「シニア大学」「シルバー大学」って何?定年後の学びが仕事と生きがいにつながる理由

生活

1.「学び直し」がシニア世代に注目される背景とは?

定年後の時間をどう過ごすか——。これは多くのシニア世代にとって共通のテーマです。体力的にはまだまだ元気なのに、退職を機に社会とのつながりが薄れ、漠然とした不安や孤独を感じる方も少なくありません。そんな中、今注目されているのが「学び直し」。その代表的な取り組みとして広がりを見せているのが「シニア大学」や「シルバー大学」です。

これらの学びの場は、知識やスキルの習得だけでなく、同世代との交流や社会参加のきっかけにもなっており、多くの高齢者が“第二の青春”を楽しんでいます。さらに、講座で得た知識を活かして、地域活動や再就職に挑戦する人も増加中です。

「学ぶことに年齢制限はない」と実感できる今、新たな一歩を踏み出してみませんか?
本記事では、「シニア大学」「シルバー大学」とは何か、どんな内容を学べるのか、そしてそれがどのように仕事や生きがいにつながっていくのかを、わかりやすくご紹介していきます。


2.「シニア大学」「シルバー大学」とは?

各地に広がる“高齢者向けの学びの場”の正体

「シニア大学」や「シルバー大学」とは、主に60歳以上の高齢者を対象とした学び直しのための教育機関や講座の総称です。実際の大学のように「学部」や「講義」があり、数ヶ月から数年にわたって継続的に学ぶことができるのが特徴です。

名前は「〇〇市シルバー大学」や「〇〇県シニア大学」など、地域によって異なりますが、どれも「高齢者の学習機会を提供し、社会参加を促す」ことを目的としています。こうした施設は全国の自治体を中心に設置されており、毎年多くの高齢者が受講しています。

2022年度の文部科学省調査では、全国でこのような高齢者向け講座が約1,000か所以上に設置され、受講者数は年々増加傾向にあると報告されています(※出典:文部科学省「社会教育調査」令和3年結果)。


名称や設置主体による違い(自治体・大学・NPO)

「シニア大学」や「シルバー大学」は、運営主体によって内容やスタイルが大きく異なります。

自治体が設置する公的な大学:県や市町村の社会教育の一環として設置されており、受講料も比較的安価(1年間で数千円程度)なことが多いです。修了証を得られるケースもあり、ボランティアや地域活動に活かす人もいます。

大学/短大によるシニア向け講座:実際の大学のキャンパスで学ぶことができ、現役学生と交流する機会があるのが魅力。リベラルアーツや地域課題など、幅広いテーマに触れられます。

NPOや民間団体による運営:より実践的な学び(福祉・介護・ITスキルなど)や就業支援を意識した内容が多く、働き続けたい人に人気です。

名称が違っても、目的は共通しています。それは「学びを通じて、自分の人生をより豊かにすること」。年齢を重ねても、自らの意志で学び、挑戦するシニアが今、増えています。


3.「学び」がシニア世代にもたらす3つの効果

シニア大学やシルバー大学での「学び」は、単なる知識の習得にとどまらず、日々の生活に大きな変化とメリットをもたらしてくれます。ここでは代表的な3つの効果をご紹介します。


① 社会とのつながりができる

退職後、多くの人が感じるのが「孤独感」です。仕事を通じた人間関係が途切れ、家庭以外のコミュニティがなくなると、精神的な孤立につながりやすくなります。

シニア大学では、同世代の仲間と一緒に学ぶ機会が豊富にあります。グループワークやディスカッション、フィールドワークなどを通じて自然と交流が生まれ、趣味や価値観の合う“友達”ができることも。こうしたつながりが、心の健康維持にもつながります。


② 脳の活性化・健康維持につながる

学ぶという行為自体が、脳を刺激し、活性化につながることがわかっています。特に高齢期においては、「新しいことを学ぶ」ことで認知機能の低下を防ぎやすくなるという研究結果もあります。

例えば、東京都健康長寿医療センターが行った研究では、60歳以上の高齢者が週1回以上の学習活動を行っている場合、認知症の発症リスクが約30%低下するという結果が出ています(※出典:東京都健康長寿医療センター研究所「「農作業、知的活動、社会参加がフレイルから健常への改善に寄与 ~5年間の住民追跡研究の結果から~」)。

知識を得ることはもちろんですが、文章を書いたり、人前で発表したりすることで、記憶力や判断力のトレーニングにもなります。


③ 新しい仕事への道が見えてくる

「学び直し」をきっかけに、新しい働き方やボランティア活動に挑戦する人も増えています。福祉・介護、地域支援、観光ガイド、パソコン講師など、講座で学んだスキルを活かせる場は意外と多く存在します。

また、近年では「地域おこし協力隊」や「市民後見人」といった、社会貢献型の仕事に関心を持つシニアも増加傾向です。シニア大学での学びが、こうした“新しい役割”への第一歩となるのです。


4.「シニア大学」で学べる内容とは?

人気の講座ジャンル(福祉・健康・IT・地域活動など)

シニア大学やシルバー大学では、単なる「教養講座」にとどまらず、実践的かつ生活に役立つテーマを幅広く学べることが特徴です。特に人気なのが、以下のジャンルです。

講座ジャンル内容の一例
福祉・介護高齢者支援の知識、認知症予防、傾聴ボランティア
健康・運動転倒予防体操、栄養講座、脳トレーニング
パソコン・ITワード・エクセル、スマホ活用、SNSの使い方
地域・社会活動地域防災、まちづくり、観光ガイド育成講座
文化・教養郷土史、文学、書道、俳句、英会話など

これらの講座は、初心者でも安心して学べるよう丁寧に設計されており、講師陣も地域の専門家や大学教授などが担当することが多いです。

「学生時代とは違い、今だからこそ理解が深まる」「生活とつながっていて実践的」といった声も多く、学びの楽しさを再発見するシニアが増えています。


修了後に活かせるスキルの例

学びは「やって終わり」ではなく、「活かしてこそ本番」です。多くのシニア大学では、修了後に地域活動や再就職へつなげる道筋も整えられています。

例えば──

パソコン講座修了生:地域の公民館でスマホ教室の講師として活躍
傾聴ボランティア講座受講者:福祉施設で高齢者支援活動に参加
まちづくり講座修了者:地域の防災リーダーや自治会役員として貢献

また、「学ぶうちに自信がつき、求人にも積極的に応募できるようになった」という声も。
学びが新たな選択肢を広げ、「もう一度働く」「社会と関わる」ための自信にもつながっています。


5.「学び直し」から再就職・ボランティアにつながる実例

「学ぶだけで終わらせたくない」「社会にもう一度役立ちたい」──そんな想いを形にしているシニアが全国に増えています。ここでは、シニア大学やシルバー大学での学びを活かして、新たな活躍の場を見つけた実例をご紹介します。


地域で活躍する卒業生の声

① IT講座→シニア向けスマホ講師に
元・工場勤務だった男性(68歳)は、地域のシニア大学でパソコンとスマホの使い方を学び直し。卒業後は、地域包括支援センターと連携し、「スマホ初心者講座」のボランティア講師として活動を開始。今では毎月20人以上のシニアが受講する人気講座に。

「人に教えるなんて最初は不安でしたが、今では“ありがとう”と言われるのがうれしいですね。やりがいも生きがいも感じています」

② 福祉講座→訪問型ボランティアへ
介護の経験がなかった女性(70歳)は、「高齢者支援の基礎講座」を受講。終了後、地域の社会福祉協議会を通じて、高齢者宅への訪問傾聴ボランティアに参加。現在は週1回の活動を3年以上継続中。

「高齢者の孤立が問題になっていると聞いて、自分にできることを探しました。講座で学んだ“聴く力”が現場でとても役立っています」


再就職や市民活動につながったケース紹介

文部科学省の「社会教育調査(令和3年結果)」によると、60代・70代でシニア大学などの学び直し講座を受講した人のうち、約3割がその後、就労や地域活動を開始しているというデータがあります。

特に注目されているのが以下の分野です:

活動先・仕事の例内容
自治体主催のボランティア見守り活動、清掃、ガイド、広報支援など
福祉・介護関連の補助職施設での補助スタッフ、送迎ドライバーなど
地域イベントの運営子ども食堂、シニア交流会、伝統文化の継承など
再就職(パート・委託)市民講師、地域講座運営、事務補助など

学び直しによって、自分の経験とスキルを組み合わせた“自分らしい働き方”や“貢献の形”を見出す人が、各地で着実に増えています。


6.「シニア大学」「シルバー大学」の探し方・始め方

「興味はあるけど、どうやって見つけたらいいかわからない」──そんな声にお応えして、シニア大学・シルバー大学への参加方法をわかりやすく解説します。


自治体の広報・Webサイトをチェック

多くのシニア大学・シルバー大学は、自治体が主催または連携して運営されています。したがって、まず確認すべきはお住まいの市区町村の広報誌やホームページです。

各地の社会教育課、生涯学習センター、公民館などが窓口になっており、以下のような名称で案内されていることがあります。

・○○市シニア大学
・△△県シルバー大学校
・高齢者学級
・生涯学習講座(高齢者向け)

検索の際は、「地域名+シニア大学」や「○○市+高齢者+講座」と入力すると見つけやすくなります。GoogleやYahoo!の検索窓を活用してみましょう。


参加費や応募条件の目安

自治体主催のシニア大学は、参加費が比較的安く抑えられているのが特徴です。例としては──

以下は、実際に公開されている「シニア大学・シルバー大学」の参加費や条件の一例です。

地域・名称年間参加費(税込)受講条件・形式・定員等
徳島県シルバー大学校5,000円/年(入学金無料)県内在住55歳以上。年間30日程度の講義。定員超過時は抽選あり
栃木県シルバー大学校19,000円+資料代2,100円/年在住年齢制限なし、全2年間320時間(週1)。材料費など自己負担あり
大阪府高齢者大学校60,000円/年年齢・居住地問わず、通年講座35回+短期講座。科目により教材・実習費別途。抽選あり
横浜シニア大学(老人クラブ主催・横浜市全18区)会員1,000円/年、非会員3,000円/年60歳以上が対象。合同講座+区ごと開講。抽選の場合あり
荒川区シルバー大学運営費8,000円+受講料5,000〜7,000円/年区内在住60歳以上。教室により料金異なる。多数の講座から選べる形式

※上記内容は2025年時点の公式サイトを参考にしたものであり、変更される可能性があります。必ず最新情報は各自治体の公式HPや広報誌をご確認ください。

また、人気講座は応募多数となり、抽選や面接が必要な場合もあります。春や秋の募集が多いため、タイミングを逃さないように情報収集をしておきましょう。


民間・大学主催の講座も選択肢に

自治体主催以外にも、大学の公開講座や、NPO法人・地域団体が開催するシニア向け講座もあります。費用は少し高めになる傾向がありますが、より専門的な内容や就職支援に特化した内容が魅力です。

たとえば、首都圏では「生涯学習センター」「市民大学」などが、年間数百以上のシニア向け講座を開講しています。
地域の生涯学習施設や図書館、シニアセンターの掲示板にも情報が掲載されていることがありますので、足を運んでみるのも一つの方法です。


7.まとめ|学びを通じて“これからの人生”が豊かになる

定年後は「終わり」ではなく、新たなスタートラインです。
これまで忙しく働いてきた日々から一歩離れ、自分のために使える時間が増えた今こそ、「学び直し」が持つ価値が見直されています。

シニア大学やシルバー大学は、知識を得るだけの場ではありません。そこには、新しい仲間との出会いや、自分自身の成長、そして社会との新たな関わり方が待っています。再び働くきっかけになったり、自分の役割を見つけたり──年齢を重ねた今だからこそ、深く学び、豊かに生きることができるのです。

「まだ間に合うかな?」「自分にできるだろうか?」と迷っている方も、まずは一歩踏み出してみてください。新しい世界が、思いのほか近くにあることに気づけるはずです。

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