高齢者に多い“隠れ脱水”の症状と予防法|水分補給だけじゃ足りない?

健康

1. そもそも「隠れ脱水」とは?——普通の脱水との違い

「隠れ脱水」とは、体内の水分や電解質(ナトリウムなど)が不足しているにもかかわらず、明確な脱水症状が現れにくい状態を指します。喉の渇きや大量の発汗といった“わかりやすいサイン”が出にくいため、高齢者を中心に気づかぬうちに進行し、体調不良や重大な健康被害につながることがあります。

通常の脱水症状では、強い口渇感、ふらつき、大量の汗、尿量の減少などが顕著に現れます。しかし隠れ脱水の場合、喉が渇いたと感じにくいまま、体内の水分と塩分がじわじわと失われていくのが特徴です。そのため「なんとなくだるい」「頭が重い」「食欲がない」といった“曖昧な不調”で済まされ、対策が遅れがちです。

この状態が続くと、熱中症や脳梗塞、尿路感染症などのリスクが高まる恐れがあります。特に加齢とともに感覚機能が低下している高齢者では、隠れ脱水に気づきにくいことが多く、周囲の理解とサポートも重要になります。

なお、一般社団法人日本老年医学会の報告によれば、高齢者の脱水症状の約3〜4割が「隠れ脱水」である可能性があるとされており、決して軽視できない問題です。


2. シニア世代に多い理由|加齢による体の変化とは

「隠れ脱水」が高齢者に多い背景には、加齢にともなう体の機能的な変化が深く関係しています。とくに70代以上では、以下のような生理的変化が重なり、脱水状態になりやすく、かつ気づきにくくなります。

(1)喉の渇きを感じにくくなる

年齢を重ねると、体内の水分量自体が減少するうえ、視床下部にある“渇き”を感じる中枢機能が低下します。つまり、水分が足りていなくても「喉が渇いた」と感じにくくなり、積極的に水を飲む機会が減ってしまうのです。


(2)腎機能の低下によって水分を保持しにくい

腎臓の働きも加齢とともに衰え、水分の再吸収能力が低下します。その結果、必要な水分が尿として排出されやすくなり、脱水状態が進行しやすくなります。


(3)筋肉量の減少による“体内貯水タンク”の減少

実は筋肉は、水分を多く蓄えている組織です。高齢になると筋肉量が減少することで、体内に蓄えておける水分の量も減るため、わずかな発汗や排尿で体の水分バランスが崩れやすくなります。


(4)服薬や持病との関係も

高血圧や心疾患、糖尿病などの治療薬の中には、利尿作用のある薬も多く、知らないうちに水分が体外へ排出されています。また、糖尿病による多尿なども、脱水を招きやすい原因のひとつです。


このように、高齢者は“脱水のリスクを抱えた状態がデフォルト”になりがちです。自分自身で気をつけるのはもちろん、家族や職場の仲間が小さな変化に気づいてあげることも、隠れ脱水を防ぐ大きなポイントになります。


3. 見逃しやすい「隠れ脱水」の症状一覧

「隠れ脱水」は明らかな症状が出にくいため、本人も周囲も気づきにくいのが大きな特徴です。しかし、注意深く見れば、いくつかの“なんとなく不調”のサインが現れます。特に以下のような症状が見られたときは、脱水を疑ってみることが大切です。

✅ よく見られる隠れ脱水のサイン

症状解説
口の中が乾く唾液の分泌が減少し、口の中がネバつく・話しづらいと感じることがあります
頭が重い・ぼーっとする脳への水分供給が不足し、集中力や判断力が落ちることがあります
食欲がない胃腸の働きが鈍ることで、食欲不振につながります
皮膚に張りがない手の甲の皮膚を軽くつまんで戻りが遅い場合、水分不足の可能性があります
微熱がある体温調節がうまくいかず、微妙な発熱が起きるケースもあります
足がつる・こむら返り電解質バランスの崩れによって筋肉のけいれんが生じやすくなります
尿の色が濃くなる通常よりも黄色~茶色がかっている場合、体内の水分が不足しています

✅ 特に注意したい「ちょっとした変化」

なんとなく元気がない
無意識に座ってばかりいる
会話が減っている、返答が鈍い

これらは一見、年齢的な変化や疲労と見過ごされがちですが、実は脱水による倦怠感や脳の機能低下の可能性もあります。特に働いているシニアの方の場合、「仕事中にぼんやりする」「集中力が落ちる」などは隠れ脱水のサインかもしれません。


ちょっとした不調の裏に「水分と電解質の不足」が潜んでいることを知っていれば、早めに対処が可能です。普段から“なんとなく変だな”という違和感を大切にする意識を持つことが、健康維持につながります。


4. 水分補給だけでは不十分?——塩分・栄養バランスとの関係

「脱水には水を飲めばいい」と思われがちですが、隠れ脱水を防ぐためには“水分だけ”では不十分です。水だけを多量に摂ることで、かえって体内の塩分(ナトリウムなど)濃度が薄まり、低ナトリウム血症という危険な状態に陥ることさえあります。

なぜ塩分も必要なのか?

人の体液は、水とともにナトリウムやカリウムなどの電解質で構成されています。汗をかくと、この電解質も一緒に体外へ排出されます。そのため、水分補給の際には、電解質を適切に補うことが大切です。

特に高齢者は、もともと体内の水分量や塩分の調節能力が落ちているため、「水だけを飲んでも脱水が改善しない」ということが起きやすいのです。


おすすめの補給法

タイプ内容
経口補水液(OS-1など)電解質バランスが最適化されており、脱水対策に非常に有効。市販で入手可能
具だくさんの味噌汁水分・塩分・ミネラルが一度に摂れる。朝食に取り入れるのが◎
塩飴・塩タブレット外出時や作業中に手軽に補給できる。熱中症対策にも有効
麦茶+梅干し胃に優しく、ナトリウムも補える伝統的な組み合わせ

また、たんぱく質・ビタミン・ミネラルといった栄養素も、体内の水分を保持するうえで重要です。偏った食事が続くと、脱水リスクが高まる点にも注意が必要です。


注意点

・持病がある方(腎臓病や高血圧など)は、塩分摂取に制限がある場合もあります。かかりつけ医の指導に従いましょう。
・清涼飲料水やスポーツドリンクは、糖分過多になりやすいため、摂りすぎに注意が必要です。


つまり、「水+塩分+栄養バランス」がそろってはじめて、脱水予防になるということです。特に働くシニアの方は、活動量に応じてこまめに適切な補給を意識することが大切です。


5. 日常生活でできる予防法|仕事中や外出先での工夫も紹介

隠れ脱水は、ちょっとした心がけで予防することが可能です。特にシニア世代にとっては、「こまめに水を飲む」以上に、日々の生活習慣や行動パターンを見直すことが重要です。ここでは、家庭・仕事場・外出先の3つのシーンに分けて予防法をご紹介します。


🏠 家庭でできること

朝起きたらまず一杯の水
・睡眠中に500ml以上の水分が失われるとされており、朝の水分補給は必須です。

1日3食+具だくさんの汁物
・食事からも水分を補給できます。味噌汁やスープ類がおすすめ。

部屋の湿度管理
・室内が乾燥すると脱水が進みやすくなります。湿度は40~60%が理想。


🧑‍💼 仕事中に気をつけたいこと

目に入る場所に水筒を置く
・デスクに常備するだけで、自然と水分補給の回数が増えます。

60~90分ごとに「飲むタイミング」を設ける
・のどの渇きを待つのではなく、時間で区切って飲む習慣を。

軽いストレッチで気づきを促す
・体を動かすことで「疲労」「倦怠感」など異変にも気づきやすくなります。


🚶 外出・移動時の工夫

経口補水液、塩タブレットを携帯
・熱中症対策としても有効。バッグに常備しておくと安心です。

帽子、日傘、薄手の長袖で直射日光を避ける

・発汗を抑えることで、水分消失を防げます。

こまめなトイレを恐れない
・「トイレが面倒だから飲まない」という我慢は、健康に大きなリスクをもたらします。


✔️ 目安としての水分量

一般的に、シニア世代でも1日1.5~2リットル程度の水分摂取が推奨されています。コーヒーやお茶は利尿作用があるため、純粋な水や麦茶などのカフェインレス飲料を意識して摂るのがベストです。


隠れ脱水は「気づきにくく、対処が遅れやすい」ものですが、意識と習慣次第で十分に防げる生活リスクです。自宅でも仕事中でも、無理なく続けられる対策を日々のルーティンに取り入れましょう。


6. まとめ|「なんとなく不調」を見逃さず、健康に働き続けるために

「隠れ脱水」は、特に高齢者にとって“気づかないうちに進行する見えないリスク”です。喉の渇きがない、汗もかいていない、でもなんとなく体調が悪い――そんなとき、実は体の中では水分と電解質が不足し、健康を脅かす状態が静かに進行しているかもしれません。

とくに働くシニア世代にとっては、「疲れやすくなった」「集中できない」「食欲がわかない」といったちょっとした違和感が、仕事のパフォーマンスにも影響を与える要因になります。それが積み重なれば、転倒や持病の悪化などにもつながりかねません。


「自分の体に敏感になること」が最大の予防策

隠れ脱水の予防は、特別な器具や薬を必要としません。
・こまめな水分補給
・塩分や栄養バランスの見直し
・体調の変化に気づくための習慣
――これらを意識的に続けることが、“健康に働き続ける力”を守る基本になります。


高齢だからこそ、自分の体と向き合うことが何より大切です。今日からでも始められる小さな予防で、安心して働ける毎日を手に入れましょう。

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