日傘や空調服が福利厚生になる時代へ｜働きやすさが採用力に変わる理由

1. なぜ今「日傘」や「空調服」が注目されているのか？背景と時代の変化
2. 熱中症リスクの増加と“快適な職場環境”の関係
3. 従業員満足度を高める新たな“福利厚生”という考え方
4. 採用活動における差別化ポイントとしての「働きやすさ」
5. シニア人材にこそ響く！実務での安全・快適性の重要性
6. 日傘や空調服をどう導入する？現場での活用法とコストの考え方
7. まとめ｜「働きやすさ」を整えることが採用力につながる時代へ

1. なぜ今「日傘」や「空調服」が注目されているのか？背景と時代の変化

かつて、日傘や空調服といったアイテムは、個人の自己防衛策として捉えられていました。しかし近年、これらが“企業としての備え”として脚光を浴びるようになっています。背景には、気候変動による猛暑の常態化があり、2020年代以降は「暑さ対策」が明確に職場環境整備の一環として議論されるようになりました。

実際、2024年の日本の平均気温は過去最高を記録し、熱中症による救急搬送者数は91,467人にのぼりました（※出典：総務省消防庁「令和6年（2024年）熱中症による救急搬送状況（6月〜9月速報値）」）。こうした状況の中で、企業も従業員の命を守る立場として、予防策の整備が“当たり前の責任”となってきました。

さらに働き方改革の浸透により、「働く人の安全・快適性をどう支えるか」が企業の価値を左右する要素に。特に屋外作業や物流現場、介護、清掃など高温環境下での労働が日常の業務にある企業ほど、“日傘”や“空調服”のような具体的な暑さ対策の重要性が増しています。

こうした「当たり前の備え」が、企業イメージや採用力にまで影響する時代へと変化しているのです。

2. 熱中症リスクの増加と“快適な職場環境”の関係

厚生労働省の統計によると、2023年の職場における熱中症による死傷者数は1,000人を超え、特に建設業や製造業、介護現場などの屋外・高温環境での業務が多い職種で深刻な状況が続いています（※出典：厚生労働省「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」2023年）。

このような現実の中で、従業員の命と健康を守ることが“経営リスク”の管理にも直結するという認識が広がっています。
特に夏季の現場では、「こまめな水分補給」や「休憩の確保」だけでは限界があり、“職場全体の快適性”を高める取り組みが求められるようになりました。

そこで注目されるのが、日傘や空調服の導入です。
たとえば、屋外誘導や送迎業務などで日傘を支給することで、日射からの直接的なストレスを軽減できます。また、空調服は内蔵ファンによって汗の蒸発を促し、体温の上昇を防ぐ効果があることが実証されています。

これらの対策は単なる健康保持にとどまらず、作業効率の向上や、離職防止にも寄与します。
「暑さがつらくて辞めた」という声を防ぐことは、特に人材確保が難しい業界では競争優位性の確保にもつながります。

従業員の熱中症対策は、今や「努力義務」ではなく、「企業価値を高める施策」として戦略的に取り入れるべき時代に突入しているのです。

3. 従業員満足度を高める新たな“福利厚生”という考え方

従来の福利厚生は住宅手当や食事補助などが中心でしたが、近年では「暑さ対策」や健康支援のように、社員の日常的な快適さを支える取り組みが重要視されています。

例えば、夏季に空調服や日傘を支給した企業の現場では、「作業中の疲労軽減」「快適に働ける」という声が多く聞かれ、従業員の安全と企業姿勢への信頼感の向上につながります。

実際、米国の調査（Virgin Pulse）によれば、ウェルネス・プログラムを導入している企業の85％が「従業員のエンゲージメントが高まった」と回答しており、こうした取り組みは業績の向上にもつながると報告されています。

こうしたデータが示すのは、「福利厚生を充実させる ≒ エンゲージメントや定着率の向上」と直結する強い相関です。

また、昨今では男性やシニア層でも使いやすい軽量／ユニセックス設計の日傘が増え、幅広い従業員に向けた支給・貸与が現場における配慮として受け入れられています。

このような取り組みは、大規模な制度変更ではなく、「ちょっとした配慮と行動」から実行できる福利厚生であり、その積み重ねが社員一人ひとりの信頼と愛着を高め、定着率の向上へつながります。

特にシニア人材にとっては、「働きやすさ」がそのまま応募・就労の意思に影響するため、“暑さ対策の有無”が企業選びの重要な要素となりつつあります。

4. 採用活動における差別化ポイントとしての「働きやすさ」

少子高齢化が進む中、企業の採用活動は年々厳しさを増しています。特に中小企業や地方の現場職では、「求人を出しても応募が来ない」「応募があっても定着しない」といった声が多く聞かれます。

こうした中で注目されているのが、“給与以外の魅力”を打ち出す採用戦略です。そのひとつが、「働きやすさ」を福利厚生や現場環境の工夫として明確に示すことです。

たとえば、募集要項や会社紹介ページに以下のような情報を記載している企業は、応募率が高まる傾向にあります。

・「空調服／日傘支給で夏場も快適に働けます」
・「熱中症対策を徹底し、作業ごとの休憩タイムを制度化しています」
・「シニアの方でも無理なく働ける体制です」

これらは応募者に対し、「この会社は現場の厳しさを理解し、配慮してくれている」と伝える強力なメッセージになります。

また、SNSや採用パンフレット、求人サイトなどで、実際に現場で空調服や日傘を活用している社員の写真や声を掲載することも、働きやすさの“見える化”につながり、他社との差別化ポイントとなります。

求職者が企業を選ぶとき、もはや「給与・勤務地・休日」だけでは判断されません。特に50代以上のシニア人材は、「無理なく、長く働ける環境があるか」を重視しています。

つまり、“暑さ対策”という一見小さな取り組みが、実は採用力の核心を握っているのです。

5. シニア人材にこそ響く！実務での安全・快適性の重要性

高齢者雇用が注目される今、企業が忘れてはならないのが、「体力・体調への配慮」です。特に屋外や高温環境での作業が伴う職場では、暑さ対策の有無が“働くか否か”の判断基準になります。

シニア層は若年層と比べて体温調節機能が衰えやすく、熱中症リスクが高まるため、企業側の対策次第で「安心して働けるかどうか」が大きく変わってきます。

その点で、空調服や日傘の支給は非常に有効な施策です。
これらはシニアだけでなく、全年齢層にとっても作業の安全性を向上させるアイテムであり、「現場に優しい会社」という印象を強めます。

さらに、空調服や日傘の導入に加えて、制服や作業着そのものを見直す動きも広がっています。たとえば、

・通気性の高い夏用ユニフォームへの切り替え
・制汗／防臭加工を施したインナーシャツの支給
・ストレッチ性に優れた動きやすいズボンの採用
・紫外線カット機能付きの帽子やアームカバーの導入

など、「着る」ことで安全性や快適性をサポートする工夫も、非常に現場で喜ばれている取り組みです。

こうした施策は、一度導入すれば「毎年の採用活動」にも活かせます。現場での配慮を具体的に説明することで、応募者や面接希望者の不安を払拭し、入社後の定着にもつながるのです。

特に「久しぶりに働く」「暑さが不安」と感じているシニア層にとっては、職場の“快適性”がそのまま心理的ハードルを下げる要素となります。

6. 日傘や空調服をどう導入する？現場での活用法とコストの考え方

「働きやすさを整える」と聞くと、大掛かりな設備投資や特別な制度が必要と考えがちですが、実際は“すぐに始められる小さな工夫”が大きな効果を生むことも多いものです。

◆ 導入しやすい暑さ対策アイテムとは？

たとえば、以下のようなアイテムは1人あたり数千円以内で支給が可能で、すぐに現場に取り入れられます。

対策アイテム	特徴	参考価格（目安）
空調服	内蔵ファンで服内を送風し、体温上昇を抑制	約8,000～15,000円
UVカット日傘	軽量で作業に支障をきたさず、紫外線を遮断	約1,000～3,000円
接触冷感インナー	ユニフォームの下に着用し汗だまりを軽減	約1,000～2,000円
冷却タオル・ネッククーラー	氷水で濡らすだけで涼しさが持続	約500～1,500円