思っていたよりお金が残らない」「そもそも貸せなかった」ということにもなりかねません。
① 住宅ローンは残っているか?
もし自宅に住宅ローンが残っている場合、原則としてその家を賃貸に出すと「契約違反」になる可能性があります。多くの住宅ローンは「自己居住用」が前提で、賃貸に出す場合は銀行の承諾が必要です。
ただし、
・転居がやむを得ない事情(老後の住み替え等)
・事前に金融機関へ相談
をすれば、「投資用ローン」や「事業用ローン」へ切り替えられるケースもあります。まずは銀行に正直に相談することが重要です。
② 税金はいくらかかる?
家賃収入は「不動産所得」として課税対象になります。
国税庁によれば、家賃収入から以下のような経費を引いた残りが課税所得になります。
・固定資産税
・管理費、修繕費
・火災保険料
・仲介手数料
など
つまり、「家賃収入の全額に税金がかかる」わけではありません。
年金が少なく、他の収入が少ないシニア世代であれば、税率も比較的低く抑えられることが多いのが実情です。
③ 年齢的に貸主として大丈夫か?
「もう高齢だけど大家になれるの?」と不安に思う方もいますが、年齢制限はありません。賃貸契約の貸主に年齢条件はなく、管理会社に委託すれば、入居者対応やトラブル対応もほぼ不要になります。
むしろ、
・長く住み続けるつもりがない
・相続までの間、家を有効活用したい
というシニア世代こそ、自宅賃貸は合理的な選択です。
④ 空室になったらどうする?
最大のリスクは「借り手がいない期間(空室)」です。ただ、自宅は多くの場合、
・住宅街で生活利便性がある
・ファミリー向けの間取り
・しっかりした建物
であることが多く、投資用アパートよりも入居が安定しやすい傾向があります。
さらに、家賃を少し相場より下げることで、長期入居につながりやすくなります。
これら4つをクリアできていれば、自宅賃貸はかなり現実的な選択肢になります。
5.自宅を貸すまでの流れ|賃貸経営スタートまでの5ステップ
「興味はあるけど、何から始めればいいの?」という方のために、自宅を貸して賃貸経営を始めるまでの流れを、できるだけシンプルに整理します。実際にはこの5ステップを踏めば、ほとんど迷わず進めます。
ステップ① 家賃相場を調べる
まずやるべきは、自宅がいくらで貸せるのかを知ることです。
SUUMO、HOME’S、アットホームなどの不動産サイトで、同じエリア・間取り・築年数の物件を検索すれば、おおよその相場が分かります。
この段階で「この家賃なら十分プラスになる」という目安をつかむことが大切です。
ステップ② 不動産会社に査定を依頼する
次に、賃貸仲介会社に家賃査定を依頼します。
これは無料で、複数社に頼むのがおすすめです。プロの目線で、
・いくらなら借り手がつくか
・どんな人が住みそうか
・どんなリフォームが必要か
といった現実的なアドバイスがもらえます。
ステップ③ 住み替え先を探す
自宅を貸す前に、自分たちが住む賃貸住宅も探します。
シニア世代の場合は、
・駅、病院が近い
・エレベーターがある
・段差が少ない
といった「将来も住みやすいか」を基準に選ぶのがポイントです。
ステップ④ 管理会社を決める
入居者対応、家賃回収、トラブル対応を自分でやる必要はありません。
賃貸管理会社に委託すれば、ほぼ“放置型の収入”になります。
手数料は家賃の5%前後が相場です。
ステップ⑤ 募集 → 入居スタート
すべて準備が整ったら、募集開始です。
借り手が決まれば、いよいよ賃貸経営がスタートし、毎月家賃収入が振り込まれる生活になります。
この流れを見て分かる通り、やることは難しくありません。
むしろ「最初の一歩を踏み出すかどうか」が最大のハードルなのです。
6.失敗しないためのコツ|シニア世代が特に注意すべきポイント
自宅を貸して賃貸経営を始める方法は、シニア世代にとってとても相性が良い一方で、いくつかの“つまずきポイント”もあります。ここでは、失敗を防ぐために特に意識しておきたいポイントを整理します。
家賃を欲張りすぎない
最も多い失敗が「少しでも高く貸したい」と家賃を上げすぎてしまうことです。
空室が1か月続くだけで、10万円以上の機会損失になります。
それよりも、相場より少し安く設定して、長く住んでもらう方が結果的に得になります。
フルリフォームはしない
「せっかく貸すなら」と数百万円かけてリフォームする人もいますが、これは回収に時間がかかります。
実際には、
・壁紙
・床
・水回りの最低限の補修
だけで十分借り手がつくケースがほとんどです。
シニアの賃貸経営は「利回り最大化」ではなく「安定収入」が目的であることを忘れないことが大切です。
管理は必ずプロに任せる
入居者とのやり取り、家賃の回収、クレーム対応などを自分でやるのは大きなストレスになります。
管理会社に任せれば、実務の9割以上を代行してくれます。月5%程度の手数料は、精神的な安心料と考えると非常に安いものです。
「老後の出口」も考えておく
将来的に、
・施設に入る
・子どもに相続する
・売却する
といった選択肢も視野に入れておくことが重要です。
自宅を貸している間も、売却や相続は可能なので、「一生貸し続けなければならない」わけではありません。
このように、無理をしない設計をしておくことで、自宅賃貸は“老後の安心収入”として非常に安定した仕組みになります。
7.「自宅賃貸」はどんな人に向いている?向いていない人は?
自宅を貸して賃貸経営をする方法は、とても魅力的ですが、すべての人に向いているわけではありません。ここで、自分が当てはまるかを確認してみましょう。
向いている人
まず、この方法に向いているのは次のような方です。
・住宅ローンの残債が少ない、または完済している
・子どもが独立し、家が広すぎると感じている
・駅や病院に近い場所に住み替えたい
・年金以外の安定収入がほしい
・相続までの間、家を有効活用したい
特に、シニア世代で「夫婦2人で静かに暮らしたい」「掃除や管理の負担を減らしたい」と考えている方にはぴったりです。
自宅を貸すことで、収入を得ながら生活の質も上げることができます。
向いていない人
一方で、次のような方は注意が必要です。
・今の家に強い愛着があり、他人が住むのが耐えられない
・将来また自宅に戻りたいと思っている
・住宅ローンの条件変更ができない
・短期的な大きな利益を期待している
賃貸経営は「資産を運用する行為」なので、気持ちの切り替えも大切です。
「自宅は思い出の場所であって、貸すものではない」と感じる方には、無理におすすめできません。
この方法は、「家を手放す」のではなく「家を働かせる」発想です。
この考え方に納得できるかどうかが、成功の分かれ道になります。
8.まとめ|自宅を活かした賃貸経営は“定年後の第二の収入”になり得る
「自宅を貸して、別の賃貸に住む」という選択は、決して特別な投資家だけのものではありません。むしろ、定年後の収入に少し不安があり、生活を身軽にしたいシニア世代にこそ向いている方法です。
この仕組みの本質は、とてもシンプルです。
「今まで住んでいた家を、お金を生み出す資産に変える」こと。
新しく物件を買う必要もなく、借金を増やすこともなく、すでに持っている自宅を活用するだけで、毎月数万円〜十数万円の安定収入が生まれます。
さらに、駅や病院に近い賃貸へ住み替えることで、
掃除や管理の負担が減り、将来の不安も小さくなります。
お金だけでなく、暮らしそのものが楽になるのが、この方法の大きな魅力です。
もちろん、住宅ローンや税金、空室リスクなど、事前に確認すべきことはあります。しかし、きちんと準備をすれば、自宅賃貸は「大きく儲ける投資」ではなく、年金を支える堅実な仕組みとして長く役立ってくれます。
定年後の生活を、「我慢」や「節約」ではなく、「仕組み」で安定させる。
それを実現できるのが、自宅を活かした賃貸経営なのです。
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