1:UIターンとは?|Uターン・Iターンとの違いを解説
「UIターン」とは、都市部から地方に移住し、そこで就職・転職を行う働き方の総称です。もともと似た言葉として「Uターン」「Iターン」がありますが、それぞれに微妙な違いがあります。
・Uターン:地方出身者が一度都市部に出た後、再び地元に戻って働くこと。
・Iターン:都市部出身者が、縁もゆかりもない地方に移住して働くこと。
・UIターン:上記をあわせた広い概念で、「都市から地方への人材流入」を総称した言葉。
UIターンは、人口減少が進む地方において「外から新しい労働力を呼び込む手段」として注目されており、若年層だけでなく、定年後のシニア層にも適した働き方です。特に都市部で培った経験や人脈を持つシニア人材は、地方企業にとって即戦力になりやすく、UIターン採用の対象として価値が高いといえます。
地方人材採用で注目される背景
近年、総務省や地方自治体の調査によると、地方では人口流出と高齢化により労働力不足が深刻化しています(出典:総務省「住民基本台帳人口移動報告」2024年版)。このような状況のなかで、UIターンは「人手不足解消」と「地域活性化」の両立を図る重要な施策として位置づけられています。
都市部で引退した人材が地方に移住し、就業やボランティアを通じて地域社会に関わることで、単なる人材確保にとどまらず、地域文化の継承や若手育成など、多面的な効果が期待されているのです。
2:なぜ今、シニア人材にUIターン採用が注目されるのか
かつて「UIターン」は若年層の移住や転職の文脈で語られることが多いものでした。しかし現在では、定年を迎えたシニア人材の新たなキャリア選択肢としても注目されています。その背景には、日本全体が直面する「人手不足」と「定年延長」があります。
人手不足と定年延長の影響
厚生労働省の「労働経済白書(2024年版)」によると、特に地方において中小企業の人材確保難が深刻化しています。若い世代の都市集中が続く一方で、地方の人口は減少を続け、求人倍率は都市部を上回る地域も多いのが現状です。
一方で、2021年に施行された「高年齢者雇用安定法の改正」により、企業には70歳までの就業機会確保が努力義務となりました。これにより、多くのシニア人材が「まだ働ける」「地域社会に貢献したい」と考えるようになり、UIターンはその受け皿として機能しつつあります。
経験とスキルを持つ人材の価値
シニア人材は、長年の実務経験で培った知識やスキルを持ち合わせています。たとえば、
・管理職としてのマネジメント経験
・営業や交渉で培った実務スキル
・技術者としての専門知識
・若手育成や後進指導の経験
こうした強みは、若手人材が不足する地方企業にとって非常に魅力的です。加えて、シニア層は「安定よりもやりがい」を重視する傾向が強く、地域に根差した企業文化や社会貢献の機会と親和性が高いのも特徴です。
結果として、シニア人材のUIターン採用は「人手不足解消」だけでなく、「企業文化の成熟」「若手育成」「地域活性化」といった副次的効果をもたらすのです。
3:UIターンを活用したシニア人材採用のメリット
UIターンを活用したシニア人材採用には、単なる「人手不足の補充」にとどまらない多様なメリットがあります。シニア世代が持つ経験・人脈・価値観は、企業や地域社会にとって大きな資産となります。ここでは主なメリットを整理してみましょう。
業務分担による効率化と職場の安定化
シニア人材を採用することで、業務の分担がスムーズになり、職場全体の安定性が高まります。経験豊富なシニア層がルーティン業務や後方支援を担うことで、若手社員は新しいチャレンジやスキルアップに時間を割けるようになります。
その結果、職場の負担が均等化され、離職率の低下や生産性の向上につながります。
また、シニア社員の存在は「相談できる人がいる」という安心感を生み出し、組織全体のメンタル的な安定にも寄与します。これは、労働力不足で負担が偏りがちな地方企業にとって大きなメリットです。
若手育成や後進指導への貢献
シニア人材は、長年の現場経験を通じて培った知識やノウハウを持っています。特にマネジメントや技術分野での蓄積は、若手社員にとって「生きた教科書」となり得ます。
実際、リクルートワークス研究所の「シニア層の就業実態・意識調査(2023年)」では、多くのシニア層が「経験を活かして若手を支援したい」と考えていることが明らかになっています。UIターンを通じて地方に来たシニア人材が若手の育成役を担うことで、人材不足の地域企業は次世代の成長基盤を整えることができます。
企業のイメージアップと地域貢献
企業にとって、シニア人材を積極的に採用することは「ダイバーシティ経営」の一環です。年齢に関わらず多様な人材を活用する姿勢は、社外への信頼度向上にもつながります。また、UIターンによって地方で働くシニア人材は、地域活動や自治体との関わりにも積極的になるケースが多く、結果として企業は「地域貢献企業」としての評価を得やすくなります。
知識や経験の蓄積による競争力強化
シニア層が持つ「実務知識のアーカイブ化」は、企業にとって競争優位性の源泉になります。新規事業の立ち上げや品質改善、営業戦略の立案など、幅広い場面で過去の成功・失敗の経験は役立ちます。これにより、地方企業は大都市圏の大手企業に対抗するだけの独自の強みを持つことが可能になります。
4:UIターン採用で企業が活用できる制度や支援策
UIターンを活用してシニア人材を採用する際、企業は国や自治体が用意するさまざまな制度や支援策を利用することができます。これらを活用することで、採用コストの削減や受け入れ体制の強化が可能になり、よりスムーズにUIターン採用を進められます。
自治体の移住支援金・助成制度
多くの自治体では、UIターン人材の呼び込みを目的とした 移住支援金制度 を設けています。例えば、東京都と地方自治体が連携する「東京圏からの移住支援事業」では、東京23区から地方へ移住して就職・起業する場合に 最大100万円(世帯の場合は最大200万円) の支援金が支給されます(出典:内閣官房「移住支援金」2024年)。
このような制度はシニア層にも適用されるケースがあり、UIターンでの転職・再就職を後押しする効果があります。
高齢者雇用に関連する国の制度
企業がシニア人材を採用する際には、高齢者雇用を促進するための助成制度も活用可能です。
たとえば、
・高年齢者雇用安定助成金(厚生労働省)
65歳以上の継続雇用制度を導入する企業に対して支給される。
・シルバー人材センターとの連携
地域の高齢者就業を支援する公的組織で、短時間・軽作業の仕事を依頼可能。
・職業紹介事業(ハローワーク、シニア専門求人サイトなど)
UIターン希望者に特化したマッチング支援を受けられる。
これらの制度を組み合わせることで、企業はUIターン人材の採用にかかる負担を軽減し、受け入れのハードルを下げることができます。
5:UIターン採用を成功させるための実践ステップ
UIターンを活用したシニア人材の採用を成功させるには、単に求人を出すだけでなく、受け入れ体制や情報発信の工夫が欠かせません。ここでは、企業が取り組むべき具体的なステップを紹介します。
求人情報の工夫とアピールポイント
UIターン希望者は「地域でどのように働き、暮らせるか」を重視します。したがって求人票には、給与や勤務条件だけでなく、
・地域での生活環境(医療、交通、住まいの情報)
・社内での役割や期待されるミッション
・シニア層に配慮した勤務形態(短時間勤務、柔軟なシフトなど)
を具体的に盛り込むことが大切です。また、「経験を活かして若手を育てたい方歓迎」など、シニア層の強みを活かせるメッセージを明確に伝えることで、応募意欲を高められます。
受け入れ体制の整備とフォローアップ
採用後に重要なのは「長く働いてもらう仕組み」を整えることです。具体的には、
・初期研修で職場環境にスムーズに馴染めるサポートを行う
・定期的な面談を通じて健康面・働き方の希望を確認する
・若手社員との交流機会を設け、世代間の相互理解を深める
といった取り組みが有効です。特にシニア層は「働きやすさ」や「やりがい」を重視するため、配慮あるフォロー体制が定着率向上につながります。
さらに、UIターンでは地域とのつながりも重視されるため、地元イベントや地域活動への参加を支援することも効果的です。これにより、社員としてだけでなく地域の一員としての満足度も高まり、結果的に企業へのロイヤリティ強化につながります。
6:まとめ|UIターンとシニア人材採用で企業の未来を切り拓く
UIターンは、都市部から地方へと人材を呼び込み、企業と地域の双方に活力をもたらす大きな可能性を秘めています。特にシニア人材は、長年の経験・専門知識・人脈を活かしながら、若手の育成や地域社会への貢献といった幅広い役割を担うことができます。
人手不足が深刻化する時代において、シニア層の力を活かすことは、単なる「労働力確保」にとどまりません。それは企業の競争力強化や組織文化の成熟、さらには地域活性化にもつながる戦略的な取り組みです。
また、国や自治体の支援制度を活用すれば、採用コストを抑えながらUIターン採用を進めることが可能です。求人情報の工夫や受け入れ体制の整備を通じて、シニア人材が安心して働ける環境を整えることこそが、成功へのカギといえるでしょう。
これからの企業経営においては、UIターンとシニア採用をかけ合わせた新しい人材戦略を取り入れることで、持続的な成長と社会的責任の両立を実現できます。まさに「企業の未来を切り拓く一手」として、積極的に検討すべきテーマといえるでしょう。
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