1.なぜ今「組織の面接力」が企業の採用力を左右するのか
人手不足が常態化している現在、企業の採用力を左右する要素として「面接の質」がこれまで以上に重要になっています。求人を出しても応募が集まりにくい時代においては、限られた応募者一人ひとりと向き合う面接の場が、採用成功の分かれ道になるからです。
特に近年は、求職者側も複数の企業を比較しながら就職先を選ぶ傾向が強く、面接は単なる選考の場ではなく、「企業が選ばれる場」でもあります。対応が丁寧で、役割が明確で、話が一貫している企業ほど、応募者に安心感を与え、志望度を高めることができます。反対に、面接官によって質問内容や評価基準がバラバラな企業は、「この会社は大丈夫だろうか」という不安を与えてしまい、辞退につながるケースも少なくありません。
また、面接の質は採用後の定着率にも大きく影響します。面接の段階で仕事の内容や期待役割が正しく伝わっていないと、「思っていた仕事と違う」というミスマッチが生まれ、早期離職の原因になります。つまり、面接は単に合否を決める場ではなく、入社後の活躍や定着を左右する重要なプロセスなのです。
だからこそ、面接を「面接官個人の経験や勘に任せるもの」から、「組織として設計し、磨き続けるもの」へと進化させる必要があります。組織としての面接力が高まれば、人材の見極め精度が上がるだけでなく、入社意欲の向上、定着率の改善、企業ブランドの強化にもつながります。
採用難の時代において、面接は単なる選考手法ではなく、企業の競争力そのものと言っても過言ではありません。まずはこの認識を組織全体で共有することが、面接力強化の第一歩になります。
2.面接官の役割整理が最初の一歩|「誰が何を見るか」を明確にする
組織の面接力を高めるうえで、最初に取り組むべきなのが「面接官の役割整理」です。多くの企業では、面接に同席する人それぞれが何となく質問をし、何となく評価をしているケースが少なくありません。しかし、この状態では評価の視点が重複したり、逆に重要なポイントが誰にも見られていなかったりと、見極めの精度が下がってしまいます。
そこで重要になるのが、「誰が何を見るのか」をあらかじめ明確にすることです。たとえば、人事担当者は人物面や価値観、組織との相性を中心に確認し、現場責任者は業務理解やスキル適性、実務へのフィット感を見極める。さらに、役員クラスが最終面接を担当する場合は、将来的な期待値や会社の方向性との一致を見る、といったように役割を分けることで、面接の質は大きく向上します。
役割分担が明確になると、質問内容にも一貫性が生まれます。「この面接では何を確認する場なのか」が整理されているため、面接官同士が同じ質問を繰り返すことも減り、応募者にとっても分かりやすい面接になります。結果として、企業としての印象も良くなり、入社意欲の向上にもつながります。
また、役割整理は評価の納得感を高める効果もあります。各面接官が自分の担当領域に集中して判断できるため、「なんとなく良さそう」「雰囲気が合いそう」といった曖昧な判断が減り、より客観的な評価が可能になります。採用会議の場でも、それぞれの視点から具体的な情報が共有されるため、意思決定のスピードと精度が高まります。
面接はチーム戦です。まずは面接官一人ひとりの役割を整理し、「組織として応募者を見極める体制」をつくることが、面接力向上の土台になります。
3.人材の見極め力を高める|情報収集と評価の精度を上げる方法
面接の本来の目的は、「応募者を評価すること」ではなく、「必要な情報を集め、入社後の活躍を予測すること」です。そのためには、感覚や印象に頼るのではなく、意図的に情報収集を行い、評価の精度を高める仕組みづくりが欠かせません。
まず重要なのは、質問設計です。たとえば「これまでどんな仕事をしてきましたか?」という漠然とした質問ではなく、「どのような課題に直面し、どのように工夫して乗り越えたか」といった具体的なエピソードを引き出す質問にすることで、仕事への向き合い方や思考の特徴が見えてきます。過去の行動を深掘りする質問は、再現性のある能力を見極めるうえで有効です。
次に大切なのが、評価基準の統一です。面接官ごとに判断軸が異なると、「Aさんは高評価、Bさんは低評価」といったズレが生まれ、最終的な採用判断が曖昧になります。そこで、事前に「主体性」「協調性」「業務理解力」など、見るべきポイントを整理し、簡単な評価シートを用意しておくと、面接官同士の認識を揃えることができます。
さらに、面接内容を記録として残すことも重要です。記憶だけに頼ると、後から振り返ったときに印象が変わってしまうことがあります。面接直後に要点をメモとして残しておくことで、採用会議の際に具体的な事実をもとに議論ができ、判断の質が高まります。
見極め力は、個人の経験だけで高まるものではありません。質問設計、評価基準、記録という基本の仕組みを整えることで、組織全体として安定した判断ができるようになります。これが結果として、採用のミスマッチを減らし、定着率の向上にもつながっていきます。
4.面接は「口説く場」でもある|入社意欲を高める情報提供と動機形成
面接というと「見極める場」という意識が強くなりがちですが、実際には応募者の入社意欲を高める「動機形成の場」としての役割も非常に重要です。特に人手不足が続く現在は、企業が一方的に選ぶ時代ではなく、応募者からも選ばれる時代です。つまり、面接は評価と同時に「企業の魅力を伝える場」でもあるのです。
応募者が面接で知りたいのは、求人票に書かれている条件面だけではありません。「どんな人が働いているのか」「どんな雰囲気の職場なのか」「自分はどんな役割を期待されているのか」といった、働くイメージが具体的に持てる情報です。面接官が現場のリアルな話や仕事のやりがい、チームの雰囲気などを伝えることで、応募者は自分がそこで働く姿を想像しやすくなります。
また、応募者の話を丁寧に聞く姿勢も、志望度を高める大きな要素です。自分の経験や考えにしっかり耳を傾けてもらえたと感じると、「この会社は人を大切にしている」という印象につながります。反対に、事務的なやり取りだけで終わってしまうと、どれだけ条件が良くても気持ちは動きにくくなります。
さらに、「あなたのこの経験は、当社のこの仕事で活かせそうですね」といった具体的なフィードバックを伝えることも効果的です。応募者自身が気づいていない強みを言語化してあげることで、「ここで働いてみたい」という気持ちが自然と高まります。
面接は単なる選考プロセスではなく、企業と応募者が相互理解を深める貴重な機会です。見極めだけに集中するのではなく、「この会社で働きたい」と思ってもらうための情報提供と関わり方を意識することが、採用成功の大きなポイントになります。
5.組織で取り組む面接へ|役割分担と運用ルールの設計
面接力を安定的に高めていくためには、個々の面接官の力量に頼るのではなく、「組織として運用する仕組み」を整えることが欠かせません。どれだけ優秀な面接官がいても、担当者によって進め方や評価がバラバラでは、採用の質にムラが生まれてしまいます。そこで重要になるのが、役割分担と運用ルールの設計です。
まず取り組みたいのは、面接の基本的な流れを統一することです。たとえば、「自己紹介→これまでの経験の深掘り→価値観の確認→会社説明→逆質問」といった大枠の進行を決めておくだけでも、面接の質は安定します。面接官によって時間配分や話の進め方が極端に変わることを防ぎ、応募者に対して一貫した印象を与えることができます。
次に、評価のルールを明確にすることも重要です。面接後に「良さそうだった」「少し不安がある」といった感覚的なコメントだけが集まる状態では、採用判断の軸が曖昧になります。そこで、評価項目をあらかじめ決め、面接ごとに記入する簡易的な評価シートを導入すると、情報が整理され、採用会議でも客観的な議論がしやすくなります。
さらに、面接官同士の情報共有の仕組みも大切です。前の面接でどんな話が出たのか、どこを深掘りする必要があるのかが共有されていれば、次の面接がより有意義な時間になります。逆に、共有がないと同じ質問を繰り返すことになり、応募者の満足度も下がってしまいます。
このように、面接の進め方や評価、情報共有のルールを整備することで、面接は「個人のやり方」から「組織の仕組み」へと変わっていきます。これが結果として、見極め精度の向上だけでなく、応募者体験の質の向上にもつながり、企業全体の採用力を底上げしていくことになります。
6.人事の重要な役割|ロールプレイングと面接官研修で組織の面接力を底上げする
ここまで見てきたように、面接力は仕組みづくりによって大きく向上します。しかし、その仕組みを実際に機能させるためには、面接官一人ひとりのスキルを底上げしていくことが欠かせません。その中心的な役割を担うのが人事部門です。
特に効果的なのが、ロールプレイング形式の面接トレーニングです。実際の面接を想定して、質問の仕方や深掘りの方法、話の引き出し方を練習することで、面接官は自分のクセや改善点に気づくことができます。たとえば、質問が抽象的すぎて応募者が答えにくくなっていないか、一方的に話しすぎていないかなど、客観的に振り返る機会をつくることが重要です。
また、面接官向けの研修を定期的に実施することも有効です。評価基準の共有や、最近の採用市場の動向、応募者が重視しているポイントなどをインプットすることで、面接の質を組織として一定水準に保つことができます。面接は経験を重ねるほど上達する一方で、自己流になりやすい側面もあるため、定期的な見直しと学びの場が必要です。
さらに、人事が主導して「良い面接事例」を共有することも、全体の底上げにつながります。どんな質問が応募者の本音を引き出したのか、どのような関わり方が入社意欲を高めたのかを共有することで、面接官同士の学びが加速します。
面接力は、自然に身につくものではなく、意図的に育てていくものです。人事が中心となってロールプレイングや研修の機会を設けることで、面接は個人の経験値ではなく、組織の強みとして蓄積されていきます。これこそが、長期的に採用力を高めるための最も確実な方法と言えるでしょう。
7.まとめ|「面接は個人技から組織力へ」が採用成功の分かれ道
採用環境が厳しさを増す中で、企業の競争力を左右するのは「どれだけ良い人材を見極められるか」だけではありません。「応募者から選ばれる面接ができているか」という視点も、これまで以上に重要になっています。その中心にあるのが、組織としての面接力です。
本記事で紹介してきたように、面接力を高めるためには、まず面接官の役割を整理し、「誰が何を見るのか」を明確にすることが出発点になります。そのうえで、質問設計や評価基準を整え、見極めの精度を高めていく。そして同時に、面接を通じて企業の魅力を伝え、入社意欲を高める視点を持つことも欠かせません。
さらに重要なのが、面接を個人任せにしないことです。進行の流れや評価方法、情報共有のルールを整備し、組織として運用する仕組みをつくることで、面接の質は安定します。そして、人事が中心となってロールプレイングや研修の機会を設けることで、面接官のスキルが継続的に磨かれ、組織全体の採用力が底上げされていきます。
面接は、単なる選考の場ではなく、企業の価値観や姿勢が最も伝わる接点です。だからこそ、「上手な人が担当すればいい」という個人技に頼るのではなく、「組織として強い面接ができる状態」を目指すことが重要です。
面接力が高まれば、採用のミスマッチが減り、定着率が上がり、現場の負担も軽減されます。そして結果として、経験豊富な人材や多様な人材が集まり、組織全体のパフォーマンス向上にもつながっていきます。採用を成功させるカギは、制度や条件だけでなく、「面接という接点の質」にあるのです。
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