人手不足の今こそ実践!ジョブ・クラフティングでシニア人材が輝く職場づくりとは?

【企業向け】シニア採用

はじめに|なぜ今、シニア人材の活用が注目されているのか

少子高齢化と人口減少が進む日本において、企業が直面する深刻な課題のひとつが「人手不足」です。特に中小企業や地方の企業では、若年層の採用が難しくなっており、即戦力となる人材の確保が急務となっています。

一方で、定年退職後も働き続けたいと考える高齢者は年々増加。内閣府の「高齢社会白書(2023年)」によれば、60代後半〜70代の約6割が「できる限り働き続けたい」と回答しています。このような背景から、企業の間でも「シニア人材の活用」が改めて注目され始めています。

ただし、高齢者をただ既存のポジションに“当てはめる”だけでは、その能力や意欲を十分に引き出すことはできません。そこで注目されているのが、「ジョブ・クラフティング(Job Crafting)」というアプローチです。これは従来の仕事設計を見直し、個々の強みや希望に合わせて“仕事をつくる”という考え方です。


1.ジョブ・クラフティングとは?|業務を“自分ごと”に変える新しいアプローチ

「ジョブ・クラフティング」とは、与えられた仕事にただ従事するのではなく、自らの強みや価値観に合わせて仕事のやり方・人間関係・目的意識を主体的に再構成するという働き方のことです。
この概念はアメリカの組織心理学者エイミー・ラズネスキーらによって提唱されました。

従来のように“職務記述書ありき”で採用や配置を行うのではなく、従業員が「何を・どう・誰と働くか」を能動的に捉え直すことで、働きがいとパフォーマンスを高めていく手法です。

特にシニア人材とは相性が良いとされており、その理由は以下の通りです。

豊富な経験を活かせる:過去の職務経験や得意分野を軸に業務を再構築できる
体力や時間の制約に配慮しやすい:フルタイム前提ではなく、自身のペースに合った設計が可能
仕事への誇りを再発見できる:業務の意義や社会的役割を再確認でき、やりがいにつながる

つまり、ジョブ・クラフティングは「高齢だから」といった枠を外し、“活かせる部分にフォーカスした仕事設計”を可能にするのです。


2.シニア人材におけるジョブ・クラフティングの実践例

ジョブ・クラフティングの考え方は、実際にシニア人材を活用する現場でも成果を上げ始めています。ここでは、具体的な活用事例を交えてご紹介します。

●事例1:清掃スタッフの「教える仕事」へのクラフティング

あるビルメンテナンス会社では、60代の清掃スタッフが長年の現場経験を活かし、清掃業務に加えて新人教育の役割を担うようになりました。
この方は清掃の“技術”だけでなく、“丁寧な接客”に定評があり、若手にとっては学ぶことの多い存在でした。

→その結果、清掃品質が向上し、離職率も改善。現場全体の士気が上がったと報告されています。


●事例2:製造補助職での「工程サポート特化型」ジョブ設計

ある製造業では、力仕事を伴う工程の中で、シニアには「道具の準備・点検・後片付け」といった補助的ながら重要な工程を担当してもらうことで、安全性と作業効率がアップしました。

→体力面に配慮しながらも、「自分が工程を支えている」という実感が、モチベーションの維持にもつながっています。


●事例3:接客業での“話し相手”特化ポジション

高齢者施設の受付では、利用者との会話や案内対応に長けたシニアスタッフが常駐し、「ただの受付」から「気軽に話せる存在」へと仕事の意味づけが変化。
この工夫により、利用者からの信頼感が高まり、施設全体の雰囲気が良くなったといいます。


このように、本人の“強み”と“価値観”に合った業務設計をすることで、年齢に関係なく活躍できる環境を整えることが可能になります。


3.企業が導入する際のポイント|失敗しない設計と運用の工夫

ジョブ・クラフティングの導入は、決して難解なものではありません。以下のような工夫を取り入れることで、スムーズに展開できます。

●ステップ1:現場の業務を「分解」して再設計する

まずは、既存の業務を細分化し、「どの作業を、誰が、どんな強みで担うか」を見直します。
例:

・重い荷物を運ぶ → 若手
・丁寧な検品や確認 → シニア
・顧客対応 → 経験豊富なスタッフが信頼を築く


●ステップ2:試験導入とフィードバックの場を設ける

いきなり本格導入せず、小規模な部署やパートタイム職からスタートし、現場からの意見を吸い上げて設計を調整します。


●ステップ3:法的配慮と周囲の理解を得る

高齢者採用では、雇用契約や健康面、労働時間などへの配慮が不可欠です。あわせて、周囲の若手社員や同僚にも、ジョブ・クラフティングの意義を共有し、“共に働く職場づくり”への理解促進も重要です。


●向いている職種・部門の一例

部門向いているジョブ・クラフティング例
受付・案内接客、声かけ、雰囲気づくり
製造補助検品、道具準備、段取り補助
清掃・メンテ教育担当、品質チェック、巡回
事務補助データ入力、紙資料の整理、後方支援

4.導入企業の成功事例から見るメリットと成果

ジョブ・クラフティングは、導入企業にとって人材の活性化・組織力の強化・離職率の低下といった多くのメリットをもたらします。ここでは、実際にシニア人材にジョブ・クラフティングを導入した企業の事例をご紹介します。

●事例:介護業界の中堅法人

ある中堅規模の介護事業者では、慢性的な人手不足のなかで60代の元看護師や元事務員を採用し、それぞれの経験や得意分野に応じて仕事を再構築しました。

・元看護師 → 利用者の健康相談・バイタルチェックのみ担当
・元事務員 → 利用者家族との電話対応や請求補助を担当

それぞれの業務は本来、複数のスタッフが兼任していましたが、適材適所の再設計によりスタッフの負担が軽減され、現場のストレスも減少。

結果として、若手スタッフからも「業務が整理され、やりやすくなった」と好評で、1年後には離職率が25%→10%に減少しました。


●副次的な成果も多数

シニア人材が“ロールモデル”に
 → 若手が話しやすくなり、相談の機会が増えた
「年齢=パフォーマンスの限界」ではないと認識が変化
 → 組織内のダイバーシティ意識が向上

このように、ジョブ・クラフティングは単なる配置の工夫にとどまらず、組織全体のカルチャー変革にもつながる強力なツールであることが分かります。


まとめ|ジョブ・クラフティングで「人が辞めない職場」へ

人手不足が深刻化する中で、経験と知識を持つシニア人材は、企業にとって大きな戦力です。
しかし、従来の枠にはめ込むだけでは、本人の能力も職場のポテンシャルも活かしきれません。

だからこそ、「ジョブ・クラフティング」という考え方が重要になります。

仕事の内容や役割を再設計し、強みを活かせる形にする
やらされ仕事から“自分ごと”へと転換し、意欲を引き出す
多世代の共存が可能になり、組織の柔軟性も向上する

ジョブ・クラフティングを通じて、シニア人材の活躍の場が広がれば、定着率の向上・生産性の維持・職場満足度の向上といった多くの成果を得ることができます。

採用活動においても、単に「雇う」ではなく、“どう活かすか”まで設計することが、今後ますます重要になるでしょう。

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