１．はじめに：70代女性が漁業に挑戦する理由
定年を迎えたあとも、「もう一度働きたい」「地域と関わり続けたい」と願うシニア女性が全国で増えています。そんな中、意外にも注目を集めているのが“漁業”というフィールドです。かつては体力勝負・男性中心の仕事というイメージが強かった漁業ですが、近年は働き方が多様化し、女性や高齢者でも活躍できる場が広がっています。たとえば、網の補助作業や魚の選別、加工や販売など、体力に合わせた業務が増えており、「自分のペースでできる」点がシニア世代に支持されているのです。
また、海の仕事には、自然と触れ合う充実感や、地域コミュニティとの深いつながりといった“心の豊かさ”があります。都会を離れ、朝日を浴びながら港に立つ時間は、まるで第二の青春のようだと語る人も少なくありません。さらに、担い手不足の解消を目的に、自治体や漁協が積極的に人材受け入れを進めていることも追い風です。漁業体験プログラムや移住支援制度など、初心者でも安心して一歩を踏み出せる環境が整っています。
「体を動かすことが健康につながる」「誰かに必要とされる喜びを感じる」——そんな想いが、70代女性たちを再び海へと向かわせています。人生の集大成を迎えるこの年代だからこそ見える“働く意味”が、漁業という舞台で新たに輝いているのです。
２．漁業の魅力とは？：シニア世代に適した職業の特徴
漁業の魅力は、単なる“仕事”にとどまらず、「自然と共に生きる暮らし」に触れられる点にあります。四季の移ろいを肌で感じながら働く漁業は、机に向かう仕事とは違い、心身のリズムを整える効果があります。朝の海風や波の音に包まれながら体を動かすことで、健康維持にもつながり、日々の達成感を味わえるのです。
また、漁業はチームワークが求められる現場でもあります。船上や港での作業では、お互いに声を掛け合いながら協力するため、人とのつながりが自然と生まれます。これがシニア世代にとって大きな魅力の一つ。長年の社会経験を活かして、若手を支えたり、現場のムードメーカーになったりすることも少なくありません。孤立しがちな定年後の生活に比べ、「仲間と共に働く」ことが心の張り合いになります。
さらに、近年ではテクノロジーの導入により、作業の負担も軽減されています。GPSや魚群探知機、機械化された選別機などのサポートにより、体力に不安のあるシニアでも無理なく携われる環境が整いつつあります。魚の加工・販売・観光連携など、漁業関連の仕事は多様化しており、ライフスタイルや希望に合わせて関わり方を選べる点も大きな魅力です。
海と人に囲まれて働く日々は、健康・生きがい・社会参加のすべてを兼ね備えた“シニアに優しい仕事”といえるでしょう。
３．漁業の中でのさまざまな仕事の種類
一口に「漁業」といっても、その仕事の幅は驚くほど広く、シニア世代が活躍できるポジションも多岐にわたります。たとえば、船に乗って魚を捕る「漁船漁業」だけでなく、浜での仕分けや加工、出荷準備を担う「陸上作業」など、体力や経験に応じて選べる選択肢が豊富です。中には、朝の数時間だけ港に出向いて作業する“短時間勤務型”もあり、無理なく続けやすい働き方として人気があります。
また、近年注目されているのが「養殖業」や「水産加工業」です。海藻や牡蠣、真珠などの養殖は、体力よりも丁寧さや観察力が求められる分野で、女性や高齢者にも向いています。水揚げ後の魚をさばく、パック詰めする、ラベルを貼るといった軽作業も多く、地域の小さな加工場や直売所では、地元の70代女性が主力として働くケースも珍しくありません。
さらに、観光と組み合わせた「漁業体験」「漁村民宿」「直販イベント」など、新しい形の漁業ビジネスも広がっています。接客や販売が得意な方であれば、漁師と観光客をつなぐ“地域の顔”として活躍することもできます。つまり、漁業とは単に魚を獲るだけの仕事ではなく、“海に関わるすべての活動”の総称なのです。
自分の得意分野を活かして、「漁に出る」「支える」「伝える」という多様な役割の中から、自分らしい関わり方を見つけることができる――それが、シニア世代にとっての漁業の大きな魅力といえるでしょう。
４．漁業で活躍するシニア女性の実例：成功ストーリー
実際に漁業の世界へ飛び込んだシニア女性たちは、それぞれの人生経験を活かしながら、海の現場で新しい生きがいを見つけています。たとえば、70歳で夫の後を継いで漁協に加入した女性は、最初こそ体力面に不安を抱えていましたが、「毎朝海を眺めるだけで元気が出る」と語ります。最初は港での仕分け作業からスタートし、仲間との交流を通じて徐々に漁に同行するようになったそうです。今では「仲間の一人として頼られる存在」として若手漁師からも慕われています。
また、ある女性は、地元の漁師から仕入れた魚を使って加工品を開発し、直売所で販売する事業を立ち上げました。長年、家庭で培った料理の知恵を活かしたアイデア商品が人気を呼び、地域の名物となっています。「自分の味が地域の人に喜ばれるのがうれしい」と語るその笑顔は、まさに“第二の人生の輝き”そのものです。
さらに、漁業体験のインストラクターとして活躍するシニア女性もいます。観光客に網の使い方や魚の特徴を教える姿は、生き生きとしており、「人と関わることが元気の源になっている」といいます。こうした実例からも分かるように、漁業は“海の仕事”であると同時に、“人とのつながりを育む仕事”でもあります。
年齢や体力に関係なく、自分の強みを活かせば誰でも輝ける場所。それが、漁業というフィールドの懐の深さなのです。
５．漁業の始め方：シニアが漁業に参加するためのステップ
「やってみたいけれど、どう始めればいいの？」——そんな不安を抱く人も多いでしょう。しかし、近年はシニア世代の新規参入を支援する仕組みが各地に整備され、漁業の世界に入るハードルは確実に下がっています。
まず最初のステップは、「体験」から始めること。多くの自治体や漁協では、1日～数日間の漁業体験プログラムを実施しています。網の引き上げや魚の仕分けなどを体験することで、現場の雰囲気を掴み、自分の体力や適性を確かめることができます。実際、70代で参加した人の中には、「想像より無理なくできた」「仲間と一緒に動くのが楽しい」と感じて、そのまま継続を決めた人も多いのです。
次のステップは、地域とのつながりづくりです。漁業はチームで行う仕事のため、地域の人たちとの信頼関係が欠かせません。まずは漁協や地元の生産者、市役所の水産課などを訪ね、どのような人材を求めているのか、どんな作業があるのかを聞いてみましょう。最近では「漁業サポーター」や「体験型移住支援制度」など、短時間勤務や季節限定の関わり方も増えています。
最後に大切なのは、“続けるための準備”です。健康チェックを受け、自分に合った作業内容を選びましょう。無理をせず、少しずつペースを掴むことで、長く続けられる働き方が見えてきます。新しい挑戦は勇気がいりますが、地域に歓迎され、自然と共に生きる喜びは何ものにも代えがたいものです。
６．漁業で得られる充実感：働くことがもたらす心理的効果
漁業の現場で働くシニア女性たちが口をそろえて語るのは、「心が元気になった」という言葉です。朝日が昇る海を眺めながら作業を始めると、不思議と前向きな気持ちが湧いてくる。そんな“自然のリズム”に身を委ねる日々が、心身のバランスを整え、生活全体を豊かにしてくれるのです。
仕事を通じて地域の仲間と協力し合うことも、大きな心理的効果をもたらします。人と話し、笑い、支え合う時間が「生きがい」や「役割意識」を再び呼び覚まし、孤独や不安を軽減します。定年後に社会とのつながりが減ったと感じていた人ほど、漁業の現場では「自分の居場所を見つけた」と感じる傾向があります。特に女性の場合、食卓や家事の延長線上にある“魚を扱う仕事”は親しみやすく、やりがいを感じやすい分野です。
さらに、海で働くことは軽い運動にもなり、脳の活性化にも効果的です。魚を選別したり、重さを計ったりといった手作業は、集中力と判断力を自然に鍛えるトレーニングになります。これは認知機能の維持にもつながるといわれており、「働くこと自体が健康づくりになる」という好循環を生み出しています。
「海に出ると、昨日までの悩みが小さく見える」と話す70代女性の言葉の通り、漁業は単なる生業ではなく、心を解き放つ“生きる力”を育てる場でもあります。自然と人の温もりに支えられながら働くことで、日々に張りと笑顔が戻ってくるのです。
７．まとめ：70代から始める漁業という新しいキャリアの可能性
漁業という仕事は、単に魚を獲るだけの生業ではなく、「地域とともに生きる」生き方そのものです。かつては男性の世界と見られていた漁業も、今では女性やシニアが重要な戦力として活躍できるフィールドへと変化しています。70代で挑戦する人が増えている背景には、人生経験を重ねた世代だからこそ持つ“人との和を大切にする姿勢”や“責任感”が、現場で求められていることがあります。
また、漁業は年齢に縛られない仕事です。早朝に港へ出て短時間だけ働く人、加工場でコツコツと魚を扱う人、観光と結びつけて地域を盛り上げる人——それぞれが自分のペースで、無理なく関わることができます。特別な資格や経験がなくても、まずは地域の漁協や支援制度を通じて関わり方を見つけることが可能です。小さな一歩からでも、海とつながる新しい人生が始まります。
そして何より、漁業で働くことで得られるのは「自分の役割を取り戻す喜び」です。魚を仕分ける手、声を掛け合う仲間、海を見守る穏やかな時間——それらすべてが、生きる力を再び灯してくれます。定年を過ぎてもなお、「学び」「挑戦し」「誰かに貢献できる」この仕事は、シニア世代にとっての希望の象徴といえるでしょう。
70代からの漁業挑戦は、“遅すぎる挑戦”ではなく、“新しいスタート”です。海と共に働く時間の中で、自分の人生をもう一度、豊かに輝かせてみませんか。
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