1. はじめに｜申請しないともらえないお金とは？
働くシニア世代の多くは、「年金以外にどんな公的なお金がもらえるのか」を意識しないまま日々の仕事や生活を送っています。しかし、国や自治体が用意している給付金や助成制度の多くは申請しなければ一切受け取れない仕組みになっています。これを「申請主義」と呼び、日本の社会保障制度や助成制度の基本ルールです。
自動で振り込まれない理由
年金のように自動的に支給される制度もありますが、それは受給資格が国民全員に及ぶ「権利」として確立しているからです。一方、雇用保険や各種給付金は「条件に合う人だけが対象」になるため、国や自治体は一人ひとりの状況を確認する必要があります。その確認作業が「申請」という形で求められるのです。
もらい忘れが起きる背景
厚生労働省の調査【厚生労働省「雇用保険制度の概要」2024年版】によると、高年齢雇用継続給付などの対象者の中にも、条件を満たしながら申請していない人が一定数存在します。その理由は以下の通りです。
・制度そのものを知らなかった
・申請方法や書類が分からず後回しにした
・「少額だから面倒」と思い込んだ
・勤務先から案内がなかった
しかし、例えば高年齢雇用継続給付は最大で賃金の15％が支給され、年間で数十万円の差になる場合もあります。これを見逃すのは、家計にとって大きな損失です。
情報格差が損失につながる
都市部と地方、民間企業と公的機関、フルタイム勤務とパート勤務など、働き方や地域によっても制度の周知度は異なります。特に、自治体独自の助成制度は、公式サイトや広報誌でしか告知されないことも多く、「知っているかどうか」がそのまま受給額に直結します。
結論として、シニア世代が経済的に安心して働き続けるためには、「どんな制度があるのか」「自分が対象かどうか」「どう申請するのか」を早めに確認することが不可欠です。この記事では、その第一歩として、働くシニアが申請すれば受け取れるお金を一覧で紹介し、申請のポイントも解説していきます。
2. 働くシニアが申請して受け取れる主なお金一覧
日本には、働くシニアを経済的に支援するための給付金や助成制度が数多く存在します。しかし、その多くは自動支給ではなく申請が必要です。ここでは、特に代表的で利用価値の高い制度を紹介します。
① 高年齢雇用継続給付
概要：60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者で、賃金が60歳到達時の75％未満に下がった場合に支給される給付金。
支給額：低下率に応じて、賃金の最大15％を毎月支給。
条件：
・雇用保険加入期間が5年以上
・60歳以降も同じ事業所で働き続けている
申請先：勤務先経由でハローワーク
注意点：賃金が61％未満に下がった場合は支給率が高くなるなど、計算式あり【厚生労働省「雇用保険制度の概要」2024年版】。
② 高年齢再就職給付金
概要：60歳以降に再就職し、賃金が再就職前より下がった場合に支給。再就職後の収入減を補う目的。
支給額：低下率に応じて、賃金の最大15％を最長2年間支給。
条件：
・雇用保険加入期間が5年以上
・賃金が60歳時の75％未満
申請先：再就職先を通じてハローワーク
注意点：失業給付を受給した後に再就職した場合も対象になる。
③ 介護休業給付金
概要：家族を介護するために一定期間仕事を休む際、生活を支える給付金。
支給額：休業開始前賃金の67％（上限あり）
条件：
・雇用保険加入期間が1年以上
・対象家族が要介護2以上
・介護休業期間が連続93日以内
申請先：勤務先経由でハローワーク
注意点：介護休暇とは別制度。分割取得も可能。
④ 自治体独自の助成金・補助金
概要：市区町村や都道府県が独自に実施する就労・生活支援。
例：
・東京都「シルバー人材センター就業支援金」
・愛知県「高齢者就業交通費助成」
支給額：数千円〜数万円
申請先：各自治体窓口（高齢福祉課など）
注意点：予算枠が限られている場合があるため、年度初めに確認を。
⑤ その他の全国制度（条件付き）
・職業訓練受講給付金：無料職業訓練と生活支援（10万円/月＋交通費）
・障害年金、遺族年金（該当者のみ追加申請で受給可能）
・雇用保険の教育訓練給付金：受講料の20％（上限10万円）を返還
💡 ポイント
・制度は「働き続ける場合」と「再就職する場合」で分かれる
・同時に複数の給付が受けられるケースもある
・条件は毎年改正されることがあるため、最新情報の確認が必須
このように整理すると、制度の全体像と申請先が一目でわかるので、もらい忘れ防止につながります。
3. 意外と知られていない！見落としがちな制度
有名な高年齢雇用継続給付や再就職給付金のほかにも、実はシニア世代が利用できる制度は数多く存在します。中には「現役向けだと思っていたけれど、実はシニアも対象」という制度もあります。こうした“盲点”を押さえておくことで、もらい忘れを防げます。
① 高年齢求職者給付金（65歳以上の失業給付）
概要：65歳以上で離職し、雇用保険の被保険者であった期間が6か月以上ある場合に、一時金として支給される制度。
支給額：離職前の賃金日額×支給日数（30〜50日分）
条件：
・雇用保険の一般被保険者として6か月以上勤務
・ハローワークで求職の申し込みをしている
申請先：ハローワーク
注意点：通常の失業手当（基本手当）とは異なり、分割ではなく一括支給。
② 教育訓練給付金（学び直し支援）
概要：国が指定する講座（ITスキル、資格取得、語学など）を受講すると、受講費用の一部が返ってくる制度。
支給額：費用の20％（上限10万円）を支給
条件：
・雇用保険加入期間が3年以上（初回利用は1年以上）
・厚生労働大臣指定講座の受講・修了
申請先：ハローワーク
注意点：受講前に必ずハローワークで手続きが必要。
③ 高額療養費制度（医療費負担軽減）
概要：医療費が高額になった場合、自己負担限度額を超えた分が払い戻される制度。
限度額例（70歳以上・一般所得）：外来は年間14.4万円まで、入院を含む場合は月額上限57,600円（2024年度基準）
条件：健康保険加入者
申請先：加入している健康保険組合または国民健康保険窓口
注意点：事後申請だけでなく、事前に「限度額適用認定証」を取得すると窓口支払いを軽減できる。
④ 自治体独自の生活支援・就労助成
概要：全国的には知られていないが、自治体ごとに独自の助成が存在。
例：
・冬季暖房費助成（北海道など）
・通院交通費助成（地方自治体）
・就業支援金（シルバー人材センター経由）
支給額：数千〜数万円
申請先：市区町村役場（高齢福祉課・産業労働課など）
注意点：年度ごとに募集時期や予算が異なるため、定期確認が必要。
⑤ 災害時の特例支援
概要：災害や感染症流行などの非常時に、臨時給付金や特例貸付が行われることがある。
支給額：数万円〜数十万円（条件により異なる）
申請先：市区町村役場、社会福祉協議会
注意点：申請期間が短いことが多いため、広報や自治体ホームページをこまめにチェック。
💡 ポイント
・「現役向け」のイメージがある制度でも、条件次第でシニアも対象になる
・自治体独自の制度は地元以外では情報が出回らないことが多い
・医療、生活支援系は、働きながらでも申請可能なものが多い
このように、小見出し3では“隠れたお金”を拾い上げる形でまとめると、読者が「自分も対象かも？」と思える記事になります。
5. 申請でもらえるお金を最大限活用するコツ
「制度があるのは知っているけど、活用できていない…」という声は少なくありません。せっかく条件を満たしていても、申請のタイミングや情報不足で機会を逃してしまうケースが多いのです。ここでは、働くシニアが申請による給付金や助成金を**“取りこぼしゼロ”**で活用するためのポイントを整理します。
① 複数制度の併用を狙う
制度によっては併用が可能です。
・例1：高年齢雇用継続給付＋教育訓練給付金
→ 働きながらスキルアップ講座を受け、その受講費用の一部を給付金でカバー。
・例2：高額療養費制度＋自治体の医療費助成
→ 医療費自己負担をさらに軽減。
💡 注意点：同一趣旨の給付金（例：同じ雇用保険系の同時受給）は制限があるため、事前にハローワークや社会保険労務士に確認しましょう。
② 情報収集を習慣化する
制度は年度ごとに改正や新設があり、条件や給付額が変わります。特に自治体独自の助成は告知期間が短く、広報誌や公式サイトでしか発表されないことも多いです。
おすすめ情報源
・市区町村の広報誌、メール配信サービス
・厚生労働省やハローワークの公式サイト
・シルバー人材センターの掲示板、会報誌
③ 申請期限を逃さない
制度によっては、離職や再就職から1か月以内など期限が非常に短いものもあります。
対策
・離職や再就職時に「受けられる可能性のある制度」を一覧化
・スマホや手帳で申請期限をメモしておく
④ 専門家に相談する
社会保険労務士（社労士）やファイナンシャルプランナー（FP）に相談すると、自分では気づかなかった制度を教えてもらえることがあります。特に社労士は雇用保険や年金制度に精通しているため、「どの制度を優先的に申請すべきか」の判断も的確です。
・初回相談無料の自治体窓口や労働相談センターも活用可
・年金事務所やハローワークの無料相談日をチェック
⑤ 記録と書類管理を徹底する
申請に必要な証明書や雇用保険被保険者証、賃金台帳、領収書などはすぐに出せるようファイルで整理しておきましょう。特に医療費や研修費用の領収書は、後から申請に使えるケースがあります。
📌 まとめポイント
・制度は「併用」と「タイミング」がカギ
・情報収集と期限管理で受給漏れを防ぐ
・専門家活用で取りこぼしをゼロに近づける
6. まとめ｜知っているかどうかが家計を左右する
働くシニアにとって、給付金や助成金は単なる臨時収入ではなく、生活の安定を支える大きな柱です。今回紹介した制度の多くは、「条件に合えばもらえるのに、申請しなければ1円も受け取れない」という共通点があります。
厚生労働省や自治体の調査でも、給付対象者の中に相当数の「未申請者」が存在することが指摘されています。その理由は、制度の存在を知らない、手続きが複雑だと思い込む、申請期限を逃す――この3つに集約されます。つまり、情報を知っているかどうかが、直接的に家計のプラス・マイナスを左右するのです。
今日からできる“もらい忘れ防止”のアクション
１．自分の雇用保険加入期間や勤務状況を確認する
２．市区町村の広報誌・公式サイトを定期的にチェックする
３．離職・再就職・収入変動があった際は、すぐにハローワークや年金事務所へ相談する
４．必要書類をまとめて保管するファイルを作る
５．専門家（社労士・FP）やシルバー人材センターにも相談してみる
💡 ポイント
・年間数万円〜数十万円規模の支給になる制度も珍しくない
・自治体独自の制度は地元の広報でしか知れない場合も多い
・制度は毎年見直しがあるため、継続的な情報収集が必要
この記事を読んだ今が、行動を始める最適なタイミングです。
まずは、自分が該当する制度を一つでいいので見つけ、必要書類を揃えて申請しましょう。その一歩が、今後の生活の安心と経済的ゆとりにつながります。
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