1.「シニア向けシェアハウス」とは?基本の仕組みと特徴を解説
「シニア向けシェアハウス」とは、高齢者が他の入居者と共同生活を送ることができる、シニア専用の共同住宅スタイルです。若者向けのシェアハウスと異なり、バリアフリー設計や見守り体制、健康・交流イベントの充実など、シニア世代の暮らしに合わせた配慮がされています。
基本的な仕組み
一般的なシェアハウスでは、住人が個室を持ち、キッチンやリビング、トイレ、浴室などの共用スペースを共有します。シニア向けのシェアハウスでもこの構造は同じですが、以下のような特徴があります。
・段差のない設計、手すり付きの廊下や浴室など、高齢者の安全に配慮
・24時間の緊急対応サービスや見守りサポートの導入
・栄養バランスを考えた食事の提供(別料金の場合も)
・地域住民との交流やレクリエーション活動を促進するプログラム
入居対象者
多くの施設では60歳以上を目安に入居が可能で、単身者のほか、夫婦での入居を受け入れているところもあります。健康状態や要介護度によって制限がある施設もあるため、事前確認が必要です。
一般的な費用感
シニア向けシェアハウスの費用は、家賃・共益費・サービス費を合わせて月額8万〜15万円前後が相場とされています。都市部か地方か、食事や見守りの有無によって価格帯が変動します。
🏡 例:東京都内のあるシニア向けシェアハウスの場合
・家賃:月8万円
・共益費:月2万円
・見守りサービス費:月1万円
→ 合計:約11万円/月
高齢者施設との違いは?
老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅とは異なり、シニア向けシェアハウスは「自立した生活を前提とした住まい」である点が特徴です。介護や医療の手厚いサービスは限定的ですが、その分、自由度が高く、住人同士のつながりを大切にする環境が魅力といえるでしょう。
2.なぜ今、シニアにシェアハウスが選ばれているのか?注目される背景
かつて「シェアハウス」といえば若者の住まいというイメージが強くありましたが、近年では高齢者の新しい住まいの選択肢として「シニア向けシェアハウス」が注目を集めています。その背景には、日本の高齢化と社会構造の変化、そして高齢者の“暮らし方”に対する価値観の変化があります。
高齢単身世帯の増加
内閣府「高齢社会白書(2024年版)」によると、65歳以上の単身世帯は年々増加傾向にあり、2023年には全高齢者世帯の約30.2%が単身世帯となっています。
単身高齢者は、孤独や不安を抱えやすく、特に急病や災害時のリスクが高いという課題があります。こうした中で、他人と一緒に住むことで安心感を得られる「シェアハウス」が現実的な選択肢として支持を得ているのです。
年金だけでは足りない、という現実
総務省「家計調査(高齢夫婦無職世帯、2023年)」によれば、平均的な高齢者世帯の毎月の赤字は約4万4,000円。多くの高齢者が、年金のみでは十分な生活ができないと感じており、生活コストを抑えられる住まい方として、シェアハウスを検討するケースが増えています。
孤独対策・見守りニーズの高まり
高齢者の社会的孤立は健康リスクとも直結します。国立長寿医療研究センターの研究によれば、社会的孤立が認知症やうつ病のリスクを2倍以上に高めるとされています。
そのため、「誰かと一緒に住み、日常的な会話や交流ができる」シェアハウスの環境は、孤独感の解消やメンタルの安定にも大きく貢献します。
高齢者自身の価値観の変化
「人に頼るのではなく、できるだけ自分らしく暮らしたい」
「高齢者扱いされずに、自由に生活したい」
そんな想いを持つシニアが増えてきたことも、背景のひとつです。シェアハウスは介護施設とは違い、「自分で暮らす」自由と責任を両立できる場。この“中間的な住まい方”が、現在のシニアのニーズに合致しています。
3.メリットいろいろ!経済面・健康面・精神面でのうれしい効果
シニア向けシェアハウスは、単なる“住まい”を超えて、生活全体をサポートする空間として多くのメリットを持っています。ここでは、特に注目すべき3つの側面――経済面・健康面・精神面――からその利点を紹介します。
① 経済的メリット:生活費を抑えられる
シニア向けシェアハウスの最大の魅力のひとつが、生活費の節約効果です。水道光熱費やネット回線、共用設備の維持費などが入居者で分担されるため、一般の一人暮らしと比べて月々の支出を抑えることができます。
また、見守りサービスや簡易的な食事提供がセットになっている場合、外部サービスを別途契約する必要がないこともコスト削減につながります。結果として、年金生活でも無理なく暮らせる家賃帯を実現している物件も多く存在します。
② 健康面のメリット:自然と身体を動かす習慣ができる
シェアハウスでは、日常的に共用部を使った移動や掃除、買い物などの活動が必要です。一人暮らしだと“こもりがち”になる人でも、他の住人とのかかわりや家事の分担によって、自然と体を動かす習慣が生まれます。
さらに、物件によっては、健康体操やストレッチ教室、ウォーキング会などの住人参加型の健康イベントが開催されており、楽しみながら健康維持ができる環境が整っています。
③ 精神的メリット:人とつながり、孤独を防ぐ
高齢者の孤独は、心の健康に大きく影響します。2020年に厚生労働省が発表した「高齢者の健康に関する調査」によると、週に1回以上、会話する相手がいる高齢者は、うつ傾向のリスクが40%以上低いことが明らかになっています。
シェアハウスでは、日常的に他の住人と顔を合わせ、何気ない会話をすることができます。おしゃべりのある日常は、気分転換や安心感をもたらし、前向きな気持ちを保つ支えにもなるのです。
このように、シニア向けシェアハウスは、経済的・身体的・心理的なバランスをとりながら生活するための仕組みが揃った住まいです。
4.どんな人に向いている?シニア向けシェアハウスの入居タイプとは
シニア向けシェアハウスは、「高齢者なら誰でもOK」というわけではなく、ある程度の生活自立度が求められるケースがほとんどです。では、具体的にどんな人に向いているのでしょうか?代表的な入居タイプを紹介します。
1. 自立した生活ができるアクティブシニア
自炊や洗濯、掃除といった日常生活を自分でこなせる人は、シニアシェアハウスに最も適した入居者です。「一人暮らしだと不安はあるけれど、施設に入るほどでもない」「人と関わりながら暮らしたい」という人にとって、ちょうど良い中間の選択肢になります。
2. 地域や人とのつながりを大切にしたい人
「社会とのつながりを持ち続けたい」「毎日誰かと会話がある暮らしを送りたい」と感じている方にも、シェアハウスはぴったりです。住人同士で声をかけ合ったり、一緒に食事やイベントを楽しんだりと、自然なコミュニケーションが生まれやすい環境が整っています。
3. 夫婦でのセカンドライフを求める人
実は夫婦で入居できるシニア向けシェアハウスも増えてきています。個室内で夫婦だけの空間を保ちつつ、共用部では他の住人と関わるというスタイルは、孤立しにくく、生活のメリハリも生まれます。
4. 子ども世代に迷惑をかけたくない人
「子どもには頼らず、できるだけ自分たちで生活を続けたい」と考える人にとって、サポート体制がありながら自由度も高いシニア向けシェアハウスは魅力的です。施設入居よりも“自分らしさ”を大切にしたい人に向いています。
入居に向かないケースもある
一方で、日常生活で常時介助が必要な方や、認知症の進行が見られる方は、一般的なシェアハウスでは対応が難しい場合があります。介護が必要な方は、介護施設やサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を検討したほうが安心です。
シニア向けシェアハウスは、「自由に、でもひとりじゃない」暮らしを求めるシニア層にこそ最適な住まい方といえるでしょう。
5.シェアハウス選びで失敗しないためのチェックポイント5選
シニア向けシェアハウスは、生活の質を大きく左右する“暮らしの拠点”です。だからこそ、選ぶ際には慎重な判断が必要です。ここでは、失敗を避けるために確認しておきたい5つの重要ポイントを紹介します。
1. 建物のバリアフリー・安全設計
高齢者にとって、段差や階段は転倒リスクの高い要注意ポイントです。エレベーターの有無、手すりの設置、段差の少なさ、滑りにくい床材など、安全性に配慮した設計がなされているかをしっかり確認しましょう。
2. 緊急時の対応体制
急病やケガなど、何かあったときにどのような対応が受けられるのかは非常に重要です。
たとえば以下のような体制があるかをチェックしましょう。
・24時間対応の緊急呼び出しボタン
・管理人やスタッフの常駐有無
・提携している医療機関の有無
3. 居住者の雰囲気・人間関係
シェアハウスでは、他の入居者との相性も重要なポイントです。年齢層や性格の傾向、生活リズム、価値観の違いなどが合うかどうかは、ストレスの少ない共同生活のカギとなります。
可能であれば、事前に見学や体験入居をして、実際の雰囲気を肌で感じておくのがおすすめです。
4. 生活サポートの内容と料金の明確さ
「見守りサービス」や「食事提供」「掃除・洗濯の代行」など、提供される生活サポートの内容は施設によって異なります。また、それに伴う料金設定が曖昧なところは要注意。
事前にどこまでが基本料金で、どこからがオプションかを確認し、総額で月いくらかかるのか把握しておきましょう。
5. アクセスの良さと周辺環境
スーパーや病院、公共交通機関が近くにあるかなど、生活インフラへのアクセスも重要です。また、近隣の治安や、地域コミュニティの雰囲気も暮らしやすさに影響します。
特に車を使わない生活を前提とするなら、徒歩圏内に必要な施設があるかをよく確認しましょう。
これら5つのポイントを押さえることで、「想像と違った」「後悔した」という失敗を未然に防ぐことができます。自分に合ったシェアハウスを選ぶためにも、時間をかけて比較・検討しましょう。
6.どう探す?シニア向けシェアハウスを見つける具体的な方法
シニア向けのシェアハウスはまだ数が限られており、一般的な賃貸住宅のように手軽には見つけにくいのが現状です。しかし、探し方を工夫することで、自分に合った物件に出会える可能性は高まります。ここでは、具体的な探し方と活用できる情報源を紹介します。
1. 専門サイトやポータルを活用する
まずは、シニア向け住宅専門のポータルサイトをチェックしてみましょう。以下のようなサイトでは、シニア向けシェアハウスの情報も扱っています。
・R65不動産:高齢者専門の賃貸仲介サービス。シニア向けシェアハウスの掲載もあり。
・シェアハウス検索サイト:『シェアシェア』『シェアード』『ひつじ不動産』『ゲストハウスバンク』等なら都市圏を中心に全国からシェアハウスを探せます。
・LIFULL介護:サービス付き高齢者向け住宅に加えて、一部シェアハウス情報も掲載。
これらのサイトでは「年齢条件」「入居者の構成」「サービス内容」「費用」などの絞り込み検索が可能な場合があり、自分に合った物件を見つけやすくなります。
2. 地元の自治体・社会福祉協議会に相談する
自治体によっては、地域包括支援センターや福祉課を通じて、地域で実施されているシェア型住宅や高齢者共同居住の取り組みを紹介してもらえることがあります。特に地方では民間事業者ではなく、地域主導のシェアハウスや実証実験的な施設が存在することもあるため、穴場の情報源です。
3. 民間の不動産会社に直接問い合わせる
「シニア向け」とは明記していなくても、高齢者歓迎のシェアハウスを運営している不動産会社もあります。大手よりも地域密着型の不動産会社の方が情報を持っていることが多いため、直接連絡してみるのも有効です。
4. SNSや地域コミュニティで情報収集
FacebookやX(旧Twitter)などのSNS上で、「○○市 シェアハウス」「高齢者向け 共同生活」などのキーワードで検索してみると、実際に運営されている施設の投稿や、入居者募集の情報に出会えることもあります。また、地域のシニアサークルや交流イベントに参加することで、口コミで情報が得られる場合もあります。
5. 見学・体験入居を申し込む
気になる物件が見つかったら、必ず見学や体験入居をすることをおすすめします。住人の雰囲気や運営体制、施設の清潔感などは、現地に足を運んで初めて分かることも多いからです。体験入居を実施している施設もあるので、まずは1週間だけ暮らしてみるというのも良い選択です。
情報が少ない分、複数の手段を並行して使うことが成功のカギになります。焦らず、自分にとって本当に居心地の良い場所を探しましょう。
7.まとめ|安心して暮らせる“もう一つの選択肢”としての価値
これまでの住まい方とは異なる、新しい老後の暮らしのかたちとして注目される「シニア向けシェアハウス」。一人暮らしの不安を軽減しながら、経済的にも精神的にも安心できる環境を提供するこの住まい方は、今後さらにニーズが高まると予想されます。
「高齢者だから」と決めつけられることなく、自分らしく、でも誰かとつながっていたい――そんな思いを実現できる場所こそが、シニア向けシェアハウスの最大の魅力です。
生活費を抑えつつ健康も維持でき、孤独を感じることも少ない。しかも必要なサポートは整っていて、何かあればすぐに助けが得られる。このようなバランスのとれた環境は、特に定年後の不安を抱える方にとって、大きな心の支えとなるでしょう。
もちろん、誰にでも合うわけではありません。だからこそ、しっかり調べて、自分に合う物件を見極めることが大切です。探し方や見学のポイントを押さえれば、きっとあなたにぴったりの「居場所」が見つかるはずです。
老後の暮らしをもっと前向きに、もっと豊かにしたいと考えている方にとって、シニア向けシェアハウスは、“もう一つの選択肢”というより、“これからの主流”になりうる住まい方かもしれません。
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