定年後も地域に貢献!シニアに人気の「市民後見人」とは?その魅力と始め方

仕事

1.市民後見人とは?高齢者にも注目される理由

後見制度と市民後見人の基本知識

市民後見人とは、認知症や知的障害、精神障害などの理由で判断能力が低下した人を、家庭裁判所の選任を受けて法律的に支援する「成年後見制度」において、専門職ではない一般市民が担う後見人のことです。

成年後見制度には大きく分けて「法定後見」と「任意後見」があり、法定後見では家庭裁判所が後見人を選びます。これまでは弁護士や司法書士などの専門家が主に担っていましたが、近年は身近な立場の支援者として“市民後見人”の存在が注目されています。

市民後見人は、被後見人の財産管理や日常生活に必要な契約手続きなどを行いながら、その人らしい生活を支えます。法律や福祉の専門家でなくても、研修を受けて登録すれば活動可能です。


なぜ今、高齢者に「市民後見人」が求められているのか

社会の高齢化が進む中、後見制度の利用者は年々増加しています。厚生労働省の統計によると、成年後見制度の利用件数は2023年時点で24万件を超えており(※出典:厚労省「成年後見制度の利用の促進に関する基本計画」)、そのうち専門職では対応しきれないケースが増えています。

また、家族による支援が難しい単身高齢者や身寄りのない人も多く、地域に根ざした支援者の存在が欠かせません。こうした背景から、地元で活動できる“市民後見人”の役割がますます重要視されているのです。

特に定年後のシニア層は、人生経験や人間関係の調整能力を活かしながら、無理のないペースで地域に貢献できる存在として期待されています。


2.市民後見人になるには?条件とステップ

必要な資格・経験は?

市民後見人になるために、特別な国家資格や専門職の経験は必要ありません。年齢や職業も問われず、誰でもチャレンジできる点が大きな魅力です。ただし、最低限の条件として以下のような基準があります。

・成年であること(20歳以上)
・心身ともに健康で、継続的な活動が可能であること
・重大な犯罪歴や破産歴がないこと
・利用者の利益を第一に考え、公正な立場で対応できること

また、多くの自治体や社会福祉協議会では、「市民後見人養成研修」を修了することを参加条件としています。研修では後見制度の仕組みや福祉の基礎知識、支援の実務、倫理などが学べるよう設計されており、未経験でも安心して学べるカリキュラムです。


どこで学べる?研修の内容と費用

市民後見人になるには、各自治体や社会福祉協議会、NPO法人などが主催する「市民後見人養成講座」を受講するのが一般的です。研修は座学とグループワークで構成され、合計30〜50時間程度が一般的。期間は数週間から数ヶ月に及ぶケースもあります。

たとえば東京都では、全30時間(10回)の研修を開催しており、修了者には「市民後見人候補者」として登録される制度があります(※出典:東京都福祉保健局「市民後見人養成研修」)。

費用は主催団体によって異なりますが、無料~1万円程度のケースが多く、自治体による助成制度がある地域も存在します。研修終了後は、一定の審査を経て市民後見人として登録され、マッチングを通じて活動が始まります。


3.市民後見人の活動内容と報酬の目安

主な仕事内容と支援対象者の例

市民後見人の主な役割は、家庭裁判所から選任された後見人として、判断能力が不十分な方(被後見人)の生活を法律的・実務的に支えることです。対象となるのは、主に以下のような方々です。

・認知症で財産管理が難しくなった高齢者
・知的障害のある成人
・精神障害により意思判断が難しい人

具体的な業務には次のようなものがあります。

・金銭管理(年金の受取、支払い、通帳・印鑑の保管など)
・契約の代理(施設入所契約、介護サービスの申請等)
・各種手続き(福祉サービスの利用申請、保険の手続き等)
・定期的な訪問や生活状況の確認
・家庭裁判所への報告書作成・提出

なお、医療行為や日常の買い物、介護そのものは含まれません。市民後見人はあくまで“法律上の支援者”であり、生活支援の実務を担うわけではないことは理解しておく必要があります。


気になる報酬や活動頻度は?

市民後見人は無報酬のボランティアではなく、報酬を得られる仕組みがあります。報酬は家庭裁判所の判断により決定され、本人の財産状況などに応じて月額1万円〜2万円程度が一般的です。

たとえば、東京都後見支援センターの事例によると、月額報酬の相場はおおよそ以下のとおりです(※出典:東京社会福祉士会)。

・財産額が少ない:月1万円前後
・中程度の財産:月1.5万〜2万円
・多額の財産や複雑な管理:3万円以上のケースもあり

ただし、報酬目的で始めるとミスマッチになることも。市民後見人は、社会的意義のある活動としてのやりがいや、地域とのつながりを重視して取り組むことが大切です。

活動頻度としては、被後見人との面談や手続き、報告書作成などで月に数回程度の対応が中心。フルタイムの仕事ではないため、定年後のライフスタイルに無理なく取り入れやすいのもメリットです。


4.市民後見人のやりがいと注意点

やりがいを感じる場面とは?

市民後見人の活動には、「人の役に立っている」という実感が得られる瞬間が数多くあります。たとえば、認知症の方が安心して暮らせるよう金銭管理をサポートしたり、行政手続きがスムーズに進んだことで福祉サービスが受けられるようになったりと、生活の安心に直結する支援ができるのです。

また、定期的に被後見人の様子を見に行くことで、孤立を防ぐ役割も果たせます。「ありがとう」と言ってもらえることもあれば、言葉がなくても穏やかな表情を見るだけで、支援の意義を感じることができます。

特にシニア世代にとっては、これまで培ってきた人生経験や人間関係のスキルがそのまま活かせる点も大きな魅力。地域に必要とされる存在になれることで、自分の存在価値や役割を再認識することができるでしょう。


活動を始める前に知っておきたい注意点

一方で、市民後見人として活動するうえでは、いくつかの注意点も理解しておく必要があります。

まず、後見人には法律的な責任が伴います。たとえば、誤って本人の財産を適切に管理できなかった場合、家庭裁判所から指導や解任の対象になる可能性もあります。故意や重大な過失がある場合には、損害賠償を求められることもあり得ます。

次に、感情面の負担です。後見活動には、被後見人の困難な状況と向き合うことも含まれます。ときには本人が支援を拒否するケースや、家族との関係が複雑な場合もあり、精神的に揺さぶられることも少なくありません。

また、定期的に提出が必要な報告書の作成など、事務作業の負担もあります。記録をきちんと残す習慣や、計画的に物事を進める力が求められます。

このように、やりがいがある一方で「責任ある活動」であることをしっかり認識し、自分の体力・気力・ライフスタイルに合った無理のない範囲で関わることが大切です。


5.地域とつながりながら、人生経験を活かす

再び社会と関わる喜び

市民後見人の活動は、単なる“仕事”や“ボランティア”にとどまらず、地域社会とのつながりを深める機会にもなります。
定年後は仕事を離れることで、社会との接点が減ってしまいがちです。しかし、市民後見人として活動することで、行政や福祉関係者、地域住民など多くの人と関わるようになり、自然と社会との接点が戻ってきます。

また、後見人としての活動を通じて、地域の課題や支援を必要とする人々の現状を知ることで、「自分にできることはまだまだある」という前向きな気持ちも生まれます。孤立しがちな高齢期において、こうした社会とのつながりは精神的な安定や充実感につながる重要な要素です。


自分の経験が役に立つという実感

市民後見人は、特別なスキルや資格よりも、人生経験や社会人としての常識・判断力が何よりも大切とされる仕事です。
長年の仕事や家庭生活を通じて身につけた「話を聞く力」「冷静な判断」「信頼される対応」などが、実際の現場でそのまま活かされます。

たとえば、施設入所の手続きを代理で進めたり、病院での説明に同席して安心を与えたりする場面では、相手の立場に立って行動できる柔軟さが求められます。こうした対応は、年齢を重ねたからこそ自然にできることでもあります。

さらに、同じような立場のシニア後見人同士で交流を持つことができる場(定例会、勉強会など)もあり、仲間とのつながりや情報共有の機会も貴重です。「人のためになる活動が、自分の成長にもつながる」――それが市民後見人ならではの醍醐味と言えるでしょう。


6.市民後見人に向いている人とは?

こんな人におすすめ

市民後見人は、法律や福祉の専門職でなくても、「人の役に立ちたい」「地域に貢献したい」という気持ちがある人にぴったりの役割です。特に以下のような特徴を持つ方にはおすすめです。

人と接することが好きで、思いやりのある対応ができる方
社会的な信頼関係を築ける誠実な人柄の方
時間に余裕があり、定期的な活動が可能な方
人の話をよく聞き、冷静に判断できる
地域や社会に貢献したいという意欲のある方

また、過去に職場でリーダー的な役割を担っていた方や、家庭での調整役として活躍してきた方など、他者と関わる中で培った経験がある人は特に向いています。
「資格がないから」「経験がないから」と尻込みせず、自分のこれまでの人生を振り返ると、実は市民後見人に必要な素養をすでに持っているという方は少なくありません。


向いていない人の特徴もチェック

一方で、誰にでもできるというわけではありません。以下のような傾向がある方には、慎重に検討することをおすすめします。

時間に融通がきかない(定期訪問や報告書の提出が難しい)
他人の話を聞くのが苦手、感情的になりやすい
人の財産を預かる責任にストレスを感じやすい
細かい記録や事務作業が極端に苦手
社会制度や法律に対して強い抵抗感がある

また、健康面で継続的な活動が難しい場合も注意が必要です。市民後見人は、「信頼され続ける存在」であることが何より大切ですので、途中で投げ出してしまうような状況は避けたいものです。

向き不向きを知るためには、まず研修に参加してみることがおすすめです。実際に活動している人の話を聞くことで、自分との相性がより明確になるでしょう。


7.まとめ|市民後見人は“第二のキャリア”になる

市民後見人は、定年後の生活に新たな意味と目的をもたらしてくれる“第二のキャリア”です。
法律や医療の専門職ではなくても、人生経験や社会人としての常識がそのまま役立つ活動であり、「誰かの支えになりたい」という気持ちがあれば一歩を踏み出すことができます。

活動を通じて得られるのは、報酬だけではありません。
社会と再びつながる喜び、人の役に立っているという実感、自分の価値を再発見することによる自己肯定感の向上――これらすべてが、シニア世代の生活に豊かさと活力を与えてくれます。

もちろん、責任や事務的な手続きもあるため、無理なく続けるためには自分の状況と照らし合わせながら関わることが大切です。しかし、それを乗り越えた先には、「年齢を重ねたからこそできる社会貢献」が待っています。

もしあなたが、「まだ何か社会の役に立ちたい」「新しい学びやつながりがほしい」と感じているなら、市民後見人はその答えになるかもしれません。

地域に貢献しながら働きたい方へ。シニア向け求人サイト「キャリア65」では、シニア歓迎の求人を多数掲載中!今すぐあなたに合う仕事を探してみませんか?

タイトルとURLをコピーしました