1. 派遣依存が招く企業リスクとは?
コスト増加とスキルの属人化
人手不足に直面する企業の多くが、即戦力を求めて派遣社員の活用に頼りがちです。しかし、長期的に見ると、派遣依存にはさまざまなリスクが伴います。
まずコスト面。厚生労働省の「労働者派遣事業報告書(2023年度)」によれば、一般派遣の平均時給は1,600円前後。加えて派遣会社へのマージン(平均約30%)を加味すると、正社員やパートよりも高い人件費となるケースが多々あります。
次に、スキルやノウハウの属人化。業務に習熟した派遣社員が契約期間満了で退職してしまうと、ノウハウが社内に蓄積されず、毎回の引き継ぎで現場の生産性が落ちる可能性もあります。
定着率の低さによる現場の疲弊
派遣社員は企業への帰属意識が低くなりがちで、業務に対する責任感や改善意欲が育ちにくい傾向があります。結果として「作業はするが、職場全体を良くしようという動きは乏しい」と感じる管理者も少なくありません。
さらに、派遣社員の入れ替わりが頻繁になると、教育・指導に追われる正社員や中堅社員の疲弊を招きます。現場の安定性が失われ、人間関係の構築が難しくなるという悪循環に陥る危険性があります。
2. なぜ今、“社内人材の再設計”が必要なのか
これからの人材確保に必要な「持続可能性」という視点
少子高齢化が進む中で、若年層の労働力確保は年々難しくなっています。総務省の「労働力調査(2024年)」によれば、15~64歳の生産年齢人口は過去30年で約1,000万人以上減少しています。
こうした中で求められるのは「一時しのぎ」ではなく「持続可能」な人材戦略。安易に外部人材に依存するのではなく、自社で活かせる人材を再設計し、組織内で循環させる仕組み作りが重要です。
社内リソースの見直しで浮かび上がる3つの選択肢
社内人材の再設計を考える際、次のような3つの選択肢が浮かび上がります。
1.若手社員の戦力化
新卒・第二新卒を計画的に育成し、未来の主力へと育てる方法。中長期的な視点が必要ですが、文化醸成には効果的です。
2.業務の外注化・自動化
単純作業や定型業務を外部に任せることで、社内リソースを高付加価値業務に集中できます。ただし、依存しすぎるとノウハウの空洞化を招くリスクも。
3.経験豊富な高齢者人材の活用
即戦力としての経験を持ち、かつ定着率が高く、若手の指導役にもなれる存在。コストも比較的安定しており、企業にとってはバランスのよい選択肢です。
なぜ今、高齢者人材の活用が注目されているのか?
高齢者人材の強みは、豊富な実務経験と高い定着率です。令和5年の内閣府「高齢者の就業に関する意識調査」でも、60代の就業希望者の約8割が「継続的に働きたい」と回答しており、モチベーションの高さが際立ちます。
また、年齢に比例して責任感や落ち着きがあり、若手社員への教育やメンタリングを任せることで、組織全体の安定性を高めることができます。派遣社員には期待しづらい「人を育てる力」や「現場に根付く力」は、高齢者人材ならではの魅力です。
3. 高齢者を活かした人材再設計のポイント
業務分解で無理なく役割分担
高齢者人材を効果的に活用するには、まず業務を細かく分解し、それぞれに合った役割を設計することが重要です。
たとえば、体力を要する作業は若手、マニュアル整備や教育係はシニアという具合に、年齢や特性に応じた仕事の割り振りが求められます。
実際、ある製造業の現場では「作業工程の見える化」を行い、体力・経験・判断力を必要とする作業に応じて業務を最適化。結果として高齢者の就業率が向上し、派遣依存率も約20%低下したという事例もあります(※筆者調査による中小企業事例)。
このように、業務の再設計は「人に合わせて仕事をつくる」という逆転の発想が鍵になります。
シニア層に合った配置と研修体制
シニア人材は即戦力として期待できる一方、現場のやり方やデジタルツールの扱いなどには個人差があります。
そのため、初期段階での丁寧な研修と、適切な配置が必要不可欠です。
たとえば、次のような配慮が有効です:
・職場に“相談役”を置く(メンター制度)
・マニュアルを文字中心ではなく図解中心にする
・定期的なフィードバック面談を行う
こうした環境づくりが、高齢者人材のパフォーマンス最大化と職場定着につながります。
4. 法制度と支援策を活用した実践法
知っておきたい高齢者雇用の法的ポイント
2021年に改正された「高年齢者雇用安定法」により、企業には65歳までの雇用確保義務と、70歳までの就業機会確保の“努力義務”が課されています。
つまり、今後ますます「高齢者が働ける職場づくり」は企業の責任とも言えるのです。
また、年齢による不当な差別は法律で禁止されています(雇用対策法第10条)。年齢を理由に応募を制限するような求人は、行政指導の対象となる可能性もありますので注意が必要です。
使える助成金・支援制度まとめ
高齢者雇用を進める企業には、以下のような助成金や支援制度があります。
制度名 | 支給額の目安 | 主な要件 |
---|---|---|
65歳超雇用推進助成金 | 最大160万円 | 定年の延長、定年廃止等の取り組み |
特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース) | 1人あたり最大60万円 | 60歳以上の高年齢者をハローワーク経由で雇用 |
高年齢者無期雇用転換コース(2024年新設) | 1人あたり40万円(予定) | 有期から無期への転換実施企業が対象 |
※最新情報は厚生労働省公式サイトまたは最寄りの労働局にてご確認ください。
まとめ:派遣に頼らない持続可能な人材戦略へ
人手不足に直面している今こそ、派遣という“外部資源”に頼るのではなく、社内の“再設計”を進める時です。
その選択肢の一つとして、経験・安定性・定着力を兼ね備えた高齢者人材の活用は、企業にとって非常に有効な手段となります。
派遣社員では実現しづらい「現場力の蓄積」「若手の育成」「社内ノウハウの継承」など、持続的な組織運営に必要な要素を担ってくれる存在です。
まずは、業務の棚卸しと再設計から着手してみてはいかがでしょうか。
社内資源を最大限に活かす戦略こそが、これからの人材確保における鍵となります。
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